■第4ターン結果
●最上・幻襄
「幻斎は逝ったか。奴ならば儂をも越え、最上忍軍を支える主柱となれたであろうに」
最上の鬼刀たる最上・幻斎の死の報を受け、彼を失ったことを惜しむように言うゲンジョウ。外見上は同年代と見えるマスターテングも、彼の無念を慮るように言う。
「逸材を喪うのは悲しいものだ。だが、お主ならば再び優れた弟子を育て上げることも出来るであろう。通信教育で逸材を探すのも良いものだぞ」
自身の取り扱っていた通信教材を取り出して見せるマスター・テング。
最上・ゲンジョウは天狗面から目を逸らすと、話を変えるように言った。
「……何にせよ、まずはこの場を乗り切らねばなるまいな」
「ケルベロスか。……儂の目にはさほどの脅威とも思えなんだが」
「だが、それが故に勝利を得て来ていることもまた事実よ」
「ならば再び、見定めるとしよう。奴らの力の程をな」
幾多の隠密活動と戦場を越えて、老齢の忍び2人は、頷きあい、戦場へ向かう。
もはや振り返ることはなかった。
「お主らの力、儂に見せるがいい!!」
言樺・奈央(行屍走肉・e36516)は、ゲンジョウが二刀を構える姿を目にした。
もはやここが死地と心得ているのだろう、最上忍軍の頭領たるゲンジョウは、自らケルベロス達を切り崩さんと果敢に攻めかかって来ている。
「統合した軍って、結構厄介に成る事もあるからねー。君達には此処で終わって貰おうかな!」
レプリゼンタ・カンギに仕えるカンギ戦士団のように、デウスエクス同士の混成群は厄介な存在になることもままある。勅忍となるにせよ、彼らの存在は看過できるものではない。
奈央の言葉に、ゲンジョウは彼の方を見た。
「その仮面、テング党かと思えば、ケルベロスか。なるほど、変装しての潜伏とは考えたものだ」
「いやあ、違うんだけど。あんまり一緒にして欲しくはないかなぁ……」
近くにいた天狗党員が驚いたような仕草を見せている。勘弁して欲しい。
「いずれにせよ、儂の前に現れたからには、切り捨てるまでよ!!」
「おっとっと……!」
ゲンジョウの刀をなんとか受け止めた紳士御用達のステッキの表面に、一瞬にして無数の斬痕が刻まれる。
気を抜けば一瞬でやられる。
その判断の元、奈央は鳥羽の如きマントを翻した。
マントが切り裂かれ、無数の切れ端となるまでの時間は一瞬。
しかしゲンジョウが気付いた時には、奈央は充分な距離を稼いでいた。
マントをまた特注しなくては、と思いながら、奈央は朗朗と詠唱を紡ぐ。
『誰も居無い森で鴉が鳴いた時、其の鳴き声は果たして本当に鴉なのだろうか。
――あれ?そして、誰が居無く成った?』
漆黒という言葉よりもなお深く黒い、鴉の羽根が次々と飛ぶ。
刃の如き鋭さで、ゲンジョウを取り囲んだ。
「猪口才な!」
ゲンジョウの刀が閃き、一瞬にして羽は霧散する。
だが、それでも目をくらませるだけの時間は充分に稼いだ。
舞い散る羽の中を突き進んだ奈央は、手にしたステッキの石突きが、ゲンジョウのみぞおちを貫いた。
●マスター・テング
最上忍軍狗党を率いるマスター・テングは、その筋骨隆々とした肉体を晒しながら螺旋大伽藍の通路を跳び回っていた。
着地のたびに重い音が響き、そしてその身はケルベロス達を目掛けて跳躍していく。
拳が迸り、そのたびにケルベロス達の守りが吹き飛んでいく。
「ふむ……確かに以前よりはやるようだ」
拳の手ごたえを確かめるようにマスター・テングは呟く。
「リベンジに来たぜ……今度こそ俺達が勝つ!」
「ソルさん、お手伝いしますわ」
ソル・ブライン(ファイヤーソルブライン・e17430)ら、以前にマスターテングに無残な敗北を喫し、雪辱に燃えている者も戦場には散見された。
ルナール・クー(煌炎・e10923)は、ソルを支えようと並び立つ。
「ならば見せてみるがいいコワッパども! 貴様らの『本当の力』とやらをな!!」
弟子達を伴い、マスター・テングはケルベロス達との乱戦に飛び込んだ。
ケルベロスはマスター・テングの配下達を予想を上回る速度で駆逐していく様に、マスター・テングは天狗面の下で舌を巻く。
全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)を発動した今、ケルベロス達の力は通常を大きく上回っている。
「なるほど、貴様達の力、すなわち経済力か!!」
「地球全てを敵に回しているのと同じことです」
「テング空手の通信教育もワールドワイドに展開しなくてはなるまい」
覚えておこう、と言いながら、マスター・テングは丸太のような脚を一閃させた。
回し蹴りに巻き込まれたケルベロスが吹き飛ばされ、余波がルナールの髪を揺らす。
「ご覧あそばせ」
ルナールの纏う怨念の集合体「花海棠」が、まるで死んだテングズを映し出すかのように多数の鴉へと変化する。
群れとなった鴉はマスター・テングへと次々と喰らいついていった。
鴉の群れに啄まれながらも、マスター・テングの体は揺るがない。
だが、その動きが止まる隙を、ルナールは、そしてソルは見逃さなかった。
「この焔は燃え滾る我が魂の具現、万象全てを焼き尽くす熱き血潮の具現なり!」
ソルがマスター・テングの体をさらに抑え込むように突進する。
鋼の如き拳が瞬く間に繰り出され、鴉たちごとソルの体を突き破る。ソルがそれを耐え凌ぐ間に、ルナールは散らばった鴉たちを再び手元に凝縮する。
「これで……!!」
ソルが飛び退いた瞬間、放たれたルナールの気咬弾がマスター・テングの胸板を貫いた。ぽっかりと空いた穴を一瞬、不思議そうに見つめたマスター・テングは、
「油断とはいうまい。これもまた戦の常よ。サラバ!!」
末期の言葉を残して爆発四散、弟子達の後を追い、この世から消えるのだった。
→有力敵一覧
→(4)ペンプ・オグ&ナウ・ソーン(2勝1敗/戦力500→390)
→(7)最上・幻夢&ダウ・ガル(5勝2敗/戦力1030→760)
→(9)星喰いのアグダ(3勝2敗/戦力530→360)
→(11)最上・牡丹&亜紗斬(1勝1敗/戦力1300→1240)
→(12)詠み謳う煌然たる朱き社&合成獣(14勝2敗/戦力1050→330)
→(13)最上・幻襄&マスター・テング(38勝5敗/戦力1300→0/制圧完了!)
→(15)イグニス(2勝4敗/戦力1283→1143)
→重傷復活者一覧
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■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。