第３話「リマーガの仮面」

■オープニング

『ろう　ろう　ねるがるす！　ねるがるす　りむがんと　なうぐりふ！』
『ねるがるす　りむがんと　りまーが　なうぐりふ！』

「気をつけてください。リマーガは狡猾な相手。今までの邪神とは違います……！」
　女神ラクシュミが、灼滅者とケルベロスに呼びかける。
　と同時に、君達の周囲を巨大な「白い箱」が包み、君達を何処かに連れてゆく……。

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「さあ、ゲームの始まりです」
　何処かも分からぬ密室で、快活だが恐ろしい声色を含んだ青年のような男の声と共に、君達は目を覚ました。
　君達はみな、10人程の少人数に分かれて、謎めいた密室に閉じ込められていた。
　密室には様々な道具や武器が置かれ、中央には意味ありげに誰かが死んでいる。
　……何となく、中央の死体を刺してみた。ちゃんと死んでいる。

「おおっと、それは微妙にネタバレになってますね！　大丈夫、そのトリックは使ってませんよ」
　スピーカーのような機械から聞こえる青年の声はそういって、話を続ける。

「わたしの名はリマーガ。這い寄る神狩人にして闇に棲みつくもの！　無貌にして全てを翻弄するものにして、賢明なる白痴たるネルガルスの代弁者です」

「ゲームのルールを説明します！　まずは各々の部屋で、最後のひとりになるまで殺し合いをしていただきましょう！　そうすれば、まずは部屋の扉は開き、生き残り全員と合流する事ができます」
「ですが、その中には私の『化身』が混ざっています！『ソロモンの悪魔ブエル』『無限竜ワーム』『予言者』『光オロチ』『蒼の王コルベイン』……何らかの方法で、あなたがたに化けたこれらの化身を見つけ出していただきましょう。人狼ゲームのような同士討ちを期待しています！」
「そして、全ての化身を倒し終わったら、遂に本体たるわたし、リマーガとの戦いになります！　そこまでの戦いで消耗しているでしょうが、せいぜい足掻いてみてください！」

「いやはや、大変良い見世物ができました。皆さんの様子は全て監視カメラで把握し、わたしの主ネルガルスの退屈を紛らわす『余興』として、使わせていただきます！」

「……フフッ、まだ気づかないのですか？　わたしは呪言戦などに付き合うつもりはありません！　あなた達の力が尽きるまで逃げ回り、弱ったあなた方を『狩らせて』いただきますよ！」

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　行動選択肢をひとつ選んだうえで、プレイングを書きましょう。
　呪言戦なので、死んだり発狂しても大丈夫です。
　邪神を倒し損なうと、最終話の敵戦力として登場します。

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●行動選択

（1）密室のデスゲームに、乗っかるふりをする

　密室のデスゲームに乗っかり、他の灼滅者やケルベロスを殺す「ふり」をします。
　ただし、本当に殺し殺される殺し合いをしない限り、リマーガの目をごまかすことはできません。
　死の間際にどんな策を実行したかをプレイングに書いてください。それらがうまくいけば、1人よりも多くの人間を密室から出す手がかりが見つかります。

（2）化身の手がかりを見つけて死ぬ

　合流場所で、灼滅者とケルベロスの中に紛れている『化身』を見つけ出す手がかりを見つけ、ダイイングメッセージでそれを伝えて死にます。
「どの化身を」「どのような手段で見つけ」「どんなダイイングメッセージを残すか」をプレイングに書いてください。

（3）闇堕ち・暴走して、化身共を鏖（みなごろし）にする

　死んでいった仲間達への怒りと共に、正体を暴いた『化身』共を鏖（みなごろし）にします。
　狂気に弱いためこの後の決戦には行けませんが、化身には『絶対勝ちます』ので、思う存分ギタギタにしてください。

（4）正気ならざる推理で、リマーガの居所を突き止める

　リマーガは、人の常識が及ばない超宇宙的な方法で、異次元空間のどこかに隠れています。
　それを見つけ出すためには、人間の常識では測れない「超推理」が必要になります。
　「ノーヒントの居場所を推理で見つけ出す」プレイングを行った挙句、発狂しなければ、正解にはたどり着けません。

（5）「リマーガの贄」を奪う

　リマーガは巨大な邪神で、下半身には「これまで殺したデウスエクス達」を吊るし、いざという時のエネルギー源にしています。リマーガの居場所を見つけた瞬間、「0.3秒以内」に、これらの死体とリマーガをつなぐ「全てのロープ（40本）」を切ることができれば、リマーガはテレポートで逃げるためのエネルギーを得られなくなります。

（6）リマーガと決戦！

　リマーガとの決戦です！
　ここまでくればもうリマーガに策はなく、真っ向からのぶつかり合いになります。
　が、リマーガは戦闘能力も純粋に強大です。
　必要ならば、狂気の危険性を承知の上で、闇堕ちや暴走をする必要があるかもしれません。

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■リプレイ

●死の舞踏、始まる
「感謝するぞリマーガァ！！　私は斯様な遊戯こそ待ちわびたものよ！　化身だなんだ関係あるものか知る知る顔がみるみる崩れ剥がれ壊れる様が見れるなら贋作も価値が有ろうというものだ！」
　嗤いながら駆ける倫道・有無（真実記せず・d03721）の声が、白き密室のひとつを満たす。
　何を偽るでもなく本気で戦うという選択をする者は、他にも決して少なくなかった。アイシア・ウノ（番犬の往く先を・e31428）たち【喧嘩仁義】の血気盛んな面々も、ケルベロスに今さら殺し合いを要求するなど、と笑いさえ見せながらそれぞれの武器を抜く。

　倒れて死んだふりをしていた咲村・菫（ハナの妖精さん・d28400）が、稲妻のように跳ね起きる。間一髪で心臓への一撃を回避した彼女は、半泣きになりながら巨大な鼻から手足の生えた化け物へと姿を変えて。
「わ、私を殺してあなたも死……じゃなかった！　あなたを殺して、私も死んでやりますぅぅぅっ！」
　傍から見れば、その姿はまさに絶望ゆえの自暴自棄。だが、敢えて他の者達を前へ送り出そうと、彼女は狂ったように狙いを『外して』ガトリングガンを乱射する。

「ケルベロスはグラビティ攻撃では見た目しかかわらないんだよねー。でも、べつに死なないって分かってても殺そうと攻撃することはできるよね？」
　そんな自分は既に狂っているのか、それとも、それはもはや、月宮・京華（ドラゴニアンの降魔拳士・e11429）自身にも分からない。いや、分からないということはつまり狂っているということなのか。
　狂ったように笑いながら周囲の灼滅者ケルベロスを分け隔てなくその手の攻性植物で喰らい、飲み込み尽くしたハルモニウス・ノヴァ（冀望の詩歌うは言霊纏う戦乙女・e35112）。彼女の攻性植物の腹の中に取り込まれた者達は、後で吐き出せば問題ない――そう、考えていた。
「よく噛んで飲み込まなければ、消化に悪いですよ」
　スピーカーから聞こえてくる声に、ハルモニウスは思わず真顔に戻る。喰らいはしたが、殺しはしなかった――つまりは、そういうことか。

「デゥア！！」
　気を吐くヴディアウルガゥア・ゲヴゥルタリバェル（悪魔的な何か・e33997）の拳が同じケルベロスの胸を正確に打つ。紛れもなく鼓動を停止させる気で放たれた拳は、その一撃だけでは止まらない。幸運の女神とダンスを踊るように次々ヴディアウルガゥアが繰り出す必殺拳が、遂に最後の一人の心臓を止めた。
（「永久に止めるとは言っていませんがね！」）
　開かれた扉を悠々と潜りながら、ヴディアウルガゥアは振り返らずに微かに笑う。マーシャルアーツ技能をを嗜む程度以上に持っている彼にとって、その拳で相手の心臓を一時的に止めることなど朝飯前なのだ。

　八重葎・あき（とちぎのぎょうざヒーロー・d01863）は宇都宮のご当地ヒーローである。その彼女が、今しがたまで宇都宮餃子を周囲の灼滅者やらケルベロスやらの口に無差別にねじ込み、餃子に仕込んだ即効性の毒であらゆる命を奪い尽くしたとなれば、宇都宮の名誉は地に堕ちるだろう……と、思われたが。
　彼女ひとりが立つ密室の扉が音を立てて開いた直後、倒れていたケルベロスのひとりが呻いた。それまで呼吸すらしていなかった筈の彼が、また他の面々が不可思議な表情で置き上がるのを見て、栃木のヒーローはにやりと笑った。
「おっと、宇都宮餃子たる私が、本当に宇都宮餃子で人を殺めるとでも思った？ ご当地宣伝のためには、炎上する方法は使ったらいけないからね！」

　有枝・弥奈（オーバースペック気味の一般人・e20570）やシヴィル・カジャス（太陽の騎士・e00374）ら、仲間達を進ませる為に死を選んだ者達の遺志を胸に、灼滅者、ケルベロス達は先へと進む。

●正体を暴け
　帰ったはずの高乃湯・あづま（自称合法ロリ美少女狐・e07337）がそりゃあもう豪快に死んでいた。紅白の巫女服が紅一色になるぐらいの勢いである。
　近くには紙と筆ペンでダイイングメッセージが書かれていた。
『あばばばばばばば』
　どうやら死ぬ寸前、彼女は既に発狂していたらしい。
　死の恐怖が狂わせたのか、それとも犯人による証拠の隠滅なのか。
　潜伏した眷属達を、灼滅者とケルベロス達は次々追い詰めていく。

『蒼の王コルベイン』
　レイシー・アーベントロート（宵闇鴉・d05861）は半ば狂気に囚われつつあった。
　だが、だからこそとれた行動が、灼滅者とケルベロス達にチャンスをもたらすことになるとは、リマーガですら予想しえなかっただろう。
「……そう、俺たちは知っているはずだぜ。阿佐ヶ谷で戦ったコルベイン……奴は簒奪者という言葉に反応するはずだ。あと首が無い」
　ブツブツと言いながら、レイシーは刃を振り上げた。
「簒奪者はここにいるぜぇぇぇ！！！」
　言いながら、周囲の灼滅者やケルベロスの首を狙ってウロボロスブレイドの連結刃を振り回す。そのうちの一人が、咄嗟に頭を抑えて逃げようとするのを、レイシーは見逃さなかった。
「俺は殺人が得意なフレンズなんだぜ、すごーいだろぉぉぉぉ！」

『ソロモンの悪魔ブエル』
「間違いない外れていないオレは選択を間違えていない」
　狂舞・刑（その背に背負うは六六零・d18053）は、混乱し殺し合う灼滅者とケルベロス達の言葉に耳を澄ませていた。
「ブエルの本質は『否定』。奴は必ずと言っていい程言葉の最後に『否定』をする」
　仲間にも、そうメッセージを残してある。
　そして、先ほどから否定しかしていない者をリストアップしていく。地道に追い詰めていく作業。だが、それはブエルの側にとっても、彼が邪魔者であるということを意味していた……。

『無限竜ワーム』
「ねえ、もうこんなの止めようよ……そうだ、ここにずっといたら 助かるかもしれないよ。 それに、僕らのうち誰かが奴らの仲間の化身なら、 ここでじっとしてれば皆の為になるよ。ね？」
　ウォーレン・ホリィウッド（ホーリーロック・e00813）は、ネルガルスの玉座での戦いの中で目にしたワームと同じ、碧い澄んだ目を持つ灼滅者に次々にすがりついていく。
　ワーム自身には擬態能力は無いはず。ならば、それはリマーガの力なのだろう。
　やがて、抱きついた一人に、抱きついた時の感覚に違和感を覚え……ウォーレンは彼に武器を向けられると同時に、自害していた。
　流れる血に、人が集まって来る。殺人をしていないと言い繕おうにも、疑心暗鬼に陥った仲間達をワームが説き伏せるのは無理だろう。そう思いながら、ウォーレンは目を閉じた。

『予言者』
「漢字テストを執り行う！」
　ガロンド・エクシャメル（愚者の黄金・e09925）の宣言に、集った灼滅者もケルベロス達も困惑した。
　だが、その瞬間にガロンドが殺害されたことで、
「ぐふっ……このままいけば、自分の正体が露見することすら予言したか。流石だな、『予言者』よ」
　息絶えるガロンド、そして灼滅者とケルベロス達の前で、『予言者』がその不気味な仮面に覆われた顔を露わにする……。

『光オロチ』
　不意に部屋の照明が落ちる。
　君乃・眸（ブリキノ心臓・e22801）が自らの体のコアエネルギーをスパークさせ、部屋の照明を消したのだ。
　だが、真っ暗闇となった中、灼滅者とケルベロス達の中に、一人煌々と輝いている者がいる！！
「いた！　その女性が『光オロチ』……！！」
　瞬間、眸を光オロチが貫き、その命を奪い去ると同時、館の一室が光の圧力に負け爆散した。ダダル・ダル（ウェアライダーの店長・e00561）が、逃げる光オロチを追っていく。

●眷属達の末路
　正体を突き止められた眷属達は、しかしそのまま黙って滅ぼされるような存在ではなかった。
　疑心暗鬼の舞台となっていた館の中は一転してパニックホラーの舞台へと変貌する。
「……僕は、英雄なんかじゃない。……だから、後は任せます。僕達の、みんなの犠牲が無駄にならないように。どうか、頼みます」
　その状況を打開するには、眷属を滅ぼすしかない。
　霧山・和希（碧眼の渡鴉・e34973）は決死の覚悟を決め、眷属達へと己の力を暴走させながら突っ込んでいく。
　フェルド・ハワード（蒼焔の剣士・e31982）は、眷属への怒りを露わにする。
「お前が居なければ、お前らが存在しなければッ！」
　倒れた眷属に剣を突き立てるフェルドの言葉は、他の者達にも同士討ちを強要された怒りを改めて燃え上がらせていた。
「ああ、そうとも。少々悪趣味が過ぎる。……今回のはちょっと腹が立ったよ。あの音声だけの下っ端の下っ端を、懲らしめてやらないとね」
　密室での戦いで傷ついていたアンセルム・ビドー（蔦に鎖す・e34762）も、己の血を攻性植物に吸わせていく。
　血を吸い上げ、巨大な姿を現した攻性植物が、正体を現した眷属達の肉体に巻き付き、ねじり切っていった。
「まだいるだろう？　さあ、さあ！！」
「そうね、死んだ人達も、あなた達にお礼がしたいと言っているわ！！」
　天津・千薙（天地薙・e00415）の呪言を受けて、死んだ者達が動き出し、眷属へと襲い掛かっていく。

●狂智の看破
　刃が届かない相手は殺せない。故に、リマーガを見つけ出すべくディークス・カフェイン（月影宿す白狼・e01544）達は目を血走らせて思考する。
　この人智を超えた邪神を相手に、まともな思考推測探索推理その他あらゆる手段など何の意味もない。
「あらかじめある死体が『微妙にネタバレ』と言うことはここにヒントがあると思うのだよ。そう、それが裏をかいて推理者の裏をかく偽の手がかりと言うことも充分に考えられるがそれならそれで問題ない」
　アミュレット・クロスランス（オラトリオの鎧装騎兵・e02021）

「大丈夫です、皆さんとりあえずシチューを食べて落ち付きましょう！今から作るので！！」
　一方、なぜか汁ものの話を始めるアキレア・フロウイング（平和を夢見る家出娘・e00812）。いや、物質のるつぼたるその料理ジャンルの話を糸口に据えたのはアキレアだけではなかった。
「なるほど！　リマーガとかいうやつも味噌汁好きかもしれないよな！　で、味噌汁を用意して、探しに行くんじゃなくて誘き出すってことだな！　おかん、頭いいな！！ それじゃあ味噌汁を作ってみよう」
　いきなり味噌汁を作り始めるエンヤ・レーガン（睡眠魔王・e14521）。器具とか材料とかどっから来たのかとか、そういうことは気にしてはいけない。正気の感覚で考えていては、真理には到底辿り着けないのだから。
「そもそもの前提としてカレーが食べ物だと誰が決めたのだ。カレーを食べモノだと定義しているのはつまるところ俺の認識である。まずは俺の認識を疑わなければなるまい」
　チューマ・ウチョマージ（荒野の鉄火・e11970）が狂気に満ちた瞳で語るが、この場においてはそれこそが真理。
　理性と言う枷を取り払うことで、灼滅者、そしてケルベロス達は真実に近づいていくしかないのだ。


「ひゃっははーっ、開け開けー！」
　風空・未来（けもけもベースボール・e00276）が狂ったように室内のあらゆるものを叩き始める。叩く。叩く。もう叩く叩く。だが、壁は未だぶち抜けない。

「こちらを観察してるという事は、手掛かりがあるとすれば頭部でしょうか。 私達の騒ぎをこの耳で、私達の動きのこの瞳で、私達の流す血臭をこの鼻で、私達の流す血液をこの口で。 では、その大元、これらを統括する部品。 脳髄でしょうか。 ここにリマーガに繋がる経路が存在する可能性がありますね」
　リコリス・ラジアータ（錆びた真鍮歯車・e02164）が狂気的なスピードで呟きながら、最初の部屋にあった死体の頭部を取り外した。反応は、ない。
「しかしこの世で最も醜いものと言えば、やっぱりニンゲンダヨネ！」
　だが、それを目にした平・和（魔法少女はエイプリルフール・e00547）が、突然自らの肉体をその手で解体し始めた。
　まずは左足を切り開き、次いで右足。腹を掻っ捌き、左腕を切り開く。刃を台に固定し、右手を切り開き、首から下を余す所なく開いたら、最後に顔面を狂ったように、地面に叩きつけてかち割る。すっかり赤と白のモザイク模様と化した和だったものが、やがてぐんにゃりと歪み始めた。やがてその歪みから、高く低く歌うような笑い声が漏れ出して。
　そして、遂にリマーガ本体の姿が露わになった。

●刹那、斬断
　全長５０メートルの巨体は、しかし既にフィオ・エリアルド（鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930）の射程に収まっていた……どころか、フィオは集中を高めきり、地面を蹴っていた ――もっとだ！ ―――もっと速く！！
「――はあぁぁぁぁぁぁぁァ！」
「私達を相手に0.3秒もの猶予が与えられているなんて笑えてしまいますね！」
「欠伸が出てしまいそうな鈍さですね」
　佐久間・凪（無痛・e05817）、立花・吹雪（一姫刀閃・e13677）らにとっても、0.3秒なと刹那と呼ぶには長すぎた。踏み込み、斬る。まるで始めからそこにあったかのように、彼女らの武器はリマーガに触れていた。

　幾重もの雷鳴が響いたのは、それと全く同時のこと。
　見つけた瞬間に動き出すのではあまりにも遅い。それならば先んじて罠を張っておけば良い。そう考えていた雨宮・利香（黒刀と黒雷の黒淫魔・e35140）が、部屋中に展開した術式を起動させたのだ。四方から雷に巻かれたリマーガの肉体が、冒涜的に脈動する。ぶちりとちぎれたロープに繋がっていたものが、床に重い音を立てて堕ちた。

　ノイアール・クロックス（魂魄千切・e15199）は贄を奪おうと考えていたわけではなかった。ただリマーガの全てに起こっていた。故に彼女は、本能を超えた何かによってその瞬間に攻撃を放っていた。
「うぉらあああああ！！！！！」
　声すらも追い抜く速度の攻撃が、リマーガにぶら下がるロープの付け根を撃ち貫く。

　この間ジャスト０．３秒。切断された４０本のロープに吊るされていたビルシャナ、ドリームイーター、エインヘリアル、螺旋忍軍その他、種族もサイズも生前持っていたであろう能力も多彩なデウスエクス達の死体が雨のように床に落ちて熟れ過ぎたトマトのようにぐちゃりと潰れた。

（「やっぱオレ、今までこいつらに頼り切って生きてたんだな……だがこれであのでかいやつを倒すだけなんだな、生き残ったみんなならきっとできるだろ……。んじゃ、後はみんなに任せて、先に行ったみんなのところに行くとするかなぁ……」）
　光の奔流と化してロープを斬り払ったハインツ・エクハルト（金剛級五番艦・e12606）もまたその中に巻き込まれて蟻のように潰されていたが、彼に後悔など微塵もなかった。魂すらも失い、消えゆこうとするハインツは、途切れそうな意識で静かに散って行った仲間達のことを想った。

「……瞬きの間に贄を全て切り落とすとは。いや、面白い。ネルガルスの退屈も、これで１秒は長く紛れることでしょう」
「かっこいい啖呵」
「かっこいい啖呵もうひとつくらい」
　鬨の声と言うよりも、それは最早獣の咆哮。呼気、血液、理性、思考、あらゆるものを吐き出すように声を上げながら、灼滅者、そしてケルベロス達は眼前に立ちはだかる『もの』へと一斉に飛びかかる。

●無貌の終幕
「ここで決着だ。後は無いぞ、リマーガ！」
「土曜日の朝からなんてことしてくれてんだよ！ この上テメーのクソくだらないゲームに付き合えだとォ！？ 上等だよ！ 付き合ってやる！ 」
「呪言戦などに付き合うつもりはありませんと言いましたよね？　わたしは正直者なんですよ」
　志賀野・友衛（大学生人狼・d03990）、二階堂・燐（雨に立つ亡霊・e33243）の言葉をない鼻で笑うリマーガ。だが、全てのロープを断たれたリマーガにもはや退路はなく、ただ戦うのみだ。
　とはいえその力は灼滅者やケルベロス単体のそれなど問題にもならないほどに強大だ。「アオーン！」
　果敢に暴れ回り、リマーガに喰らいついていた槌屋・康也（荒野の獣は内に在り・d02877）達が触手の一薙ぎで吹き飛び、ヒトとも呼べない物体と化す。
「邪神というのはどうしていつもこんなことばかりするのか理解できないのです」
　そのおぞましい光景すら狂気をエンジンに踏み越えて、紫藤・リューズベルト（メカフェチ娘・e03796）がライドキャリバーに跨り駆ける。キャリバーによる攻撃とオウガメタルによる回復、攻防一体の動きは確実にレーン・レーン（蒼鱗水龍・e02990）率いる【レプリフォース】のレプリカント達を初めとする味方の立ち回りを助けて。
「推理は得意分野じゃなかったが、戦闘になれば俺も闘える。 ああ、これまで皆が導いてくれた手がかりが、貴様を倒す力になる！ さあ、お前の狩のゲーム最終局面。貴様の陳腐なゲームもこれまでだ！」
　正気を焼き捨てた久条・蒼真（覇斬剣闘士・e00233）が幾つもの状態異常をリマーガに叩き込み、贄が断たれたその肉体の力を更に殺いでいく。
「ほう……この私の前で神話の、邪神の実在を騙るとはいい度胸だ。全ての邪神は彼の、そして彼の後継者たちの被造物であり、娯楽でのみ語られるべき存在だ。それが実在し、あまつさえ人理を侵すなど許せるものではないな。ただのヴィランではなく超越者たる邪神を騙るのならば、もっと遠大な計画を練るんだな。 尤も次はないが。 では、邪神を騙る哀れなものよ。 我を恐れよ」
　エリザベス・バーロウ（ラヴクラフティアン・d07944）が黒猫を思わせる足取りでするりとリマーガの懐に踏み込み、一撃。軟体質の体に、確かに長々と傷が刻まれた。吹き出す粘液を浴び、焼き溶かされながら、それでも目の前の『邪神』をエリザベスは見つめる。
　理屈ではない。ヒトの子の理屈など通用しない。つまりは考えず、ただ感じるばかりに全てを叩きつけるのみ。
　それがコツなのだと得心して、エミリオ・カリベ（星空と本の魔法使い・d04722）が杖を振りかぶる。瞬間狂気に煮えたぎっていた脳裏をよぎるのは、何より大切なあの笑顔。「色々と難しく考えないで目の前に立ち塞がる敵を何とかしないといけない。そうしなければ何が何だかよく分からないものに何が何だかよく分からないまま負けることになっちゃうから。僕はこんな訳の分からない所で立ち止まることは出来ないから……」
「rompe fuerza」
　その一撃が、リマーガの頭頂部に煌くピンク色の宝石を打ち砕く。
　ぐらり、その巨体が傾いた。リマーガは最後まで人を食ったような笑みを貼り付けたまま（無貌だけど）斃れていくのを、エミリオはもはや光の失せた瞳でただぼんやりと眺めるのだった。
　

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→（1）密室のデスゲームに、乗っかるふりをする
　（参加人数：78名　合計戦功点：31278）

→（2）化身の手がかりを見つけて死ぬ
　（参加人数：55名　合計戦功点：23496）

→（3）闇堕ち・暴走して、化身共を鏖（みなごろし）にする
　（参加人数：74名　合計戦功点：31393）

→（4）正気ならざる推理で、リマーガの居所を突き止める
　（参加人数：86名　合計戦功点：46261）

→（5）「リマーガの贄」を奪う
　（参加人数：128名　合計戦功点：42275）

→（6）リマーガと決戦！
　（参加人数：122名　合計戦功点：45566）