日本列島防衛戦

■第2ターン結果

●(17)冥王イグニス

 ファーストアタックからの攻勢によって、強引に道を切り開いたケルベロス達は、冥府の海に通じる渦の上に立つイグニスに向け、小剣型艦載機群を足場にしての波状攻撃を仕掛けていた。
 小剣型艦載機群の速度はヘリオンの数倍であり、その突破力は、冥王イグニスであっても脅威となる筈だ。

「さて、イグニスの戦力はおおよそ半分といった所ですか。このままなら、この攻撃でご退場願えそうですね」
 矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)は、彼我の戦力差を確認して、戦場の勝利を予見した。
 だが、その事実が、優弥に疑問を抱かせていた。
「わからないのは、イグニスの目的ですか……。死神が、この戦争で殺されたデウスエクスのサルベージしようとしている事は判っていますが、イグニスならば、それが不可能なことは判っていた筈です」
 死神の勝利条件は、戦争終了時まで冥王イグニスの戦場が制圧されない事であるが、ケルベロスがイグニスを最優先で叩きに行くのは、これまでの経緯から必然。
 そして、その必然は、イグニスもまた理解している筈なのだ。
「それなのに、この程度の戦力で、戦争の決着がつくまで生き延びて、竜業合体ドラゴンのサルベージが行えると考える筈は無いでしょう」
 優弥は、今回の冥王イグニスの動きについて、そう推察していた。
「ならば、この死神の動きは陽動の筈です。普通に考えれば、ケルベロスがイグニスに向かって戦力を振り向ける事で、竜業合体ドラゴンによる地球の破壊を望んでいるという事ですが……」
 しかし、その可能性も低い。
 もし、それが目的ならば、戦力を小出しにする必要は無く、ドラゴン勢力を援護する為に、最大の戦力を投入すれば良いのだ。
「考えられるとすれば、ケルベロスと聖王女が接触するのを妨害するか、或いは、別の目的があるか」
 優弥は、イグニスの行動を訝しみながらも、死神の陣地へと攻め込んでいく。

 死神の軍勢は、冥王直率とは思えない弱敵であり、優弥は更に疑惑を強める事になるが、戦いはケルベロス優勢に推移する。
 そして、残る敵は冥王イグニスのみとなった時、優弥はその疑惑をイグニスにぶつけた。

「あなたには、聞きたい事が沢山あります」
 ケルベロスコートを翻してそう告げる優弥。だが、冥王イグニスは、周囲のケルベロスの動きを見ながら、半歩後ろに引く事で応えとした。

「答える気は無いと言う事ですか? 冥王イグニスは『死なない』というのに、何を怖れているのでしょう」
 その半歩の後退に、イグニスの怯懦を見て取り追及する優弥に、イグニスは仕方がないというように口を開いた。

「どうやら、万能戦艦ケルベロスブレイドとやらを見誤ったようだな。ザルバルク剣化波動とは、厄介な力を持つ」
 イグニスはそう優弥に告げながらも凍てついた炎で、周囲のケルベロスを薙ぎ払った。
 だが、その攻撃は、思ったよりも強くは無い。
 良く見れば、イグニスの足下の海面では、波が剣に姿を変えようとして破壊されるという現象が断続的に発生している。
 そして、その海底には、破壊された剣が積み重なり堆積していた。

「なるほど、デスバレスから無数のザルバルクを召喚して武器として使うつもりでしたか? それがケルベロスブレイドにより剣化してしまえば……」
 冥王イグニスは戦場における単独戦力としては、おそらく最強の部類であろう。
 だが、周囲をケルベロスとザルバルク剣化波動によって生成された剣に囲まれてしまえば、その強さを十全に発揮する事は出来まい。
 優弥は、今こそ、冥王イグニスを滅ぼす絶好の機会であると認識すると、ビハインドのミズキと共に、一気呵成に冥王イグニスに肉薄する。
「いまここで、イグニスを仕留める!」
 その優弥の気迫に、周囲のケルベロスも感応し、全周囲からの攻撃がイグニスを襲い、ミズキの念の攻撃でイグニスが大きく切り裂かれた。
 切り裂かれたイグニスの体から、暗色の液体が零れ落ちると同時に、その液体は、剣に変化し、その傷口を広げんとする。

「この程度で、私は死なぬよ」
 イグニスは、その剣を捻じ曲げると海に捨て、傷口に手を触れそれ以上の出血を防ぐが、その表情から余裕が失われていた。

「今のは、ザルバルクの剣化? ということは……冥王イグニス、あなたの正体はザルバルクと言う事ですか?」
 優弥は、今発生した現象から類推される事実に驚愕しつつも言葉を放った。
 だが、彼は自分の言葉と、周囲で起きる現象から、引っ掛かりを覚えていた。

「巨大魚型のザルバルク。ザルバルク剣化波動の影響を受けた海。
 ……そしてイグニスの肉体もまたザルバルク。
 つまり、ザルバルクとは『形を変える存在』で……本質は『水』なのですか!?」

 冥王イグニスが『冥府の海の水(ザルバルク)』の集合体であるというのなら、この戦争で殺す事ができないという予知にも、説明がつくだろう。
 そして、冥王イグニスが死神の王である理由すらも……。

 イグニスは、自らの力の本質をケルベロスに知られた事を察して眉を顰めるが、それでも、自らの優位を占めそうと口を開いた。

「そうだ、全てのザルバルクは、冥王イグニスとなりえる。つまり、デスバレスの海ある限り、私が滅びる事は無い。たとえ、この場でこの私の体を滅ぼしたとしても、別のザルバルク達が新たな冥王イグニスとなるだけだ」
 敗北が必至の状態の中、イグニスはそう嘯く。

「それがどうしました? つまり、全てのザルバルクを滅ぼせば、滅ぼす事が出来るという事でしょう。殺し方が判れば、ケルベロスは神だって殺して見せますよ」
 優弥の言葉と共に、イグニスを囲むケルベロス達がイグニスに集中砲火を浴びせる。
 イグニスの体はケルベロスの攻撃に穿たれ、その千切れた体は剣に変わり海へと落下し続ける。

「全てのザルバルクを滅ぼすか。ケルベロスならば、それも成し遂げうるだろう」
 これまで幾度となくケルベロスとの交戦で死を迎えたイグニスは、実感の籠もった声で言った。ケルベロスの攻撃によって、崩壊するイグニスの背後から、ビハインドのミズキが彼の心臓を大鎌で刺し貫く。

「……故に、私はその前に手を打たせて貰う。
 私は、この地球の海全てをデスバレスの海へと変える。
 私が意味も無く、この地でお前達と戦ったとは思わぬ事だ」
 そう宣言すると、イグニスは体の全てを剣に変え、海へと落ちていった。

「地球の全てをデスバレスの海とする? まさか、この戦争に乗じて、そのような恐ろしい作戦を?」
 優弥は、イグニスの最後の言葉に戦慄するが、いまはまだ目の前のドラゴンとの戦いに集中すべきと意識を切り替えた。
 竜業合体ドラゴンを滅ぼさなければ地球が破壊されるのだから、目の前の危機を無視する事は出来ない。

「ドラゴンによる地球崩壊の危機も、地球の海をデスバレス化する死神の陰謀も、全て、私達ケルベロスが防いで見せます」
 そう心に誓い、優弥はミズキと共に、次の戦場に向かうのだった。

→有力敵一覧

→(2)漆剋竜アマデウス(0勝1敗/戦力1265→1255)

→(4)楽園竜パラディシカ(0勝1敗/戦力865→855)

→(5)レスタシア(2勝0敗/戦力325→75)

→(6)大罪竜王シン・バビロン(1勝0敗/戦力2000→1875)

→(7)暴風竜ボレアス(1勝0敗/戦力1250→1125)

→(8)魔竜アストラ・ワイズ(1勝0敗/戦力700→575)

→(11)空中戦艦レナト・クエリア(1勝0敗/戦力1075→950)

→(12)双児宮ギンヌンガガプ(8勝1敗/戦力1740→730)

→(14)光世蝕仏(1勝0敗/戦力1075→950)

→(15)狂信のユハ(0勝2敗/戦力75→55)

→(16)『森の女神』メデイン(1勝0敗/戦力1175→1050)

→(17)冥王イグニス(12勝1敗/戦力1490→0/制圧完了!)

→(18)聖王女アンジェローゼ(1勝0敗/戦力2000→1875)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

狂信のユハ
3300
(15)狂信のユハ:Battle1で戦い、現在も同地域に存在。

冥王イグニス
10000
(17)冥王イグニス:Battle1にて、ミズキ(矢野・優弥のサーヴァント)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。