よくぞ、
忍法帖を守り通した。
妾は、螺旋帝の血族・緋紗雨(ひさめ)である。
唐突な来訪を詫びる。
妾達
『螺旋帝の血族』は、本星スパイラスに住み、全ての螺旋忍軍を統べる一族なり。
妾達は己が血から作りし
『螺旋忍法帖』によって、全ての螺旋忍軍を従える力を持つ。
そして、本星スパイラスに繋がるは、場所形の変化する
『彷徨えるゲート』なり。
螺旋忍軍はこのゲートの隠匿性と奇襲性を重視し、切り札として同族にも隠す事とした。
故に螺旋忍軍は他種族に仕えておる。そして妾達は、忍法帖にて遠隔より御下命を下す。
ゲートの隠匿と遠隔支配による繁栄。これが、デウスエクス螺旋忍軍の真髄である。
だが、今スパイラスの実権を握る者の考えは違う。
その男の名は
『イグニス』。おそらく、
汝らの知るイグニスと同一人物である。
イグニスは、
『螺旋忍軍とドラゴンの同盟』を進めている。
ドラゴンが得る益は、彷徨えるゲートである。可変であるが故に、偶然に本星ドラゴニアに住むドラゴン……即ち
宇宙最強のデウスエクス達が通れる大きさになる事もあるからだ。
逆に、螺旋忍軍が得る益は不明である。
イグニスは、地球に逃げた妾達に追手を放った。
それは、
『螺旋帝の血族は、彷徨えるゲートの位置を捕捉できる』からである。
彷徨えるゲートは奇襲に強いが、大きさが不定である故に奇襲に弱い。
例えば、もしまかり間違って
血族がケルベロスに協力するような事があれば……。
……長々と済まぬ。これより本題である。
妾を攫うべく、
竜十字島のドラゴン達が迫っておる。
妾はこれより、かつてエインヘリアルが
要塞化した、宮崎の
飫肥城へと向かう。
妾は汝らに情報を示し、汝らが妾を確保しておく事の利も説いた。
故に、妾は
『汝らの庇護を求める』ものなり。
無論、妾にも妾の企み、悪意があり、それを汝らに隠している。
妾が汝らの前に現れたのも、汝らが争奪戦と防衛戦に勝利し、力を示したからに過ぎぬ。
だが、それでも妾を守る事は益であるはずだ。検討を願いたい。