<ケルベロス・ウォー ファーストアタック>
●無限増殖機械軍の脅威
コードネーム「デウスエクス・マキナクロス」、ダモクレス。
無限増殖機械軍とも呼ばれる機械種族は今、地球を包囲するように接近して来ていた。
その巨大な姿は、万能戦艦ケルベロスブレイドのレーダーのみならず、全世界の天文台や個人によっても光学的観測されていた。
現在、地球に『ゲート』を持つ最後の種族となったダモクレス。
彼らとケルベロスの戦いは、第二次大侵略期が開始された直後から始まっていた。
幾度ものケルベロスとの激突の中で、ダモクレスは太平洋の海底に設けられていた、地球最大規模の資源採掘基地を喪失。
その後『東京湾マキナクロス』の地球への定着をケルベロスが阻止したこともあって、地球上での大規模な作戦行動に支障を来たすに至った。
以降のダモクレスは、攻性植物をはじめ、他の種族と連携をしながら活動するようになり、単独での行動を控えるようになった。
だが、それが『地球マキナクロス化』という大計画の前兆でしかなかったことは、既に明らかとなっていた。
計画のための動きの一つが、『ゲート』に依らない地球への侵攻だ。
デウスエクス最強種族たるドラゴンは、その強大な身体能力を用いて超光速移動を為した。
対して、ダモクレスは超光速宇宙船と化した本星『惑星マキナクロス』ごと移動して来るという荒業で、それを実現していたのだ。
そして今、ダモクレスの本星『惑星マキナクロス』は、既に太陽系へと侵入し、計画の最終段階へと入っていた。
機械化改造された、太陽系の惑星を用いた「グランドクロス」により、地球はマキナクロス化される寸前となっていたのだ。
『暗夜の宝石』の力を巡って月面遺跡で行われた激戦の末、戦わずして地球がマキナクロス化される事態は防がれた。
だが次善策として、ダモクレス側は惑星マキナクロスごと地球へと迫り、再度『マキナ・グランドクロス』を発動している。
地球を包囲する形で布陣したダモクレスの軍勢を破らない限り、地球は機械化されてしまうだろう。それを防ぐため、ケルベロス達は地球の命運を懸けた決戦に挑もうとしていた。
●宇宙での戦いに向けて(銀狐師団)
「戦場、広すぎない?」
というのが、救護準備を担当する銀狐師団のハインツ・エクハルト (光を背負う者・e12606)が率直に述べた感想である。
この問題は、どの師団にとっても悩みの種だった。
「宇宙空間自体は、そこまで問題じゃないんですよね」
若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)の言う通り、尋常な生物であればたちまち絶命する真空の宇宙空間も、ケルベロスやデウスエクスにとって問題とはならない。宇宙服などを身に着けずとも、普通に活動が可能だ。
「負傷して意識を失うと、そのまま宇宙の彼方に飛んでいってしまいますからね……」
この点では、下に落ちるとはっきりしているデスバレスの方がまだマシだったともいえる。
下手に目印になるようなものをつけると敵に狙い撃ちにされかねないし、音も響かないので、自分から助けを呼ぶことも困難だ。
「おまけに相手がダモクレスだから、通信機系もマインドウィスパーデバイスぐらいしかダメ、と……」
セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)も肩をすくめる。
結局、この問題に対してはヴァルキュリアの『光の翼』や各種のヘリオンデバイスをはじめとして、対策となるものを使ってなんとかするしか無かった。
戦闘中にでた負傷者は、地球方面へと放り投げた後にヘリオンで回収、万能戦艦ケルベロスブレイドに担ぎ込む流れとなる。
「ヘリオンなら、万能戦艦に回収されるまでに発見されることもそうそうない……はず」
リリエッタ・スノウ (未来へ踏み出す小さな一歩・e63102)の言う通り、現状で出来る手としては最良の対策だろう。
収容さえ出来てしまえば、後はどうとでもなるのだ。
「負傷者の収容先は、万能戦艦ケルベロスブレイドしかないですね……」
遮蔽物の一切存在しない戦場で、拠点を作るのはケルベロス達でも困難だ。
宇宙基準で求められる速度は、万能戦艦ケルベロスブレイドでも速いとは言えない。
季節の魔力の限界もあるのだろうが、この辺りは根本的に、魔導神殿群ヴァルハラを設計したアスガルド神が本格的な宇宙戦を想定していなかったのが原因と見られていた。
銀狐師団のケルベロス達は、救護の準備と他師団で必要とされるものも含めた貨物の搬入を同時に進めていく。
「例によって各国の学術機関から、観測データよろしく、という連絡が届いてたね」
「地球もおかしい人多くありません?」
「ビルシャナ大菩薩に月が乗っ取られてた時とかもイキイキしてたとか」
とはいえ、そういった人々の研究があってこそ、ヘリオンデバイスや決戦都市東京のような技術も生まれて来るというものだ。
超神機アダム・カドモンは、宇宙に平和をもたらさんとするケルベロスの理想を認め、ケルベロス達が勝利したら必要とされるであろうデータを預けることを約束した。
この戦いに勝利し、超神機アダム・カドモンとの約束通りにダモクレスの持つ技術情報を譲り受けることができたとしても、その技術を理解し、再現するだけの積み重ねが無ければ、広大な宇宙へ旅立つのは困難だろう。
ケルベロスが地球に出現して、まだ50年と少し。
何百何千年とグラビティを扱って来ている種族とは、技術的な積み重ねが異なる。
ダモクレスの『機械技術』は、それが使う者の素質に依存しないという点で、定命の者の多い地球にとっては得るところの多い技術となることが予想されている。
「でも、全ては勝ってから、ですね」
めぐみの言葉に、銀狐師団のケルベロス達は頷くのだった。
●応援募集(蒼鴉師団)
空を見れば、機械の惑星がある。
ダモクレス本星マキナクロスが地球に迫りつつあるのは、地球に生きる誰の目にも明らかだった。
ダモクレスとの決戦が近付いている事は、連日あらゆるメディアで放送されている。
この戦いが地球上にゲートを持つ種族との『最後の決戦』になるであろうこともまた、明かされていた。
蒼鴉師団は、世界の人々に、ダモクレスとの決戦に至る経緯を公開し、改めて決戦に向けた応援を募集していた。
ケルベロスが歪みの再発を防止するため、デウスエクスのコギトエルゴスム化能力をなくす決断を下したことは、賛意をもって受け容れられていた。
地球にデウスエクスが攻めて来なくなる以上、実戦経験豊富なケルベロスが多数おり、それを支える体制と、ケルベロスを人々が支える意志が統一されている『現在の地球』こそが、最強の世代となるのはほぼ間違いない。
今の世代のケルベロスが宇宙に平和をもたらしてくれるなら、それに越したことは無い、というのが地球の人々の意見では多くを占めていた。
シル・ウィンディア (鳳翼の精霊姫・e00695)らが、人々へ戦いを支えてくれていることへの感謝を伝え、この戦いを『最後の決戦にする』という決意を示したことや、各国首脳にも改めて強く協力を求めた効果もあるのだろう。各言語で設けられたWEBサイトには、人々からの熱の籠もったメッセージがひっきりなしに届いている。
応援を受けたケルベロス達は、地球の人々の『戦いの終わり』を望む意志に、決戦への決意を新たにしていた。
一方、募集したメッセージの中には『レプリカントをはじめとした世界の人々からダモクレスへ』という趣旨のものがあった。
親兄弟と引き離されたような場合を想定し、両者を結びつける思いがあれば、と考えていたのだが、
「反応、鈍いですね……」
蒼鴉師団のフローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)は思わず唸っていた。
「むしろダモクレスに対して敵対的な厳しい意見が多いな」
唸るフローネに、初期に送られてきたメッセージの内容を確認していた玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)は、そう所見を述べる。
「世代の問題もありそうですね」
ミレッタ・リアス (獣の言祝ぎ・e61347)が言う。
レプリカントは、感情を得て定命化したダモクレス。元は同じ種族だ。とはいえ、レプリカントの大半は定命化から世代を経ている。ダモクレスから感情を得て定命化した本人というのは、レプリカント全体でも、そう多くはない。
ましてやダモクレスの中には、レプリカントを集中的に狩るような者もいた。
「アダム・カドモンの発言や、今回の襲来自体に対する意見もなかなか……」
貴石・連 (砂礫降る・e01343)は肩をすくめて、メッセージの表示された画面を示す。
『ケルベロスの意見を受け容れたとか言っておいて、即座に攻めて来るな』
『地球を使ってギャンブルするのやめて欲しい』
『地球を機械化して、将来的に歪みへの対策が取れなくなったらどうする気なのか』
『というか機械化を広げる方針を止めろ』
「容赦無いなー……」
夢見星・璃音 (輝望の魔法少女・e45228)は苦笑する。
「私達とは違い、対抗する力も一切無い人達の意見ですからね」
「見え方も違うだろうな」
定命の知的生命体は、基本的にデウスエクスから対等の存在として認められていない。
定命でありながらグラビティを操り、己を認めさせたケルベロスは例外中の例外だ。
「しかし、機械化か……」
攻性植物が、オウガの本星プラブータをはじめ幾つもの惑星を滅ぼし、ドラゴンが螺旋忍軍の本星スパイラスを取り込み滅ぼしたことが判明しているように、デウスエクスの中には定命の者達はおろか、他の惑星と生命を犠牲にして何とも思わないものがしばしばいる。
地球の定命の者達をグラビティ・チェイン獲得のために殺し、今また地球をマキナクロス化しようと活動しているダモクレスが、その一種であることは、戦い続けて来たケルベロスも言われずとも理解している。
アダム・カドモンは、機械化の先に、未来の歪みに対処できる可能性が生まれる可能性に重きを置いている。
ダモクレスの機械化を広げるという方針は、揺らいでいない。
(「仮に、ダモクレスに降伏し、地球をマキナクロス化することを受け容れていたなら……」)
蒼鴉師団のケルベロス達は思わず考える。
その後はケルベロスも『歪み』への対策という御題目の元、宇宙にさらなる機械化を広げる軍勢の一員となっていたのだろうか。
「とにかく、だいぶ想定していた趣旨とズレるし、ダモクレスへの送信は止めといた方が無難かな」
「ええ……そうですね」
かくして、ダモクレスへのメッセージの送信は取りやめとなる。蒼鴉師団は少し早い七夕の季節の魔力を利用するべく企画された【TANABATA】を中心に、世界中の人々からケルベロスへの応援を募集する本来の役割に、全力を傾けることとなったのだった。
●テンションアップ(灰色狼師団)
灰色狼師団のケルベロス一行は、愛宕神社に戦勝祈願の神事のために訪れていた。
アルフレッド・バークリー(エターナルウィッシュ・e00148)は、人々の熱気に思わず目を丸くする。
「すごい賑わいですね!」
「ただ、これはちょっと、混雑しすぎのような……」
関係者用の入口から案内された青沢・屏 (光運の刻時銃士・e64449)は、祭りの会場に集まる人々の多さにそう懸念する。
灰色狼師団では、愛宕神社で行われる祭りにレクリエーション的にケルベロスが参加できるよう申し入れをしていた。
急とはいえ、ケルベロスからの頼みとあって、祭りの運営側は当然受け容れてくれた。
が、それが広まると、自然とケルベロスを見るのが目当ての客が訪れる数も増えてくる。
なにせケルベロスは有名人の集まりだ。知名度は高く、アイドルや芸能人なども多い。
祭りの会場は、常にない賑わいを見せていた。
会場のあちこちで、訪れたケルベロスと写真撮影を行う人々の姿が見られている。
「リフレッシュや懐かしい風情を味わってもらうという趣旨だったんですが……」
「人々との触れ合いで士気が上がる部分もあるでしょうから、これはこれでしょう」
守るべき人々との交流に、表情を明るくしている
さらに翌日、6/25は、明治神宮野球場を借りての催しが行われ、夏至祭として七夕祭りとして、ダンスコーナーやケルベロスからの願いを書いた短冊を吊るすなど、粛々と催しは進んでいった。
万能戦艦ケルベロスブレイド内でも、天蠍宮リラクゼーション施設を会場としてパーティが催される。
戦争に関する事前ブリーフィングなどを終えて迎えた戦いの前日、万能戦艦ケルベロスブレイド内には、ケルベロス達を集めての出陣式が行われていた。
壇上に立つ栗山・理弥(ケルベロス浜松大使・e35298)が声を張り上げる。
「2015年の夏から始まったケルベロスの戦い。
デウスエクスの侵略から地球を守るだけで精一杯だったケルベロスが、ダモクレスを率いる十二創神たるアダム・カドモンからも『尊敬すべき敵』と認められるまでになったのは一人一人が自分の守るべきもののために戦い、よりよい未来を作るため尽力してきた結果だと思う。
ダモクレスは地球をマキナクロス化するため、信念を持って戦いを挑んでくる。俺たちケルベロスも、これまで守ってきた地球を守り抜くため、さらにその先の未来へ行くために正々堂々戦って決着をつける時が来た!。
帰るまでが戦争だ、最後の戦いも勝利して皆で地球に帰ろう!」
理弥が拳を突き上げると、ケルベロス達もそれに応じて声を上げる。
そして、万能戦艦ケルベロスブレイドは艦首を上げ、地球の人々が見守る中、宇宙へ向けて高度を上げていった。
●近衛軍(緋色蜂師団)
万能戦艦ケルベロスブレイドは、地球の重力を振り切り宇宙へと飛び出した。
最初にケルベロスの目に飛び込んでくるのは、間近に迫った巨大な機械惑星、『惑星マキナクロス』の姿だ。
さらに、それよりは遥かに小さいながらも、地球を囲むように4つの機械惑星が展開していた。
マキナクロス方面には、地球を包囲する形で布陣したダモクレスの軍勢の中でも、最も強力な部隊が展開している。
アダム・カドモン直属の『近衛軍』だ。
惑星マキナクロスの守備艦隊と分かれ、地球包囲の指揮を務めるのは、『幾何学』ゲオメトリアと『音楽学』ムシュケー。
地球での戦いでも姿を見せた2体は、多数の己の量産型を従え、さらにそれを上回る数の星戦型ダモクレスを揃えて、ケルベロス達を迎え撃つべく待ち構えていた。
「やはり量産型が来たようじゃな……!!」
端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)の号令一下、緋色蜂師団が近衛軍の方面へと切り込んだ。
高速で戦場を通過しながら、万能戦艦ケルベロスブレイドから、緋色蜂師団をはじめ、マキナクロス方面への奇襲を仕掛ける師団が飛び出していく。
『音楽学』の量産型達から、真空の宇宙空間であっても無関係に、音楽グラビティの大音響が響き渡る。
それを背景に、量産型ゲオメトリアの集団が、紫に輝くブレスで戦場を切り裂いて来た。
対する緋色蜂師団の側も、艦載機の速度そのままに敵陣へと突っ込んだ。精鋭中隊と通信中隊が、大型のダモクレスの間へと飛び込み、敵戦線へと浸透を図る。
同時に放たれるのは、艦載機にくくりつけられた等身大ケルベロス人形から通信で録音されたケルベロス達の『心の叫び』だ。
「上手くいくといいけど……」
火倶利・ひなみく (スウィート・e10573)が、心配そうに見守る。
音がしない宇宙空間の中、通信がダモクレスに届いているのかどうかはすぐには判断がつかない。
「ダミー程度では騙されてくれないか!」
銃弾を敵に叩き込みながら、レヴィン・ペイルライダー (キャニオンクロウ・e25278)は近衛軍側がダミーには目もくれず、ケルベロス達だけを狙って来ているのを認識していた。
ケルベロスの側もそうだが、本当に実体を持った分身を創り出すグラビティでもなければ、ダミーと敵を見間違えることはまず無い。
目視するだけで、攻撃した時の命中率が分かるためだ。
ゲオメトリアのエネルギーチャージを妨害せんとする精鋭中隊を量産型の一団が阻み、量産型ゲオメトリアの背に乗っていた近衛軍のダモクレス達もまた、浸透を図る者達を包囲し、撃破しにかかる。
「種類は多いけど、主力は想定通りみたいだね」
七宝・瑪璃瑠 (ラビットバースライオンライヴ・e15685)は、出現しているダモクレスの機体を確認し、そう呟く。
敵機の大半について、緋色蜂師団では情報を収集し、対策することが出来ていた。
ゲオメトリアとムシュケーの量産型だけでなく、アリトメティカの量産型や、ゲンドゥルと同型の魔術師型ダモクレス。想定されている攻撃への対策は充分にできている。
緋色蜂師団は近衛軍からの攻撃のダメージを抑えつつ、大きな打撃を与えることに成功するのだった。
●ギガンティック(黄鮫師団)
立方体型のダモクレスが集まり、半透明の球状のエネルギーそのものを艦にする。
そんな独特な思想の艦達からは、多数のダモクレスが出撃していた。
生活環境を無視した造りは、ダモクレスならではだろう。
本来ならば、艦を防衛するための戦力であるダモクレス達は、白色のキューブそのもの、あるいはそれを繋ぎ合わせたかのような、統一感のある姿をしている。
防衛戦力を対ケルベロス用の戦力として展開している様は、この一戦にダモクレス達が重きをおいていることを伺わせた。
それらキューブ状のダモクレス群を統率するのは超大型ダモクレス『ギガンティック』。
名前が示す通りの巨大なダモクレスは、背中の大砲をケルベロス達へと向け、解き放つ。
集束された光線が砲身の動きと共に宇宙空間を薙ぎ払い、同時に周囲のダモクレスの放つ光弾が展開したケルベロス達を狙い撃って来る。
『西からの風に靡くは炎縄、焦がせや焦がせ!』
『《蠍》には毒がつきものさ!』
ロジオン・ジュラフスキー (筆持つ獅子・e03898)とアルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)の放つ魔術の炎弾と銃弾が、飛来するダモクレスを貫き、破壊する。
彼らを皮切りに、ギガンティックを守る敵部隊の戦力を、黄鮫師団は迅速に押し込んでいった。
恐れを知らぬ機械の群れは、それでも一心不乱にケルベロスを撃破せんと飛来。
黄鮫師団は強固な編成で、統一されたデザインのダモクレス達を、次々に破壊していく。
「次は、あいつを黙らせる……!!」
ある程度戦力を削ってしまえば、脅威となりうるのはギガンティックだけだ。
ケルベロス達の中でも、特に実力に優れた者達が、ギガンティックを包囲し、撃破にかかる。
「おらぁッ!」
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)のバトルガントレットが唸りを上げた。
光輝く『聖なる左手』が、巨大なギガンティックを引き寄せき、漆黒纏う『闇の右手』が、その装甲を打ち砕く。
『もっと、喝采を!!』
ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)のアームドフォートが変形、翼のように展開した。翼状のパーツから、高威力のエネルギーキャノンが放たれ、ギガンティックの破壊された装甲部へと突き刺さる。
巨躯のダモクレスの体内で爆発が生じ、それは全身の崩壊へと繋がっていった。
『損傷甚大。撤退せよ、撤退せよ……』
ギガンティックがモノアイを点滅させながら通信を放つとダモクレスは退き、黄鮫師団はこの宙域の制圧に成功する。
「もっとも、これ向こうにもまだいるな……?」
マキナクロスの空に見える巨大な球状の戦艦型ダモクレスの姿に、ケルベロス達は同型の機体達が再び現れることを予感していた。
●THE FIVE-O(白馬師団)
近衛軍と緋色蜂師団との交戦が繰り広げられている空間の端を抜けるようにして、白馬師団は小型艦載機群で宇宙を疾駆する。
目指すのは、巨人型ダモクレス『THE FIVE-O』率いる敵部隊だ。
「あれか! 派手だな……」
遠距離からでも、ケルベロス達は赤と青で彩られた『THE FIVE-O』の巨大な姿を捉えることが出来ていた。
対象物が少なく、遠近感のつかみにくい宇宙空間。
戦艦ほどではないにせよ、FIVE-Oの体躯は周囲にいる人間大のダモクレスを圧倒している。
その動きは、あたかも鈍重であるかのようにも見えるが、人間大と同じように動くなら、相当に俊敏に思えることだろう。
動きはじめるFIVE-Oの肩から、蟻を思わせる装甲を持つダモクレス、報復型バグトルーパー『ヘイト』がケルベロスの迎撃に動き出す。
『気をつけることだ、レディ。ケルベロス達は強敵だ』
『知ってるわ。こっちはもう何体もやられてんのよ。でも報復はするわ。それがあたしの存在意義なんだから』
FIVE-Oの肩を飛び立った『ヘイト』を中心としたダモクレス達が白馬師団の一番槍部隊との交戦に入る。
「彼女が前線指揮官ですね!」
セレネー・ルナエクリプス (機械仕掛けのオオガラス・e41784)がそう見て取ると同時、事前の作戦通りに、白馬師団は『ヘイト』による星戦型ダモクレスへの指揮を妨害にかかる。
敵の体制は、『THE FIVE-O』が後方に控えての砲撃に専念し、『ヘイト』が前線に出て来る形だ。
星戦型とひとくちにいっても、月面遺跡に出現した星戦型ダモクレス達は、戦場にいる他の星戦型量産型よりも大幅に高い実力を持っている。
その性能を最大限に発揮し、指揮統制を図る『ヘイト』を、白馬師団は包囲、前線指揮に集中させまいと攻撃を繰り返していった。
「奇襲だけで制圧するとは行きませんか」
マキナ・グランドクロスを構成する惑星型ダモクレス達がいるが、マキナクロス方面は、反対側よりも多くの戦力が集っているようだった。
ひとしきり打撃を与えたところで、白馬師団は後退を開始する。
『逃がすか!』
報復型の名に相応しく、追撃を仕掛けようとする『ヘイト』。
「来たれ、雷鳴!」
だが、カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)の詠唱と共に、『ヘイト』の頭上に宇宙空間らしからぬ「雷雲」が現れる。
そこから落ちる雷が、蟻を模したバグトルーパーの装甲を撃った。
「……!」
大きなダメージを受け、よろめく『ヘイト』。その間に、白馬師団のケルベロス達は、万能戦艦ケルベロスブレイドへと撤収していった。
●超変形合体ラセンロボ(金糸雀師団)
『皆の衆、出陣でござる!』
「「「応ッ!!」」」
超変形合体ラセンロボからの通信に応じるのは、色とりどりの忍者装束を身にまとったデウスエクス達。ダモクレスに雇われる身となった、螺旋忍軍達だった。彼らはラセンロボの指示の元、金糸雀師団の迎撃に動き出す。
『彼らの戦意を煽るなど、容易いことでござる』
号令一下、金糸雀師団に襲い掛かる螺旋忍軍の姿をカメラに収めながら、ラセンロボの電子頭脳はそう演算する。
ダモクレスに従うことを選んでいる螺旋忍軍に、もう後はない。
地球に残るゲートは、ダモクレスのもののみ。
『様々な種族の秘技を盗む』という螺旋忍軍の存在意義はとうに失われている。
が、もし、ここでダモクレスのゲートまでが破壊されれば、螺旋忍軍も行き場を失う。
地球に取り残されれば、定命化によって、逃れられぬ死が待ち受けていることだろう。
一方、万能戦艦ケルベロスブレイドから飛び出した金糸雀師団の方も、この動きを把握していた。
「読みが当たっタな」
「螺旋忍軍残党がメインね!」
君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)や大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)が、敵の戦力を冷静に観察する。ダモクレスから身に付けたであろうグラビティを操るとはいえ、螺旋忍軍は、星戦型ダモクレスと比べれば明らかに実力面で劣っていた。
つまり、この方面はマキナクロス方面と比較すれば手薄と言える。
ダモクレスなどに掴まって宇宙を移動して来る螺旋忍軍。
地上であれば、螺旋忍軍の機動性や奇抜な動きはケルベロス達を攪乱するに足るものであったかもしれないが、この宇宙空間ではそれもあまり役に立ってはいなかった。
むしろ、艦載機を利用した宇宙空間での行動訓練を積んでいたケルベロス達の側の方が、高速戦闘においては一枚上手だ。
風峰・恵 (地球人の刀剣士・e00989)は、艦載機を蹴って飛び移りながら、螺旋忍軍を斬りつけていく。
「宇宙は振り落とされた際に復帰の心配がなくて楽ですね」
「う、羨ましい……あの万能戦艦を我らのものにできれば……!!」
「その盗人根性はどうにかならんのか」
リューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)は、螺旋忍軍がこぼした呟きにそう言いながら、リボルバー銃を撃ち放つ。
ラセンロボの周囲にいた螺旋忍軍は、たちまちにして、その大半が撃破され、宇宙に散っていくのだった。
●ドミネイター・ドラゴスネーク(紫揚羽師団)
竜業合体ドラゴンとダモクレスを比較した時、大きく異なるのはその「速度」だ。
宇宙空間での戦闘に対応した星戦ダモクレスといえども、宇宙空間を超高速で航行することができるのはごく一部に限られている。ダモクレス達は、特定の高速移動が可能な巨大ダモクレスを母艦とし、そこを拠点に出撃することになっていた。
地球を包囲する形で展開したダモクレス達もまた、グランドクロス艦隊の各艦を拠点として出撃している。
そんな敵部隊の一つが、ドミネイター・ドラゴスネーク率いる部隊だ。
その先陣を切って突っ込んで来るのは、ケルベロス達と月面遺跡で交戦した星戦型ダモクレス、『アボミネイター・クロックブル』。
黒と赤に染まった角を振りかざし、猛牛型ダモクレスは宇宙を高速で突撃して来る。
万能戦艦ケルベロスブレイドからばらまかれたダミーデブリに紛れて戦場に近付いていく紫揚羽師団の第一陣は、その様子を捉えていた。
「やっぱ、この戦場に現れたか……」
尾方・広喜 (量産型イロハ式ヲ型・e36130)は、嫌な予感が当たってしまったと思案する。
アボミネイター、すなわち《憎悪者》の二つ名を持ち、思考を『憎悪』に固定されたクロックブルは、周囲の敵が倒されるたび、その突撃の勢いを増していた。
背中のブースターは、今にも弾けんばかりに震えている。
空気があれば、轟音がケルベロス達の耳にも届いていただろう。
「『周囲で仲間が撃破されるたびに戦闘力を向上させる』という機能を持つはずだ。早急に撃破したいところだが……」
交戦経験のあるマーク・ナイン (取り残された戦闘マシン・e21176)は、警戒を強める。
だが、タクティ・ハーロット (重喰尽晶龍・e06699)はクロックブルの様子を観察し、首を傾げた。
「いや、あれ強化止まってないか?」
「能力の限界か!」
マークは直感的に理解した。多数対多数が入り交じる戦場においては、クロックブルの機能はあっという間にその限界に達している。
「だとすれば、特に対処を焦る必要は無いな」
「先に数を減らすか」
そう判断した直後、後方からのダモクレスの砲撃が、万能戦艦ケルベロスブレイドからばらまかれたダミーデブリを、その影に隠れようとしたケルベロス達ごとまとめて吹き飛ばす。
デブリと一緒に破壊された小剣艦載機から、別の剣へと飛び退くと、紫揚羽師団のケルベロス達は敵への接近コースへ入った。
それと同時に、敵の下方から、ケルベロス達の第二陣が突っ込んでいく。
精強な第一陣で突進して来るクロックブル他の部隊をいなし、銃弾やビーム、ミサイルといったダモクレスの迎撃をかいくぐりながら、ケルベロスは反撃を繰り出していく。
3月の戦いで、万能戦艦ケルベロスブレイドとダモクレス達とは交戦している。
その時のデータが既に伝わっているのだろう。高速で飛来するケルベロス達に、ダモクレス側は確実に反応していた。
●ザ・ニビル(黒猫師団)
黒猫師団は、グランドクロス艦隊による迎撃を受けつつも、漆黒の惑星型ダモクレス『ザ・ニビル』への接近軌道に入っていた。
マキナ・グランドクロスを実行する都合上だろう、この巨大な惑星型ダモクレス達は、配置についた時から動いていない。
綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)が、観測結果を報告する。
「各機械惑星の大きさは、およそ10km程度ですか」
「竜業竜十字島よりは小さいですね」
華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・e49233)の言うように、大きさで言えば地球上で戦った竜業竜十字島の方が巨大だ。
だが、惑星型ダモクレスは純粋に『単体』であるという点が、竜業竜十字島との違いだろう。
必ずしも、デウスエクスの大きさは強さに比例するわけではないが、大きいこと、ただそれ自体が脅威になりうるのもまた事実だ。
ザ・ニビル付近に展開した護衛部隊のダモクレス達の中、ひときわ目立つ奇妙な頭部を持つダモクレスがいた。
「やはり、事前の計算よりもケルベロスは強力ですね」
計器のような頭部を持つタイプ・ジョン。
地球の歴史上の天才達の頭脳を再現せんとして造られた、特殊なダモクレスの1体である。
彼は月面遺跡での戦いにも出撃していたものの、ケルベロス達と交戦することはなかったが、マキナ・グランドクロスを成立させた立役者の一人でもあった。
ケルベロス達によって、ダモクレスに利用できないよう破壊された月面遺跡だが、ダモクレスは僅かに残った無傷の部分から、暗夜の宝石にアクセスすることにだけは成功していた。それがあって、マキナ・グランドクロスはなんとか成立している。
「超神機らしからぬ計画ですが……今度こそ、地球のマキナクロス化を実行しましょう。ザ・ニビル」
タイプ・ジョンの声に答えるように、ザ・ニビルの表面が波打った。
奇襲攻撃を仕掛け、護衛についていたダモクレス達に損害を与えた黒猫師団からも、その異様な光景は見えていた。
黒く巨大な『波』が、ケルベロス達を呑み込まんと押し寄せてきている。
その波に乗る形で、ダモクレス達も反撃に転じていた。
「波に呑み込まれるなよ!」
ザ・ニビルを覆う汚染物質の塊。
後方についていた部隊が放棄したダミー人形などが、その波に一瞬で呑み込まれた。
体積が一定である以上、一度に『波』を伸ばせる方角は限られている。
ディークス・カフェイン (月影宿す白狼・e01544)達は、それを把握すると、艦載機を用いて高速移動しながら各方面からの攻撃に移る。
『高まる熱に上限は無く……絡まる深さに際限は無い』
ディークスの詠唱と共に宇宙が割れた。現れる焔熱を宿す鎖が、たちまちダモクレスを絡め取り、粉砕する。だが、戦況を俯瞰して、ディークスはある判断を下していた。
「これは奇襲だけで倒し切るのは無理だな」
即座にそう見切れたのは、事前からそう予測していたこともあるのだろう。
「可能な限り敵の頭数を削る、やるぞ!!」
そうして、黒猫師団のケルベロス達はダモクレスに打撃を与えると、速やかに撤収していく。
かくして、万能戦艦ケルベロスブレイドに再集結したケルベロス達は、本格開戦に向けて治療や戦闘の準備を行っていく。
誰もが、この戦いが第二次大侵略期の最後の戦いになることを感じていた。
師団 | ファースト アタック | 結果 |
黒猫師団 |
(19)奇襲 |
奇襲により「(19)ザ・ニビル」の戦力に1200のダメージ!
有力敵「タイプ・ジョン」の存在が確認されました。ザ・ニビルは表面部に敵が隠れるのは困難らしく、ゴッドサイト・デバイスで有効に敵の位置把握ができました。
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銀狐師団 |
救護準備 |
ケルベロス全体の重傷死亡率が4%まで低下!
救護が困難な環境ながら、可能な限りの対策を講じました。
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灰色狼師団 |
テンションアップ |
戦力「1350以下」の戦場を無視可能に!
Battle1戦あたりの減らせる敵戦力が「135」に!
お祭りは思わぬ混雑となりましたが、ケルベロスが地球の人々と直接触れ合う機会になったようです。
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白馬師団 |
(6)奇襲 |
奇襲により「(6)THE FIVE-O」の戦力に1300のダメージ!
有力敵「報復型バグトルーパー『ヘイト』」の存在が確認されました。
宇宙空間での戦闘に対し、ヘリオンデバイスの使用などで対策を講じ、有効に奇襲攻撃を行いました。
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蒼鴉師団 |
応援募集 |
各ターンの重傷からの復活率が「55%」に上昇!
人々への感謝を伝えると共に【TANABATA】を世界に広めつつ、人々からの応援を募りました。
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金糸雀師団 |
(9)奇襲 |
奇襲により「(9)超変形合体ラセンロボ」の戦力に1400のダメージ!
この戦場は、多くが螺旋忍軍主体のため、星戦型ダモクレスと比較的して質は高くないようです。
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紫揚羽師団 |
(7)奇襲 |
奇襲により「(7)ドミネイター・ドラゴスネーク」の戦力に1350のダメージ!
有力敵「アボミネイター・クロックブル」の存在が確認されましたが、特殊能力を恐れる必要はなさそうです。
この戦場に限らず、ダモクレスには頑健が主体のものが多いようです。
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緋色蜂師団 |
(2)近衛軍 |
奇襲により「(2)近衛軍」の戦力に1400のダメージ!
出現する敵に関して、具体的に優れた考察が出来ていました。
この戦場の敵の質は、(22)(23)を除き最も高いようです。
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黄鮫師団 |
(3)奇襲 |
奇襲により「(3)ギガンティック」を制圧!
有力敵ギガンティックは撤退しました。なお、同型の量産機群が、本星マキナクロスに展開しているようです。
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今回の「テンションアップ」
戦力「1350以下」の戦場を無視可能に!
Battle1戦あたりの減らせる敵戦力が「135」に!