ここはカフェストリート。大小さまざまなカフェや休憩処などが軒を連ねるストリートである。
「カフェはもちろん、足湯もありますし、あちらには猫カフェかしら……まあ、流しそうめんに……え? 自動販売機ですって?」
どうやら、今回も個性あふれる店が並んでいるようだ。それらを楽しそうに眺めながら、朧月・睡蓮(ドラゴニアンの降魔拳士・en0008)は、その道を歩いていく。
「どれも気になりますけれど、今回はそのために来たわけではありませんわ」
そう、睡蓮がここに来たのには、理由がある。それが、彼女の手に渡されている書類だ。
「まずは、わたくしの役目を果たしましょう」
ぴらりと束ねられた書類の一ページ目をめくって、最初の目的地へと向かうのであった。
●3位:廃墟カフェ『MONSTER』2020(
路地裏黒猫同盟)
さっそく、睡蓮がカフェの中に入っていくと……。
「これは……魔物達(の人形)かしら?」
店の掲示板には、人形を上手く倒すとチケットがもらえる……という仕様らしい。
驚きながらも、睡蓮もまた、エントランスの中へと入っていく。
ちなみに真っ白なゴーストを倒すとドリンクチケットが、うろうろと動き回るゾンビを倒すと、ドリンクとフードのチケット、そして、陰に潜んでいるヴァンパイアを倒すとドリンクとフード、そしてデザートのチケットがもらえるそうだ。
「お腹いっぱい食べたい……!」
天雨・なご(明日を夢見て今日もレベル上げ・e40251)は、悪戦苦闘しながらも。
「あれ?ヴァンパイアが倒れてる。いつのまに倒したんだろ?」
ヴァンパイアを倒したらしく、おなか一杯になれるチケットを無事ゲット。
「ちょっと一服しますね」
試しにとドリンクを狙って、ゴーストへと攻撃を仕掛ける田津原・マリア(ドクターよ真摯を抱け・e40514)だったが。
どっこーーーんっ!!
「……すいません、ゴーストさん」
オーバーキルしてしまったらしく、壊してしまったりと参加者は楽しげな様子。
「なるほど。ではわたくしも……」
神経を集中し、陰に潜むヴァンパイアめがけて。
「はっ!!」
見事、命中!! 睡蓮もチケットを手にして、エントランスからカフェエリアへと向かう。
魔物を倒した先にあるカフェエリアは、少し薄暗く、どこか退廃的な内装でではあるものの、清掃はきちん行き届いており、ひとまず安心して飲食出来そうな場所であった。
「ふう、無事ドリンクチケットを入手できましたし、オレンジジュースを頂きますね!」
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)が、一声かけて嬉しそうにオレンジジュースを持っていく。
どうやら、店内はセルフサービスらしく、既にいろいろなメニューがカウンターに置かれており、好きなように持って行って、席で食べたり、テイクアウトできるようだ。
「ゼノアちゃん、ヴァンパイアに勝ってきたのよ!! オレンジジュースに死神のパフェ、お持ち帰りでキングバーガーを頂きますの!」
「ミーミア様もありがとうございます。ご堪能頂いたようで何よりで……」
ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)が注文を取りに来た時に、路地裏黒猫同盟団長のゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)が姿を現す。
マルゲリータにマンゴージュース、初夏の青梅ゼリーを堪能した睡蓮がゼノアに声をかけた。
「あなたがこのカフェの団長さんかしら? おめでとう、あなたの企画が3位になりましたわ」
「……え? えええっ!! そ、それ、本当……で、ですか?」
驚きながらも、ゼノアは嬉しそうに結果を受け止めたのだった。
●2位:鳥の巣カフェ・Yadorigi & 夜間営業(
Zur Kuckucksuhr)
そこに一歩、足を踏みいれれば、まるで、森の中。
「まあ、まるで鳥になった気分ですわね……」
階段を上がれば、樹上の大きなテラスとツリーハウスが出迎えてくれる。青空の下、高い木の上でのカフェは格別だ。
「ふわあー、とっても素……! いい眺め……メニューも、気になるものがいっぱいだ……どれにしようかなぁ?」
とても感動しながら、爽やかな緑の香る木漏れ日の席に座って、睡蓮の気持ちを代弁するかのようにカフェを楽しむのは、エドウィン・ナトラス(星ノ眸・e04347)。
「これは美味しそうなオムライスだ」
ルーク・アルカード(白麗・e04248)は、届いた香草香るホワイトソースのオムライスと黎明のクリームソーダを見て、満足そうに瞳を細めると、さっそくそのスプーンで口に運んでいた。
「す、すごいね。食べるのがもったいなくなっちゃうよ。……えへへ、とっても美味しいよ♪」
森の広場のスイーツプレートと花々のはちみつレモネードの料理を前に、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)の顔も綻ぶ。
「皆様、ようこそいらっしゃいマセ。樹上のカフェに、お運びくださり嬉しいデス。素敵な感想や、言伝も、ありがとうございマス。とても嬉しく拝聴しておりマス。初めましての方も、実は初めましてではない方も、馴染みの皆様も、ご来店、心から感謝いたしマス。どうぞ、くつろぎのひとときヲ」
そうカフェを切り盛りするのは、Zur Kuckucksuhr団長のエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)だ。
話によると、夜も営業しており、抑え目のライトアップが人目を引いているそうだ。また、成年限定ではあるものの、酒類の提供も怠っているらしい。
「素晴らしい景色に、凝ったメニュー、とても気に入りましたわ……あ、あなたがここの団長の……」
「はい、エトヴァデス。何か御用デスカ?」
微笑みかけるエトヴァに睡蓮も思わず、笑みを浮かべる。
「おめでとうございます、あなたの企画が2位に輝きましたわ」
「……ありがとうございマ……え? 本当デスカ?」
握手を求める睡蓮に、エトヴァも嬉しそうに応えたのだった。
ちなみに今回、2位に選ばれたのがもう一つあった。それが……。
●2位:ドルチェの王国(
洋菓子店「Mondenkind」)
甘い香りが睡蓮の鼻先をくすぐる。
「まあ、これは……小さなお菓子の家がたくさんですわね」
ドルチェの王国では、クッキーで出来た素朴な家から宝石のように精巧な砂糖細工まで、大小さまざまなお菓子の材料が並べられていた。
それを使って、小さなジオラマ風のお菓子の家を作るのが、この店のコンセプトだ。一人ひとり、テーマに沿って、自分好みのお菓子の家や世界を作っていくのは、とても楽しいひと時だろう。
「この庭園の主をイメージして……和洋折衷ぽく。明るい色のレンガ(ミルクチョコ)の建物を基準に、一部にブラックチョコで作った樹をいれて……桜っぽく飴細工で調整してみましただぜ!」
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)が自慢げに見せてくれたのは、【春の花園にある上流階級の家】と書かれたお菓子の家。
「湖は琥珀糖で作って、カラーシュガーのお魚を泳がせましょう。お店は……綿菓子屋さん! マジパンの店員さんを置きたいわ」
千手・明子(火焔の天稟・e02471)が作ったのは、【清澄なる湖の実店舗のある店】だ。
「んと、クッキーの屋根にクリームの雪をのっけますのだ。マーブルチョコ、屋根のポイントにいいかな。お庭にはこんぺいとうの灯りがついてて、入り口にはマシュマロの雪だるまさん……できた! きっとな、仲良しの双子が住んでるんだぞ。毎日楽しく暮らしてるのだ」
そう笑顔で見せてくれたのは、 鉄・千(空明・e03694)。作ったのは、【氷雪の白都の小さめの家】だ。
おや、奥の方にもまだある様子。睡蓮がその奥へと入っていくと。
「甘い香りの「お菓子の国」を訪れたあなた。せっかくだから、メルヘンチックな衣装に身を包み、不思議の国の住人になりきってみませんか?」
そう案内するのは、チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)。
どうやら、ここでは、お菓子の家づくりだけではなく、このようなメルヘンな衣装も借りて、記念撮影ができるらしい。
「まぁ、素敵です。おとぎ話の衣装みたい。あまり派手な色はニガテなのですけれど、わたくしに着れるものはあるでしょうか?」
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)はそういって、自分に似合いそうなコウモリモチーフの黒いプリンセス衣装に着替えていた。
「ルー、お姫様みたいで奇麗だよ。えっ、リリも着るの?」
ルーシィドと一緒に来ていたリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は、パフェのメイド服に身を包み、ルーシィドを喜ばせていた。
「うん、実にらしい姿。気に入ったよ」
アンゼリカ・アーベントロート(黄金騎使・e09974)は、花の騎士礼装を見事に着こなし、撮影ルームへと向かっていく。
どうやら、こちらも盛況なようだ。
と、そこへ追加の材料を運んできた洋菓子店「Mondenkind」団長のリューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)が通りかかる。
「このお店、とても盛況なようですわね。お菓子の国も、撮影会も」
「睡蓮にそう言ってもらえるなら、俺もこの店をやった甲斐があったというものだ。ありがとう」
そう笑みを浮かべる。
「それともう一つ、嬉しい知らせがありますわ。おめでとうございます、ドルチェの王国が2位に選ばれましたわ」
その睡蓮の言葉に驚きながらも、リューティガーは満面の笑みで、睡蓮を力強くハグしたのだった。
●審査員特別賞:北の大地のONEグルメカフェ(
夢見る白地図)
今までのカフェとは、ちょっぴりグルメに傾いた特別なカフェ。それが、北の大地のONEグルメカフェだ。
「なるほど、どれも北海道にちなんだメニューなんですのね」
メニュー表を眺めながら、睡蓮はそっと、その暖簾をくぐっていく。
「私はがっつりと……豚丼とザンギですね。がっつりです」
ぐっと、運ばれた料理に嬉しそうにガッツポーズを見せるのは、アメリア・アストラル(一般の任務挑戦者・e02592)。
「北海道か、確かに飯が美味ェって聞くなァ……食い合わせ的にどうなンだコレ? まァ美味そうだが」
安藤・洋(エクストラオーディナリィラブ・e24041)の前に運ばれてきたのは、まさかの小樽の海鮮丼とふわふわチーズケーキだった。
「……あぁ……美味い」
スパイシーなスープカレーとまろやかミルクプリンに、瞳を細めているのは、ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)。
どうやら、このグルメカフェも盛況な様子。
そんなカフェに流れるラジオ番組はというと。
「こんにちは、【びびたび】のお時間です。今日は超会議、あたしの旅団のカフェに合わせて北海道特集です。この番組では、あたしが主に北海道についてただただ喋っております。北海道の魅力、ゆるく語り倒していくよ~」
夢見る白地図の団長、ヴィヴィアン・ローゼット(びびあん・e02608)がDJを務めるラジオ番組だ。楽しげに今回採用したカフェメニューの解説を行っている。
「ふ~、お食事編の解説完了だよ~。軽めの編はまたのちほどだよ~」
と、休憩のために、少しラジオブースから出てきたところに睡蓮が声をかけた。
「ごきげんよう、ヴィヴィアンさん。ちょっとよろしいかしら?」
「あ、睡蓮ちゃんだ! なになに、グルメカフェに来てくれたの? 嬉しいよ~!!」
「ええ、それともうひとつ」
にっこり微笑んで睡蓮は告げる。
「北の大地のONEグルメカフェが、特別賞に選ばれましたわ」
「え? ホント? ありがと~~!!」
おめでとうと告げると、ヴィヴィアンは、うわーいっ!! と万歳しながら喜んだのであった。
●1位:飲茶cafe -Feather-(
-Feather-)
最後に訪れたのは、点心にケーキが味わえる飲茶カフェだ。
カフェを楽しむだけでなく、自分のしてみたを紹介する場としても利用できる様子。
「不思議な取り合わせだけど……どれも美味しいですわ……」
試しに注文したゴマ団子と、鉄観音(烏龍茶)に舌鼓。睡蓮も満足そうだ。
「エビがぷりぷり……美味しい……!」
薬袋・あすか(彩の魔法使い・e56663)は遊ぶ前に腹ごしらえにとやってきたのだが、こちらもかなりご機嫌な様子。
「いいね、この濃厚な味わい」
うまうまと美味しそうにチョコレートケーキを頬張るのは、小車・ひさぎ(同じ地球のしあわせに・e05366)。
「うむ、確かに美味い。今日は蒸すようだからな、ぴったりだ。有難い」
樒・レン(夜鳴鶯・e05621)は、ツルンと美味しい杏仁豆腐と冷たくした麦茶をもらって、幸せそうに瞳を細めていた。
「蒸しカステラ、良い香りですわね♪」
赤松・アンジェラ(黄翼魔術師・e58478)が食べているのは、特製マーラカオだ。
「おお……スイカか。そういえば、エフィジェと言ったか? が良い催しをしていたな。相棒を作って空を飛ぶという……時間があれば行ってみるの良い」
スイカにティラミスという不思議な組み合わせのセットを美味しそうに食べながら、 黒鉄・鋼(黒鉄の要塞・e13471)は、やってきた店員らしき者へとそう教えてくれた。
「ご来店ありがとうございます! 丸々スイカ、意外と出てますね……嬉しいです、スタミナつけていってください!」
いや、店員ではなく、この店を切り盛りする-Feather-の団長、幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)だ。
「睡蓮さんも、いかがでしたか?」
仕事をひと段落させて、睡蓮のところへとやってくる。
「ええ、素晴らしい味に、とても雰囲気のいいカフェですわね。ちょっと変わった取り合わせだったけれども、それもまた味ですわね。きっと」
出されたものを綺麗に完食したのち、睡蓮は真剣な眼差しで、鳳琴を見た。
「え? ど、どうかなさいましたか? やっぱり合わない味だったり……」
その雰囲気にどきまぎする鳳琴に。
「いいえ、その逆ですわ。おめでとう、鳳琴。あなたのお店が見事、1位を獲得したわ」
「わ、私のお店が! あ、ありがとうございます、睡蓮さん! それと、来てくれた皆さんもありがとうございますっ!!」
睡蓮がそう称えると、鳳琴もまた、喜びをあらわにしたのだった。
こうして、楽しいお祭りのひと時が過ぎていく。
「ふう、お仕事も終わったし、もう少し楽しんでこようかしら」
睡蓮もまた、このお祭りの中へと戻っていく。
そう、楽しい楽しいお祭りは、まだ続くのだから……。