第４話「妖星グロウス」

■オープニング

『ろう　ろう　ねるがるす！　ねるがるす　りむがんと　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　ぐろうす　なうぐりふ！』

「あれは、妖星グロウスの召喚呪文！　あんなものを相手に、どう戦えば……！」
　女神ラクシュミが絶望の叫びを上げる。
　しかし君達に身構える時間はなく、広大な空間へと吸い込まれていく……。

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　1937年、中国大陸。
　君達は、黄砂と砲弾が飛び交い、殺戮と虐殺が横行する「第二次世界大戦期の中国大陸」へと導かれていた。

　その日その時まで、大陸に攻め寄せてその首都を制圧せしめた『帝国』の将兵は、我が世の春を謳歌していた。
　だが、その圧制に耐え反攻の機会を伺う者達がいた。
　世界の均衡を保つもの。
　戦争と平和の創造者を名乗る、謎めいた『元老院』の支援を受けた『大陸』の科学者は遂に、決戦兵器『人甲兵』の量産に成功し、首都の解放に乗り出したのだ。
　人甲兵たちは帝国軍の脆弱なる戦車を駆逐。
　帝国に迎合した市民たちを巻き込み都市を蹂躙しつつ、その司令部へと迫る。
　それはまさに、蹂躙であり、虐殺であり、殺戮であった。

「こんな虐殺やめさせなければ！」
　灼滅者とケルベロスは、その戦いに介入すべく動き出す。
　大陸の決戦兵器である人甲兵も、灼滅者やケルベロスの力の前にはただの兵士と大差は無い。
　中には、死してなお動く者達（アンデッド）もいたが、その怨念すらも、狂気の戦いを潜り抜けた者達には生ぬるいものだったろう。
　だから、灼滅者とケルベロスは、砂塵と砲弾と殺戮と虐殺の戦場をかけぬける。
　少しでも人々の命を救い、こんな戦いを終わらせるために……。

「この戦いを終わらせる事ができれば、きっと、きっと世界は救われる」
「そのために、自分達が来たと思うのだから！」
　彼らの目には希望の光があった。
　狂気に立ち向かう不屈の意志があった。
　それは、気高く尊き人の意志そのものだったろう。

　だが、それは遅すぎた。
　彼らは間に合わなかった。
　救える命は救いきったけれど、神を召喚する為に必要な十万の命の灯火が惨たらしく殺戮され贄となる事を防ぐ事はできなかったから。
　突如、巨大な遺跡のような邪神が空を覆い尽くしたのだから……。

「なにが起こった！」
「太陽が消えたのか？」
「ま……まさか……」
　彼らの頭上に現れしは『妖星グロウス』。
　宇宙の闇の深遠より生まれし外なる神が、十万の贄をもってこの地に召喚された瞬間であった。
　大気圏より飛来する巨大なる、妖星グロウスは、五柱の従属神を従え地上へとゆっくりと近づいてくる。
　狂気と絶望が支配する戦いが、いま、始まる。

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　行動選択肢をひとつ選んだうえで、プレイングを書きましょう。
　呪言戦なので、死んだり発狂しても大丈夫です。
　邪神を倒し損なうと、最終話の敵戦力として登場します。

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●行動選択

（1）砲弾が飛び交う中、人命救助に奔走する

　大陸の軍隊と帝国軍、そして無辜の市民達を戦禍から救い出す為に全力を尽くします。
　被害者を十万人以下にする事はできませんが、贄となる人間の数を減らす事ができれば、妖星グロウスと従属神達の戦闘力を減退させる事ができるかもしれません。

（2）妖星グロウスにより発狂した人々を避難させる

　妖星グロウス出現の影響で生き延びた全ての人間と、灼滅者とケルベロスの一部が狂気に囚われてしまいます。
　彼らが狂気に囚われて命を失えば、それは、妖星グロウスと従属神達の糧となってしまいます。
　そうさせない為には、迅速な避難活動が必要となります。

（3）飛来する従属神を撃破する

　最初に地上に到達する２体の従属神、『マスターデモン』『宇宙メイガス』と闘います。
　この２体の従属神は、妖星グロウスによって滅ぼされた星の最後の決戦兵器達です。
　妖星グロウスに破れた彼らは、その従属神となったのです。
　もし、この戦いに敗れたならば、灼滅者とケルベロスもまた、妖星グロウスの従属神と成り果てるのでしょう。

（4）成層圏に飛び立つ勇気と力を、与えたまえ

　妖星グロウスが地球に接近した事で、世界中の人間達が狂気に犯され始めました。
　このままでは人類は全て発狂し死に絶えてしまうでしょう。
　それを防ぐ為には、これ以上、妖星グロウスを近づけさせないように、成層圏で食い止めるしかありません。
　呪言の力を信じ、空を飛び宙を駆け、成層圏で戦う為の力を獲得しましょう。
　この選択肢を選び、宙を駆ける力を得た人数の４倍までの戦力が、(5)(6)の戦いに参加できます。
　また、宙を駆ける力のイメージと強さは、(5)(6)の戦闘に影響を与えるかもしれません。

（5）成層圏で従属神と激闘を繰り広げる

　妖星グロウスを守護する３つの従属神『スペクター』『プラネットブレイカー』『アンブレイカブル』と戦います。
　それぞれ強力な従属神である為、連携しての戦闘が重要になるかもしれません。
　連携して戦闘をする場合は、プレイングの最初に【チーム名：狙う従属神の名前】と書くようにお願いします。

（6）妖星グロウスと決戦！

　深遠の宇宙より生まれし外なる神、妖星グロウスとの決戦を行います。
　ここまで道を切り開いてくれた仲間達の思いを無駄にしないためにも、命を賭して勝利を掴み取りましょう。
　妖星グロウスには通常の攻撃は全く効果はありません。
　唯一ダメージを与える可能性があるのは、攻撃者の命を弾丸とした攻撃のみです。
　命を弾丸とした攻撃が命中した場合、攻撃者は死亡しますが、その魂の強さに応じたダメージを与える事が可能です。
　勿論、着弾前に迎撃され叩き落される可能性もあるので、プレイングでは、いかに敵の迎撃をかいくぐって命中させるか、そして、どれだけ強い意志を叩きつけるかが重要となるでしょう。

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■リプレイ

●黄砂と砲弾の戦場にて
　そこは阿鼻叫喚の地獄図であった。
　砲弾が弾けるごとに人が死に、銃剣が振るわれるたびに人が死んだ。
　建造物が崩れれば多数の人が死んだ。
　帝国の最新式戦車チヌによって轢き殺され、助けを求めて群がった味方である筈の、大陸の決戦兵器『人甲兵』は、無辜の人民を虫けらのように踏み潰した。
　戦禍により発生した火災は首都を焼き、その火に巻かれて多くの人であった肉がローストされていく。
　戦場に食欲をそそる肉の焼ける臭いが満ち、燃えるものが無くなり鎮火した地域では野犬達が、火の通った肉の旨みに舌鼓を打った。
　そんな末世の都市を、エミリオ・カリベ（星空と本の魔法使い・d04722）は駆け抜ける。
　少しでも人の命を救う為。
　この世界は所謂パラレルワールドなのか夢の世界なのかはわからない。
　だが、こんな命の価値が安すぎる糞ったれな世界を許すことはできないからだ。
　戦況は『人甲兵』を擁する大陸側が圧倒的であった。
　ごく少数配備されていた帝国軍の新兵器チハは、瞬く間に殲滅され、帝国軍人は大陸の兵士達に惨殺されていく。
　軍人達が殺し合うのは仕事なのでやむをえない。
　だが、仕事……プロだと言うのならば、兵士では無い民衆を殺戮する理由など無いではないか？
「rompe fuerza!」
　エミリオはだから、自国の民であるはずの民衆を踏み潰そうとした『人甲兵』をグラビティで粉砕した。
　『人甲兵』の装甲は拉げ、装甲の内部から血塗れの兵士だったものが転がり落ちる。
　兵士は既に事切れていた。
　エミリオは、かけよってきたミルラ・コンミフォラ（翠花の魔女・e03579）達に、救助した人々の搬送をお願いすると、殺戮を止めるべく、新たな戦場へと駆け出すのだった。

　そして、遂にその時が来る。
　十万の生贄を捧げる事で出現する外なる神、妖星グロウス。
　その出現が、戦場を全く別のものにかえた。
　阿鼻叫喚の地獄図であった戦場の様相は、その地獄図がれいかに生易しいものであったかを証明するように、その地獄図を狂気に塗りつぶす。
　都市にこだまする狂気の悲鳴。
　彼らは悲鳴をあげながら思ったはずだ。
　こんな、こんな恐怖に出会わなければならないならば、生き残りたくは無かった。
　あの時、死んでいれば、こんな恐怖を知る事は無かったのに……と。
　だが、それでも……。人の命を救う営みは続いていく。
　ダスティ・ルゥ（名乗れる二つ名が無い・e33661）達は、避難経路をヒールする事により通行可能にしつつ、発狂した兵士達を実力で無力化させて、更に、人々へ避難を促していく。
　だが、その彼らの前に大陸の決戦兵器『人甲兵』の大部隊が現れた。その動きは、未だに統制のとれた軍隊の動きである。
「発狂していないのか？」
「この状態で、指揮系統が何故生きている！」
「まさか、自動操縦なの？」
　この人甲兵が市民の虐殺に向かえば発狂した人々に抗する術は無い。皆を救う為、やむをえないと振るった八重葎・あき（とちぎのぎょうざヒーロー・d01863）の雷都剣が、人甲兵を薙ぎ払う。
　そして、破壊された装甲から這い出してきたのは『兵士だったモノ』であった。
　明らかに生命活動を行う事ができないほどに損傷した死体でしかない兵士は、そのまま、ダスティに殴りかかってくる。
「ゾンビなの？」
　蠢く死体はゾンビであった。
　忌まわしい狂気の影響で発生したものではない、ノーライフキングの眷属であるゾンビ。
　あきは、そのゾンビをあっさりと撃破しつつも、心中には疑問が湧き上がっていた。
「この時代に、ノーライフキングが実際にこの事件を起こしていたの？　クリスタルミラビリス？　いや、でも、そんなことが……」
　その疑問に答えられる者は、今はまだいない。

●真なる決戦兵器、そして遥かなる空へ
　多くの灼滅者とケルベロス達が戦火を逃れた人々と発狂した人々を救出すべく全力を尽くす中、アミュレット・クロスランス（オラトリオの鎧装騎兵・e02021）達は、来るべき災厄を迎え撃つべく空を仰いだ。
　大陸軍の『人甲兵』など児戯に等しい。
　たとえ、それを操るものが人ならざるものであろうと、狂気を孕まない存在など、恐れる事は無い。
　だが、今、アミュレット達の前におりたった、宇宙の闇の化身にも見紛うマスターデモンと、未来科学の粋を集めたかのような宇宙メイガスこそが、真に恐れるべき恐怖の体現者であったろう。
　マスターデモンが爪を振るう。
　宇宙メイガスが小型宇宙ミサイルを射出する。
　たった、それだけの小さな動作で、大陸の首都は破壊しつくされる。
　もし、この２体が十全な力で世界を破壊して回れば……灼滅者やケルベロスの力が無ければ、１週間もかからずに世界は滅びてしまうかもしれない。

　だが、その仮定は無意味だった。
　今、この地には、絶望の未来を破壊する為、多くの灼滅者とケルベロスが集っていたのだから。

「さてと、先ほどと比べればよほどわかりやすく手っ取り早い。取り巻きの方々には早々に退散していただくとしようか。主砲斉射三連っ」
　アミュレットは、そう言うと、アームドフォートの砲身が焼ききれる程の砲撃を連続して撃ちはなった。
　それを合図にしたように、多くのサイキックとグラビティがマスターデモンに降りかかった。
「焦る必要はない、落ち着いて、よく狙って撃てぇぇっっ！」
　アミュレットの指示により、攻撃を集中されたマスターデモンはその禍々しき力を撃ち削られ沈黙した。
　その巨体に止めを刺したアミュレットは……。
「と言う訳で、戦いは数だ」
　と嘯いたのだった。

　一方、宇宙メイガスに攻撃する者達のサイキックとグラビティも熾烈を極めていた。
　灼滅者とケルベロスという違いはあれど、地球を護るという意志に違いは無い。
　心を合わせた一斉攻撃は、宇宙メイガスの宇宙装甲を次々と破壊して言ったのだ。
「かつての決戦兵器達のなれの果て、か。 だが私達は、お前達の様に負ける訳にはいかない。 その力を望まぬ形で使われるままにさせるのも、ここまでにしよう。 ここでお前達を、その隷属の鎖から解き放つ！」
　志賀野・友衛（大学生人狼・d03990）は、そう言うと、深い悲しみとそして不屈の意志を武器に乗せ必殺技を繰り出した。
　その攻撃を受けて破壊される一瞬、友衛は、宇宙メイガスのコクピットより、少女の感謝を告げる祈りのようなものを感じたのだった。

　こうして、マスターデモンと宇宙メイガスが倒れた。
　だが、地球を犯す狂気、妖星グロウスは首都上空へと迫りつつあった。
　その巨大な姿は太陽を遮り、付近一帯が暗闇に閉ざされていく。
　まるで、太陽の光でさえも狂気に食い尽くされてしまったかのように。
　もはや、妖星グロウスの従属神である『スペクター』『プラネットブレイカー』『アンブレイカブル』の３神の姿さえも肉眼で確認できる距離まで近づいており、知性に優れた灼滅者やケルベロス達は、その高い知性が禍いして狂気に犯されていった。

　真なる狂気に対しては、知性が少し足りないくらいが丁度良い。
　村雨・柚月（黒髪藍眼・e09239）はそう心に決めると、叫んだ。
「人はいつだって無謀な挑戦に身を投じ、不可能を可能にしてきた！　人は翼を手に入れ、空を駆けるようになった！　どんなに遠く離れていても一瞬で連絡を取れるようになった！　本来この世に存在しない未知なる物質を生み出してきた！　つまり、やってやれないことはない！翼ある者はその力で飛べ！」
　つまりは根性論である。
　勢い良く腕をつきだし、そして全速力で助走し、そして空を飛ぶ自分を想像する。
　飛べ、飛ぶんだ、今こそ重力の楔を解き放て！
「１、２、１、２と繰り返せ！　ほぉら！　ほぉら！　走る！　走れる！　走れるぞ！　うぉぉぉぉぉ！　俺走ってる！　俺、空を走ってるよ！　ひゃっほおおぉぉぉぉぉ！　気ン持ちいいぃ～～！　おおぉぉぉ！　足がちぎれそうだ！　だがこの喜びが俺を突き動かす！　次は成層圏へ向かうぞ！」
　根性と勢いだけで宙を飛んだ柚月の姿に続けと、更に幾人かの灼滅者とケルベロスが宙を飛ぶ。
　そして、遂に、
「海の男には翼がある。空から君を守るために」
　神崎・晟（忠勇義烈・e02896）が、満を持してその力を解放した。
「射出台は用意した。エネルギーはグラビティがあれば充分。つまり、俺達全員で空を飛ぼうという事だ！」
　莞爾と微笑んだ晟は、
「すごーい！　たのしー！」」
　と叫びながら、仲間と共にそらに舞った。
　こうして、戦場は、妖星グロウスとの決戦の場たる成層圏へと移っていったのだった。

●決戦、妖星グロウス
　重力の楔を解き放ち、成層圏へと飛来した灼滅者とケルベロス達。
　外なる神である妖星グロウスから見れば、一人一人の力は塵芥に等しいだろう。
　更に言えば、その全ての力を足し合わせてなお、妖星グロウスの足元にも及びはしない。

「だけど、戦力は……勇気は足し算では無いのです！」
　エーゼット・セルティエ（勇気の歌を紡ぐもの・e05244）は、そう言うと、共に宙を舞う中間達と共と頷きあい、従属神の一体『スペクター』の前へと飛翔して前に出た。
「私達の力が例え１０しかなくても、２人の力が合わされば、１０×１０で１００。３人ならば１００×１０で１０００となる。邪悪なる神がどれだけ強くとも、私達の絆の前に砕けぬものはありません！」
　エーゼットの号令と共に、一斉にサイキックとグラビティが斉射される。
「勇華とお付き合いして2年後くらいにはけっ…ケッコ……コケッコー！！」
　そのエーゼットの魂の叫びと共に、増大する幾何級数的に増大するエネルギーにより、深遠の宇宙に燃える万色の炎をその身に宿す、スペクターは打ち倒され、空間に融けるように元の世界へと帰還していった。

　次に戦いの場に赴いたのはチーム『羽』である。
　対するは、星を砕くもの、プラネットブレイカー。
　妖星グロウスに屈するまでは星を砕く宇宙的災害と恐れられた宇宙の壊し屋である。
「恐ろしいね、もし、わたしが一人だったらきっと耐えられなかったよ」
　その宇宙的な災害を前に、だが、シル・ウィンディア（蒼風の精霊術士・e00695）は恐れた様子を見せない。
　彼女にとって、プラネットブレイカーは大きな龍でしかなかった。
　なぜならば、彼女の周りには頼りになる仲間達がいるからだ。
「プラネットブレイカー、あなたが星を砕くというならば、わたし達は星を砕くあなたを砕く。私達は、プラネットブレイカーブレイカーなのですよ！」
　その言葉と共に、『チーム羽』の皆の攻撃が次々とプラネットブレイカーに降り注いだ。
　水滴の一滴は小さくとも、積み重なれば岩をも砕くだろう。
　そして、吸い込まれる攻撃は水滴ではなかった。
　シルの懸命の援護と、その支援を受けた幸・鳳琴（正体はうさぎ・e00039）らの攻撃が重なり、更に、その攻撃が更に周囲の攻撃力を高めていく。
　その繰り返しは遂に、プラネットブレイカーの堅牢な護りを飽和させたのだった。
「幸家：――亢龍！！」
　そして放たれた鳳琴の必殺の一撃により、宇宙的災厄プラネットブレイカーはこの世界から永遠に存在を抹消されることとなった。
　互いに手を取り合う、シルと鳳琴。
　優しく自分を撫でるシルの温もりに、鳳琴は安らかな笑顔を浮かべたのだった。

　２体の従属神を妥当せしめた灼滅者とケルベロス達は、ついに、妖星グロウスの元へとたどり着く。
　そして、意気軒昂と妖星グロウスに攻撃を仕掛けようとしたが、そこの触手の一閃が襲い掛かってきた。
　それは、妖星グロウスの最後の守りたる従属神アンブレイカブルの一撃であった。
「こんな所に居たんだな、探したぜ。触手は幾らでも斬ったけど、宇宙に来てまでこれか」
　リョクレン・オルヴィアグレス（殲華の終獄・e19000）はそう言って肩をすくめる。
　何故、宇宙まで来て触手と戦わねばならぬのか？
　理不尽なものを感じながらも、リョクレンは『チーム幽世』の仲間達と共にアンブレイカブルを攻撃する。
　おそらくこのアンブレイカブルは、この世界に存在する触手の中でもラスボス級の触手であるのは間違いない。
　つまり、こいつを倒すことこそが、触手の無い世界への第一歩となるだろう。
「全部、全部殺して。全部を精霊に還すんだ。『星よ廻れ。織成す幻想を彩る為に――《其が望むは永遠の命か不滅の闘志か》贄靈宴、戦華の舞。狼の遠吠え、挽歌――最後の劔は折れない心』」
　こうして、『チーム幽世』の苛烈な攻撃と、リョクレンの優美な剣舞による奉納により、この宇宙に蔓延こる狂気の一柱、アンブレイカブルはその存在を抹消されたのだ。
　そして遂に、妖星グロウスへの攻撃の道が開かれる……。

　遂に妖星グロウスとの決戦。
　生き残った灼滅者とケルベロス達は、お互いに顔を見合わせ、そして頷きあった。
　これまで、いろいろな事があった。
　多くの仲間が戦い、発狂し、そして死んでいった。
　すべてが、この時の為。
　もし、世界の為に命を使わねばならない時があるとしたら、今こそが、その時なのだ。
「人の犠牲から生まれた神なんて存在させてはいけないのです！　命を賭けてもこの邪神を撃破しましょう！　全てはイメージですね！　エアシューズやイメージの力を使い、宙を自由に駆け巡るちからをフル活用し妖星グロウスに近づきます！　妖星グロウスに近付いたら、自分の命を弾丸に込め思いっきり撃ち込むんです！」
　佐久間・凪（無痛・e05817）の号令で灼滅者とケルベロス達は、命を的に妖星グロウスに迫る。
　幾人かは迎撃され命を散らし、更に幾人かは狂気に囚われ、自ら墜ちていった。
　だが、より多くの者達はその命を散らして妖星グロウスへとダメージを与える事に成功する。

「私の、私達の意志は絶対に消えません！この一撃で世界を救います！」
　先陣を切った凪が、その命を散らすと、続くように、コクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）が自らの魂を燃やし尽くす。
「ふはははははははは！！！　我が叡智…此処まで支えてくれたフレンズの者達の想いを背負いワシは今此処におる！　狂気？絶望ぉ？　くだらんわぁ！！　そんな物は未知に対する恐れと逃げに過ぎぬ！　外よりの客人よ！　貴様は少々やりすぎた！　残念ながら此処に来た以上はここの流儀に従って貰おう！　我が命と魂の輝き…それは今こそ我らを虐する太陽をも超える闇とならん！！！　冷徹に純粋に神へと向かう 光を纏いそして更なる思いを重ねて挑む 心に燃え上らせる想い 弾丸となり全てを揺るがす魂の叫びを放とう それは柔らかく優しい感触 顔を埋めれば大いなる温もりと癒しを得るだろう それはまさに命を育むだろう場所 幼子はもちろん屈強な戦士やそして大人も等しくその前には幼子と化す その優しさに触れて荒ぶる心は沈静するのだ それはまさに生きる為の権化 其れに飛び込む事こそ至高 優しく抱き留められ受け止められた時その喜びはまさに天上の如きものとなるだろう 如何なる凶器も狂気もそれには無力である そう、それはまさにこの世の至宝 人々は…男も時に女も求める魂の故郷 それはアスガルドの果てのヴァルハラでさえかすむかもしれないまさに輝かんばかりの美しき世界を関するに相応しいだろ なだらかでしかし命の美を宿した二つの大いなる山 そう…まさに…まさにそれは万の言葉を使っても尚足りぬ桃源郷！　しかし那由多…否無量大数を超えた言葉もただ肌と顔に感じ包まれる喜びにはけして届かぬだろう！ 故に！ワシは大いなる雄叫び叫びと共に愚かな神である貴様にぶつけてやる！心して…魂で我が叫びを聞き届けよぉ！！！！ 」
　末期の叫びには長かったが、その強い意志は妖星グロウスをも震撼させる。
　更に、
「俺はずっと今まで考えてきた 自分が産まれた理由、生き長らえ闘い続けてきた理由 それも今日で、漸く分かった もしかすれば、俺のこの確信は間違いかもしれない しかし……理解するよりも早く、確信したのだ 自分は、自分のこの命は、ここで地球＜ガイア＞を護る為に使うべきであると 今まで……血と刃と汗の中に生きてきた、この血腥い天使の身 師によって闘う道、闘う術、闘う理由授けられたこの生命 幸福ではないか 闘いの果てに斃れ、斃れたこの生命を、母なるガイアを救うために使えるというのなら……惜しく等、あるものか！！　例え死してこの御霊も消え去ろうと、母の下へ行くこと敵わなくとも！！ ……これから生きたであろう数十年に、如何な幸福があったのだとしても！！ その全てを失おうと惜しくない！！　覚えておけ！！　我が名はロウガ、その意味は始まりの子……光齎す者の血を継ぐ者、その羽は刃、その血脈は正義、地球＜ガイア＞の生命を護る者だ！！」
　と覚悟を決めたロウガ・ジェラフィード（戦天使・e04854）が、命を燃やしつくし、
　止めとばかりに、紫藤・リューズベルト（メカフェチ娘・e03796）が、仲間達を妖星グロウスの元に辿りつかせるべく、宇宙的な進化を遂げたライドキャリバー『スペースマークザイン』で爆走する。
　そして、灼滅者もケルベロスも区別無く、次々に妖星グロウスへと突入し、その命を捨てての攻撃を敢行し続ける。
　地上に残った人々は、その命の光と煌きに圧倒されつつ見上げ続けたであった。

　そして、この戦いも最後の時となった。
「私はオラトリオ……空を舞う時空の調停者。皆の力が道を切り開いてくれました。私を止めるものは何もありません」
　アウラ・シーノ（忘却の妹術士・e05207）は酒臭い息をはくと、決戦形態に姿を変えると妖星グロウスに飛び込んだ。
　彼女の決戦形態は、時空を巻き戻す程ではなかったが、しかし、その命の爆発は、残りわずかな（わずかといっても桁外れではあるが）妖星グロウスの命運を砕ききるという偉業を成し遂げた。

　この攻撃に耐え切る事はできずにコアを破壊された妖星グロウスは、誘爆するように断続的に爆発し、無数の破片となり地球へと降り注いでいった。
　その破片は大気圏で燃え尽き、時ならぬ流星雨として人々の目を楽しませたのだった。

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→（1）砲弾が飛び交う中、人命救助に奔走する
　（参加人数：126名　合計戦功点：56913）

→（2）妖星グロウスにより発狂した人々を避難させる
　（参加人数：68名　合計戦功点：33046）

→（3）飛来する従属神を撃破する
　（参加人数：74名　合計戦功点：35287）

→（4）成層圏に飛び立つ勇気と力を、与えたまえ
　（参加人数：138名　合計戦功点：76397）

→（5）成層圏で従属神と激闘を繰り広げる
　（参加人数：41名　合計戦功点：21792）

→（6）妖星グロウスと決戦！
　（参加人数：79名　合計戦功点：45660）