■第7ターン結果
■カウス・ボレアリス
●勇者ナイトボート
カウス・ボレアリスの残存戦力は残り僅か。
その敵戦力をまとめ上げていた勇者ナイトボートを追い、神山・太一(弾丸少年・e18779)は宮殿群を駆け抜ける。
「てっくん、先に回り込むんだ!」
太一の声に、ピコピコハンマーを持ったテレビウムがナイトボートの走るのを邪魔するように攻撃を仕掛けていく。
「誰か!あいつを狙ってください!」
「……ええ、やりましょう」
その声に応じるように、夜船・梨尾(犬は夜船を迎えに行く・e06581)の放った炎が、ナイトボートの行く手を阻んだ。
もはや死を間近としたナイトボートを、太一の放った銃弾が貫いた時、カウス・ボレアリスを巡る戦いも決着がもたらされる。
「そうだ……家に、帰らないといけなかったんだ。子供が、待って……」
ナイトボートの体から力が抜け、地に倒れ伏す。
そして勇者の体は、音もなく消滅していった。
■イグニスの天空神殿
移動要塞である『人馬宮ガイセリウム』は、以前にケルベロス達が攻め落とした『虹の城ビフレスト』とは、性質から外観まで大きく異なっている。
ガイセリウムとビフレストは、いずれもエインヘリアルの魔導神殿群ヴァルハラの12神殿に属しているが、この様子だと他の神殿も大きく異なる外観なのかもしれない。
そして今、ケルベロス達は人馬宮ガイセリウムでの戦いに決着をつけるべく、イグニスの天空神殿へと乗り込んでいた。
動力炉アル・ナスルの停止によって、人馬宮ガイセリウムは移動を止めた。
だが、その機能は完全に死んではいない。
エインヘリアル第五王子イグニスが、己のグラビティ・チェインを注ぎ込むことで、機能を維持しているのだ。
コギトエルゴスム化させたヴァルキュリア達や、この戦争で死んだシャイターン達が保有していたグラビティ・チェイン。
それらを糧に、ガイセリウムは時が来れば東京都を巻き込んで自爆する。
放っておいてもガイセリウムは勝手に存在を消滅させただろうが、それによってエインヘリアルへ渡るグラビティ・チェインの量、そして奪われる命の数は、看過できるものではない。
そして、攻め入ったケルベロス達を待ち受けていたのは、第五王子イグニスまでの道のりを妨害せんとする、最後の守備隊だった。
既にケルベロス達よりも大幅に劣る戦力しか残っていないガイセリウム側だが、イグニスを守る者達の士気はいまだ衰えを見せていなかった。
●うしかい座アークトゥルス
春の大三角形を形成する、三つの明るい星のひとつ、うしかい座アークトゥルス。
その名を冠したエインヘリアルこそは、エインヘリアルの王から星の名を冠した星霊甲冑を授けられた、栄光の星霊戦士たちの一員である。
「ケルベロス達よ、よくぞここまで戦ったな。だが、その命運は我が奥義アックスタイフーンの前に尽きる定めよ!!」
己の力を誇示するように斧を振るう星霊戦士。
その斧の一閃は、神殿の中に巨大な竜巻を生じさせていた。
紫藤・リューズベルト(メカフェチ娘・e03796)は風に乱れる髪を押さえつつ、叫ぶ。
「敗色濃厚だというのに、よく見捨てず戦うものですわ!」
「王子が戦っているというのに俺が退けるものか! それに敵を前に退いては、王に合わせる顔も無い。さあ、行くぞ、アックスタイフーン!!」
さっきと同じ叫びで、今度は極小規模に圧縮された竜巻が、リューズベルトへと放たれる。
だが、それはディフェンダーによって受け止められ、負った傷も他のケルベロス達によって回復されていく。その姿にアークトゥルスは感心したように頷いた。
「ザイフリート王子を破ったと聞いた時にはまぐれかとも疑ったが、こうも見事な戦いぶりを見せられては、認識を改めざるをえんな! デウスエクスに死を与える、地球の守護者たる新たな勇者か……!」
ケルベロス達を讃えるように斧を振るうアークトゥルスは、しかし一切退く気配を見せない。
「お前達を倒して、この死地を切り抜け、堂々と敗北の報告をしようではないか!」
「なんとも潔いことですわね。アグリム軍団に見習わせたいものです」
リューズベルトに暴虐で鳴らしたアグリム軍団の名を出されると、アークトゥルスも顔をしかめた。
「あれと一緒にされては、流石に困るな……まあ俺のような者ばかりでもないが!」
「エインヘリアルにも、色々といるものですわね」
ケルベロスが全員同じ性格だと思うのと同じように、デウスエクスの間にもさまざまな者がいるのだろう。ザイフリートとイグニスの兄弟ですら、随分と違う。
「まあ、あの兄弟には何か事情がありそうですわね」
そんなことを思いつつも、リューズベルト達が繰り出す攻撃は次第にアークトゥルスの体を捉えていく。
そして、リューズベルトの歌いあげる『殲剣の理』が、星霊戦士に膝をつかせた。
「見事だ! これが最後の戦いというのは、なんとも惜しまれるが……お前達のような勇者と戦えたことを誇りに、潔く消えるとしよう!!」
賞賛の言葉を放ち、アークトゥルスは消滅していった。
●蝙蝠のガビシ
人馬宮ガイセリウムの大半を征圧し、完全にイグニスの軍勢を包囲したケルベロス達は、水も漏らさぬ構えで、イグニスの天空神殿を押し包んだ。
そこには、イグニスは絶対に逃がさないという、ケルベロス達の強い意志があったのだろう。
包囲を縮めながら、イグニス王子へと迫るケルベロス達の中で、絡繰屋・ノッチ(もふもふの鎧装騎兵もどき・e13173)が、ふいに耳をくるくるさせながら、声をあげた。
「そこっ、何かが逃げようとしています!」
そう言うノッチの肉球が指し示す先には、確かに、何者かがうごめいていた。
もしや、イグニスが脱出を! と殺到するケルベロス。
しかし、
「ぎゃぅっ」
と悲鳴をあげて暗がりより飛び出たのは、一体の螺旋忍軍だった。
「不覚、この蝙蝠衆のガビシともあろうものが、ケルベロスごときに発見されてしまうとは……。だがまだだ、まだ、終わりではない。いでよ、我が配下達」
イグニスの敗北は確実と考え、脱出を目論んだ蝙蝠のガビシは、残った配下を呼び集めると、ケルベロスとの決戦を挑んだ。
「勝てとは言わない。この私が逃げる時間を稼ぎなさい」
ガビシの言葉に、動き出すデウスエクス達。
が、ケルベロス達は、
「寡兵に奢って足元を掬われる事の無いよう、気をつけましょう」
と言うノッチの注意を聞き、慎重に戦いを進め、ガビシの逃げる隙など欠片も作らなかった。
遂に、ガビシを除き全ての適が撃破されると、ガビシは全てを諦めたように、その場に座り込んだ……。
そのガビシに止めを刺したのは、やはりノッチである。
粗大ごみから拾ってきたアームドフォートを全力展開すると、
「あなたを打ち倒します。全兵装稼働よし、砲撃、開始」
と、情け容赦ない砲撃を集中させ、蝙蝠のガビシを塵一つ残さず消し去った。
こうして、天空神殿のデウスエクスは一人の例外も無く撃破されたのだった。
●エインヘリアル第五王子イグニス
ケルベロス達は、イグニスの座す天空神殿の最奥へと辿り着いていた。
もはや、ガイセリウムが陥落を間近にしていることは、誰の目にも明らかだった。
残るデウスエクスの中に、ケルベロス達が倒した血揃将アグリムに勝る力を持つ者はいない。
それでも、ケルベロス達の前に現れたエインヘリアル第五王子イグニスは、その顔に浮かぶ不敵な笑みを崩してはいなかった。
「見事なものだな、ケルベロス達よ」
敵を前にして、賞賛の言葉をかけるイグニスの姿は、自信に満ちた王者の風格と言えたかも知れない。
だが、この人馬宮ガイセリウムの戦いの中で、イグニスと『死神』を巡る奇妙なつながりを感じていた者達にとっては、どこか不気味さを感じさせるものでもあった。
「しかし残念ながら、私は諦めが悪くてな。最後の最後、指一つ動かなくなるその時まで、死に物狂いで足掻かせて貰うとしよう」
ゆっくりと立ち上がったイグニスは、
「我が力の前に……爆発して果てろ!!」
手を握りしめると共に、ケルベロス達の周囲を炎と爆発が覆い尽くす。
「王子様だというのに、強いわね……!!」
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)は、煙と炎の向こうにいるイグニスの姿に目をこらす。
同じ王子でも、第一王子ザイフリートとは比べ物にならないほどに高い戦闘力だ。
ザイフリートが、エインヘリアルの中で冷遇されていたのも頷ける。
炎と煙の向こうに浮かぶイグニスの姿は徐々にゆらめき、まるで実体を失って膨れ上がってゆくかのような錯覚を覚えさせた。
凝縮された悪意が、彼を闇と炎の化身が如き姿に幻視させているかのようだ。
「恐れぬならば、このイグニスを打ち破り、力を示すがいい!」
イグニスの声に奮い立つようにして、ケルベロス達はそのグラビティを次々と繰り出していった。
シャイターン達が身を挺してイグニスを守り、そして視線一つで生まれる炎が、イグニスへと飛ぶ攻撃を阻んでいく。
だが、その炎を突き破った攻撃は、次第にイグニスへと届き始める。
「ハハハハ! 良いぞケルベロスよ! 私に貴様達の手で『死』を与えてみせろ!!」
まるで痛みを楽しむかのように叫ぶイグニス。
彼の元へと、ペトラはナイフを手に切り込んだ。
ナイフの切っ先が炎を断ち、そしてペトラの指先が、空中に三日月を描き出す。
「この距離……避けられるかしらぁ?」
ペトラが言ったかと思うと、空中に描かれた三日月は黄金の輝きを放つ魔法弾として化した。そして三日月型の弾丸は、避ける暇すら与えずイグニスへと高速で放たれる。
ペトラが修めたインスタントマジックの一種、『三日月は空を舞う・改』。
サキュバス用に改造を施された星辰魔術が生んだ弾丸は、炎と煙を突き破り、エインヘリアル第五王子の心臓を貫いていた。
イグニスの喉から、血が溢れ出す。
「全ての力を尽くし、納得のゆく敗北を得た。……これ以上無き、良い人生であった」
戦いの終わりを惜しむように言うイグニスの体が、灰のように崩れ落ちていく。
「私はこれで死ぬ。だが、悲しいかな、いずれまた、私はお前達と出会う事となるだろう……その時、『私』は『今の私』ではないが……」
「待ちなさい、それ、どういうこと!?」
ペトラの声に、薄い笑みを浮かべたまま、第五王子イグニスの姿は完全に消滅した。
そして人馬宮ガイセリウムの機能が完全に停止していく。
消えゆくガイセリウムの灯は、ケルベロス達が東京を守り切ったことを、世界中に伝えていた。
→有力敵一覧
→(13)カウス・ボレアリス(17勝6敗/戦力150→0/制圧完了!)
→(19)イグニスの天空神殿(64勝7敗/戦力1000→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。