アスガルド・ウォー ファーストアタック

鞘柄・奏過 VS エインヘリアル『第一王女エテルネ』

<アスガルド・ウォー ファーストアタック>

●『強制から共生へ』(白馬師団・蒼鴉師団)

 テレビでは、蒼鴉師団の行っているイベントの様子が映し出されていた。
 壇上に立ったフローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)が演説する。

 「振り返れば5年前、初めてのケルベロス・ウォー……
  その相手はザイフリート王子率いるエインヘリアルでした。
  そして、時は流れ……そのザイフリート王子は友となり。
  イグニスをはじめ、数々の王子王女を打倒して、今日まで来ました。
  そう……いま、改めて! エインヘリアルとの決戦の時が来たっ!

  そして、あの時とは違う。
  5年前にはいなかった、新たな地球の仲間がいます。
  エインヘリアルの戦いを間近で見てきた、
  たくさんの妖精のみなさんが、ここにいます。
  今こそ、侵攻の時っ!
  エインヘリアルの支配するこの地を取り戻すため!
  ともに戦い、未来を切り開いていこうっ!」

 エインヘリアルによる支配・強制から逃れた妖精種族達は、続々と仲間に加わった。
 八王子市の東京焦土地帯やミッション地域も、敵の元から奪還されている。
 そうした事実と共に、強制から共生へ』のメッセージは、マスコミを通じて世界へ伝えられてゆく。

 万雷の拍手が鳴り響く会場。その様子が世界に中継されているのを、セレネー・ルナエクリプス(機械仕掛けのオオガラス・e41784)ら白馬師団のケルベロス達は、東京ビッグサイトの報道拠点で確認していた。
「これで仕事も一段落ですね」
 白馬師団が人々の生の声を聞くためにと設けた東京ドームの会場には、人々のメッセージが寄せられていた。
 その一方で、多摩湖を越えた先、埼玉の西武園ゆうえんちや西武ドームでも、蒼鴉師団によるイベントが行われている。こちらは主に、ケルベロスが対象だ。

 両師団の肝煎りで行われている広報活動では、「門」や双魚宮の制圧に関しては触れられていない。
 デウスエクスも、当然ながら情報収集活動は行っているため、地球で公開されている情報は、即座に敵に露見すると思っておいて間違いはない。
 アスガルドゲートの破壊を仕掛けるということで、詳しい者は何らかの手段でゲートに到達可能となったことを当然察しているだろうが、それで表立って騒ぎ立てるような者もいなかった。

「隠しているとはいえ、双魚宮の制圧がエインヘリアル側に露見するのは時間の問題でしょうが……」
「一応、予知がありますからね。露骨にやらなければ、奇襲時までは大丈夫でしょう」
 セレネーの言葉に、源・那岐 (疾風の舞姫・e01215)が所見を述べる。
「にしても、これで残るゲートも少なくなって来たね」
 各国と連絡を取り合っていた東雲・苺 (ドワーフの自宅警備員・e03771)は、送られてくる文面に目を通しつつ口にする。
 続くゲート破壊の成功、ミッション地域の奪還によって、デウスエクスによる被害は減じている。
「アスガルドゲートの破壊に成功すれば、残りは僅か……」
 何百年にも渡るデウスエクスによる侵略。その終焉への期待が高まっているのを、ケルベロス達は改めて感じていた。

●東京焦土地帯にて(銀狐師団)

 東京焦土地帯にそびえ立つ、磨羯宮ブレイザブリク。
 ケルベロスがエインヘリアルから奪取した、この剣の形をした神殿は、たびたび戦いの焦点となり、ケルベロスの戦争における拠点となったこともある。今回も、焦土地帯地下の大空洞へ通じる経路として、重要な役割を果たしていた。
「魔導神殿群ヴァルハラ……アスガルド神が創造した神殿群っすか。大したもんっすね」
 戦争用物資の搬入を行いながら、神宮寺・結里花 (雨冠乃巫女・e07405)は、改めてブレイザブリクを振り仰ぐ。
 磨羯宮ブレイザブリクは、アスガルド神バルドルとナンナの神殿であった。
 それと同様に、他の魔導神殿群ヴァルハラも、アスガルド神によって創造されたものだという。
「アスガルド神は、『死神との最終戦争』に挑もうとしていたそうですが」
 若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)は、その情報を改めて吟味する。
 その観点で見れば、無尽蔵に増殖するという厄介な特性をもつザルバルクに、磨羯宮ブレイザブリクが対抗できたのも自然なことなのだろう。
「まあ、現状だと能力の制御が効かないのは大変だけどね」
 一般人は勿論、死神ザルバルクさえ、ブレイザブリクは剣に変化させてしまう。
 その影響が、運び込んでいる物資にも影響を及ぶ前にと、セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)らは次々と「門」を通じて双魚宮へと荷物を送っていく。
 一度に8人しか移動できないという制限があるため、移動のたびにアイテムポケットに物資を満載している。

 ケルベロス達は、先の戦いで双魚宮を確保した。
 その中枢である「死者の泉」は、アスガルド神がヴァルキュリアを使って発見し、冥府の海(デスバレス)から奪ったものだという。
 死者の泉のヴァルキュリアによる発見が切っ掛けで、死神は世界に染み出すようになったとされている。
 が、それもアスガルド神がいずれ死神がこの世界に現れることを見越していたのなら、先手を打って本格的な進出を阻止したという可能性も出てくる。
 事実として、死神は死者の泉を奪われてから長い年月を経ても、そこまで大きな行動を取って来なかったのだ。

「もっとも、そのアスガルド神は死神ではなく、自分たちが死者の泉を用いて創神したエインヘリアルに敗れてしまったんだけど」
 リリエッタ・スノウ (小さな復讐鬼・e63102)は、そんなことを考えつつ、ブレイザブリクが作る長い影の方へと目を向ける。
 そこを、一糸乱れぬ足取りで、ケルベロス達の方へ進んで来る軍勢は、シヴェル・ゲーデン率いる死神「死翼騎士団」だった。
 蒼鴉師団を通じ、既に参戦を認める旨の連絡は行われている。
 その際には、差し入れなども行われており、話は友好的に進んだようだった。
 もっとも、この戦争の後で争うのは必定だが……。

 進み出て来た死翼騎士団の『知将』が、礼儀正しく頭を下げる。
「死翼騎士団、参上致しました。どうかご案内を願いたい」
「では、こちらへ」
 蒼鴉師団の玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)や夢見星・璃音 (輝光構え天災屠る魔法少女・e45228)らの案内の元、死の空気を纏う騎士達は、貨物の搬入が行われているのとは別の入口から、整然と磨羯宮ブレイザブリクへ入場していく。
「門」を通じ、目指すは遥か地下。双魚宮「死者の泉」だ。

●磨羯宮ブレイザブリク跡(黄鮫師団)

 死翼騎士団が双魚宮の防衛についたのを受け、ケルベロス達の奇襲攻撃の準備は整った。
「攻撃開始だ!」
 合図と同時に、六つの師団が双魚宮「死者の泉」を飛び出していく。
 双魚宮からケルベロスが現れるという異常事態に、流石のエインヘリアルの精鋭達も虚を突かれた。彼らがすぐさま防衛部隊を空洞内に展開し始めるよりも早く、ケルベロス達は奥を目指して侵攻する。

 黄鮫師団は、磨羯宮ブレイザブリク跡へと進んだ。
 空洞内の地面には、幾つもの亀裂が刻まれていた。
 そのクレバスを避けながら、黄鮫師団は、「十二神将」の兵達を突き破り、他の師団が進むための道を切り開いていく。
「ブレイザブリクの剣が突き刺さっていた痕跡か。……しかし、予想していたとはいえ、この空洞やたらと広いな」
「ブレイザブリクやグランドロンみたいな代物が12個収まって、干渉しないだけの広さだからなあ」
 アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)と相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)は、それぞれにグラビティを繰り出しながら言葉を交わす。

 黄鮫師団は、予め交戦区域の予想をしていたが、結論としては「とにかく広い」というものになっていた。
 単体の建造物としては、ヴァルハラの神殿群は、地球のものとは比較にならない程の巨大さがある。
 小さな山だと思ったほうが理解が早いだろう。
 そんな施設が12個、間を保ちながら収まっている地下空洞は、ケルベロス達にとっても驚くべき広大さだった。
 交戦区域も自然と広くなることが予想されるため、敵が態勢を整え双魚宮へ攻め寄せてくる前にと、可能な限り奥へと黄鮫師団は進んでゆく。
「攻性植物もそうだけど、これだけ広い地下空洞を作ってよく陥没しないわね!」
 ローレライ・ウィッシュスター (白羊の盾・e00352)の放った七色の矢が、巨体のエインヘリアルを貫く。
 アスガルドとユグドラシル。隣接する2つの惑星からのゲートが、同様に地下に存在したのは、偶然ではないのかもしれない。

「シャイターンどもめ、何をしていたのだ……!? ただちに他の神殿に伝え、救援を要請しろ!」
 指揮を執る辰将パジュラが、兵達に指示を下し、立て直しを図る。
 そうはさせじと、混乱を広げるように、黄鮫師団はその牙をエインヘリアルに突き立てていった。

●白羊宮「ステュクス」(黒猫師団)

 ケルベロス達の奇襲の報を受け、処女宮から飛び出して来る第六王女フィオナ他の無謀戦士団。その斧剣が届くよりも早く、黒猫師団は白羊宮ステュクスへと奇襲を仕掛けていた。
 白羊宮ステュクスの外観は、ギリシャ風の神殿と言われて想像しやすい形をしていた。
 外部にいたエインヘリアル達を突破し、黒猫師団は内部へ侵入する。
 即座に動き出すのは、斥候部隊だ。
「階段から敵10体。すぐに接敵するぞ」
「了解、伝えるね!」
 ディークス・カフェイン (月影宿す白狼・e01544)が斥候部隊から伝え荒れた情報を、ジェミ・フロート (紅蓮の守護者・e20983)はマインドウィスパー・デバイスを通じ、別のデバイスをつけたケルベロス達へと流す。
 情報的な優位性は、完全にケルベロスのものだった。
 第八王子ホーフンド配下の女性エインヘリアル達は、地形的な有利を活かしきれず、まとまりきれないまま、撃破されていく。

 白羊宮ステュクスの守備についた第八王子ホーフンドと配下達も、混乱を免れられてはいなかった。
「ひぃ! ケルベロス!? なんで!? こっちから攻めるはずじゃなかったの!?」
「落ち着いてください、ホーフンド様」
 とはいうものの、秘書であるユウフラも平静を装いつつも混乱していた。
 それでも、狼狽する主を放っておき、彼女は冷静に部下に迎撃の指示を下していく。伝令の者が部屋を飛び出していくと、ユウフラはホーフンドに向き直った。
「ホーフンド様、今回は兜をお付け下さい」
「あ、ああ。分かったよ。これ苦手なんだけどなぁ……」
 ブツブツと言いながらも、兜を被るホーフンド。
 そうして、兜の留め金をかけた瞬間、彼の狼狽はある程度落ちついた様子だった。
「……エインヘリアルの力、見せる時だ。征くよ、ユウフラ」
 性格矯正用の星霊甲冑をつければ、他の王子達並とはいかずとも、ある程度はまともなのだが。ユウフラは、ひっそりとため息をつく。

「敵の様子が、変わりましたね」
 大義・秋櫻 (スーパージャスティ・e00752)は、ホーフンド配下達の動きが変わったのを敏感に感じ取っていた。
 無闇に飛び出してくるのが止まり、白羊宮内の奥へと後退し、守りを固め始めたのだ。相手の指揮系統が機能し始めたのだろう。
「あまり深入りすると、撤退が困難になりそうだし、そろそろかな」
 白・牡丹 (オラトリオのブレイズキャリバー・e15197)が言う。
 撤退の合図は、信号弾で行う予定だったが、当然ながら神殿内では見える範囲も極めて限定される。
「マインドウィスパー・デバイスである程度はなんとかなりますね」
 とはいえ、これも直接連絡できるのは、セットになった子機を持つ相手だけだ。ヘリオンデバイスが導入されて以来、初となる戦争だけに、ケルベロス達にも色々と気づくことも多いようだった。

●人馬宮「ガイセリウム」跡(金糸雀師団)

 金糸雀師団は、ガイセリウム跡に踏み入った。その後には灰色狼師団が続く。
 空洞の外壁に沿うようにして移動するケルベロスに反応し、ゲート方面から出撃したエインヘリアル『鉄蛇隊』は急速に接近して来る。
 前方にいるのは、飛翔するエインヘリアル達の部隊だ。飛翔可能な星霊甲冑をつけた者達が、槍を構えケルベロスの勢いを止めんと突っ込んで来ていた。頭部の形からして、おそらく鷲座か。
「そう容易に神殿までは抜かせてくれないカ」
「流石に、王の宿将の部隊というだけのことはあるわね」
 君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)とファレ・ミィド (身も心もダイナマイト・e35653)は、即座に敵の接近を全部隊に伝達する。
 ゴッドサイトデバイスで確認できる敵の数はまだ少数。
 まだ出撃して来ている数が少ない今であれば、対処のしようはある。
「勇敢ではあるガナ」
 敵の士気の高さを感じつつも、こちらへ向かってくる敵を、金糸雀師団は即座に潰しにかかる。
 先頭を征くのは、飛行や高速移動が可能な種族や、ライドキャリバー乗りからなる高機動部隊だ。
「意志を貫き通す為の力を!!」
 如月・沙耶 (青薔薇の誓い・e67384)は、意志のちからを剣と為して、先頭を飛ぶ敵の槍の穂先を叩き切る。
 そのまま振り上げた刃は、相手の胴を大きく切り裂いた。
 とどめを他のケルベロスに任せ、次々と向かって来る敵を切り伏せていく。

「後方の確保も! 撤退路を立たれないようにね!」
 マインドウィスパー・デバイスを用い、大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)は改めて確認するよう伝令を飛ばす。
 戦闘の間に、灰色狼師団が先にある神殿へと向かうのを見送ると、金糸雀師団のケルベロス達は、戦闘を継続していった。

●天蝎宮「エーリューズニル」(灰色狼師団)

「なんでしょうね、あれ。骨……?」
 天蝎宮エーリューズニルの外観に、アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)は首を傾げた。
 女神ヘルの神殿であったという天蝎宮エーリューズニル。
 その外壁は、生物の骨のような真っ白な物体で構成されていた。
「……高機動形態ってどういうものなのか、なんとなく理解できた気がします」
 アルフレッドは目を細めた。神殿の先の尖った巨大な骨が、百足の足のように無数に並んでいる。ガイセリウムと戦ったケルベロス達にとって、それが動く様を想像するのは難しくなかった。

 神殿の外部にいたエインヘリアル「神刀隊」の一部を討ち取ることはできたが、多くのエインヘリアルはケルベロス達の奇襲に対し、即座に神殿内へ撤退していった。神殿さえ落とされなければ、アスガルドゲートは破られない。そのことを理解した動きだ。

「まあ、それならそれで……」
 ゴッドサイト・デバイスがあれば、建物内の敵の位置はおおよそ把握できる。と、そこまで把握した時点で、虚之香はフリードリッヒ・ミュンヒハウゼン (ほら吹き男爵・e15511)に問いかける。
「これ、偵察部隊要るかな?」
「内部はブレイザブリクほど複雑でもなさそうだし、危険を冒す必要は無さそうだな」
 偵察部隊は、潜入する以前に外部から中の敵配置を情報として得てしまっていた。
 金糸雀師団が、戦闘を引き受けてくれていた影響が大きいだろう。
 交戦する前から敵勢の位置を継続的に見ていれば、どこが重要な場所なのかもおおよそ理解できている。
 戦闘に入ってしまうと使えなくなるので、実のところ封じるのは難しくはないのだが。
「まあ、ヘリオンデバイスの実装後、ほとんどエインヘリアルとは交戦していないからな……性質もさっぱり分からんだろう」
「不幸だったと思ってもらおうか」
 言うが早いが、ケルベロス達は攻撃に移る。

「障壁部隊、前へ!」
 ディフェンダーを中心とした部隊が、敵が防御を固め切っていない場所へと突っ込んだ。
 彼らがこじ開けた場所から、強襲部隊が攻め入ると、その傷口を広げていく。
 神刀隊のエインヘリアルも奮戦していたが、ケルベロス達は数的優位を保って戦いを挑んでいく。
 待ち伏せ回避も容易。少数の敵の所在も確認可能。
 敵が防備を固めきるまで、灰色狼師団は徹底的に敵の戦力を食い荒らしていった。

●処女宮「スキーズブラズニル」(緋色蜂師団)

 ヴァルハラ大空洞を横断し、緋色蜂師団は船のような形状をした神殿、処女宮「スキーズブラズニル」へと辿り着いていた。
 レヴィン・ペイルライダー (己の炎を呼び起こせ・e25278)が、その外観にぽつりと感想を零す。
「船が地上にあるのは、なんとも奇妙な感覚になるな」
「半分ぐらい地面に埋まっているようですね」
 バラフィール・アルシク (闇を照らす光の翼・e32965)が言うように、船の喫水線に相当する部分よりも下は、地中にめり込んでいた。
 同様に、グランドロン跡も、巨大な半球型のクレーターとなっていた。
 ヴァルハラの神殿は、天秤宮の機能で神殿ごと転移可能なので、その辺りのやり方は割と豪快であった。

「しかし、これはどこから入るかのう……?」
 端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)は、しげしげと船状神殿を眺める。
 神殿を守るべき第六王女フィオナが出撃してしまったことで、他の神殿に比べると防備は手薄なのだろう。ケルベロスを近づけまいとしての攻撃は散発的だ。
 しかし、出入り口が見当たらない。
 かつてのガイセリウムと同様、地表付近にも出入り口はあるのだろうが、フィオナ達が出撃した後に閉じてしまっているらしい。
「やはり、上でしょうか?」
「それしかないかのう」
 イズナ・シュペルリング (黄金の林檎の管理人・e25083)の言葉を受け、括は遥か上の船縁を見上げた。
 今も神殿の甲板にあたる部分から、防衛を担当するヴァルゴナイツのエインヘリアル……名前の通り女性ばかりの集団が、攻撃を仕掛けて来ている。

「一応、飛ぶことは出来るが、全員は無理じゃしな……原始的に切り込みでいくかのう」
 ジェットパック・デバイスは1台につき8人までを飛ばせるが、それでも全員を賄うには不足だった。1機のヘリオンが同時にヘリオンデバイスを付与・維持できる人数は、ヘリオンに一度に搭乗できるケルベロスの数が限界だった。地球上に存在し動かせるヘリオンにも限りがあるので、奇襲を行うケルベロス全員に装着させるには不足だ。
 括の指示を受け、防具特徴の力で、船の側面を駆け上がった切り込み隊が、甲板上にあがり、その一角を抑える。続けて、こんなこともあろうかと用意していたロープを垂らし、後続のケルベロス達を登らせていった。
 当然、敵はそれを阻もうとするが、
「おっと、妨害は無しだぜ!」
 船の側面を駆け上ったレヴィンの全霊の一撃が、ロープを切断しようとしたヴァルゴナイツを撃ち貫いた。それに続き、他のケルベロス達も、登ってくる仲間たちへ攻撃しようとする敵へ襲いかかる。敵の装いに、レヴィンはその能力を推測する。
「敵の技は、音楽系が中心か?」
「音の速さは水中だと空気中より速くなるっていうし、やっぱり水中戦が本領なのかも知れないね」
 七宝・瑪璃瑠 (ラビットバースライオンライヴ・e15685)が、推測を重ねつつ、甲板上に合流する。そして、合流した緋色蜂師団は、甲板下へ通じる入り口を守るヴァルゴナイツへと目を向ける。
「さあ、やろう! 目指せ本番一発制圧だ!」

●獅子宮「フリズスキャルヴ」(紫揚羽師団)

 獅子宮フリズスキャルヴ。
 ヴァルハラ大空洞を横断して辿り着いた紫揚羽師団は、第一王女エテルネ率いる紅炎騎士団との戦闘に挑んでいた。
 炎のグラビティを連打して来る紅炎騎士団との戦いの中、一部のケルベロス達は、奇妙な感覚に襲われていた。
 鞘柄・奏過 (曜変天目の光翼・e29532)は、マインドウィスパー・デバイスで連絡を取り合いつつも、その感覚を口にする。
「奇妙な感覚を覚えた方、いませんか?」
「そちらもか。誰かが呼んでいるような感じだな」
「音声では無い……精神的なものか?」
 尾方・広喜 (量産型イロハ式ヲ型・e36130)やマーク・ナイン (取り残された戦闘マシン・e21176)から、同意が寄越される中、前線に動きがあった。
 第一王女エテルネが、前線に姿を現したのだ。女性であるため、エインヘリアルの王位継承権は無いはずだが、その威厳はレリやハール以上に王族然としている。
 エテルネは冷たい視線でケルベロスを眺めると、すぐに何事か得心のいったように頷き、部下たちに指示を下す。
「獅子宮の反応は、あの装置のせいか……殺せ。奴らが身につけている装置で無事なものがあれば、私の元に持って来い」
 聞こえた内容に、ケルベロス達は怪訝な顔をした。
 どうやら、この奇妙な感覚がエインヘリアル側にとっても未知の事態らしい。
「ヘリオンデバイス持ちを下がらせて下さい!」
 奏過がそう指示を下した直後、エテルネの炎剣が振るわれた。神殿の通路が、一瞬にして業火に包まれる。
「今、まともにやり合う相手じゃないぞ!」
「総員、撤退!」
 合図と共に、ケルベロス達は一斉に後退を開始する。
 相手もこちらを狙っている上、指揮官が前線に出てきて態勢を立て直そうとしている。長居は禁物だった。

 反撃に転じた紅炎騎士団としばしやり合った後、紫揚羽師団は神殿から引き上げていた。
「ヘリオンデバイスが反応していた……いや、ヘリオンの力に、か?」
「だとしても、一体何故でしょう?」
 タクティ・ハーロット (重喰尽晶龍・e06699)と幸・鳳琴 (精霊翼の龍拳士・e00039)も、撤退路を切り開きつつも疑問に思う。
 獅子宮フリズスキャルヴは、狂戦士オーディンの神殿であったと言われている。
 だがアスガルドでの戦争でエインヘリアルに敗れ、コギトエルゴスムになった十二創神『狂戦士オーディン』と、地球産の人造サーヴァントであるヘリオンの間に、関連する要素があるのだろうか?
「オーディンがヘリだったというわけでもないでしょうし」
「狂戦士オーディンは、フリズスキャルヴから神託を下していたというが……」
 いずれにせよ、謎を解くためにも、フリズスキャルヴを制圧せねばならないことは確かだった。

●天秤宮アスガルドゲート

 ケルベロスの奇襲により、天秤宮アスガルドゲートは騒然としていた。
 双魚宮がいつの間にか陥落していた上、中にいたシャイターン達が敵に降ったらしいとの情報に、エインヘリアル達と共に地上に攻め込む予定だったシャイターン達は驚きを隠せない。
 加えて、奪われた双魚宮の守りにつくのはケルベロスでなく死神だ。
 そんな状況下でも、即座に迎撃に出られたのは、エインヘリアル達の戦闘経験の多さと好戦性を示していたと言えるだろう。が、その勇者達にしたところで、状況が把握できていないのは確かだった。

 エインヘリアルが速やかに情報収集に務める中、獅子宮からの情報が、英雄王シグムンドの元へもたらされていた。
「獅子宮フリズスキャルヴが、ケルベロスに反応を示した……?」
 報告を受け、英雄王シグムンドは意外そうに呟く。
「オーディンの後、フリズスキャルヴの主となりうる者は、『あやつ』しかおらぬかと思うたが……」
 だが、神殿はケルベロスの身につけた装置に反応を示したという。
「ならば、我らにも、扱える機会はあるやも知れぬな」
 地球侵攻の目標がひとつ増えたと言えよう。
 だが、全てはこの戦いを乗り切ってからだ。英雄王シグムンドはそう判断する。
 既にドラゴンや攻性植物のゲート破壊すら成し遂げたケルベロスを相手に、今更油断することなど出来るはずもない。
 かつては取るに足らぬ存在であったはずのケルベロスは、既に全宇宙のデウスエクスにとっての脅威なのだ。

「ケルベロスの侵攻を食い止め、双魚宮を取り戻せ。
 我らは破滅の運命になど屈せぬ。再び、己が手で未来を掴むのだ!」
 英雄王の号令に、エインヘリアル達は雄叫びをもって答えるのだった。

師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 (4)奇襲 奇襲により「(4)白羊宮「ステュクス」」の戦力が300減少!
ホーフンド王子は、甲冑の効果で臆病な精神性を補強している模様です。なお、別に能力が高まってはいません。
銀狐師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が7%低下!
防具特徴やヘリオンデバイスを駆使し、物資移送の効率化を図っています。
(3)制圧後、救護拠点の移設に成功すれば、重傷死亡率はさらに低下します。
灰色狼師団 (10)奇襲 奇襲により「(10)天蝎宮「エーリューズニル」」の戦力が300減少!
第二王子ジギスムント配下の神刀隊は、その名の通り刀を主武器とするエインヘリアルの部隊です。斬撃耐性の防具が有効でしょう。
白馬師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「20%」に上昇!
主にマスメディア等を通じて戦いの意義をアピールし、世界各国への応援への呼びかけを行いました。秘匿すべき事項や、死翼騎士団との関係については秘匿しています。
蒼鴉師団 テンションアップ 戦力600以下の戦場を無視可能に!
西武園ゆうえんちや西武ドームで、イベントを開催しました。
また、死翼騎士団に連絡を取りました。
金糸雀師団 (6)奇襲 奇襲により「(6)人馬宮「ガイセリウム」跡」の戦力が300減少!
ヘリオンデバイスは、ファーストアタック時点では使用可能です。数に限りがある点や対象の制限には注意が必要でしょう。
紫揚羽師団 (12)奇襲 奇襲により「(12)獅子宮「フリズスキャルヴ」」の戦力が200減少!
フリズスキャルヴ内で、ヘリオンデバイスに奇妙な反応がありました。
第一王女エテルネ配下の紅炎騎士団は、【炎】を多用します。
緋色蜂師団 (11)奇襲 奇襲により「(11)処女宮「スキーズブラズニル」」の戦力が300減少!
ヴァルゴナイツは音楽系(魔法属性)のグラビティを多く使います。
黄鮫師団 (3)奇襲 奇襲により「(3)磨羯宮ブレイザブリク跡」の戦力が400減少!
地下空洞は広大です。敵を引きつけることで、他の奇襲を行う師団の移動の容易化につながっています。
今回の「テンションアップ」
 戦力600以下の戦場を無視可能に!
双魚宮奪還部隊
 死神「死翼騎士団」の参戦を認めたため、双魚宮は陥落しません。