日本列島防衛戦 ファーストアタック

大弓・言葉 VS 死神『狂信のユハ』

<日本列島防衛戦 ファーストアタック>

●万能戦艦ケルベロスブレイド(黒猫師団、蒼鴉師団)

 ケルベロスの願い、そして世界中の人々の祈りによって高まった季節の魔力を受け、誕生した万能戦艦ケルベロスブレイド。
 竜業合体ドラゴンによる戦いを前にして、ケルベロス達はケルベロスブレイドを、海外の人々にお披露目する方針で動いていた。

「負担をかけていますし、見せられる機会を設けられて良かったですね」
「インターネット上でも盛り上がっているみたいですよ」
 日本へ戻るケルベロスブレイドの中、大義・秋櫻 (スーパージャスティ・e00752)の言葉に、綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)はそう応じる。

 地球の人々は全世界決戦態勢(ケルベロス・ウォー)の発動を支えてくれている。
 2020年のクリスマス前に起きたアスガルド・ウォーから、まだ十分に経済が持ち直す時間が経ったとは言えない状況だ。
 人々の心を慰撫する意味でも、ケルベロスブレイドのお披露目というイベントは大きかった。

 先月の出現以来、ニュースなどで報道されて来ていたケルベロスブレイドを直接自分の目で見られる機会とあって、各国の会場には多くの人々が訪れていた。
 その巨大さと移動速度は、世界中の人々に驚嘆を持って受け止められている。
 巡った国はOECD各国とアフリカの2国であり、つまりヨーロッパに偏っており、『今度は我が国に来て欲しい』といった要望も官民問わず数多く届いていた。平和利用することができる日が来れば良いが、と華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・e49233)は思いつつ口を開く。
「速度はどこまで誤魔化せたでしょうね……デウスエクス側としても、ケルベロスブレイドの性能を知りたがっているのは確実でしょうけれど」
「現状において、真の意味でケルベロスブレイドの脅威を理解しているのはドラゴン勢力だけか」
 ディークス・カフェイン (月影宿す白狼・e01544)は、なんとはなしに竜十字島の方角を見ながら言った。
「即座に脅威と見なし、地球の破壊に舵を切ったのは、判断が速いというべきか……」
 もはや、敵はケルベロスを甘く見てはくれない。
 あらゆる機能は、一度使えば、次からは対策される。
 そう考えるべきだろうと、ケルベロス達は確信していた。
 そして、その一度きりのチャンスを最大限に活用するべきであるということも。

 そうして黒猫師団が世界中を巡った後、今度は蒼鴉師団主導の元、ケルベロスブレイドは日本の各地を回っていた。
 各地に設けられた会場には、人々にケルベロスブレイド内での生活を体感してもらおうと、環境を一部再現したコーナーや、ヒーローショーを行うステージが置かれている。
 そんな会場が、日本各地に8箇所。
 それをたったの1日……人々に見せるイベントということを踏まえれば、半日程度で回るという強行スケジュールだ。
「各会場1時間ぐらいの滞在だね」
「次回出撃パフォーマンスの出演者は、点検と準備を忘れずにな」
 夢見星・璃音 (輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)や玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)らは、慌ただしく打ち合わせながら艦内を走り回っていた。
 出撃パフォーマンスを繰り返し、決戦が近いのだという事実を、参加したケルベロス達にも改めて伝えていく。
 分刻みのスケジュールで各地でのイベントを繰り返し、さらに合間合間では各地で広域ヒールレインなども行っている。それを担当する蒼鴉師団のケルベロス達は、殺人的な忙しさに追われていた。

 小車・ひさぎ (お願いビーナス・e05366)が、ふと気付いたように言う。
「そういえば、避難活動とかは行われてないんのね」
「日本からの全員避難は不可能だし……意味が無いと伝わっていますからね」
 フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)は、報道の内容と、それに伴う人々の反応を思い出しつつ言う。

 事態が明らかになるのと共に、日本に暮らす人々は、『日本列島からの避難は無意味である』と腹を括っていた。
 ケルベロスが敗北すれば、日本列島は竜業合体される。
 そうして生まれた『竜業日本列島』は、地球を完全に破壊し尽くすだろう。そうなれば地球上に逃げ場は無い。

「それでもパニックなどは、ほとんど伝わって来ないね」
 貴石・連 (砂礫降る・e01343)の言葉に、シル・ウィンディア (鳳翼の精霊姫・e00695)は同意の頷きを一つ。
「これまでの私達の実績あっての事でしょう」
 数々のデウスエクスによる事件を阻止して来たケルベロスへの信頼は、確かに影響を与えていた。
 世界から寄せられる激励のメッセージに、蒼鴉師団のケルベロス達は胸が熱くなるものを感じる。
「『月も止めたんだから島ぐらい楽勝ですよね』……あー」
「楽勝と行きたいところだな」
 報道番組中に読み上げられたメッセージに、ケルベロス達は、顔を見合わせ苦笑した。一般の人にとっては、脅威の規模という面ではドラゴンもビルシャナも大差ないのかも知れない。

●救護準備(銀狐師団)

 蒼鴉師団によるイベントを終えたケルベロスブレイドは羽田空港上空に現れていた。
『ケルベロスブレイド、停止しました』
「それでは、搬入よろしくお願いします!」
 ケルベロスブレイド内に設けられた救護本部からの連絡を受け、銀狐師団の若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)が号令を下す。
 空港敷地の一角に設けられたスペースで、貨物を満載したヘリオンが一斉に動き出した。
 第一陣が飛び立つと、次なる貨物が次々と運ばれてくる。

「艦内で作れるものもありますが、それだけでは足りないからね」
 もはや手慣れた様子の銀狐師団のケルベロス達。
 セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)が、運ばれてくる貨物のリストを確認しながら言う。
 水や食糧などはケルベロスブレイド艦内で無限に供給できるが、戦争で使用する多種多様な物資は、これまでに運び込まれていた分だけでは到底足りない。
 それらを補うべく、銀狐師団は貨物の搬入を急いでいた。

「ほとんど足場のない海上とか空中で戦うのは初めて……かな?」
「宇宙とか、変な雲の上はたまにあったんデスケドネ」
 そういえば、と首を傾げるリリエッタ・スノウ (小さな復讐鬼・e63102)に、スノードロップ・シングージ (抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)が応じた。  もっとも、ケルベロスは、上空から落下したり、水没したりしてもダメージは無い。
 ケルベロスの方に意識があれば、勝手に連絡を取ってくれるだろうが、問題はそうでない重傷者だ。
 戦場の広さもあって、救護を行う銀狐師団にとって、頭の痛いところであった。
「『レスキュードローン・デバイス』ですぐに回収できれば良んだけど、まずデバイスに収めるまでがね……」
 セラフィの懸念ももっともだろう。
 戦場間の移動や、戦場での足場となる小剣型艦載機も、操作は基本的にケルベロスブレイド内に設置されたヘリオンから行われる。
 大雑把な動きにならざるを得ないし、そもそも個別に難しい指示はできない。
「捜索は『光の翼』頼りかな」
 激戦の空域・海域ではヘリオンを投入するのも躊躇われる。救護を行う者にとっては、難しい戦場となりそうだった。

●奇襲攻撃開始

「日本の、地球の命運はわたし達、ケルベロスとその剣、ケルベロスブレイドに託された!
 みんなの希望と願い、祈りを一つの力にして
 脅威を切り裂き、未来をこの手につかもうっ!!」
 空に投影されたシル・ウィンディア (鳳翼の精霊姫・e00695)が、決意表明とばかり、力強くそう宣言する。

 艦内でのブリーフィングを終えると、ケルベロス達は戦場となる海域へと向かった。
 ステルス機能によって姿を消したケルベロスブレイドが、目的の海域まで辿り着くまではほんの数分だ。
「レーダーが、巨大な影を捉えました!」
「もう見えてる」
 西進して来る竜業竜十字島は、巨大なドラゴンの形を取っていた。
 かつての『竜業惑星』よりも小さいとはいえ、海水を飲み干しながら進むその姿は、破滅をもたらす存在としてケルベロス達の目に映る。
 速度はケルベロスブレイドに比べれば遥かに遅いが、それでもあと僅かで日本へ辿り着くだろう。

『各勢力の存在も確認!』
『奇襲を開始します!』

 艦内に響き渡る声。
 竜業竜十字島を取り巻くようにして、展開した敵陣とすれ違うように飛び去るケルベロスブレイドの各所から、大量の小剣型艦載機が射出されていく。

●玻璃(灰色狼師団)

『玻璃』率いる魚型や海棲動物型を中心とした死神たちは、この戦争における奇襲の最初の標的となっていた。
「遮蔽物も無い。丸見えだな……!!」
 急降下して来た灰色狼師団、社守・虚之香 (宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)のグラビティが、異様な色に染まった海域に、凄まじい波しぶきを立てた。
 戦場を取り巻くように立った波を突き抜けるようにして、艦載機群に乗った灰色狼師団が、グラビティを雨あられと撃ちまくりながら戦場を強襲する。

「このまま押し切りましょう!」
 敵の数の少なさに、アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)は勝機を感じ取りつつ、グラビティを死神へと放つ。
 混乱する死神達の攻撃はまだ散発的だが、小剣型艦載機は次々と破壊されていた。不意を突いたとはいえ、射程距離自体は互いにそう変わらないのだ。
 もっとも、それでケルベロスまでもが海に転落するわけではない。
 ケルベロス達に同伴する小剣型艦載機の数は、奇襲を担当するケルベロス達よりずっと多いのだ。
「その辺りは、先の竜業合体ドラゴン戦と同様だね……っと」
 下方からの反撃を回避したケルベロスが、別の剣へと飛び移る。
 撃墜される者もいるが、それらは救助部隊がヘリオンデバイス等を用いて回収している。

 小型剣型艦載機の使い勝手については、先の竜業合体ドラゴンとの戦いや、戦争前の練習の中である程度の戦訓が得られていた。
 この艦載機は、言うなれば「超高速で空を飛ぶサーフボード」のようなものだ。
 大雑把な方針はケルベロスブレイドから出し、それに従って勝手に飛ぶ。
 動き自体は、乗るケルベロスにもある程度は操れるが、戦闘中に精密な操作は困難。
 高速は出せるがケルベロスやデウスエクスの戦闘中の動きには対応できず、グラビティによっても破壊されうる。
 特に広域への攻撃を回避するなら、別の剣に飛び移らなければならない。
 落下防止の観点から、剣に体を固定することを考えた師団も幾つかあったが、「固定していたると攻撃が避けにくくなる」という結論に至っていた。
「剣は艦の魔力で補充も利くようです。使い捨てていって問題なさそうですね」
「その辺りは、練習しておいてよかったね!」
 カルロス・マクジョージ (満月の下でディナーはいかが・e05674)は、飛び降りざまに鯨型の巨大な死神を蹴りつけると、再び剣に掴まってその場を飛び去る。
 彼を狙おうと、顔を上げた死神を、上空から降り注ぐ攻撃が貫いていった。

「イグニス様、やはり地球の者達の得た力は危険です。これでは……!」
 指揮官『玻璃』は、手傷を受けながらも海中へ沈み込み、姿を消した。
 反撃によって、艦載機が幾らか破壊され、海上に落下するケルベロスが出るも、圧勝という結果に終わった。

●狂信のユハ(金糸雀師団)

『狂信のユハ』率いる死神の軍団に奇襲を仕掛けた金糸雀師団は、戦場に飛び込む直前、奇妙な光景を目撃していた。
 戦場の奇妙な色をした海水が、一気に剣に変わったのだ。
 剣が重量のまま海中に沈んでいくと、後に残るのは正常な色に戻った海域だ。
 波が急変し、動きを乱した死神へと、ケルベロスはここぞとばかりに奇襲を仕掛けていく。
「こちらにとっては都合が良かったガ、何ごとダ?」
「『ザルバルク剣化波動』ね。奇襲と同時に放つよう、要請してたんだけど……?」
 君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)の言葉に、大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)がそう答える。
 ここまでの大規模な影響があるのは、提案した彼女にしても予想外だった。
 波動の影響は、この戦場のみならず、イグニスのいる『渦』の方へも広がっている。
「冥府の渦からの海水が、それで変わったってことは、つまり……?」
 考えつつも、風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)の繰り出した烈風穿が、死神を貫き、霧散させる。
 死神たちは、飛行できる個体での対抗を図るが、ケルベロス達の勢いはそれを圧倒していた。

「ザルバルクが……! 磨羯宮ブレイザブリク、いやそれ以上に強力な波動だ。ケルベロスが手強いことが予期していたが、これでは……」
 そうごちつつも、『狂信のユハ』は、海面を凍結させ、巨大な蒼氷の障壁を作り上げる。
 その間に、死神達は態勢を立て直そうとしていた。
 だが、それで立て直すことが出来たのも一部に過ぎない。

 リューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)が、守りを固めた死神たちの方を見る。
「一息にとどめは差すとはいかなかったか」
「でも、突破するには十分ね。冥府の渦さえ制圧できればいいんだし……」
 奇襲で半数以上の戦力を奪われた死神達に、冥王イグニスのいる『冥府の渦』までの進路を遮ることはもはや出来そうになかった。

●航空母艦ディオニュシオス(黄鮫師団)

 地球上に残されたダモクレスの戦力の中でも、最大級の大きさを持つ航空母艦ディオニュシオス。
 ケルベロスブレイドを飛び立った黄鮫師団は、この母艦を守る空戦型ダモクレスの軍勢と激突していた。

 ドラゴンへの対応もあり、既に空中に出ていたダモクレスの数は少なくない。
 もっとも、その数はケルベロス達を阻むには明らかに不足していた。

「全て浄化してあげる!」
 七色の宝石でできた矢が上空から降り注ぎ、ダモクレスの1体を立て続けに貫く。
 爆発するダモクレスと入れ替わるように甲板上に着地したローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)は、ダモクレスの残骸を遮蔽として甲板上の他のダモクレスからの攻撃を回避。
 ローレライを狙ったダモクレスも、すぐさま後続のケルベロス達が位置を確認し、次々と破壊していった。

「このまま、設備を破壊していってね!」
「了解だ! 行くぞ、マッスルキャノン!!」
 相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)の放ったオーラの弾丸が、防衛に当たる球形のダモクレスを貫き、爆散させた。
 母艦にとりついた『対空母部隊』のケルベロスを排除するため、ダモクレス達が母艦に戻ろうとすれば、空戦部隊のケルベロス達がその背を襲う。
 ダモクレス達は、その戦力を一気に減らしていった。

「んん、ダモクレス、そこまで力入れてへんのかな?」
「単に地球に戦力が無いからか、何かに備えているのか……」
「どっちにしても、逃さん方が良さげやね」
 マインドウィスパー・デバイスを通じ、ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)やアルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)からの指示が飛ぶ。
 十分に戦力を削いだと判断し、黄鮫師団は後退していく。
 後に残るのは、ボロボロになったディオニュシオスと、僅かな戦力だけであった。

●皇竜オーヴァロード(紫揚羽師団)

 竜業竜十字島への道を切り開かんとするケルベロス達。
 その前方に立ちはだかったのは、『皇竜オーヴァロード』の率いる一群だ。
 本星から飛来したドラゴンの群れの数は、本星にいたドラゴンの数とすれば、多いとは言えないものだった。

 配下種族ももはやいない。超高速で宇宙を飛行する難行に耐えることが出来たのは竜業合体を経たドラゴン達だけだ。
 そのドラゴンにしても、回復がほぼできなかったことで力を衰えさせている。
「ですが、ケルベロスブレイドが無ければ、なかなか厳しい数でしたかね……」
 そんなことを思う鞘柄・奏過 (曜変天目の光翼・e29532)をはじめ、紫揚羽師団のケルベロス達は、皇竜オーヴァロード達との空中戦に突入していた。

『待ちかねたぞケルベロス!!』

 上空から艦載機で飛び込むケルベロスに対し、皇竜オーヴァロード率いるドラゴン達は戦意を燃え上がらせて迎え撃った。
 戦を尊び、配下達を地球に送り込んでいた皇竜オーヴァロードにとって、ドラゴンに一度ならず勝利を収めたケルベロスという存在は無視し難いものなのだろう。

『ゲートを破壊したお前達に勝たずして、ドラゴンを名乗れようか!』
 格闘家の如く、構えを取るオーヴァロード。彼と共に戦う、戦を愛するドラゴン達は、ケルベロスを最後の強敵として挑みかかってくる。
 もっとも、ケルベロス達の側は、それを真っ向から受ける気は無かった。
「今です!」
 注意が自分達に向いたと見て取った瞬間、奏過はマインドウィスパー・デバイスに叫ぶ。
 次の瞬間、艦載機を上回る高速で飛来した一団が、皇竜オーヴァロードへと強襲を仕掛けた。
「闇を斬り裂け、銀の流星!」
 安藤・優 (名も無き誰かの代表者・e13674)の放った閃光が、オーヴァロードの翼を貫く。
 飛び込んできたのは、優をはじめケルベロスブレイド内に留まっていた紫揚羽師団の残るメンバー達だ。翼持つ種族を中心とした彼らは、『超ケルベロス大砲』から、文字通りの超高速で射出され、戦場に飛び込んできていた。
 攻撃を終えた彼らはジェットパック・デバイス等も駆使し、なんとか艦載機の上に降り立つ。
 衝撃に大きく揺れる小剣型艦載機を、なんとか立て直したケルベロス達に敵が反撃を行おうとした瞬間、再びのケルベロスが飛んだ。
『まるで竜牙兵のような勢い! やるではないか、ケルベロス!!』
「そいつはどーも」
 相手は心から称賛しているようだが、喩えが悪くどうにも褒められている気がしない。
「もう突破は容易ですね」
 交戦を続ける紫揚羽師団のケルベロス達は、その下を飛んでいく艦載機の影を認めていた。

●魔竜アストラ・ワイズ(白馬師団)

 竜業竜十字島の中核たる『虚無王アバドン』は、かつてゲートが存在した火口にいる。
 そこへの直接の侵攻を阻んでいるのが、魔竜アストラ・ワイズによって展開された『魔竜結界』だ。
 2体のドラゴンによって竜十字島に形成される、強固な結界。
 これを解かねば、ゲートへの侵攻は出来ない。

 地球を脅かした19体の魔竜達。
 その最後の1体であるアストラ・ワイズは、ケルベロス達の力が時間に大きく影響されることを理解している。

 もっとも、白馬師団のケルベロス達も、敵がこの場所を重視している……つまり敵戦力が多いことを見抜いていた。
「でしたら、有力な敵は後回しですね。戦力を削るのに専念しましょう」
 セレネー・ルナエクリプス (機械仕掛けのオオガラス・e41784)は、そう結論づける。
「奥地じゃが、上空から飛び込めばもはや関係はないのう」
 奥鳥羽・ミココ (神光の腕・e72637)の呟く通り、白馬師団は小剣型艦載機群を駆り、直接魔竜の戦場に飛び込んでいった。
「飛行型のドラゴン、接近! 対応するよ!」
 紺賀・穂吹 (ちゅうかな看板娘・e16155)をはじめとした者達が、迎撃に上がってくるドラゴンを潰しにかかる。
 ドラゴンには、飛行可能なものも多い。  敵の目的から、逃げはしないだろうが、そうした個体への対応のためにも、艦載機の投入は必要だっただろう。

「アストラ・ワイズも、ここまで奇襲が激しくなってるのは予想外みたいだね」
 東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)は不敵に笑う。
 万能戦艦ケルベロスブレイドという、敵の予想の遥か上をいく戦力を得たことで、ドラゴンの目論見を阻む目処はつきそうであった。

●レスタシア(緋色蜂師団)

 本来は火山島の竜十字島。
 竜業竜十字島となった今、その山裾の一角は、ドラゴン『レスタシア』の作ったエネルギー結晶で覆われていた。
 結晶の塊が林立し、美しい城のようになった領域に、緋色蜂師団は奇襲を挑んでいく。
 銃弾に撃ち抜かれ、消滅するドラゴンの姿に息をついて、端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)達は周囲の結晶林を見渡す。
「上空からだと、隠れている連中は狙いにくいのう」
 結晶を作っているであろうレスタシアはどこにいるのか。
 空中遊撃部隊は、その捜索を図りつつ、結晶群の間から飛び立たんとするドラゴンの飛翔を抑え込み、撃破を図っていく。

 艦載機を降り、着地したケルベロス達は、結晶林の間を縫うようにして走っていた。
「満ちろ黒雲、奔れ雷電、紅蓮の闇で塗りつぶせ」
 櫟・千梨 (踊る狛鼠・e23597)の展開した結界が、ドラゴンを閉じ込めるや否や、雷撃がほとばしった。
 竜業合体ドラゴンが消滅する様に、ケルベロス達は深く息をつく。
 出くわす竜業合体ドラゴンたちは、どれもが巨大な体躯を有している。宇宙を渡る過程の消耗で、本来の力を発揮できていない状況でも、相当に手強い存在だ。
『ケルベロスを阻め! 奴らの力は長くは続かぬぞ! 長き宇宙の旅は、この時のためであったと心得よ!』
 ドラゴン達を叱咤する翠の鱗を持つ竜業合体ドラゴン『レスタシア』の声が、結晶を通じてケルベロス達の耳にも届く。
 その声が響いて聞こえるのは結晶の作用か、それともレスタシア自身もまた、多くのドラゴンを吸収した存在と化しているが故か。
 エネルギー結晶が広がり、緋色蜂師団を飲み込もうとする中、千梨はレスタシアへの問いかけを放っていた。
「魔竜王はなぜ、ケルベロスごと地球を滅ぼす結論に至った!?」
『なぜケルベロスに答える必要がある?』
『知れば止まる可能性があるならば会話による停止を図るべき』
『奴らの時間の浪費はこちらに利する』
 同じ声による奇妙な討議が行われた後、声はこう答えた。

『ケルベロスが地球から発生し、宇宙のあらゆる生命を滅亡へと導くからだ』

「ええ……?」
 その言葉に、思わず動きを止めた火倶利・ひなみく (スウィート・e10573)。彼女を狙ったドラゴンを、七宝・瑪璃瑠 (ラビットバースライオンライヴ・e15685)は妨害しつつ、思わずひなみくと共に首を傾げる。
「いや、それはおかしいでしょ……」
「ねえ?」

『巻き戻りにより、魔竜王についての記憶は損なわれていた』
『だが、竜業合体による数多の記憶の統合から、当時の魔竜王の言行は再現された』
『宇宙を渡る旅路の中で、竜業合体ドラゴン間での記憶の照合は行われた。この記憶に誤謬は存在しない』
 エネルギー結晶に、圧倒的に巨大なドラゴンと、それと争う聖王女の姿が映し出される。

『魔竜王は危惧していた。ケルベロスの出現を。
 それは、地球より出現し、『宇宙に滅びをもたらす者』の名だ』

『そして、ケルベロスの力は、確かに増大し続けている』
 それが、万能戦艦ケルベロスブレイドの出現を示していることをケルベロスは悟る。
 地球の人々の祈りから生まれた巨大な戦艦。
 それは、ドラゴン達にとってみれば破滅の象徴であっただろうか。

「地球を破壊して、それで救いになるのかよ……!?」
 レヴィン・ペイルライダー (キャニオンクロウ・e25278)は、思わず問うていた。
 宇宙の中心、グラビティ・チェインの発生源である地球が破壊されれば、それこそ宇宙の破滅だ。彼の指摘に対する答えは、破滅的なものだった。
『破壊すれば、発生源が移る可能性もある』
『ケルベロスに滅ぼされれば、それを見出すことも出来ぬ』
『そして、それが真であるかは、この場で終わる我ら(ドラゴン)の知るところではない』
『宇宙を救う可能性のため、我ら(ドラゴン)と共に滅びよ』

 雄叫びと共に、竜業合体ドラゴン達が反撃を開始する。
「ええい、破滅主義的な連中はこれだから……!」
「何にせよ、地球をあいつらと心中させるわけにはいかないな」
 後退する緋色蜂師団のケルベロス達は、自ら未来を捨てたドラゴン達の恐ろしさを改めて感じていた。

●解き放たれる剣

 ステルスを解き、障壁を展開した万能戦艦ケルベロスブレイドは、竜業竜十字島の前へと現れていた。
 ドラゴンの攻撃が放たれ、障壁がそれを防ぐ。
 数多の爆発が生じる中、ケルベロスブレイドは『剣』の発動準備に入った。
 中央部に突き立つ『剣』のうちの一本を留めていた巨大なパーツが接合を解く。
 同時、ケルベロス達は己の胸の中に何か疼くものを感じ、そこに己のグラビティを集中させた。
『剣』が向きを変え、強大な魔力を帯び始める。

「『剣(ブレイド)』、射出用意……3・2・1・発射!!」

 艦内に響く声と共に、『剣(ブレイド)』は強烈な速度で放たれる。
 ケルベロス達の目ですら捉えられぬ程の速度で飛翔した『剣』は、  ドラゴン達に防ぐ暇すら与えず、竜業竜十字島へと突き刺さっていた。巨大なドラゴン型の孤島の、日本を目指す動きが停止する。

「ふぅ……まずは上手くいったか。あの『剣』、破壊されないのか?」
「硬さはダンジョン級ですからね」
 敵も時間をかければ破壊できるだろうが、その前に勝てば回収し、自己修復機能で修理できる。
 負けた時のことは、あまり考えたくはない話ではあった。
『剣』によって竜業竜十字島を停止できる時間はおよそ半日。
 その間に、島を破壊せねばならない。出撃するケルベロス達を支援するべく、ケルベロスブレイドはその主砲に雷の輝きを宿し始めていた。


師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「52%」に上昇!
万能戦艦ケルベロスブレイドでOECD各国とエチオピア、ケニアを巡るのを中心に、報道やインターネット等を通じて応援の呼びかけを行いました。
銀狐師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が3%まで低下!
ケルベロスブレイド内に拠点を設置し、上や空中での戦闘への対応策を講じると共に、竜業竜十字島内の経路を検討するなど、戦場に対応した対策を進めました。
灰色狼師団 (13)奇襲 奇襲により「(13)玻璃」を制圧!
奇襲攻撃によって死神の群れを撃破し、海上戦を制しました。指揮官「玻璃」は撤退しています。
白馬師団 (8)奇襲 奇襲により「(8)魔竜アストラ・ワイズ」の戦力が1300減少!
配下への攻撃に集中したことで、有効な打撃を与えられています。
蒼鴉師団 テンションアップ 戦力「1250以下」の戦場を無視可能に!
Battle1戦あたりの戦力が「125」に!
日本各地の8会場でイベントを開催の後、小剣型艦載機の機能確認を兼ねたブリーフィングを実施しました。
金糸雀師団 (15)奇襲 奇襲により「(15)狂信のユハ」の戦力が1300+500(プレイングによる特殊条件)減少!
「ザルバルク剣化波動」の使用に伴い、『冥府の渦』と化した海域全体で、大量の「剣化」反応が見られました。これにより、(13)(15)(17)の戦力が奇襲のダメージに加えて低下しています。
紫揚羽師団 (3)奇襲 奇襲により「(3)皇帝龍オーヴァロード」の戦力が1350減少!
戦いを望むドラゴンに対し、奇襲による打撃を与えました。
超ケルベロス大砲を用いた作戦も、有効に作用しています。
緋色蜂師団 (5)奇襲 奇襲により「(5)レスタシア」の戦力が1050減少!
敵指揮官との接触から、魔竜王に関する情報が得られました。
黄鮫師団 (10)奇襲 奇襲により「(10)航空母艦ディオニュシオス」の戦力が1190減少!
現在の地球における最大級のダモクレスを破壊するため、あえて制圧していません。
今回の「テンションアップ」
 戦力「1250以下」の戦場を無視可能に!
 Battle1戦あたりの戦力が「125」に!