デスバレス・ウォー ファーストアタック

ウォーレン・ホリィウッド VS 死神『氷獄』ヴェロニカ

<デスバレス・ウォー ファーストアタック>

●冥府の海にて(灰色狼師団・緋色蜂師団)

 死神ザルバルクは、冥府の海の「海水」が地上において取る姿の一つである。
 そして、万能戦艦ケルベロスブレイドは半径8km以内において、ザルバルクを『剣』に変化させ、増殖を封じることができる。

 その能力の結果として、冥府の海にはここ数日、局地的に剣の雨が降り注いでいた。
 万能戦艦ケルベロスブレイドの周囲には、この冥府の海にあって唯一、水の無い空間が球状に広がっている。
 その天井からは、ザルバルクが変化した無数の剣が雨のように降り注ぎ続けているのだ。
 が、落下する剣も、最高時速5万kmを出せる万能戦艦ケルベロスブレイドに追いつくことはない。

 先の電撃戦でも確認されたように、ケルベロスも、ザルバルクが変化した剣も、ある一定の方向に向けて「落下」するようになっている。つまり、この海にも重力が働いていることは判明していた。
 兵庫県鎧駅付近から冥府の海へ突入した万能戦艦ケルベロスブレイドは、ザルバルクの変化を伴いながら、重力方向へと高速で移動し続けている。
 万能戦艦ケルベロスブレイドによる「下方向への全力飛行」は、前方に現れるザルバルク剣を押しのけながらのものだ。
 もっとも、グラビティでもない剣に当たるだけでは、万能戦艦ケルベロスブレイドの装甲に傷一つすらつかない。
「……っと、まあ微妙に揺れてはいるな」
 緋色蜂師団のレヴィン・ペイルライダー (キャニオンクロウ・e25278)は、艦内で準備を進めるケルベロス達の元へと向かいつつ、艦に走る微細な震動を感じていた。
 彼が背負っているのは、艦内で働くケルベロス達に提供するための料理だ。
 テンションアップのための行事に参加している時間の無い者達にも、楽しんでもらおうという心配りである。

 現在、主に艦内では、地球上で応援募集に当たる師団を除く7師団が作戦の準備を行っていた。
 中でも、最も派手に動き回っているのは緋色蜂師団だ。
 艦内に設けられたモニターでは、有志によるテンションを盛り上げんとするステージ企画の様子が放映されており、艦内各所にはケルベロス超会議を模したパビリオンのような施設から、出店まで用意されている。
 必要とされる物資は、太平洋上にある双児宮ギンヌンガガプの門を通じ、他の物資ともども転移されて来ていた。
「こういうのを色々と企画するのも大変だね、本当に」
 それらを差配する櫟・千梨 (踊る狛鼠・e23597)をはじめ、ケルベロス達が訪れても良いよう準備を進める緋色蜂師団のケルベロス達は大忙しだった。

 基本的に、拠点は先月の日本列島防衛戦と変わらず万能戦艦ケルベロスブレイドなので、消耗品を除けば前回のものがそのまま使えている。
 最も大規模なのは、灰色狼師団が求めた酸素補給ツールの類だろう。
「空気は無いのに、重力はあるんだよね……」
 救護を行う手順を打ち合わせながら、社守・虚之香(月光に融ける蒼白の拳・e06106)はこの空間の奇妙さを思った。
 艦内で行われた、灰色狼師団と緋色蜂師団の共同講習会でも話題とする予定だが、戦いは真空の有重力空間での空中戦となる。

 既に、万能戦艦ケルベロスブレイドは地球で最も深いとされるマリアナ海溝の深度など軽々と超えた深さを、デスバレスの深海層に向けて潜り続けている。
 それが経過して、既に数日。
 虚之香は勿論、艦内のケルベロス達も、冥府の海(デスバレス)という場所が異様に広いことには気付いていた。
 撤退した『氷獄』ヴェロニカ達が、自分達に先んじて防衛ラインを構築することが予知されている以上、死神達には何らかの移動手段があるのだろうが。
「他のデウスエクスは他の『星』から来ていましたが、ここは完全に『別の世界』ですね」
 アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)は改めてそう感じる。
「仮に惑星だとしたら、地球、惑星プラブータ、ジュエルジグラット……これまで私達が直接赴いたことのある、どの星よりも圧倒的に大きいことは間違いないです」
「でも、外の重力は地球と同程度ですよね……?」
 前回の戦闘や、ザルバルクの剣が落下して来る速度などからも、重力は観測されていた。
 艦内の各神殿に、救護のためのブースを設ける作業を進めるディッセンバー・クレイ (余生満喫中の戦闘執事・e66436)や青沢・屏 (守夜人・e64449)も、つくづく奇妙な空間だと感じていた。
 物理法則すら、ケルベロス達の住む宇宙とは違うのかもしれない。
 加えて冥府の海を満たす『水(ザルバルク)』の膨大さと来たら、もう呆れる他ない。これが地球に出れば、全て死神ザルバルクに変わりうるというのだ。
「地球に現れていたのは、本当に『染み出したごく一部』だったんですね」
「あんまり、水には入らない方が良さそうだね」
 ケルベロス達は、改めてそう結論するのだった。

●応援募集(白馬師団・蒼鴉師団)

 白馬師団と蒼鴉師団の両者は、世界の人々からの支持を取り付けるために奔走していた。
 白馬師団が主にマスコミを使った番組等でのアピールや各国首脳との対応を、蒼鴉師団が世界の人々の応援の集約を、それぞれ重視して活動する形だ。

 横浜の日産スタジアムでは、白馬師団の主導で、特別報道番組の収録が行われていた。
「今回の戦いの目的は、地球の『冥府の海化』を起こさないようにすること、そして聖王女の救出にあります」
 イリス・フルーリア (銀天の剣・e09423)は、画面の前の人々に向けて、改めてそう説明する。

 地球の海を冥府の海と化そうとした冥王イグニスの最初の攻撃は、ケルベロスによって阻止することが出来た。
 だが、冥王イグニスはいまだ健在であり、地球を狙い続けていることには変わりがない。

 海は、地球上の大気と水の循環において重大な役割を担っている。
 それが冥府の海の水=ザルバルク=イグニスにそっくり入れ替わられたらどうなるか。
 幾つかのシミュレーションが行われたが、過程がどうなるかの違いこそあれ、どの予測も最終的に「地球の生命が甚大な被害を受ける」ことに変わりはなかった。

 加えて、冥府の海には、海どころか地球を丸ごと水に変えても有り余るだけの水がある。
 つまり、冥王イグニスは、似たような作戦を何度も繰り返すことができるのだ。
 唯一のゲートを破壊すれば侵略を絶てる(ドラゴンのような例外はあるが)デウスエクスと異なり、死神はデスバレスと地球を、一定の条件があれば繋げるらしい。
 死神は、他のデウスエクスのようにグラビティ・チェインに頓着せず、『滅ぼす』という行為を当たり前のようにとって来る種族だった。彼らが本格的に動き出した以上、その脅威を絶たねば、同じことの繰り返しだ。
「その鍵を握るのが、聖王女エロヒムです」
 イリスは、救出への意義を強調する。
 もっとも、彼女はデウスエクスとはいえ、地球の人々のために戦い続けた存在として、一般人のオラトリオを中心に、現在の地球においても半ば神格化されているような存在だ。救うことへの否定的な反応は、皆無に等しかった。

「もっとも、死神は、かつて聖王女を蘇生(サルベージ)しようとしたことがあるので、おそらく死んではいるのでしょうが……」
 各地のサテライト会場との打ち合わせをしながら、カルナ・ロッシュ(e05112)はそう思う。彼女をイグニスから救出し、冥府の海そのものをどうにかしなければ、死神との戦いは終わらないのだ。

 一方、蒼鴉師団は一般の人々からの応援の集約に努めていた。
 一部のケルベロス達を撮影したドキュメンタリー映像を放映したり、師団の活動に密着取材を許したりと、マスコミとの連携も行っていく。
「しかし、気が休まらないな、これは……」
「撮影現場ドキュメンタリーみたいですね」
 撮影クルーを同伴させつつ各国を巡る機内で、陣内やミレッタ・リアス (獣の言祝ぎ・e61347)は苦笑する。

 なお【サウザンド・ウィッシュ・プロジェクト】と題された、『青い星型のもの』を身に付けて応援をアピールする、というプロジェクトは、
「イスラエルを応援する意図が?」
 と各国の大使(主にイスラム諸国)に真剣な顔で確認された結果、『地球を模した球状のもの』に落ち着いたりしている。
「焦りました……」
 と、フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)が徹夜(インソムニア)で企画を作り直した後でぶっ倒れるなど、ちょっとしたトラブルはあったが。

 そして、【Future-Proof】と題された、サウザンドピラーを用いたセレモニーが、各国で行われていた。
 地球の危機を乗り越え、より良い未来を掴む。
 そのための願いをかけたセレモニーだ。
 マヒナ・マオリ(e26402)やシル・ウィンディア(e00695)、夢見星・璃音(e45228)、ミレッタ・リアス(e61347)。
 地球を侵略しているデウスエクスは、残りわずか。
 だが、地球を真の意味で護るにはどうすれば良いのか。
 地球に攻めてきているデウスエクス以外にも、宇宙にはまだ多くの種がいる可能性が高い。
 宇宙を蝕む、グラビティ・チェインの枯渇現象の解決という遠大な目標を目指し、彼らは人々の祈りを求めるのだった。

●奇襲攻撃開始

 万能戦艦ケルベロスブレイドは、敵の第3次防衛ラインへと近付きながら、速度を落としていった。雷神砲とグラビティ・ラムが準備され始める。

「我らはこれより、死の海へと挑む。
 敵に回る者の中には、我らが屠ってきた者どもさえも含まれる。 
 そう。我らの重ねてきた勝利は、全て敵を屠り、滅ぼしてきた歴史にも等しい。
 此度我らの前に立ちはだかるのは、そうした歴史、我らの過去より来たる者じゃ。

 それでも、我らは戦い続けてきた。
 勝利のために、大切なものを護るために、明日へと限りある命の光を繋ぐために!

 この戦いに果てはあるのか。
 戦いの果てに、何を掴むのか。

 冥府の底に聖王女と見えたとき、我らはきっと問われることじゃろう。
 戦いの果てにあるものを。
 デウスエクスを滅ぼし尽くすまで戦い続けるのか、否かを。

 その問いに対して、此処で答え合わせするようなことはするまい。
 答えは、皆それぞれの胸に灯してくれればそれでよい。
 その灯を掲げて、我らは死の海に挑むのじゃ。

 往こう。
 地獄の底に、明日への希望を掴み取るために。
 今こそ戦いのときじゃ!!」
 緋色蜂師団の端境・括(e07288)の演説を受け、ケルベロス達は降下を止めた万能戦艦ケルベロスブレイドから、小剣型艦載機と共に飛び出していく。

 イルカルラ・カラミティを中心とした第二次防衛ラインへの、万能戦艦ケルベロスブレイドによる攻撃は不意打ちと呼べるもので、敵の頭数自体は、無力化できるザルバルクを除けばそこまで多くはなかった。
 対して第3次防衛ラインは、その際に倒した敵の何倍もの数で構成されていた。
『氷獄』ヴェロニカを筆頭とする『奈落の兵団(ヴァルキュリア・アビス)』は、完全に警戒体制をとって万能戦艦ケルベロスブレイドを待ち受けている。

 主戦場で万能戦艦ケルベロスブレイドを食い止め、四方から接近と着艦しての攻撃を図る敵に対し、ケルベロス側からも5つの師団が迎撃に向かう。
 万能戦艦の照明機能が、戦場が煌々と照らし出し、ケルベロス達の目に、敵の姿を映し出した。

●『死病の殲滅騎手』ペイルライダー

 黙示録で地上に滅びをもたらすという四騎士の名を持つ、大量虐殺に特化した死神「殲滅騎手」。彼女達は、奈落の兵団の別働隊を率いて万能戦艦ケルベロスブレイドへの接近を図っていた。
 そのうち、ペイルライダー率いる部隊に対し、黄色の旗の元に集った黄鮫師団が迎撃に当たる。
「一気に殲滅を図ります。皆さん、準備を!」
 マインドウィスパー・デバイスを通じて響くロジオン・ジュラフスキー (筆持つ獅子・e03898)の号令一下、黄鮫師団は一気に敵に食らいついた。

「マッスル!」
「もっと、喝采を!」
 相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)のマッスルキャノンが、ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)の機械の翼が、迫る奈落の兵団を撃ち落とす。
 彼らは小剣型艦載機を駆り、ヴァルキュリアに似た、黒い鎧を着た『奈落の兵団』を食い散らしていた。
「だが、こいつらは完全にただの護衛だな」
「彼女を通せれば良い、ということでしょうか」
 部隊の中核であるペイルライダーは、ヴァルキュリア達に守られながらも健在だった。
 彼女が放つ「死病」のオーラの強力さは見て取ることが出来た。
 真空中すらをも伝わり、万能戦艦ケルベロスブレイドに至ろうとしている。
 そのオーラに触れるはしから、金属さえもが蝕まれているようだった。
「あいつを艦に近付けさせるな!」
 敵の狙いは、すぐに伝わっていた。アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)の銃弾が、ペイルライダーを貫くのを皮切りに、彼女の周りにいたヴァルキュリア達が、次々と撃ち落とされていく。
「これでは、無理ですか……」
 ペイルライダーの体の周囲に濛々と毒を含んだ煙が立ち上ったかと思うと、彼女の姿はすぐに見えなくなる。
 ウェアライダーが、勝利を知らせるべく、ハウリングを上げた。

●『飢渇の殲滅騎手』ブラックライダー

 横一列に並んだ黒猫師団のケルベロス達は、上昇してくる敵軍に向け一気に降下していく。
 大きく3つに別れた部隊のうち、まず敵に仕掛けたのは左右に位置する「陽動部隊」だ。
 敵の上昇を押し留めたところへ、敵群の中央を貫くように「突破班」が仕掛けていく。

 さらに下方へ、と飛ぼうとしたところで、艦載機群が急に力を失うのをケルベロス達は感じた。
「飛び移ってください!」
 咄嗟に叫び、大義・秋櫻 (スーパージャスティ・e00752)は上方から飛んで来た綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)の小剣に便乗。秋櫻の武装の重量に、小剣が大きく揺れた。
「敵の指揮官は、特殊な能力を持っているようですね」
「足場を狙うとは。遠距離攻撃の方が良さそうですね」
 重さに揺れる小剣の上で、2人は言葉を交わすと敵指揮官の方を見た。
『飢渇の殲滅騎手』ブラックライダー。
 奇妙な天秤「デナリオン」を頭に乗せたブラックライダーの姿は、遠目にもよく分かった。
 艦載機群は天秤の力でエネルギーを奪われたのだろう。範囲は無尽蔵ということはなさそうだが、戦闘中にやられると面倒極まりない。
 秋櫻は後方から飛来した別の剣に飛び乗り、一旦その場から距離を取る。

 華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・e49233)もまた、その様子を上から見ていた。
「あれで万能戦艦ケルベロスブレイドのエネルギーを奪う気でしょうか」
「先に周囲を叩こう。他の戦力がいなければ、やすやすと接近できまい」
 ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)は、艦載機を下方へと加速させた。すれ違いざま、無数の拳と尾による連撃が、奈落の兵団の全身を叩きのめし、落下させる。
 その行方を見ることもなく、黒猫師団のケルベロス達は、さらに撃破を重ねていった。

●『支配の殲滅騎手』ホワイトライダー

 万能戦艦ケルベロスブレイドが停止したことを受け、防衛ラインを形成する敵はこちらへ向けて上昇して来ていた。
「割と自由に飛んでるね、死神達……」
 リリエッタ・スノウ (小さな復讐鬼・e63102)が、ヴァルキュリア姿の奈落の兵団が自在に飛ぶ様子に首を傾げる。
 定命の者は、ケルベロスでさえ飛行にはかなりの制約が伴うが、デウスエクスは割と自由に飛ぶ。
 死神は最弱と言われる熾焔の怪魚ザルバルクですら空を自由に泳いで来るので、もう飛べるのは基本能力と思って良いのだろう。加えてここは、相手のホームグラウンドだ。

 もっとも、ケルベロスの側も、今はヘリオンデバイスや小剣型艦載機で随分と無理が利く状況だった。
 その艦載機の上から、魚鱗陣の形で隊列を組んだケルベロス達は、迫る敵へと接近しながら、雨の如くグラビティを撃ちおろしていく。
 数kmの上昇を強いられる状況は、飛行可能であっても敵にとっては不利を強いるものだ。

 だが、運命を捻じ曲げるという「支配の冠」の加護によるものか、ケルベロス達の撃つ攻撃は確率以上の逸れを見せていた。
「守りは、私がなんとかします。あの艦への接近を最優先して下さい」
 ホワイトライダーの加護を受けた敵は、そのまま直進して来る。

「だったら、彼女を先にどうにかしよう!」
 セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)の号令と共に、このためだけに編成されたスナイパー部隊は、攻撃をホワイトライダーへと集中させていった。
 ホワイトライダーをかばった何体かの『奈落の兵団』が、その身を散らし、やがて神宮寺・結里花(雨冠乃巫女・e07405)の一撃が、『支配の冠』を弾き飛ばす。
「かわしきれないぐらいの攻撃なら通じるっすね!」
 運命を捻じ曲げるのにも限界がある、ということか。
 ホワイトライダーによる加護が崩れると、後は早い。
 ケルベロス達は、態勢を崩した敵群を、壊滅に追い込んでいくのだった。

●『戦禍の殲滅騎手』レッドライダー

 奇襲攻撃を仕掛ける金糸雀師団に対し、レッドライダー率いる部隊は真っ向からかかってきていた。
「『地獄』の炎に、焼き尽くされなさい!」
 奈落の兵団と共に、レッドライダーは赤い『地獄』の焔を展開していた。
 見るものの怒りや暴力性を増す焔が、ケルベロス達の精神を蝕み、そこへ奈落の兵団が切り込んでくる。

「可能な限り、あの焔は見ナい方が良イな」
「そんなこと言ったって、難しいって……!!」

 平静な君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)に、大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)が思わず声を上げる。
 精神に異常をもたらすというレッドライダーの焔に苦戦を強いられながらも、金糸雀師団は8人一組の慣れ親しんだ編成で、金糸雀師団は敵部隊に切り込んでいった。
 やがて、その攻撃は、他の戦力を全て討ち滅ぼし、レッドライダーに届き始める。
「ヴェロニカのところの子達も強いけれど、ケルベロスはそれ以上か。ここは退くしかないわね」
 捨て台詞を吐いたレッドライダーの周囲で、『地獄』が、ひときわ激しく燃え盛る。
 瞬間、『地獄』の奥に、風峰・恵 (地球人の刀剣士・e00989)は異様な光景を見た。

 恒星のように巨大な『地獄』の肉体を持つ三つ首の獣ケルベロスが、宇宙を疾駆していく。
 獣は、怒りの咆哮と共に、ある惑星に食らいついた。
 惑星に住むデウスエクスは、コギトエルゴスムになることも許されず、獣によって無造作に死を与えられていく。
 やがて、ひとつの星を滅ぼし尽くした獣は、また別の星へ向かう……。


 ──そして、恵の意識が現実に浮上する。
 滅びの光景は随分と長いように感じられたが、レッドライダーが撤退して3秒も経過していなかった。
「今のは、一体……死神の精神攻撃という感じでもありませんでしたが……」
 近くにいた眸や言葉らのみならず、他の金糸雀師団のケルベロス達も、恵と同じものを目にしていた。

 知らない光景のはずだった。
 だが、うずく胸の奥にある何かが、彼らに理解させていた。

 あれこそが『ケルベロス』だ。
 地球生命を食い荒らしたデウスエクスに、怒りと共に死を与える滅びの獣だ。


「今のは……『ありえたかもしれない歴史』なのでしょうか」
 なぜ、初めてデウスエクスを殺す者が現れた時、その者をギリシャ神話の三つ首の獣の名で呼んだのか?
 その答えを、掴んだような気がした。
 デウスエクスを殺す者は、三つ首の獣の姿を取る。地球の人々は、誰もがそう知っていたのだ。

 恵は万能戦艦ケルベロスブレイドと戻る途中、『地獄』の消えた辺りを見るが、そこにはもはや何も無い。
 だが、胸の中でうずく『何か』は、遥か水底に求めるものがあると示していた。

●第3次防衛ライン主戦場

 中央、主戦場では交戦する紫揚羽師団もまた、優勢に戦いを続けていた。
 相手は『氷獄』ヴェロニカの率いる、『奈落の兵団』だが、ケルベロス達の勢いは、『奈落の兵団』の備えを撃ち破るのに充分なものだ。

「他戦場の制圧を確認! 一気にいきましょう!」
 マインドウィスパー・デバイスを通じたウォーレン・ホリィウッド (ホーリーロック・e00813)の号令がくだされる。
「待ってたぜ!! 全力を叩き込め!!」
 柴田・鬼太郎 (オウガの猪武者・e50471)が、勇ましく敵陣へと突入していく。
 もはや、万能戦艦ケルベロスブレイドの被害を考える必要はない。
 鬼太郎に続き、紫揚羽師団のケルベロス達は、一つの巨大な力の塊の如く、主戦場の敵陣を打ち破っていった。
 主戦場には、防衛ラインの5戦場の中でも最も多い戦力が配置されていたが、ケルベロスの勢いはそれを上回る。

 そして、万能戦艦ケルベロスブレイド内に待機していた者達が動いた。
「あそこか……!!」
 本隊の攻撃によって、守りが手薄となった後方。
 敵本陣に、『氷獄』ヴェロニカの姿を確認すると、待機していた部隊が一斉に『ケルベロス大砲』へと飛び込む。

「また、あれか!」  分かっていたところで、迎撃が薄くなった状況で、一気に戦場を貫いて飛んでくるケルベロス達への対処は困難だ。
 大砲で射出されたケルベロス達は、予め回り込ませていた小剣型艦載機群に着地すると、すぐさまヴェロニカと、その護衛部隊を駆逐にかかる。
「これまでか……脱出する!」
 ヴェロニカは、残り僅かな兵を伴い、冥府の海に消えていく。

 第三次防衛ラインはここに壊滅し、負傷者を回収したケルベロス達は、万能戦艦ケルベロスブレイドに乗り込み第4次防衛ラインへと向かう。
 だが、金糸雀師団の者達が目にした光景は何なのか。
 この冥府の海に、自分達の知るべき真実が眠っていることを、ケルベロス達は確信していた。

師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 (5)奇襲 奇襲により「(5)『飢渇の殲滅騎手』ブラックライダー」を制圧!
役割分担を徹底し、負担をうまく分散しながら戦いを進めました。経験に乏しいケルベロスへの配慮も行き届いていました。
銀狐師団 (2)奇襲 奇襲により「(2)『支配の殲滅騎手』ホワイトライダー」を制圧!
方針をポジションごとで大まかに決めつつ、敵の特殊能力への対策も講じており、優勢に戦いを進めました。
灰色狼師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が4%まで低下!
戦闘環境的に対応困難な部分も多い中、救助計画や艦内設備を利用した治療計画を立案しました。艦自体が大きく損壊する可能性も高いため、その際の対策もあれば、より良かったでしょう。
白馬師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「60%」に上昇!(2師団合計)
ライブやインターネットキャンペーン、特別番組の制作など、多くの人々に周知するための作戦を実行しました。
蒼鴉師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「60%」に上昇!(2師団合計)
一部修正を加えつつも、短期間に世界中の人々からの応援の意志を組み上げる企画を立ち上げ、実行しました。
金糸雀師団 (3)奇襲 奇襲により「(3)『戦禍の殲滅騎手』レッドライダー」を制圧!
『地獄』の中に、奇妙な光景を目にしたようですが……?
紫揚羽師団 (4)奇襲 奇襲により「(4)第3次防衛ライン主戦場」を制圧!
不慣れな環境の中、ケルベロスを8人一組とし、慣れた戦力分担での戦いを試みました。
緋色蜂師団 テンションアップ 戦力「1300以下」の戦場を無視可能に!
Battle1戦あたりの減らせる敵戦力が「130」に!
ケルベロス超会議を模したイベントを艦内で開催した他、灰色狼師団と共同での講習会や戦闘環境の情報に関するブリーフィング等を行いました。
黄鮫師団 (6)奇襲 奇襲により「(6)『死病の殲滅騎手』ペイルライダー」を制圧!
遠距離攻撃を中心とすることで、敵の特殊能力や空中戦に対応しました。
今回の「テンションアップ」
 戦力「1300以下」の戦場を無視可能に!
 Battle1戦あたりの減らせる敵戦力が「130」に!