お祭り屋台村 結果発表!

●屋台村にロックオン
 2020年のケルベロス超会議に集まった見物客たちは、みな、明るい表情でお祭りを楽しんでいた。
 長年の懸案であった、東京焦土地帯の奪還にも成功し、人々はケルベロスの勝利と明るい未来を信じ、憂いなく超会議を楽しんでいるようだ。
 去年の超会議を終えた後だけでも、ケルベロス達は、ドラゴンのゲートを破壊し、暗夜の宝石であった月面の戦いでマスタービーストを、ドリームイーターの根拠地でジュエルジグラットをと、立て続けに十二創神を撃破している、まさに、破竹の勢いと言って良いだろう。

 そんな人々の喧騒を好ましく思いながら、ギルバート・ハートロック(シャドウエルフのガンスリンガー・en0021)は、片手でテンガロンハットの位置を直すと、ニヒルに口角をあげてみせた。

「私の銃で、捉えられない獲物は無い。……つまり、お祭り屋台村の全てが射程圏内と言うわけだ」

 グルバートは、そう言うと、自らの職責を果たす為に、屋台村の奥へと足を運んでいく……。
 彼に託された使命……、お祭り屋台村部門の投票結果の発表を果たすのだ。

●3位:【超会議】絵合わせゲーム_2020(ソルティユール
 投票結果3位に選ばれたのは、旅団『ソルティユール』の絵合わせゲーム_2020だ。
 ギルバートは、パステルオレンジ色のふわふわ、ボクスドラゴン『オロシ』に導かれるように、絵合わせゲームの会場へと向かう。
 そこには、裏返されたカードが並べられた大きな机が二組。
 そこに集まった客達が、なにやら、真剣にカードを捲っている。

「つまり、同じ絵柄を揃えれば良いわけだ。カードモチーフも色々あるようだが、まずは【食べ物】が良いだろうか」
 ギルバートもさっそく、食べ物のカードを1枚捲る。
 絵柄はハンバーガー。
 ギルバートに似合っていると言えば似合っている。
 ギルバートの頭部がハンバーガーであったなら、きっと、子供に人気のヒーローになっていただろう。
「次は……、アイスか」
 ギルバートは肩を竦める。
 ハンバーガーを食べた後にデザートのアイスというのは、悪く無いが、絵合わせには失敗だ。
「ならば、次は、動物といこう。……パンダか、これは可愛らしいな」
 ギルバートはパンダのカードを手に持つと、引くべきカードを選ぶべく、掌をかざす。
「こうして手を翳せば、引くべきカードの上で掌が少しだけ熱をおびる。つまり、このカードを引けばっ!」
 ギルバートはエイヤとカードを捲る。
 引いたカードは、イルカ。
 続けて読めば、パンダイルカ。
 パンダイルカは、イロワケイルカの別名であり、とても可愛らしい。
 とても可愛らしいが……。
 ギルバートは、少しだけ悔しくなって、それぞれの種類のカードを1回づつ引いてみた。
 植物モチーフ……薔薇と百合
 ファンシーモチーフ……シャボンとハート
 幻想系モチーフ……土の精霊と歩くきのこ
 乗り物モチーフ……ヘリコプターとバス
 組み合わせとしては、アリかもしれないが、絵合わせとしては失敗であったようだ。
「ここまでのようだな、潔く諦めるとするか」
 ギルバートはそう言うと、注意書きの通り、カードを丁寧にもとに戻して後片付けすると、団長のリノ・ツァイディン(旅の魔法蹴士・e00833)の所へと足を運んだ。
 遊びに来てくれた事にお礼を言ってくれたリノに、投票結果を伝えると、
「そんな凄い企画では無かったと思うのですが、楽しんで貰えたなら嬉しいです」
 と微笑むと、リノの嬉しさを感じ取ったのか看板を持ったままじゃれついてくるオロシ。
「客引きをしてくれた、オロシのおかげですね」
 リノは、オロシを労って、頭をなでなでしてあげたようだ。

 その2人は、とても優しいほっこりした様子で、周囲の人々を和ませたのだった。

●2位:お祭り騒ぎの光画部!カーリングと海鮮料理の店!(光画部
 絵合わせで全敗したギルバートが、次に足を運んだのは、主にマグロで有名な光画部の催し物、マグロカーリング会場であった。
 マグロカーリング。
 それは、投擲した冷凍マグロに自ら飛び乗って、そのまま60mのコースを滑走するレースである。
 コースの距離は60m。
 この60mギリギリで止まる事ができれば、大成功。
 ただし、60mを超えると、発砲スチロールボールのプールにドボンと落ちてしまう。

「マグロを信じれば大丈夫、みんな、がんばって!」
 という、保戸島・まぐろ(無敵艦隊・e01066)を背に、多くの猛者たちが、冷凍マグロに華麗に、或いは、コミカルに飛び乗って距離を競う参加者達。

「わーい、まぐろー!」(5m)
(どっぱーん!!)(93mオーバー)
「ブレーキが強すぎです……」(11m)

 みなが、悲喜こもごもの結果に、一喜一憂して周囲と一緒に楽しく大騒ぎするのを尻目に、ギルバートは目を細めてコースを見分すると、まぐろに渡された冷凍マグロの撓りを確認する。
 実際のカーリングのコースが50m弱であるので、ケルベロスが力任せに投げれば、軽く60mはオーバーしてしまうだろう。
 つまり、力加減が重要となるのだが……。
 冷凍マグロは、ボブスレーコースを10分以内に滑り切るポテンシャルを秘めているが、カーリングのストーンと比べ、その形状は複雑であり、一筋縄でいくとは思えない。

「むむむ」
 腕を組んでうなるギルバート。
「冷凍まぐろは鮮度が命! 悩むよりも飛べですよ!」
 そんなギルバートの尻を、まぐろがマグロで蹴飛ばした。
 このまぐろの応援を受けたギルバートは、それもそうかと、マグロを目にもとまらぬ早撃ちで投擲し、オレンジのスカーフをなびかせて、打ち出されたマグロにシュタっと華麗に着地すると、両手でバランスをとって、波乗りのようにコースにまろびでた。

「ギルバートさん、はやすぎなの」
 早飯早撃ち芸のうちとは言うが、少し早すぎたらしいギルバートは、コースを飛び越えて、ボールプールへとダイブした。

「ひどい目に合った……」
 冷凍マグロをもってスタート地点に戻ったギルバートは、ようやく、投票結果二位という結果を、まぐろに伝えて祝福する。

「冷凍マグロの魅力ですよね!」
 まぐろは、冷凍マグロを手にしながら誇らしげに胸を張ってみせると、周囲の部員や参加者達が盛大な拍手で讃えてくれたのだった。

 その後、ギルバートは、イートインスペースで、まぐろのアラをステーキ風にして食べさせて貰い、満足一杯で光画部を出たのだった。
 マグロのアラのステーキは、マグロの質を見極める目利きと、マグロ料理の腕前が合わさって、本当に美味であったらしい

●審査員特別賞:【0円】 ワカメ食堂 【ダイス】(毎日洗浄
 マグロ料理に舌鼓をうったギルバートは、次なる屋台へと足を運ぶ。
 向かった先は、審査員特別賞を受賞したワカメ食堂だ。
 審査員特別賞、つまり、ギルバートの推薦である。
 勿論、多数の参加者からの指示があった中から選ばれてはいるのだが……。

「私もあと2週間もすれば43歳になる。この年になれば、抜け毛も気になるし、常に帽子を被っているので、頭皮のムレもあるかもしれない……」
 いまのところフサフサといって過言では無いが油断はできない、そう考えれば、ワカメ食堂の存在を無視する事は出来ないだろう。

(「つけヒゲはOKでもカツラはNG……。それが、男のロマンティズムなのかな?」)
 ギルバートは、世の中年男性の心を代弁しながら、大きな緑色の物体がうごめくワカメ食堂の暖簾をくぐった。

「いらっしゃいませ!」
 ギルバートが入店すると、さっそく威勢のよい、社守・虚之香(宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)の掛け声が響く。
 挨拶されたギルバートは、虚之香に、まずは、投票結果と審査員特別賞を受賞した事を報告する。
 虚之香は「それは光栄、なのかな?」と答えると、パチリとウィンクしつつ、自分の店を紹介してくれた。

「この食堂では、ワカメ……的な存在を、前菜、スープ、主食、主催、飲み物、デザートに調理して提供しているんだよ。健康に良いかどうかわからないけれど、害はないから安心だね!」
 微妙に安心できないが、しかし、ワカメのフルコースというのは、頭髪に不安のある者の心にダイレクトに響くパワーワードである。
 ギルバートは、一抹の怪しさを見ないようにして、折角なので、それぞれ一品づつのフルコースを注文してみた。
 ギルバートは、勇気のある男なのだ。

「前菜は、冬越しジャガイモのコロコロワカメサラダだよ。冬越しジャガイモは、よくねた芋だから糖分が高く甘いんだ。それをワカメと和える事で、甘みと歯ごたえを楽しめるよ」
 虚之香の説明に頷いたギルバートは、もしゃもしゃと前菜を平らげる。
 とても健康に良い味がした。
「スープは……、ワカメの味噌汁だね。これぞ日本の味だよね」
「うむ、ワカメの味噌汁には豆腐があうな」
 ギルバートはずずっと味噌汁をすすった。
「主食は……、ワカメバーガーだよ。」
「やはり、私のイメージはハンバーガーなのだろうか……」
 ワカメバーガーは、ワカメが練り込まれたバンズにワカメ入り豆腐ハンバーグが挟まれた一品だったが、とにかく、健康に良さそうな味に間違いは無い。
「主菜は……、ごめん。蠢く生ワカメだったよ」
 ギルバートは、フルコースを頼んだ自分の選択を食いつつ、目を瞑って飲み込んだ。
 蠢く生ワカメの食感を、ワカメスカッシュとワカメサンデーで誤魔化したギルバートは、虚之香と握手をかわして店を出た。

 彼の将来の頭髪に、幸あらんことを。

●1位:維天玄舞紗大社迷物!?おむすびくじ【健康祈願編】(玄舞紗の社
 ワカメのフルコースを完食したギルバートは、腹部でワカメが蠢いているような感触に悩まされつつも、本日の最終目的地、お祭り屋台村で栄えある1位を獲得した、玄舞紗の社へと向かう。
 玄舞紗の社は、お祭り屋台村では知らぬ人はいない名店であり、2016年度から連続して入賞している実績があるので、ギルバートも安心だ。

「なになに、ここでは健康運を占えるのか。俺もおっさんだから健康には気をつけないとな」
 ギルバートは、おっさんらしく健康に気を付けっているので、早速占いをしてもらうべく、御休憩所たるたろすのイートイン座席に腰を下ろすと、維天・乃恵美(奉雅駆の戦巫女・e02168)からの無料ドリンクをありがたく頂いた後、お賽銭をはずむ。

「どうか健康にすごせませうように」
 特に捻りの無い発言は、逆に、彼の本気度を表してくるのかもしれない。

 『ケシャシャシャシャ…! コロコロコロ21!』
 結果はラッキー! レベルは高く無いがラッキーに違いは無い。
 ギルバートは、ほっと一安心して、もう一度お祈りを捧げた後、乃恵美に向けて、
「2020年の、お祭り屋台村第1位、おめでとうございます!」
 と、祝福の言葉を送ったのだった。

「あら、嬉しいですね! これまで2位、3位、2位、2位と入賞してきましたが、1位は初めてなんです。折角なので、みなさんとお祝いのおにぎりを食べましょう!」
 1位になった喜びと共に、乃恵美は、迷物おむすびくじ売り場へと足を運ぶ。
 乃恵美のお手製おむすびの味は絶品で、冷たい麦茶と自家製甘酒が飲み放題の会場では、多くの人が集まっており、お祭り屋台村1位の報を受けて、拍手喝さいで、乃恵美を讃えてくれた。

「いつかやると思っていた」
「健康が一番大事だと思います」
「おむすびをみてるとお腹が空くよ」

 多くのお客様に祝われた乃恵美も嬉しそうに腕まくり。
 さっそく、ふるまいのおむすびを握ってくれるようだ。

「私にも一つ、くれないだろうか」
 美味しそうなふるまいおむすびに、ギルバートが思わず手を出すと、乃恵美は、勿論ですと、にぎったおむすびを手渡してくれた。

 ギルバートにふるまわれたおむすびは……、焼きスパムゆでたまご(味付)のおむすびで、良く判らないけど、おいしいっ☆ ものだった。
 ギルバートは嬉しそうにホクホク食べる。
 吉凶は【大飛】で、【腰に快癒の望みあり】。
 あまりの素晴らしさに、思わず感動してしまう結果であった。

 乃恵美は、嬉しそうなギルバートを横目に、集まった皆に祝福のお礼を述べると、世界の人々が異常気象や病魔に負けずに健康に暮らせるようにと、祈りを捧げたのだった。