ユグドラシル・ウォー ファーストアタック

リューイン・アルマトラ VS エインヘリアル『パラシュラマ』

<ユグドラシル・ウォー ファーストアタック>

 大阪府大阪市中央区、大阪城の地下に攻性植物の本星であるユグドラシルへと通じる『ゲート』は存在する。
 大阪のシンボルともいうべき大阪城が、攻性植物の巣窟『大阪城ユグドラシル』と化して以来、大阪城を中心とした一帯は攻性植物に制圧された状態となり、大阪の経済と人々の生活に甚大な影響を与えて来た。
 制圧範囲を広げようとする攻性植物とケルベロスとの戦いは、大阪城を中心とした地区で何年にも渡って続けられてきたのだ。

 その間には大阪城ユグドラシル自体も様変わりしている。
 元々、種族を問わず味方につける攻性植物の将、カンギの影響で大阪城ユグドラシルには様々な種族がいた。
 そこにエインヘリアル第二王女ハールの勢力が加わったのを機に、多数のデウスエクス種族を大々的に受け入れ始めたのだ。
 エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーターに、竜十字島を失陥したドラゴン勢力。一時はコギトエルゴスムから蘇った妖精達までもがいた。
 大阪城ユグドラシルは、歴史上類を見ない程の、多数のデウスエクス種族による巨大拠点へと変貌を遂げて来たのだ。

 だが、ケルベロス達はそれらの勢力と渡り合い、ついには『死なない』とされて来た攻性植物の将レプリゼンタのうち、クルウルクとロキの不死性を破り、撃破することに成功した。
 そして、カンギの不死性を破るガネーシャパズルも手に入れ、勝算を見出したケルベロス達は、大阪城地下のゲート破壊に挑まんとしている。

 折しも、潜入調査に向かったケルベロスは、ユグドラシルゲートの向こうから『世界そのものが迫り来るような気配』を感じていた。
 世界樹ユグドラシルは、何らかの形で地球へ更なる侵攻を仕掛けようとしている。
 それを阻止できるかは、この決戦に掛かっているのだった。

●磨羯宮ブレイザブリク(銀狐師団、白馬師団、紫揚羽師団)

 決戦の舞台である大阪から、およそ500kmを隔てた東京八王子市の東京焦土地帯。
 かつてのデウスエクスの侵攻で焦土と化した八王子市の大地には、巨大な剣が幾つも繋がったような、異形の巨大建造物がそびえ立っている。
『魔導神殿群ヴァルハラ』の一つ、磨羯宮ブレイザブリクだ。

『周囲の全てを剣と化す』機能を持ち、また多数の人員が乗れる超巨大グラディウスとしての機能も持つブレイザブリクは、非常に強力な要塞だ。ケルベロスはその奪取に成功、これを取り戻そうと、エインヘリアルはケルベロスの隙を伺っている。
 ケルベロスはユグドラシル・ウォーのため、戦える者を可能な限り大阪に投入する必要がある。
 ケルベロスが動けば、大阪城勢力と通じているエインヘリアル第八王子ホーフンドの軍が、喜々として軍を動かして来るのは目に見えていた。

 もっとも、そうしたリスクは大阪城への攻撃を決めたケルベロス達も承知の上だ。
 対抗策として、ブレイザブリクの周辺では対エインヘリアルの突貫工事が進められ、防衛設備が次々と建てられつつあった。
 防護柵に掩蔽壕が設置され、プレハブや陣幕、『アイテムボックス』等を利用して持ち込まれた兵器類が惜しげもなく広げられていく。
 周囲にはケルベロスコートを着た集団が多数行き来しており、強い警戒態勢を取っているかのように見えた。

「随分整ってきたね」
 工事の経過が書かれた報告書を見つつ、白馬師団のノーフィア・アステローペ (黒曜牙竜・e00720)は安心したように頷く。
「この様子なら、出発前に予定通り作業は終わるかと」
「こちらの師団も同じくです」
 打ち合わせに来ていた紫揚羽師団の幸・鳳琴 (黄龍拳・e00039)、銀狐師団のリリエッタ・スノウ (小さな復讐鬼・e63102)の答えを受け、ノーフィアはふと問いを放つ。
「ところでこれ、敵軍が全力で攻撃して来たら全部破壊するまでどれぐらい保つと思う?」
 鳳琴とリリエッタは一瞬頭の中で試算してから口を開く。
「3分は保ちませんね」
「銀狐師団では頑丈に作られたケルベロス用の武器も持ち込んでいますから、もうちょっと原型を留めるかもしれませんが」
「まあ、そんなものだよね……」
 3人はなんとも微妙な表情になった。おそらく今のケルベロス達でも同様の時間で済むだろう。
「地球の技術で造った設備より、ドラゴンやダモクレスの体の方が遥かに頑丈ですし」
「改めて理不尽な生命体ですね、デウスエクス……」

 あたかも堅牢に見えるブレイザブリク周辺の施設の防御性能の実態は、そんなものであった。
 こうした(ケルベロス本人が撃つグラビティでない)地球の防衛施設程度では、嫌がらせにはなるが、デウスエクスであるエインヘリアルどころかケルベロスも一切ダメージを受けることはない。
 ましてや相手は剣の一振りでビルを倒壊させかねないような連中だ。
 ケルベロス達もそんなことは重々承知しており、この警戒活動を行っているのは、ひとえに敵指揮官の精神性によるものだった。

「こんなものでしょうか?」
 ブレイザブリクの外、深緋・ルティエ (紅月を継ぎし銀狼・e10812)は、蒼玉衛士団や紅玉侍女団の意匠を取り込んだデザインを描いたバリケードを置きながらいった。
 進む工事の様子を確認しながらタクティ・ハーロット (重喰尽晶龍・e06699)が答える。
「いいんじゃないか? まあ、流石に今更裏切り者まだいますよは通じないだろうが」
「まあ、おまじないみたいなものですよね」
 多少でも懸念させるのが狙いだ。
 普通の相手なら無視するだろうが、ホーフンドの慎重さは尋常ではない。

「実際、一度はホーフンドの性格を利用して追い返せたからな」
 ゼルガディス・グレイヴォード (白馬師団平団員・e02880)は、翻る旗に書かれた、『見敵必殺』『ホーフンド軍全滅だ!』『死』『殺』『滅』『お前の魂胆はお見通しだ』『来るなら来い』などの物騒な文字を見やる。
「もし攻めて来るとしたら、ホーフンドは相当な数を用意して来るんでしょうね」
 若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)はそう予想していたが、その予測はおそらく正しい。
 ケルベロス達と共に第九王子サフィーロを破った死翼騎士団が、ブレイザブリクに籠っても、陥落まで2時間保たないと予知されているのだ。
「他の王子とか引き入れてる可能性も……あるのか? いや、考え過ぎか……」
 尾方・広喜 (量産型イロハ式ヲ型・e36130)は汗を拭いながら頭を振った。相手が行き過ぎた程に慎重となると、こちらの思考も自然と深読みが進んできてしまう。

「これだけの規模でやっておけば敵の侵攻は遅延できるでしょう。おや」
 ケルベロスコートを着せたマネキンを置こうとしていたパウル・グリューネヴァルト (森に焦がれる・e10017)は、既に設置されていた別のマネキンの指が鋭く尖り始めているのに気付き、手を止めた。
「……敵に破壊されずとも、戻って来る頃には結構な数が剣になっているかもしれませんね」
 同様の現象は、他の場所でも確認されていた。
「磨羯宮ブレイザブリクの影響かぁ……とりあえず交換だね」
 セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)は、勝手に剣に変わった通信機を見下ろす。
「飛ばした気球が剣に変わらないといいんですが」
 高度は下げておいた方が良いかもしれないと、ペテス・アイティオ (オラトリオのヤバくないほう・e01194)は空に飛ばした監視用の気球を見上げる。シャイターンによる上空からの偵察も警戒されていたが、今のところは来ていないようだ。

 ケルベロスによってエインヘリアルから奪取されてからも、ブレイザブリクは『全てを剣にする』力によって、力は弱いものの無限に増え続ける死神ザルバルクによる侵攻を阻止して来ている。
 ブレイザブリク自体の内部や、ケルベロスやデウスエクスの装備に影響はないようだが、この力のせいで東京焦土地帯にはいまだに人が住めない。
 能力の対象を制限し、焦土地帯を人の住める場所に戻すため、探索を続けているケルベロス達もいるが、その努力が実を結ぶには、もう暫くの時間を要しそうだ。

 改めてその問題を確認しつつも、充分な警戒活動によってケルベロス達は、ハール軍残党に戦力を振り向けたり、勝った後での死神との関係を心配したりする必要はほぼなくなっていた。
 そして戦争の開始を前にして、作業を行っていたケルベロス達は隠密気流なども利用して速やかに東京焦土地帯から退き、大阪へと向かうのだった。

●応援募集(灰色狼師団)

「戻ったよ」
 世界中を飛び回っていた社守・虚之香 (宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)が管理運営作業を行っている舞洲スポーツアイランドに戻って来ることができたのは、決戦まであまり間も無いになってのことだった。
「お帰りなさい」
「偉い人達と会うのも慣れて来ますね……」
 エリオット・アガートラム (若枝の騎士・e22850)やアルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)も苦笑する。多かれ少なかれ、師団のケルベロス達は国内外で支援をしてくれる人々と会談をこなして来ている。

<大阪夏の陣 ~大阪城を取り戻せ!>と号し、灰色狼師団は大々的な宣伝活動に打って出ていた。
 日本は勿論、世界各国のメディアやインターネットを通じ、既に大阪城勢力を相手に、数々の戦果を挙げて来たことをアピール。勝算があることも充分に広めていく。
 世界の人々からも、デウスエクスの拠点の象徴的な位置付けとなっている大阪ユグドラシル。
 そこに改めてゲート破壊を挑むということへの反応は大きかった。
「こちらから特に強くアプローチしたわけではないけど、農業・食品に関わる人達からの支持は凄かったね」
 虚之香の言に、エリオット・アガートラムは、各国から送られてくる支援の内容に目を通しつつ答える。
「攻性植物のゲート破壊が目的と明言しているのが大きいようですね」
 アルフレッドが室内に置かれていたテレビのチャンネルを動かすと、大阪で農業を営む人達へのインタビューが映し出される。
 大建造期以降に生まれたアルフレッドなどは直接当時のことを知るわけでないが、『いつ農作物が攻性植物化するか分からない』という恐れは、長らく全世界の農家を苦しめて来た。
 日本へのグラビティ・チェイン集中が行われ、国外でのデウスエクス出現がほぼゼロになったことで改善されたが、それまで広大な農地を抱える大規模農園は常に攻性植物化の恐怖と隣り合わせだったのだ。
「ここ20年程は、日本以外はそうした懸念から解放されているけど、30代以上の人には印象深いみたいだね」

 ユニバーサルスタジオ・ジャパンでは、一般の人々を集めての大規模な催しが行われていた。
『想いの大樹』と名付けられたボードには、大阪の人々からの応援メッセージがびっしりと貼り重ねられていく。
「前祝いと言わんばかりですね」
 ディッセンバー・クレイ (余生満喫中の戦闘執事・e66436)は、大阪の街に広がる屋台群に、改めてこの戦いが、人々に待望されて来たことを感じていた。

●テンションアップ(黒猫師団)

 黒猫師団は、大阪城での決戦を前に、3日間に渡るケルベロス向けのイベントを開催していた。
 会場となるのは大阪湾を睨む、住之江区のインテックス大阪。
 初日に行われたのはケルベロス向けの講習会や戦争前のブリーフィングだ。
 かつての爆殖核爆砕戦や、近年の調査等で得られた現地地形や敵に関する情報。密林での活動方法などに関するレクチャーが行われていく。
 といっても、それは1日目だけのこと。

 2日目以降に行われていたのは、士気を高めるためのいうなれば大規模な宴会だ。
 題して『喰らえ、ユグドラシル!』。
 攻性植物を喰ってかかるという意志の元、かつて天下の台所と呼ばれた大阪は元より、世界各国の料理が並べられていく。
 SNSを利用しての料理コンペティション等、大義・秋櫻 (スーパージャスティ・e00752)らのヒーローショー等も行われ、会場を訪れるケルベロスを楽しませていた。

 一方、サブ会場には、一般人ながらも対デウスエクスの最前線での陣地構築に協力してくれた、地元大阪の土木建設業の人々も招待されていた。
 彼らのほとんどは50代以上の男性から成っている。
「デウスエクスに殺される危険が伴う現場だから、後事を気にする必要があったり、子供が成人していない人は参加していない……ということでしたね」
 幸いなことに人的被害は出ずに済んだが、それだけの覚悟を抱いた人々がいるということに、綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)は改めて勝利への意思を強くする。
『見せしめ』とばかり、螺旋忍軍等に殺される危険もあるということで、会場に来るまでにも護衛もつけていた。
 工事を主導していたという男性が、代表して挨拶を述べる。

『えー、こうしてご招待いただき、誠にありがとうございます。
 あの忌々しい根っこが現れて以来、気の休まる日はありませんでした。
 命を張って戦うケルベロスの皆さんを、大阪府民一同、心より応援しております。
 どうか、大阪から奴らを追い払ってやってください!』

 短い挨拶ではあるが、数年に渡りデウスエクスに支配され続けた大阪の人々の切実な声を受け、ケルベロス達は戦いへの決意を新たにするのだった。

●救護準備(蒼鴉師団)

 ユグドラシルゲートが存在する地下空間は、古くから攻性植物勢力の拠点になっていたと考えられている。
 その存在が地球側に明らかとなったのは、2016年に世界樹ユグドラシルが急激に成長し、『大阪城ユグドラシル』と呼ばれるようになってからだ。
 ユグドラシルの根は、ゲートから本来地中に存在した攻性植物の拠点と大地を突き破る形で地上へと伸び、大阪城公園全体を呑み込んだのである。

 そうして形成された空間を経て、ケルベロス達は地上や地下鉄路線から、遥か地下に存在するユグドラシルゲートを目指すことが可能になっている。
 攻性植物が大々的に侵略に打って出たり、多数の種族を仲間として迎えることができたのは、大阪城ユグドラシルという地上拠点あってのものと言えるだろう。
 とはいえ、それも裏を返せば、ゲートの位置が露見してしまったことに起因している。 デウスエクスがゲートを守る上において、その不利は言うまでもない。
 所在地さえ知られなければ、攻められることも無いのだ。

「世界樹ユグドラシルとの意思疎通は、攻性植物勢力でも完全には出来ていないのかもしれませんね」
 そんなことを思いながら、シル・ウィンディア (蒼風の精霊術士・e00695)は、地下鉄の線路上を駆けていた。
 まだ一部が瓦礫で覆われている線路を越え、運んで来た投光器を下ろした。
 充電式の投光器は電源も必要とせず、崩れた地下鉄駅の構内を照らし出す。
 明るくなった構内では、ドワーフを中心とする先行したケルベロス達が、周辺の整備を行っていた。
 蒼鴉師団は地下鉄が動かせる区間は地下鉄を使い、それ以降はケルベロスの人力や運搬車を用いて、地上拠点から貨物を一気に運び込んでいた。

「当然ですが、通信はできませんね」
 フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)がアイズフォンの具合を確かめながら言う。既に潜入調査等でも再三確認されているが、地下の敵拠点付近ということもあり、通信はまともに通じない。
「連絡は取れませんが、大阪湾の方も上手くやってくれているでしょうね」
 大阪湾上でも海上自衛隊の潜水艦救難母艦・補給艦が浮かび、貴石・連(砂礫降る・e01343)らが態勢を整えつつある。海中トンネルから攻め入るケルベロス達は、それらの艦から地下トンネルへ入り、拠点を築きつつあるはずだ。
「奇襲も開始された。こちらも整備を急ぐぞ」
「分かりました!」
 玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)の声に、一同は作業を急ぐと共に警戒を強め、植物の芽を摘み取っていく。
 安全を保つべき救護拠点に、僅かでも敵の侵入を許すわけにはいかないのだ。

●風雲金狐城(黄鮫師団)

 2019年の秋まで、大阪城の螺旋忍軍はソフィステギアをはじめとするウェアライダー出身の者達が支配的な立場を占めていた。
 セントールのコギトエルゴスムを手に入れ、最初に第二王女ハールの要請に応えたという経緯もあってのことだが、問題は彼女達が月に潜んでいたマスター・ビースト配下であったことだろう。
 ソフィステギア達は大阪城の戦力も利用し、密かにマスター・ビーストの命令を果たすために活動を続けた。
 そしてマスター・ビーストに呼び寄せられて大阪城を去り、月(暗夜の宝石)での決戦に向かい、二度と戻ることは無かったのだ。
 その際にソフィステギア達は重要な兵器であった要塞グランドロンの一つも乗り逃げしており、大阪城勢力が大いに混乱したであろうことは想像に難くない。
 その後、大阪城内でどのような暗闘があったのかケルベロス達も知る由もないが、現在のところ支配的な地位を占めているのは『金狐忍軍』なる者達だった。

「とはいえ、そこまで強い勢力ではないか!」
 相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)の旋風斬鉄脚が一閃した。機械忍者が壁に激突、そのまま動きを止めると爆散する。
「自爆用、でございましょうか……」
 後に情報を残さないのは螺旋忍軍らしいとも言える。ロジオン・ジュラフスキー (筆持つ獅子・e03898)は眼鏡についた煤を軽く払うと、手を頭上に向けた。天井から襲い掛かって来ようとしていた金狐忍軍が、炎の槍に貫かれる。
 黄鮫師団のケルベロスは、機械の体を持つ螺旋忍軍に奇襲を仕掛け、この金狐城へと追いやっていた。
 とうの昔にゲートも破壊され、敗残の兵とも言える螺旋忍軍。
 残党である彼女達の戦力自体も、そう多いとは言い難い。
「先だっての潜入調査の際に配下の屍隷兵(レブナント)たちを撃破したことも利いているようだぜ」
 アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)は、壁面の穴に偽装された監視カメラを目敏く見つけると、素早く銃を向け、それらを潰す。
 螺旋忍軍の守る一帯は、現在の大阪城ユグドラシルにあって最も守りが手薄な戦場の一つと言っていいだろう。
「それにしても流石に忍者の城だけあって、仕掛けも罠も多いわね!」
 翼のように変形したアームドフォートを広げ、戦闘で傷ついた仲間を癒しながら、ローレライ・ウィッシュスター (白羊の盾・e00352)が感心したように言う。デウスエクスの施設だけに、傷つけるためのものではなく、侵入者の位置を知らせたり分断したりするような仕掛けが多い。
 金狐忍軍が建造を進めていた風雲金狐城だが、黄鮫師団は特に情報を得ようとはしていない。
「どうせ後で制圧するだろうしな。必要があれば、それからでも遅くないだろう」
 アルトゥーロの言葉に頷き、黄鮫師団は出て来る螺旋忍軍を片っ端から倒していった。

●邪樹竜の森(金糸雀師団)

 竜十字島にあったゲートを失い、定命化の影響を受けない大阪城ユグドラシルへと逃れたドラゴン残党達は、二派に別れた。
 ひとつは、本星ドラゴニアから地球へいつか飛来するドラゴン達のために力を蓄え、『竜業合体』の一部にならんとユグドラシルの根を喰らうことに特化したニーズヘッグ。
 もうひとつは、『竜業合体』を拒み、攻性植物による侵略寄生を受け入れることで生き残ろうとする邪樹竜クゥ・ウルク=アン達だ。

 金糸雀師団は、後者のドラゴン達の支配する領域へと攻め込んでいた。
「目標捕捉……動くな!」
 リューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)が、発砲を繰り返しながら緑色をしたドラゴンへと突き進む。
「ドラゴン勢力だ、集団を崩すな!!」
 相手は痩せても枯れても最強種族を謳われたドラゴンだ。
 攻性植物を受け入れることで進化を遂げたドラゴン達は、ゲートを失ってなお大阪城に集った勢力の中でも強力な存在だった。
「まとめて片付けるわよ。さあ、踊れ踊れーっ!」
 ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)の繰り出した重力の嵐が、植生竜牙兵たちをまとめて呑み込んだ。
 動きを止められたところに、大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)のボクスドラゴン『ぶーちゃん』がブレスを吹き掛けていく。
「配下種族の種類は少ないようダな。報告でもそうだっタが……」
 君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)は、攻性植物を巻き付けた竜牙兵といった風情の敵の消滅を油断なく確認しながら、闇の奥へと目を凝らす。
 オークや竜牙兵、ドラグナーといった配下種族はドラゴンが単体で生み出せるが、それにもグラビティ・チェインは必要となる。
 本星も失った以上、節約を図っているのだろう。
「でも、ドラゴン達の個々の力で言えば、竜十字島にいた頃よりも強くない?」
「元々、ドラゴン勢力が大阪城ユグドラシルに移住を図ったのは定命化の影響を脱するためだったからね」
 ファレに、言葉がそう応じる。
「1年近く過ごして、力を取り戻しているわけね……」
「まあ、その隙のおかげでゲートを破壊できたのだが」
 竜十字島での決戦では、ドラゴン側の僅かな隙を無理やりこじ開けるようにして勝利を収めた。
 だが、それでも自力で、光速すらも越える速度で宇宙を渡って来るのは、流石のドラゴンというところか。
 螺旋業竜スパイラスとの戦いでは、危うく地球の地表部が滅ぼされるところだった。
 ケルベロスに本星を滅ぼされたドラゴン達の破れかぶれぶりは半端ではない。
「でも、それと比較すると、ここにいるドラゴン達は中途半端かも……」
 竜業合体の材料として、自己の命を使うような真似をしたくはない。
 竜十字島以前のような、一丸となって自己の命すら顧みない『意志の強さ』は、以前とは異なっているようにも感じられる。
「理解はしやすいけれどね」
「それで敵が一丸となっていないのは、幸いなことだろうな」
 そうするうち、竜牙兵に続いて肉体を植物にしたドラゴンや、堅固な皮膚を持つドラゴンがさらに現れ、ケルベロス達へと向かって来る。
 それらドラゴンの戦力を削りつつ、金糸雀師団は後退していった。

●ラフム樹海(緋色蜂師団)

 ユグドラシルゲート付近に広がる広大な樹海。生い茂る木々は地下空洞の天井近くまで伸びている。
 敵の防衛網を抜け、樹海へとたどり着いた緋色蜂師団は、その中欧部、『ラフム樹海』へと分け入り、敵の捜索を開始する。
 樹海に分け入り、少しすると、ケルベロスは強烈な気配のようなものを感じ取りはじめる。
 樹海の向こう、緋色蜂師団の目から覆い隠されているゲートの方角から、その力は放たれていた。
 端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)の銃把を握る手にも、思わず力がこもる。
「こいつは……報告にあったのよりも、さらに強まっておるようじゃな」
「世界樹ユグドラシルの力が強まっているのかしら? ……来るわ!! 頭上注意!」
 円城・キアリ (傷だらけの仔猫・e09214)は、ざわめく音が樹海のあちこちで起こり始めるのを耳にし、仲間達へと警告を発する。

 木々を蹴りつけながら、巨大な影が次々にケルベロス達へと押し寄せて来る。
 カマキリを思わせる腕の鎌に、昆虫めいた下半身。
 ローカストにも思えるような風貌だが、その全身は樹木で出来ている。
 潜入調査の際に確認された攻性植物の一種『ラフム』は、木々を蹴ると、樹海への侵入を図る緋色蜂師団の頭上から次々に襲い掛かった。
「灯火消えれば、怪異が踊る」
 櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)の昏い炎が、飛来するラフムの一体を捉えた。
 相手の三次元的な攻撃は、緋色蜂師団も予想済みだ。
 地に落ちたラフムを、他のケルベロス達がとどめを刺していく。

「今さらながら、奇襲よりも待ち伏せに向いた地形だね! みんなはぐれないで!」
 七宝・瑪璃瑠 (ラビットバースライオンライヴ・e15685)は、割り込みヴォイスを使いながら、警告を発する。
 10人ごとの班に分かれた緋色蜂師団は、向かって来るラフムを迎撃しつつも、樹海をじりじりと後退していく。
 そうする中で、リューイン・アルマトラ (蒼槍の戦乙女・e24858)は、樹海の向こうに人影を捉えていた。
「さあ、ラフムども、ケルベロスを樹海から叩き出せ!! こっちにはユグドラシルの御加護がある……っと」
 壮年の男性と見えるエインヘリアル。
 リューインがこちらに気付いていることを悟ったか、エインヘリアルはニヤリと笑うと斧を構える。咄嗟にリューインは、手にした槍を構えた。
「ブラフマーストラ」
「クングニル・バスター!!」
 エインヘリアルとリューイン、両者の投じた斧と魔槍がぶつかり合い、次の瞬間激しい爆発を生じた。
 巻き込まれた木々が次々と圧し折れ、次いで再生していく。
「親友のカンギちゃんにわざわざ呼び寄せられたんでな。そう易々とは通しはしないぜ」
 そう言いつつ、エインヘリアルは戻って来た斧を受け止めた。
「後退を!!」
 リューイン達もまた、ラフム達の動きが乱れた隙に撤退していく。
「樹海を指揮する戦力として、カンギ戦士団でも強者を配置したようですね」
「というか、『ちゃん』て」
 なんとも食えない相手のようだ。ラフム達の打撃は与えたものの、決して守りも薄くはない。
 ケルベロス達は各拠点に集結すると、本格攻勢のため再度出撃を敢行するのだった。
師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 テンションアップ 戦力550以下の戦場を無視可能に!
インテックス大阪を中心に、テンションアップのための催し物を行った他、灰色狼師団と相互協力しています。
銀狐師団 磨羯宮警戒 エインヘリアルによる襲撃を3ターン遅延させました(3師団合計)
灰色狼師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「22%」に上昇!
主にマスメディア等を通じて戦いの意義と勝算をアピールし、世界各国への応援への呼びかけを行うほか、黒猫師団と相互協力を行っています。長期に渡り所在の判明していたゲートの破壊作戦ということもあり、支持は高い模様です。
白馬師団 磨羯宮警戒 エインヘリアルによる襲撃を3ターン遅延させました(3師団合計)
蒼鴉師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が6%低下!
各方面のスタート地点に、救護拠点を設置しました。海中への物資移送の困難も、防具特徴等を使い解決しています。
金糸雀師団 (15)奇襲 奇襲により「(15)邪樹竜の森」の戦力が300減少!
大阪城ユグドラシルで1年近くを過ごし、定命化の影響を脱したことにより、侵食寄生を受け入れたドラゴンの個体の力は増しているようです。
紫揚羽師団 磨羯宮警戒 エインヘリアルによる襲撃を3ターン遅延させました(3師団合計)
緋色蜂師団 (22)奇襲 奇襲により「(22)ラフム樹海」の戦力が200減少!
ラフム樹海に出現する敵はラフム1種のみです。強力ですが理力&魔法が弱点です。指揮官のパラシュラマはカンギ戦士団の中でも単純な戦闘力ではカンギに次いで強力な模様です。
黄鮫師団 (14)奇襲 奇襲により「(14)風雲金狐城」の戦力が400減少!
大阪城内の螺旋忍軍勢力は戦力数、個々の実力ともに高くありません。
今回の「テンションアップ」
 戦力550以下の戦場を無視可能に!
磨羯宮襲撃
 エインヘリアルによる襲撃を3ターン遅延させました。
 襲撃は第8ターン終了時(戦争敗北時)のみ発生し、陥落はしません。