お祭り屋台村 結果発表!

●決戦、お祭り屋台村2021
 デスバレス決戦に勝利し、聖王女エロヒムを救出したケルベロスは、デウスエクスとの長き戦いに終止符を打てるという直前まで至っていた。
 しかし、百里を行く者は九十を半ばとすると言う。
 ここで、油断して足元をすくわれるわけにはいかない!

「そこで、ワタシの出番なのデェース!」
 村雨・ビアンカ(地球人の螺旋忍者・en0020)は、超会議の成功による経済活性化の為に、一肌脱ぐ事にした。

 一肌脱ぐ事にしたビアンカは、
「ということで、サービスサービスデェース!」
 と、煽情的な忍者衣装で、屋台村を練り歩き、観光客に笑顔で手を振って、気軽に記念撮影にも応じていく。
 当然のように、彼女の後ろにはスマホを構えた観光客の一団がついてくる。

「ohー! ジャパニーズセクシー忍者ガール!」
「ハラショー」
「テダナンサラム!」
 このご時世に日本に旅行する外国人観光客は一部の富裕層に限られていたが、その彼らがお金を落とす事で、経済がブンブン回り、巡り巡って、世界の平和に貢献するのだ!
「ニッポンいちデェース!」
 ビアンカは張り切って、忍者ポーズを決めると、オーディエンスの声援が一際大きくなっていた。

「さーて、サービスはここまでデェース」
 一頻り観光客用サービスを終えたビアンカは、彼女に託された使命を果たすべく、屋台村の中へと歩を進めた。
 彼女は、ただ、観光客にサービスしていたのでは無い。
 彼らを通じて、屋台村の人気企画をリサーチし、お祭り屋台村部門の結果発表に役立てようとしていたのだ。

●3位:14キロの砂糖水(グランリッター
「最初の目的地は、あそこデース!」
 ビアンカは、ヴァルキュリアの集う騎士の屋台、旅団グランリッターへと足を踏み入れた。
 その屋台には、バケツと見まごう入れ物に並々と透明の液体が注がれたものが、多数用意されただけの空間であった。
 派手なイベントも無ければ、華やかなメニュー表も、食欲を唆るような芳醇な香りも無い。
 ただ、ねっとりとした、甘い雰囲気だけが漂っていた。

「コンニチワデェース!」
 元気に挨拶して屋台をくぐったビアンカに、、団長のリィン・アトゥレイナ(煌剣のレギンレイヴ・e24293)は、そのバケツに入ったドリンクを、ずずいっと押し出した。

「飲みなさい。今の君に必要なものだ」
 リィンの言葉に、ビアンカは「あっハイ」と答えると、そのドリンクをゴキュゴキュと飲み下す。
 あまりの量に、飲みきれなかった、ねっとりとした液体が、ビアンカの口唇からタラリと垂れる。

「うっぷ、ソースィーティー」
 ビアンカは虫歯でもないのに、全ての歯が浮いてしまったように感じたが、それにも負けずに、バケツドリンクを飲み続けた。
 口唇から溢れた液体が、ビアンカの首筋をたどり、甘ったるい液体が彼女の胸まで濡らしていく……。

 それでも、最後の一滴までなめ切ったビアンカを、リィンは褒めたたえるように拍手する。
「ビアンカ凄いッッ、ビアンカ凄いッッ、ビアンカ凄いッッ」
 後ろからついてきていた観光客も、スマホで撮影しながらビアンカコール。
 このコールには、14kgの砂糖水警察のリィンもニッコリだ。

「この砂糖水は、傷つき倒れた戦士に戦う力を取り戻してくれる、そういう力があるんだよ」
 リィンは、ビアンカにそう語る。
 ケルベロスが、これからも世界の守り手として戦い抜くという気概、それを示すものが、この『14kgの砂糖水』なのだそうだ。

「たしかに、このまま戦争にいけそうな程のパワーが漲っているデェース。これが、お祭り屋台村3位の実力なのデェース!」
 遅ればせながら、ここに来た理由を教えるビアンカに、リィンは、嬉しそうに微笑んだ。

「14kgを飲み切ってくれる人は少なくて寂しかったんだけど、みんあ、本当はわかってくれたんだね! ところで、試合していきません?」
 リィンに誘われたビアンカは、軽く一試合を行って漲るパワーを迸らせると、
「14kgの砂糖水を飲み干したビアンカさんならば、どんな敵も恐れるものではありませんよ」
 といいうリィンの応援を背に受けて、次の目的地へと旅立ったのだった。

 なお、ビアンカは、移動中に「大事な体なんだからお腹を冷やしちゃだめですよ」と上品なお婆さんに腹巻を手渡されそうになったらしい。これも、14kgの砂糖水のパワーであろう。

●2位:トランポリンチャレンジ&もちもちひつじ販機(穹窿の標
「うーん。まだ、おなかがタポタポ言ってマァース」
 歩くたびにタユンタユンするお腹を押さえてビアンカがやってきたのは、巨大トランポリンの前。
 屋外に堂々と置かれたそのトランポリンは大きくそして丈夫だった。
 遊びに来ていた子供達が100人乗っても壊れずに、キャッキャッキャと楽しそうだ。

「コンニチワデース!」
 元気いっぱい挨拶をするビアンカは、さっそく団長のティユ・キューブ(虹星・e21021)に、審査結果を伝えてみた。
「お祭り屋台村2位入賞、おめでとうございマァース。このトランポリンはすごい人気だったのデェース」
 ただでさえ、トランポリンは子供人気があるのに、そのトランポリンを使ったケルベロスのパフォーマンスも見られるという事で、子供や素人だけでなく大人や玄人にも人気の企画であったのだ。

「みんなに喜んでもらえたなら嬉しいんだよ。せっかくなので、ビアンカもやっていこうよ♪」
 ティアに誘われたビアンカは、二つ返事で引き受ける。
 トランポリンで遊んでいた子供達も、ケルベロスのパフォーマンスが見れるという事で、トランポリンの周りに並んで、やんやの歓声をあげてくれた。

「まずは、準備運動デェース」
 ビアンカがトランポリンで、ポンポンと跳ねる。
 準備運動といいつつ、体操日本の面目躍如な妙技を見せるビアンカ。
 その激しい跳躍に、煽情的な忍び装束で拘束しきれていない、双つのお山が縦横無尽に跳ねまわる。
 少し年上の子供たちの半数が少し前かがみになってしまったが、それもまた健全な証なので問題は無い。

 そして、遂に、ビアンカが大きく跳躍する。
「ビアンカ、いきマァース(66でゾロ目)」
 その跳躍は、平均よりは高いが、高過ぎでは無い、敢えて言うなら普通の結果であったようだ。
 おそらく、おなかの中が砂糖水でたゆんたゆんであったせいもあるのだろう。

「悔しいデェース。でも、トランポリンは楽しいデェース」
 その後、ビアンカは、ティユや子供達とトランポリンを楽しみ、
お土産に、バニラ風味&中にチョコソースの、おもちバーを貰って、穹窿の標のトランポリンを後にした。

●特別賞:ワンダーラストの古い歌(幽霊屋敷
「そうそう、良ければ、チャレンジ企画にも参加してくださいね!」
 お土産を渡してくれながらそう営業スマイルしてくれたティユに従って、可愛らしい羊が跳ねるゲームを楽しんだビアンカは、次なる目的地へと向かう。

 やってきたのは、幽霊屋敷の不思議な本を収めた書架の並ぶ回廊。
 ここでは、花時計から消えた12種類の『花』を探して集める冒険を行っているようだ。

「超会議もお祭りだから季節の魔法があってもおかしくないのデェース」
 ビアンカが『花』探しのストーリーに感心していると、企画の説明をしてくれる、『↑ 2F探偵』の 櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が、企画の説明をしてくれる。
 どうやら、様々な旅団の企画を巡りつつ【花の栞】と【キーワード】を集めなければならないらしい。

「どの本を選んでも良いのデスねぇ。それじゃ、羊のもふもふ繋がりで、コレにするデェース」
 ビアンカが選んだ本は『毛玉グルーミング(令和3年版)』を手に取った。

 そしてしばらく探索したビアンカは、
「ヘブンリーブルー(朝顔)の栞げっとデェース」
 と、いくつかの栞の発見する事に成功する。
 が、残念ながら全ての栞を発見するには至らなかったらしい。
 さすがは、12旅団連携企画といったところだろう。

「でも、楽しかったデェース」
 様々に、趣向を凝らした美しい物語は、全てを回り切らなくても充分に魅力的だと、ビアンカは感じていた。
 惜しむらくは、全ての花を集めた時に起こる『少しだけ、素敵な事』を体験できなかったことだろう。

「素敵な事、体験したいので、また夜に来てみるデェース」
 そう言って、元気に幽霊屋敷を後にするビアンカを、黄金の装飾品を身に着けた美貌の青年、ロコ・エピカ(テーバイの竜・e39654)が、静かに見下ろしていた。

●1位:お花のアロマキャンドル(湖上都市
 幽霊屋敷を後にしたビアンカは、ブリザードフラワーで飾られた、『湖上都市』の屋台へとやってきていた。
 飾られたブリザードフラワーは、『湖上都市』の花を加工して作られており、全てが夢のように美しい。
 そして、近づくと芳醇な花の香が鼻孔を擽り、通りかかる旅人達を幸せな気分にしてくれる。

「ワタシが、2021年超会議お祭り屋台村の1位を知らせにきたデェース!」
 そんな花の楽園に入り込んだビアンカは、周囲のお客様にも聞こえるように、大きな声でそう伝える。
 花の美しさに見惚れていた人も、ビアンカの言葉に顔を上げ、ボタニカルキャンドル造りの体験をしていた人達も、その手を止めて、祝福の拍手をしてくれる。

 そして、花のような衣装をまとった団長のルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)が、
「この花の魅力を皆に知ってもらえた事が一番だね」
 と、微笑みながら1位となった感想を告げると、彼女の春の陽だまりのような笑顔に、皆の表情も自然と綻んだ。

「ここにいると、優しくて上品な気分になれるのデェース。そこが、一番の魅力なのですね!」
 ビアンカの心からの言葉に、ルージュは嬉しそうに頷くと、ビアンカをボタニカルキャンドル造りの体験へと誘った。

「お花とアロマを選んで、自分だけのボタニカルキャンドルを作れるんだよ。今日の記念に、ぜひ、作ってみようか」
 ルージュの手ほどきを受けながら、ビアンカはボタニカルキャンドル造りを始める。
 まずはモールド(型)を選び、モールドよりも少し細いベーシックキャンドルを入れる。
 そして、モールドとベーシックキャンドルとの隙間を、お花などで飾っていくのだ。

「だいたいのイメージを決めて、お花を入れたら、このピンセットで形を整えるんだよ」
 赤と黒、そしてピンクの花を全体に配置したら、ルージュに手渡されたピンセットで、形を整えていく。

「この隙間にキャンドルワックスを入れて固めるけど、キャンドルワックスは透明では無いから気を付けてね。内側過ぎると、見えにくくなるよ」
 その助言を聞きつつ、ビアンカは、ちょいちょいとピンセットで微調整をしていく。

「ビアンカさんらしい、素敵なデザインです」
 赤と黒はビアンカの衣装の色で、ピンクの髪を合わせると、ビアンカらしい配色で、花の種類はバラとアネモネを軸にしており、華やかでもある。
 その後、グルマンノートで香り付けしたキャンドルを溶かして、ゆっくりゆっくり流し込むと、キャンドルに飾られた花が水中花のように揺らめいた。

「あとは冷やし固めたら完成だよ」
 ビアンカは、完成したボタニカルキャンドルの出来に満足しながら、ルージュにお礼の言葉を述べて湖上都市を後にするのだった。

「とても、楽しい体験ができてうれしかったデェース。このボタニカルキャンドルも大切にしマァースね♪」