リザレクト・ジェネシス ファーストアタック

宝瓶宮グランドロン

<リザレクト・ジェネシス ファーストアタック>

 死神による十二創神の蘇生(サルベージ)。
 そして、ダモクレスによる晴海埠頭要塞の出現と東京湾北部のマキナクロス化。
 2つの事件の影響を受け、東京湾沿岸部の住民達は、大規模な避難活動を強いられていた。

 東京都民は東京防衛戦で滅ぼされかけたり、昨年も『ジュエルジグラットの手』の出現に伴うドリームイーターとの戦争のために避難を強いられていたりしていたため、そこまでの悲壮感は無い。
 だが、それでも住居や労働の場を離れざるを得なくなっている人々の数は膨大だ。
 大規模な経済活動の停滞が、人々に不安を招きつつあることは否めない。
 ケルベロスは、応援する人々の声にそれを感じながら、戦いの場へと向かっていく。

●(16)浮島ジャンクション

 エインヘリアル第二王女ハールと、その母である側妃ハイレインが抱えるフェーミア騎士団は、女性エインヘリアルだけを集めた騎士団だ。
「元々はアスガルドとユグドラシルの境界線付近で、攻性植物相手に切った張ったをしている騎士団か……」
 女性だけの華やかさと裏腹に、侮るべきでないという事実はその一事をとっても分かる。
 大量に陣地を設けたり、結界によって侵攻を遅らせているのも、ザイフリートやイグニスの敗北については研究した上でのことなのだろう。
 ケルベロス・ウォーが抱える時間制限という問題点を突こうとしているのは、ハール達も、死神達も大差がない。

 だが、その精鋭達も奇襲されれば、即座に対応とはいかないのだった。
「聞いていたよりも、早い……」
 浮島ジャンクションへと攻め込んだ金糸雀師団に対し、この地点の守りを命じられていた機甲騎士エルフィーアは驚きと共に迎撃を命じる。
「突撃せよ。奴らに橋頭保となる地を確保させるな!」
 威勢の良い命令の声を飛ばすと共に、エルフィーアもまた走り出す。
 だが、ほとんど前触れもなく攻め込まれたことで、騎士団員が浮足立っているのを、金糸雀師団のケルベロス達は感じ取っていた。
 部隊長の命令に従い、ケルベロス達へと突撃して来る騎士団。
 女性ばかりとはいえ、こちらの1.5倍の身長を持つ相手だ。
 アスガルドを攻性植物の侵攻から守る役目を負った者達。その力を示すかのようだった。

「止んだ濤声 四季に萌月 仰いだ天に契るは 真紅の生命――」
 怒涛のような進撃に、コマキ・シュヴァルツデーン(翠嵐の旋律・e09233)の歌声が響く。
 魅了された敵の足が止まる。
 ケルベロス達は、その眼力からエルフィーアの存在をたちまち見て取っていた。
「指揮官が前線に出て来てくれるなんてね!」
「私は突撃担当。突撃役が後ろに引っ込んでたら、部下達に示しもつかないというものよ」
 言葉は冷静ながら、エルフィーアの思考は突撃に傾いているようだった。
 ルーンで強化された円形の盾でケルベロス達の攻撃を受け止め、槍を構えて突撃する。
 その繰り返しだ。
「貴様は完全に包囲されている。無駄な抵抗はやめろ!」
「無駄かどうかは、私が決める……!」
 リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が引き金を引く。
 エルフィーアは自分に当たらない銃弾に怪訝な顔をするが、その攻撃は威嚇だ。エルフィーアを守ろうとしていたエインヘリアル達の動きが遅滞され、その隙に大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)の放った時空凍結弾が、彼女にとどめを刺している。
「総員撤退、団長に合流せよ……!!」
 最期にそう指示を出すと共に、エルフィーアの体は消滅した。
 ルーンの刻まれた盾が、彼女の体と共に砕け散る。

●(17)東京湾アクアトンネル

「持ち込んだ通信機器、やっぱりまるで使えなくなっているね」
 ノル・キサラギ (銀花・e01639)は、持ち込んだ通信機器がまるで使えなくなっていることを確認し、その使用を諦めた。
 東京湾マキナクロスは、無線通信に甚大な影響を及ぼしている。
 通信が重要な航空機の運航において、この現象は特に深刻だった。
 目隠しされた状態で飛ぶようなものだ。
 ケルベロスが抑えている羽田空港も休業状態だ。今、東京湾付近をまともに飛ぶことができるのは、人造サーヴァントでもあり、ヘリオライダーの意志で飛ぶヘリオンぐらいのものだろう。

 黄鮫師団がいるのは、東京湾に浮かぶ川崎人工島だった。近くには、海ほたるが見えている。
「それじゃ、いこうか」
 スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)は、人工島の避難設備の扉を開けた。
 川崎人工島の上部にある『風の塔』は、東京湾アクアトンネルの換気設備となり、避難設備でトンネルのほぼ中間地点とつながっている。
 出入口が浮島ジャンクションと海ほたるに限定され、しかも海底という極めて攻めにくい場所にいる騎士団長のレイラトゥー。
 彼女を討ち取るため、黄鮫師団はドワーフを先頭に、避難設備を行く。
 避難通路は天井も低く、身長の高いエインヘリアル達にとっては警戒も難しいだろう。
 ここから侵入すれば、エインヘリアル達に気付かれることなくトンネルに奇襲をかけられるはずだった。

「本当に来やがった……迎撃態勢、構築急げ!!」
 だが、黄鮫師団の侵入に、騎士団長レイラトゥー率いるエインヘリアル達は、即座に迎撃を開始していた。
「気付かれていた……? どうやって?」
 アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)の疑念に、大剣を振るう一際強いエインヘリアル……騎士団長であるレイラトゥーが応じる。
「いや、正直ヤバかった。軍師殿様様だな」
「……海ほたるにいる軍師チハヤが気付いて、トンネルの海ほたる側入り口から伝令を送ったか」
 アルトゥーロは、敵が迎撃態勢を整えつつあった理由を理解した。
 川崎人工島から海ほたるは見える。逆も同様だ。
 仮に海ほたるにも奇襲を仕掛けていれば、敵のその対応に追われていたかもしれないが、海ほたるの敵勢には余裕があった。
「だが、相手も完全に態勢を整えているわけじゃない。やろうぜ!」
 相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)が、初手を潰され揺らぐ仲間達を鼓舞する。
 伝令とケルベロス達の突入の時間の差は僅かだった。
 決して短くないトンネルを守るエインヘリアルの態勢は、まだ完全に整っているわけではない。

 ケルベロス達は確実に敵戦力を削っていった。
 だが、東西の両戦場に繋がる経路を潰すための部隊を動かせなかった影響はしばしの戦いの後に現れた。浮島ジャンクションからエインヘリアル達が大挙して押し寄せて来たのだ。
「エルフィーア殿、戦死! 団長、ご指示を!」
「チ……死ぬまで突撃することもなかろうが。海ほたるまで退くぞ!」
 部下を悼むように一瞬瞑目すると、レイラトゥーは、騎士団員達をまとめあげる、迅速に海ほたるへと後退していく。
「追っても倒せそうにないね……。いつ戦いになってもおかしくない場所だし、確実に確保しておこう」
 スノーエルの言葉に、他の師団員達も同意を示す。アクアトンネルを確保したケルベロス達は、海ほたるの敵とのにらみ合いを続けることになった。

●(26)八景島


 テーマパークで有名な観光人工島、八景島。
 この島を制圧しているのは、フェーミア騎士団副団長の一人にして、レイラトゥーに次ぐ実力を持つという槍聖将アイシアだ。
 彼女を撃破するべく、蒼鴉師団と緋色蜂師団の2師団は、一斉に突入を開始していた。

 南西部の桟橋を警備していたエインヘリアル達を襲ったのは、海中からの攻撃だった。
「敵襲!」
「流石に反応が早い」
 叫び声をあげたエインヘリアルへと、玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)の『猫』が飛びかかる。一瞬攻撃の手を緩めた敵を、陣内の後から上がってきたケルベロスが打ち倒す。
 他の場所でも同様の光景が繰り広げられていた。

 蒼鴉師団は西と南の海から、緋色蜂師団は北の橋梁部から。
 アイシアの脱出経路となりうる場所は、次々とケルベロスによって抑えられていく。
「こちら側でアイシアの目撃情報は今のところありませんね。緋色蜂師団の側でしょうか……」
 フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)が呟いた時、遠くで信号弾が上がった。

 当初、アイシアがいたのは島の中央部だった。
 彼女は遭遇した緋色蜂師団は、一時の交戦ですぐに撤退されたのだが、既にその時には、緋色蜂師団の兎塚・月子 (蜘蛛火・e19505)がウォンテッドを使用していた。
「よし、と。それじゃ、後はよろしく!」
 月子はすぐさま信号弾をあげ、蒼鴉師団にアイシア発見を伝えると共に、アイシア討伐部隊を乗せたライドキャリバー部隊にそれを渡した。アイシアの顔が描かれた手配書を持ったライドキャリバー部隊が、一斉にテーマパークを走り始める。
「アイシア様をお守りしろ!」
「邪魔はさせないんだよ! ――リミッター限定解除! 廻れ、廻れ、夢現よ廻れ!」
 エインヘリアル達が追跡を妨害しようとするが、七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンエンド・e15685)は仲間達を癒し、その妨害しようとする者達を撃破にかかる。
 ウォンテッドで作られた手配書は、10分もすれば効果を喪ってしまう。せっかく発見したアイシアを逃すまいと、ケルベロス達もまた必死だった。

 そうして、ケルベロス達がアイシアを追い込んでいった先は、南東部のヨットハーバーだった。
 だが、南から侵攻した蒼鴉師団は、既にここでの戦いを開始していた。
 そうと気付いたアイシアは、思わず渋面を作る。
 追跡して来た緋色蜂師団が、彼女へと声を向ける。
「側妃ハイレインへの足がかりを明け渡して逃げるとは、なるほど、それが副騎士団長殿の意思か!」
「思った以上にこちらの内情に精通している。予知能力も使う者次第では侮れないわね」
 予知能力があってもまるで活かせなかったザイフリート王子のことも知っているのだろう。だが、その一瞬の思考の隙をついて、金属の鎖が、アイシアの腕に巻き付いた。
「鎖よ。繋げ!」
「しまった……」
 悔やむアイシアの視線の先、鎖が伸びる源は、黒住・舞彩 (鶏竜拳士・e04871)の腕だ。
「逃がすわけには、いかないわね」
「……撤退しようなどと、弱い考えでいたのが悪いのかしら」
 アイシアは諦めたようにいうと、その手にした槍を構える。随伴する騎士団員達もまた、死に物狂いで抵抗を開始した。
 だが、2師団の総力を投じた攻撃に、護衛達は次々と倒れていった。
「ひふみよいむな。葡萄、筍、山の桃。黄泉路の馳走じゃ、存分に喰らうてゆかれよ」
 そして端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)の放った銃弾が、アイシアの眉間に突き刺さる。
「しまった……ペルセウス様、どうか、後のことはお任せします……」
 そう末期の言葉を残し、副団長アイシアの姿は消えていった。ルーンの刻まれた槍が、音を立てて砕け散る。

●(30)東京湾観音

 千葉県大坪山の山頂に立つ東京湾観音周辺には、竜霊術士ラミリア率いる部隊が展開していた。
 背丈もエインヘリアルにしては低く、年若く見えるが、デウスエクスの実年齢を外見から推し量るのは難しいものだ。
 観音像を目指す道を進軍していくのは、黒猫師団だった。
 隠密性など考慮に値しないと言わんばかりの勢いで、最初からグラビティを全力で叩きつけていく。爆音が響き渡ると共に、エインヘリアルの守りは確実に削られていった。

「遍く日影降り注ぎ、かくも美し御国を護らんが為、吾等が命を守り給え、吾等が力を寿ぎ給え」
 黒猫師団では綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)が前線に立ち、傷ついた仲間を癒し、前線へと送り出していた。その戦いの中、山頂へと視線を向けた鼓太郎は、ドラゴニアンのような翼をもつ魔術師の姿を目撃する。
「連絡を出す!!」
 ディークス・カフェイン (月影宿す白狼・e01544)により、ラミリア発見を知らせる青い信号弾が、空に打ち上げられる。

「気付かれた……と思った方が良さそうだな」
 これまでにない信号弾の発射。
 ケルベロスが最大の目標……つまりはラミリアの位置に気付いたのだろうと、彼女は(実際のところその通りであったが)判断していた。
「ルーンを破壊されるわけにはいかない。撤退一択だな」
 黒猫師団が攻め寄せているのは片側からだ。逆側から逃げることはできる。
 だが、その事実にも、危険な予感を既にして感じ取っていた。
「……あからさまに陽動だが、あの勢いでは守りを下げれば一気に私のところまで突破される……詰んだか?」
 顔をしかめながらも、ラミリアは逆側の山裾からの撤退判断を下さざるを得ない。
 ラミリアを守るのが最優先であることは騎士団員達も分かっているため、彼女が撤退しても黒猫師団と戦う騎士団員達は粘っている。
「狙い撃ちにされないぐらいに距離をとってしまえば、あとは飛んで移動すれば良い。問題は、間に合うか、だが……」
 その判断は、しかしケルベロス達の読むところだった。
 山側から、銀狐師団が現れたのだ。

「やはり、伏兵……!」
「基本だからこそ、有効というものだよ!」
 ラミリアに向け、セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)が叫ぶ。
 黒猫師団の動きに合わせ、反対側から昇って来ていた銀狐師団。
 ここまで徹底して身を隠すことができていたのは、やはり陽動あってのものだ。
『二人心を合わせれば、その一撃は金を断つ!! 連携奥義断金一式!! 疾風迅雷!!』
 神宮寺・結里花 (雨冠乃巫女・e07405)の雷とユーフォルビア・レティクルス(e04857)の風。
 2人の放った雷をまとった竜巻が、山裾を駆け抜け、ラミリアに随伴していたエインヘリアル達を巻き込み、一気に蹴散らしていく。
 そして銀狐師団のケルベロス達からの一斉攻撃が、ラミリアへと飛んだ。
「ここまでか……団長、後を頼むぞ」
 倒れたラミリアの胸元で、ルーンの刻まれた石が砕け散った。

●(39)大浦海水浴場

 大浦海水浴場へ向け、無数のエンジン付きゴムボートが向かっていく。
 デウスエクス側も、ゴムボートには少数のケルベロスしか乗っていなかったことは把握している。乗っていた飛行できるケルベロスがゴムボートの撃破に合わせて飛び立ち、海上を飛び回っているのを死神達が狙い撃ちにしているが、それが主力でないのは明白だ。
「どういうつもりかしら?」
『湧泉の死神』アレトゥーサは警戒態勢を強めるよう命じながらも、不審なものを感じながら分身体を作っていた。
 自らの体を水に変え、振りまくことで分身体を生み出す。それが、彼女の能力だ。
 そして、その疑念が正しかったことを示すように、ケルベロスへの対応のため海側に集まっていた死神アメフラシの一体が撃破される。
 海から続々と上がって来るのは、白馬師団だった。
「ケルベロス……海から? わざわざ泳いで来たの? どこから? この冬に?」
 予想外のケルベロス達の動きは、アレトゥーサにも困惑を招いていた。

「巡り廻れ、癒しの力。捉え捕らえよ、敵方の姿……って寒っ」
 ゼルガディス・グレイヴォード (白馬師団平団員・e02880)は、グラビティ『癒慧香炉』を使う共に、思わず身を震わせた。グラビティが起こした風は、濡れた体には冷たく感じられる。
 多くの者が水中呼吸を使用し、行動に支障もないのだが寒中水泳のためにケルベロス達の体は冷え切っていた。
 それでも問題なく戦えているのは、ケルベロスの身体能力を示していると言えただろう。
 白馬師団主力は、一旦ヘリオンで大浦海水浴場と宮川湾の中間地点にある江奈湾にヘリオンで移動し、そこから海に潜って岬を回り込み、大浦海水浴場へと入り込んでいた。
 東京湾マキナクロスの影響を警戒し、アナログな連絡手段や光などでの補助を豊富に用意していたこともあり、脱落した者もいない。
「戦場からはあまり離れていないですし、途中で発見されなくてよかったですね……」
 パウル・グリューネヴァルト (森に焦がれる・e10017)はそう思う。
 賭けに等しいと言えたが、ゴムボートによる陽動も効果はあったのだろう。
「敵が既に集団戦に向けた警戒態勢をとってしまっているのは、まあ狙い通りですか」
 死神達やアレトゥーサの分身体が向かって来るのを見て取り、ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)は目を眇める。

 と、白馬師団の目に、南北の敵がいきなり撃破される光景が映った。
 アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)の声が響く。
「相手の目は海に向いています! 今のうちに!」
 南北の高台の裏手から接近した灰色狼師団は、確実に死神達に攻撃を仕掛けていった。
 元より冥府の海(デスバレス)出身の死神達の中には、海洋生物型や海中戦闘に適応している者も多い。海中に逃げられれば厄介なことになったかも知れないが、白馬師団の海からの奇襲は、その可能性をうまく潰していた。

 死神達は、次第に西側方面へと追いやられ、その数を減らしていく。
「こうなれば、キュー姉様のところへ退くしか……?」
 アレトゥーサは何体もの分身を盾とし、撤退を図ろうと、両師団を相手に決死の抵抗を続けていた。だが、その撤退に、社守・虚之香 (宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)が追いつく。
「みんな、しっかりして!」
 応援の言葉そのものをグラビティとする虚之香によって、体力を回復させたケルベロス達は、アレトゥーサへと次々に攻撃を繰り出していく。
 分身体が次々とはじけて水へと戻り、そしてセレネー・ルナエクリプス(機械仕掛けのオオガラス・e41784)がアレトゥーサへと飛んでいく。
「カラスの芸は、闇に舞うだけじゃないっ!」
 黒い地獄の炎を噴出して加速したセレネーは、一瞬でアレトゥーサへの距離を詰める。
 放たれる迎撃の水、刃のように鋭い。
 だが、砂浜に突き刺すようにして振り下ろした爪先が、セレネーの速度を急変させる。
 一気に速度を落としたセレネーがかがめた体の上を水刃は行き過ぎ、振り上げた剣がアレトゥーサの胸に吸い込まれた。
「そん……な」
 弾け、水と散ったアレトゥーサの姿に、ケルベロス達の快哉があがる。

●(40)鋸山

「そういえばノコギリザメというのもいましたね」
 八刻・白黒 (星屑で円舞る翼・e60916)は、そんなことをふと思い出していた。
 視線の先では、死神の群れが、鋸山を取り巻くように展開している。
 ブルチャーレ・パラミータとメラン・テュンノス、ザルバルクやネオスチルスといった、魚型の死神達だった。

「では……いきましょう」
 タイムキーパーを務める白黒の合図に合わせ、紫揚羽師団は鋸山へ向け突撃していく。東京湾に面した西ではなく、その反対側からだ。
 良質な石材の産地として、江戸時代から盛んに採石が行われていた鋸山。
 その山肌に露出した岩は、まるで鋸の歯のような、鋭い断面を見せている。
 飛行が可能な死神達の目を逃れるべく、数々の防具特徴を駆使し、ケルベロス達は木々の間を駆け抜け、山を登っていった。
「気付かれた!」
「行くぞ、戦闘開始だ!!」
 急降下してくる死神達。
 海を臨む山の中で、死神達とケルベロスとの戦いが幕を開ける。

「ネレイデスの一員でもないのですが、ドラゴンとの繋がりがあるからと、このような場所に引きずり出されるとは……」
 迎撃の指示を送りながら、星屑集めのティフォナは首を振った。
 果たして、ケルベロス達は気付いているのだろうか。
 彼らパイシーズ・コープスと、獄混死龍ノゥテウームとの繋がりに。
「ドラゴンの方も、ネレイデスを見限り始めているようですが、プロノエーさんはどうするつもりなのでしょうね」
 そう呟きつつ、海の反対側を見る。
 上空の死神達が、不意に撃破されたのは、その時だった。
「──ッ!?」
 上空を振り仰いだティフォナの目に、山へと飛び降りて来るケルベロス達の姿が映った。

「行け、突破しろ!!」
 タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)の声が、降下していくケルベロス達の耳に届く。
 紫揚羽師団が上空から降下させたのは、精鋭部隊だった。
 飛行可能な死神達が迎撃に上がって来るのとすれ違うようにして、彼らは山頂に降り立つ。
 先のお台場での戦いでは、ケルベロス側の戦力不足もあり、彼らを退けたティフォナ。
 だが、今は全世界決戦体制の力を受け、師団員達の力も増している。
 苦戦を強いられたパイシーズ・コープスも、易々とはいかないまでも、互角以上に戦うことができていた。
「これは……。プロノエーさんにはすみませんが、これ以上付き合ってはいられませんね」
 不利を悟り、
「追う必要は……無いか」
「ああ。まずは制圧を優先しよう」
 パイシーズ・コープスとも比較にならないぐらいに強いことは見て取れる。
 ここは制圧を優先すべきだろうという判断のもと、紫揚羽師団はティフォナを無理に追うようなことはしなかった。やがて、指揮系統を喪失した死神達を駆逐し、ケルベロス達は鋸山の制圧に成功したのである。

<ファーストアタック結果>

●制圧した地域

(16)(17)(26)(30)(39)(40)
の6地点を制圧しました。

●撃破した有力敵

(16)で機甲騎士エルフィーアを撃破しました。
(26)で槍聖将アイシアを撃破しました。
(30)で竜霊術士ラミリアを撃破しました。
(39)で『湧泉の死神』アレトゥーサを撃破しました。

●撤退した有力敵

(17)の巨人殺しのレイラトゥーは、残存戦力と共に(18)に合流しました。
(40)の星屑集めのティフォナは、戦場から撤退し姿を消しました。

●『大ルーン結界』

 エインヘリアルの有力敵を『3体』撃破しました。
(27)宝瓶宮グランドロンの攻略には、エインヘリアルの有力敵あと『5体』の撃破が必要です。

●マップ更新

 ファーストアタックの結果により、マップと戦場説明が更新されています。
 →リザレクト・ジェネシス