ジグラット・ウォー ファーストアタック

社守・虚之香 VS ワイルドハント

<ジグラット・ウォー ファーストアタック>

●変わりゆく戦い
 2017年末、東京上空5,000mに出現した『ジュエルジグラットの手』は、人類にドリームイーターのゲートの位置を伝えるものであった。
 それ以来、侵攻を繰り返すドリームイーターたちとの戦いを経る中で、ケルベロス達はドリームイーター最強の『寓話六塔』達を撃破。
 ゲート破壊の成功可能性を充分なものと判断したケルベロス達は、ゲート破壊のための戦いを決断した。
 潜入調査によって、モザイクに侵されたジュエルジグラットがゲートを破壊しても再度侵攻してくるであろうことが判明している。
 ドリームイーターによる侵略を完全に断つため、ケルベロスは敵本星へ乗り込んでの戦いを挑もうとしていた。

 支援者との会談を終えて帰国したゼルガディス・グレイヴォード (白馬師団平団員・e02880)はただちに白馬師団の拠点に顔を出した。
「あ、ゼルガディスさん、お帰りなさい」
 パソコンのモニターから一瞬だけ顔を上げた東雲・苺 (ドワーフの自宅警備員・e03771)は、すぐにまたメールの処理を始める。
 拠点内のディスプレイには応援を募集する特番が映し出されていた。
 ケルベロスが戦争に挑む前の風物詩になりつつあるが、やはりマスメディアは効果的に使えば広く人々に知らせる上では効果的だ。白馬師団で選定されたテーマソング「Seventy Times Seven」を聞かない日はない。
『さて、幕張メッセでは、【世界中の人々の希望で作るモザイクアート】が行われています。これは……』
 ニュースの話題は、蒼鴉師団が行う企画の情報へ移っていく。
「海外でも、だいぶ広まっていたな」
「それは何よりだね」
 ゼルガディスの報告に、ノーフィア・アステローペ (黒曜牙竜・e00720)はほっと息をつく。

 今回の攻略作戦に関しては、あちこちのTVニュースで流されている他、WEBサイトやSNS上でも盛んに話題にされている。
 かつてドリームイーターが侵攻した際には、東京23区のうち港区はほぼ制圧された。
 ケルベロスによって制圧された地域は取り戻されたものの、『ジュエルジグラットの手』が落下した地域は、昨年夏の『青髭』との戦いで手がゲートに引き戻されるまでの期間、復興すらままならなかった。それらの地域に存在していた企業などへのダメージは大きい。
 ゲートを破壊するだけでは、ジュエルジグラットは再び地球に現れる可能性がある。
 かつてのような事態が再び起こらないよう、可能性を断つ判断をケルベロス達が下したことは支持されている。
 ノーフィア、そう手応えを掴んでいた。
「にしても、よく戦場になる地域だなあ……」
「東京はどうしても、そうなりますね」
 セレネー・ルナエクリプス (機械仕掛けのオオガラス・e41784)は微笑した。
 23区内の人口密度が高い以上、グラビティ・チェイン、あるいはドリームエナジーを狙ったデウスエクスの標的となるのも自然の流れなのだろう。

 テレビ番組では、グランドロンのコギトエルゴスム確保についての情報を語っていた。
 セントールの定命化をはじめ、日本以外の地域では、広く伝わっていない話も少なからずある。
 協力者や有力者たちに支援への謝辞を伝え、変わらぬ支持を依頼すると共に、そうしたケルベロスの成し遂げた内容をアピールしていくことで、人々の支持に繋げていく。
「もっとも、今回の戦いでは復興作業とかが無い分、経済的な負担はそこまででもないのでしょうけれどね」
 昨年のドラゴン・ウォー以来、地球上で大規模な復興が必要になるような戦争は起きておらず、強襲型魔空回廊を用いた侵略も収まった。
「皆さん、状況が変わっているのを感じているのかもしれませんね」
 セレネーが呟く。
 2015年からの第二次大侵略期が転換点を迎えたことを、ケルベロスのみならず、地球に住む者の多くが感じつつあるようだった。

●『あなたの夢が戦う力』
 幕張メッセには、告知を見た大勢の人々が詰めかけていた。
「これ、お願いします!!」
「はい、ありがとう」
「あの、頑張って下さい!」
 ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)は、持ち込まれた写真の束を受け取ると、自分と変わらない年頃の女の子達が去っていくのを見送った。
『夢や目標』をテーマにした絵や写真が募集されているが、直接持ち込む者もいる。
 テーマのせいか、会場を訪れているのは若者が多いようだった。
「……まあ、今年の目標を書いたIR資料とか持ってきた人いたけど……」
「絵とか写真だって言ってるんですけどね……」
 流石に少数ではあったが、これもケルベロスを応援しようという気持ちの表れだと思えば無碍にもできない。
 フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)は、ルイーゼに見せられたゴッドペインターたちに渡す投稿物の中に入れ、後は任せることにした。

 集められた多数の投稿物で造られていくのは、『ケルベロス』をモチーフにした巨大なモザイクアートや、同様にして作られる応援旗だ。
 同じ企画はさいたまスーパーアリーナや横浜アリーナでも行われている。各会場に投稿物は引っ切り無しに送られたり持ち込まれたりしており、ゴッドペインターを中心としたケルベロス達は、モザイクアートの専門家に指導を受けつつ、世界各地から送られてくる投稿物(当然ながら、ほとんどが写真だ)を並べる作業に追われていた。
「ドリームエナジーは高まってそうだね」
 シル・ウィンディア (蒼風の精霊術士・e00695)は、会場の雰囲気に心の浮き立つものを感じていた。
 ドリームイーターが他のデウスエクスと異なる点の一つとして、グラビティ・チェイン以上に『ドリームエナジー』を求めている点がある。
 この謎のエネルギーは、ドリームイーターにとってモザイクを晴らす力となると同時に、大規模な作戦を行うためのリソースとなっている。
 そして、もう一つの特徴として、ケルベロスも状況によってはこれを利用できてしまう。
「これが、ケルベロスの助けになる……って皆が信じてくれると良いんだけど」
「どれだけ信じてもらえるか、だな」
 シルの言葉を受け、玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)は頷いた。
 ドリームエナジーは『人々が抱いているイメージ』に強い影響を受ける。
 その事実は、行事にまつわるイメージを反映する『季節の魔法』の存在などでも明らかだった。
「改めて考えてみても、随分と曖昧な力だ」
「でも、それでジュエルジグラットの手を地上からゲートに叩き戻せたからね……」
 それ程までに地球の知的生命体が持つドリームエナジーは強いのだ。
 また、ジグラット・ハートと遭遇した潜入調査チームは一時モザイク化したが、元の大切なものを思い出させることでモザイク化を解くことができていた。
 人々が『これがケルベロスのためになる』と信じることは、良い効果をもたらすだろう。

 会場内では、潜入調査チームの一員でもあるマヒナ・マオリ (カミサマガタリ・e26402)の演説が行われていた。
 彼女は、調査チームのうち3人がいまだ帰還していないこと、彼らを取り戻さなければならないことを告げ、そして訴える。
「この戦いで、終わらせよう。ドリームイーターの侵略を、モザイクの苦しみを!」
 そういて演説が締めくくられると共に、大きな拍手が沸き起こる。
 戦いの意義を確認すると共に、ケルベロス達はブリーフィングへと移っていく。

●ジュエルジグラットゲートへ
 そして、ケルベロス達は開戦日の朝を迎えた。
 各地の自衛隊基地や米軍基地、さらには羽田空港まで利用して、多数のヘリオンや輸送機、航空機が一斉に飛び立ち、大きく弧を描いて東京上空を目指して高度を上げていく。
 いまだにゲートから突き出ている『ジュエルジグラットの手』が、ケルベロス達の侵入ポイントだ。
 この『手』の内部を突っ切ることで、ゲート内へ侵入できることは調査によって既に判明している。

 上空で速度を落とした輸送機から、ケルベロスが次々に『手』の上へと飛び降りていく。
 粘性の液体を思わせるジュエルジグラットの手を抜けると、西洋の城を思わせる空間へと降り立つ。
 外から見るのとはまるで異なる空間だが、これがジュエルジグラットの手の内部だ。

 各師団が集結を図る中、救護準備を担当する銀狐師団は、広間を中心に複数の部屋を確保する。
「地表に落ちていた時と、内部の様子はそこまで変わらないようですね」
 銀狐師団のイッパイアッテナ・ルドルフ (ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は、敵の襲撃がないのを確認するとコンテナを開けた。収められていた物資を、銀狐師団は次々と運び出していく。
「さすがにルートは変化しているようだけど」
「元のダンジョンのままだったらゲートに繋がっていないですからね」
 リリエッタ・スノウ (小さな復讐鬼・e63102)と若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)は言葉を交わしつつ、救護本部の設営をこなしていく。ややあって、どこか悪夢的な城の内部に、銀狐師団の救護本部は完成していた。アイテムポケットで細々としたものを持ちこんだケルベロス達が、必要な品々を出していく。
 モザイク化された者を運びこむための部屋には、世界から集められた人々からの応援メッセージが飾られていた。
「前線から離れているから、不便さはあるかな?」
「とはいえ、モザイク化のような重篤な症状を受けた人の治療のためには、ジュエルジグラット本星から離れたほうが良いのは確かでしょう」
 セラフィ・コールの言葉に、イッパイアッテナは改めてそう答える。
「きっと、役に立ってくれる。そう信じましょう」
 肉体をモザイク化されたケルベロスに、己の意識を保たせることで元に戻す。
 潜入調査チームが確認した現象だが、何しろ実例が少ないだけに、ケルベロス達でも確実な治療法などは見いだせていない。
 今回で勝ってしまえば、必要なくなる知識ではあるだろうが。
「暴走している人達も、無事に保護できると良いね」
「ええ……」
 彼らの心配そうな言葉は、多くのケルベロスが共通して思っていることに違いなかった。

 ジュエルジグラットゲートへと至る道のりには、ケルベロスの攻撃を警戒し、既に多数の敵戦力が展開されていた。
 第二の魔女レルネ、フォーチュンテイカー、ファーストキス。
 ジュエルジグラットの手の内部、ダンジョンのようになった空間に防衛線を築き、待ち受けるドリームイーター。
 その敵戦力に対し、緋色蜂師団、紫揚羽師団、黄鮫師団の3師団が、それぞれに挑んでいく。

●第二の魔女レルネ
 狭いダンジョン内では、個人の戦闘力が物を言う。
 経験豊富なケルベロスを押し立てた緋色蜂師団は、敵の抵抗を突き崩し、前進を続けていた。
「《爪》班、転移準備! 3、2、1……」
 合図と共に、先頭を往く部隊がダンジョン内に設けられた転移魔方陣に飛び込んだ。当然のように待ち伏せて来た敵デウスエクスがグラビティを浴びせんとして来る。
「じゃが、分かっていれば対応はできる!」
 端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)は抜き打ちの一撃を放った。
 電光石火の速さで放たれた銃弾が、砲撃を放とうとしていたダモクレスの動きを止める。
 攻撃を凌ぎ切ったケルベロス達の反撃を受け、消し飛んでいく敵の姿に、括は目を細めた。
「……ダモクレス? いや攻性植物? 大阪城の者達が送り込んで来たか」
 ドリームイーターに混じっていたのは、攻性植物とダモクレスの中間のような特徴を持つ四角い機械だった。
 後続の主力部隊達が転移魔方陣で追いついて来ているのを確認しつつ、櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が言う。
「確か、オーズボーグとかいうものだろう」
「随分、前に聞いた敵のような気がするのう……」
 言葉と共に符を放ち、千梨は曲がり角の向こうに現れたドリームイーターを撃破する。

 緋色蜂師団のいる区域を守っているのは、第二の魔女レルネ。
 魔女集団『パッチワーク』の一員だ。彼女達は現在、大阪城に集ったデウスエクス集団の一勢力となっている。
 とはいえ、元々大阪城に集った戦力の中でも強いとは言えない勢力なのは確かだった。タイタニアをコギトエルゴスムから蘇生させ、仲間に加えようともしていた程だ。大阪城の他の勢力から戦力を借りて来ているのに不思議はなかった。
 ケルベロス達は、その抵抗を打ち破りながら、城内をゲートへと侵攻していく。
「やっていられないわね。こんな小戦力じゃ、今のケルベロスの相手にもならないじゃないの」
 飛来する魔力と共に、第二の魔女レルネの吐き捨てるような言葉が七宝・瑪璃瑠 (ラビットバースライオンライヴ・e15685)の耳に届く。
「わざわざコギトエルゴスム化から救ってやったタイタニアも裏切るし。やはり信用できるのは自分だけ……」
「いや、それはあなた達が悪いと思うけど」
 恩着せがましい言葉に、思わず瑪璃瑠が言葉を挟む。
 妖精八種族を滅ぼしてアスガルドを制圧したエインヘリアルや、アスガルドを侵略し続けている攻性植物。それらと手を組もうとしたのは、タイタニアの信用を損なって余りある行いだっただろう。
『信頼』を欠落したレルネには、他人のそれも理解できていない。
「それで定命化する? 分からない……分からないわ」
 ぶつぶつと言いながら後退する魔女は、ドリームイーターが抱える問題を端的に示しているようだった。

●フォーチュンテイカー
 城の床を蹴って跳んだ深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)は、壁を足場に再跳躍。牙を向いて突進して来た狼型ドリームイーターが、そのまま壁に激突する。痛みを覚えた様子もなく振り返る敵よりも早く、加速したルティエはナイフを手に距離を詰めると無数の斬撃を放った。
 ドリームイーターの全身に傷口が開く。ルティエは鞘に納めると共に詠唱した。
「罪の上に咲き誇れ……焔椿鬼!」
 ドリームイーターの体内から黒と紅の焔が溢れ出し、そしてたちまち全身が燃え尽きていく。
 ルティエはその様子を見下ろし、呟いた。
「以前の戦争で出現していたのと同じドリームイーター達ですが……異様ですね」
「どいつもこいつも、喜び勇んで突撃して来やがる。フォーチュンテイカーの影響だろうな」
 タクティ・ハーロット (重喰尽晶龍・e06699)は顔をしかめて言う。
 遭遇する端から敵を倒しつつ、紫揚羽師団はフォーチュンテイカーの元へと辿り着く。

「ついに、この時が来たか」
 初代寓話六塔たるドリームイーター『フォーチュンテイカー』が、多数のケルベロスの姿に、どこか諦念を抱いたようにその桃色の肉を震わせた。
 強敵と遭遇したケルベロス達の心の中に、奇妙なまでの幸福感が沸き上がって来る。
「君達、私を守ってくれるね?」
「「「はい、喜んで!!」」」
 配下のドリームイーター達が、欣喜雀躍といった様子で紫揚羽師団に襲い掛かって来る。
 その様子からは、フォーチュンテイカーの元で戦うことを疑いなく幸福と思っているのがありありと分かった。
「単なる残霊だった時とは違うようですね」
 鞘柄・奏過 (曜変天目の光翼・e29532)は、現在現れているフォーチュンテイカーの幸福感を与える力が、ダンジョンに出現していた時よりも大きく上回っているのを感じ取っていた。
「おそらくは、本来に近い力を取り戻している……」
「今なら、話が通じるかもしれません」
 ミリム・ウィアテスト (リベレーショントルーパー・e07815)は、確認するように問いを放った。
「あなた達、初代の寓話六塔(ジグラットゼクス)が、ゲートをピラーに変える技術を他のデウスエクスに与えたのですね?」
「そうだとも」
 フォーチュンテイカーは、端的にそう答えた。
「宇宙規模のグラビティ・チェインの枯渇に気付いた時には、もはや取返しのつかない星々は幾つも存在していた」
 ジュエルジグラットは、その手を差し伸べ、滅びる星々から人々を助けていた。
 だが、宇宙は広い。ジュエルジグラットの移動だけでは、救えぬ星は増える一方だ。
「そこで、『王様』、『王子様』、『お姫様』、『赤ずきん』、『ランプの魔神』、そして私『フォーチュンテイカー』……初代ジグラットゼクスは、地球の知的生命体を犠牲にしてでも、星々を救うと決めた」
「……決めた、ですか」
 ミリムは悟る。自分の行いが地球の人々にとって悪しきものであることを理解した上で、フォーチュンテイカー達はそれを実行したのだと。
 それで幾つもの星が救われていたのは、おそらく事実だ。
 だが代償として、グラビティ・チェインを得るために殺され続ける地球の人々は同じ年月を苦しむこととなっている。
「君達の怒りは正当なものだ。既に私は総身をモザイクとしてジュエルジグラットに捧げ、滅んでいるが……必要ならば怒りをぶつける相手にはなろう」
 フォーチュンテイカーの無数の目が一斉に光線を放ち、それを目くらましとして初代ジグラットゼクスは後退していく。
「なんというか……掴めない相手ですねぇ」
 言っていることは本当なのかもしれない。だが、フォーチュンテイカー自身は自分自身の行いやその成果に、何の幸福感も得ていないように、紫揚羽師団のケルベロス達は感じていた。

●ファーストキス
「私なんかに頼るなんて、寓話六塔ももう本当にピンチなんだ」
 ドリームイーター『ファーストキス』は、呆れたように天を仰いだ。
 日本中の学園を荒らしまわった5体の学園ドリームイーター。その最後の1人がファーストキスだ。彼女はゲートの防衛部隊の指揮を執ることになっている。
 ファーストキスのモザイクはかなり薄くなっている。戦闘能力で見ても、相応に高いと言えるだろう。
 だが、個人としての戦闘力こそ高くとも、ファーストキスが指揮官として優れているわけではない。
 元より、彼女を含めた学園ドリームイーターは個人主義。
 まとめて扱われているが、個々に別行動を取っていた程だ。
「集団行動とか苦手なのよねー」
 本当に、ドリームイーターは統制を欠いてしまっているのだろうとファーストキスは思う。

 識別用に黄色の品を身につけた黄鮫師団は、そんなファーストキスに率いられた防衛部隊を蹴散らしていた。
「グッドナイトデュラハンにロストイリュージョン。ミッション地域の敵ですね」
 敵の姿を確認し、ローレライ・ウィッシュスター (白羊の盾・e00352)は、敵の扱うグラビティを思い返しながら告げる。
 戦いに備え、ミッション地域に出現していたドリームイーター達の情報は共有されていた。
 寓話六塔戦争当時に出現していたものに加えて、新たにいくつかの制圧された地域のドリームイーターも加わっているようだが、そうした者達への対応も準備済みだ。
「だが、あまり統制は取れていないな」
 相馬・泰地 (マッスル拳士・e00550)は騎馬突撃を仕掛けて来たグッドナイトデュラハンを受け止めつつ、そう見て取った。
 ドリームイーター達は、好き勝手に戦っていると言って良いだろう状態だ。
 そうした敵は、黄鮫師団にとっては格好の的だった。
「では、参りましょう。西からの風に靡くは炎縄、焦がせや焦がせ!」
 ロジオン・ジュラフスキー (筆持つ獅子・e03898)の放つ火矢を皮切りに、一斉に発射されるグラビティが、敵前衛を減らしていく。
「なるべく戦線を維持していくか」
 接近を図る敵を銃弾で射抜きつつ、アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)は戦況を見定める。
 ゲートから、先へ向かっている師団は複数存在している。
 そうした師団の撤退ルートを維持するためにも、城内で戦う師団は撤退をなるべく遅らせねばならない状況だった。

●ウルフクラウド
 ワイルドスペースのような液状の空間へと到達した黒猫師団は、ジュエルジグラットに通じるゲートを、そしてそのゲートを守る敵戦力を目の当たりにしていた。
「ギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラ!」
 巨大なウルフクラウドが、狂気の雄たけびを上げる。
 それに共鳴するかのように、ドリームイーター達は一斉に思い思いの咆哮をあげた。
 敵の前線部隊が、黒猫師団とぶつかり合う。
「正気じゃありませんね……」
 綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)は、汗が滲むのを感じつつも祝詞を唱える。

 黒猫師団は予想以上の長時間、交戦することとなっている。
 主目的と定めた威力偵察は叶う形になっていた。
「敵の数は多く、監視も厳しいですね……」
 それだけに、ゲート奥への奇襲を試みた灰色狼、金糸雀の2師団は突破の際に脱落者を出しており、黒猫師団はそれを保護する形になっていた。
 敵の数は多く、ウルフクラウドの力で強化されているのもあって勢いも凄まじい。が、先行した師団が戻るまでなるべく戦わねばならない。
「一度潜入調査部隊を通したから、相当警戒してたんでしょうねぇ」
 そんな推測を述べつつ、尾守・夜野 (虚構に生きる・e02885)は、目を血走らせて飛び掛かって来た狼型のドリームイーターをひらりとかわした。影から現れた手が、そのドリームイーターを貫き、消滅させる。
「寓話六塔、残り二人のうちウルフクラウドを投入しているわけですからね」
「でも、これ周囲の部隊に支えられた数みたいですぅ」
 鼓太郎と夜野の言葉を聞き、齋藤・光闇 (リリティア様の仮執事・e28622)はふむ、と小さく息をついた。
「全てとは言わずとも、幾つかは撃破した方がよさそうですね」
 2地点、あるいは3地点か。
 とはいえ、ケルベロス・ウォーで全力を出せる時間にも限りはある。制限時間内に決着をつけねばならない以上、どこまでゲート制圧に時間をかけるかは判断の別れるところだろう。
 黒猫師団は、じわじわと負傷者を出しながらも、粘り強く戦いを続けていった。

●ワイルドハントふたたび
 ゲートを守る多数の敵による防衛で脱落者を出しながらも、灰色狼師団と金糸雀師団はジュエルジグラットゲートを越えた。
 その先に広がるのはドリームイーターの本星『ジュエルジグラット』の光景だ。
 戦力をゲートに集中しているためもあってか、敵はゲート程には強力でもない。両師団は、目的とする戦場を目指し迅速に移動していく。
 そんな中、金糸雀師団のリューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)は、道の先にメイド服姿の女性がたたずんでいるのを見た。
「あれは、植田・碧……か?」
 暴走ケルベロスの一人だ。目的の対象とは違うが、現れた以上は保護しない理由はない。
「おい!!」
「待って! 何かおかしいよ!!」
 呼び掛けながら、『碧』の方へ向かおうとしたリューディガーを大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)が制止する。
 瞬間、『碧』の手に魔法のように現れた銃から、金糸雀師団へと弾丸が放たれた。

 一方、灰色狼師団もまた、『植田・碧』と遭遇していた。ただし、彼らの前に現れた『碧』は2人だ。
「実は双子だった……というわけでもあるまいが」
 と、ナザク・ジェイドは、都市の方を見る。
 そこから現れるのは、何十人という数の『碧』だ。
「一体、どうなっている……!?」
 一斉に銃弾を放って来る碧の軍勢から逃れるように、灰色狼師団はジュエルジグラットを奥へと向かう。
 次いでコクマ・シヴァルスの戦場に辿り着いた灰色狼師団は、そこでも同様の事態に遭遇することとなった。
 ドリームイーターに加わる形で、多数のコクマが一斉に切り込んで来る。
 当然のように呼び掛けも通じず、フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン (ほら吹き男爵・e15511)は思わず嘆息した。
「これは、話は通じそうにないなぁ……というか本人じゃないだろう」
「やむをえない……迎撃を!!」
 社守・虚之香 (宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)が決断を下した。
 躊躇いながらも迎撃すると、撃破されたコクマ達は屍も残さず消滅していく。
 暴走したケルベロスの姿をしたドリームイーター。その存在に虚之香は心当たりがあった。
「『ワイルドハント』!」
 かつて地球にも現れた、暴走ケルベロスの姿を持つドリームイーターだ。
「だが、前に出現したのに比べると、そこまで強くないなぁ?」
 フリードリッヒは他のドリームイーターと強さを比較してそう疑問を呈する。虚之香も、その言葉に同意を示す。
「コクマさんが暴走したら、今倒した者達よりもずっと強いはずですし……元になったドリームイーターが弱いのでしょう」
「ワイルドハント化させることで、戦力にならない者達を動員したのかも知れませんね」
 プラン・クラリス (愛玩の紫水晶・e28432)は、アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)それぞれに推測を述べる。
 それぞれの推測は、外れてはいないように思われた。
「ほとんど使われなかったのを考えると、ワイルドハントを使うのは敵側にも何か条件かリスクがあるんだろうね」
 奇妙な事態になっているのを確認し、ドリームイーターが落としたグラディウスを拾うと、虚之香たち灰色狼師団は撤退していく。

 一方、ゼー・フラクトゥールの元へ向かった金糸雀師団は、暴走したゼーの姿をとったワイルドハント達と交戦していた。
 あたかもドラゴンのような姿のワイルドハント達が群れ為す戦場は、調査潜入チームが赴いた時とは明らかに異なる状況だ。
 さらにはワイルドハント達の間を縫って、モザイク状のドリームイーターが襲い掛かって来る。
 ふと、言葉を空を指さした。
「敵の第二波……! と、たぶんゼーさん!!」
 上空を飛ぶゼー達の中、一体だけモザイクに包まれた個体がある。
 一際強い力を持つそれが、ゼー本人であろうことを金糸雀師団のケルベロス達は直感した。
『グ……オオオオオ!』
 苦痛の表情を浮かべたゼーを包むモザイクが蠢くと、そこからブレスが放射される。奇妙なまでに高まった威力で、ブレスはケルベロス達を襲った。
「明らかに、力が増しているが……」
「モザイクのせいだろうな」
 リューディガーが精悍な顔をしかめる。
 肉体がドリームイーター化されてしまったなら、本人が内包するドリームエナジーとモザイクとの相乗作用で力を得るのも自然か。
「この戦争中に助けられなければ、不味いことになりそうだ」
 撃破したセンからグラディウスを回収できるだけ回収すると、金糸雀師団は撤退していった。

師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 (6)奇襲 奇襲により「(6)ウルフクラウド」の戦力が200減少!
ウルフクラウドの初期戦力は4,000。(2)(3)(4)(5)(7)ゲート防衛部隊により増強されており、1戦場制圧ごとに、現在値の30%が低下します。
銀狐師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が8%低下!
モザイク化に備え、本部を高高度侵入ポイントに策定しました。ジュエルジグラット本星から離れての治療は、モザイク化に対して有効に働くと推測されます。
灰色狼師団 (9)奇襲 奇襲により「(9)コクマ・シヴァルス」の戦力が200減少!
コクマの姿を持つワイルドハントが多数出現しています。これらのワイルドハントは暴走ケルベロス本人より弱いようです。
敵ドリームイーターからグラディウスを回収しています。この戦争で同様に回収していけば、以降は数に困ることは無さそうです。
白馬師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「20%」に上昇!
主にマスメディア等を通じて戦いの意義をアピールし、世界各国への応援への呼びかけを行うほか、蒼鴉師団への協力も行っています。
蒼鴉師団 テンションアップ 戦力550以下の戦場を無視可能に!
三会場でのイベントを開催、夢や目標といったものを集めたモザイクアートや応援旗を作成しました。
この戦争では、何か有効に働くかも知れません(プレイングによります)。
金糸雀師団 (10)奇襲 奇襲により「(10)ゼー・フラクトゥール」の戦力が200減少!
ゼーの姿を持つワイルドハントが多数出現しています。暴走ケルベロス本人は、ワイルドハントと異なりモザイクに覆われている他、力が増しているようです。
敵ドリームイーターからグラディウスを回収しています。この戦争で同様に回収していけば、以降は数に困ることは無さそうです。
紫揚羽師団 (3)奇襲 奇襲により「(3)フォーチュンテイカー」の戦力が300減少!
ドリームイーター達はフォーチュンテイカーの能力により、幸福感に包まれて特攻を仕掛けて来ています。通常の残霊とは異なり、戦場に出現しているフォーチュンテイカーは話が通じるようです。
緋色蜂師団 (2)奇襲 奇襲により「(2)第二の魔女レルネ」の戦力が400減少!
かつて確認されたオーズボーグを中心に、大阪城戦力から戦力を借りて来たようです。ですが師団側が対策を取っていたので問題なく対処できています。
黄鮫師団 (4)奇襲 奇襲により「(4)ファーストキス」の戦力が400減少!
ミッション地域のドリームイーターへの対策が有効に働きました。ファーストキスはあまり指揮が得意ではないようです。
今回の「テンションアップ」
 戦力550以下の戦場を無視可能に!