<ドラゴン・ウォー ファーストアタック>
●報道特別番組『竜十字島攻略戦迫る!』より
東京の東、およそ1,200kmに存在する竜十字島。
この島がドラゴン勢力の地球側本拠地であることは、2015年の鎌倉に始まる、第二次大侵略期と呼ばれるデウスエクス大侵攻の早期に判明していた。
この島の中央の火山口。
そこに、ドラゴンの本星ドラゴニアに通じる『ゲート』が存在している。
定命化により危機に瀕した地球のドラゴン達は、大阪への大移動を行った。
攻性植物の本星の一部でもある大阪城ユグドラシルでは、定命化の影響が生じない。
ケルベロスは、ドラゴンの拠点となっている三浦半島城ヶ島をユグドラシル化する計画を阻止することに成功した。
だが、対するドラゴン達は、全力で大阪への移動を敢行。
広域かつ大軍での移動を阻止すれば、それと共に生じる被害は尋常でないものとなる。
ドラゴン側の作戦を、ケルベロスは見逃すしかないかに思われた。
だが、その移動による隙を突き、ケルベロスは戦力の減った城ヶ島を急襲。
『固定型魔空回廊』を確保することに成功したのだ!
●戦いに向けて
「情報の拡散はうまくいっているみたい」
東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)は、送られて来る応援のメッセージの量に、そう手応えを得ていた。ドラゴンとの戦いに至る内容は、白馬師団や蒼鴉師団の活動を通じて人々に広く知らしめられつつある。
「さすがに注目度は高いね……」
およそ3年前、デウスエクスのゲートの中で最初に発見された竜十字島ドラゴニアゲート。
そのゲートをついに破壊できる機会が訪れたことを、白馬師団はマスコミやネットを通じて高らかに喧伝している。
日本で白馬師団がテーマソングと定めたイブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)の「千変万歌」(テルプシコラ)も併せ、『対ドラゴン最終決戦』の報道を目にしない日は無い。
いまだドラゴンや、その配下種族によって制圧されている地域(ミッション地域)も日本各地にはまだまだ存在する。
ゲートを破壊できれば、そうした地域も解放することができるだろう。
ドラゴン勢力の強さを下支えしている本星ドラゴニアから送り込まれてくる多数の配下種族や、主力であるドラゴンの多くも大阪城へ移動しており、勝利の可能性は一時的とはいえ大きく高まっている。
それでも勝率は『勝ち目がある』程度しか分からない。
失敗した際に『恐るべき破局』が訪れるというリスクもある。
だが、これ以上の好機が再び訪れるまでに何年、いや何十年かかるのか。
そして、再び機会が訪れるまでにドラゴンと配下種族によって失われる人命や生じる経済的な損失は、この好機を看過するのに見合うものなのか。
戦いを決断したケルベロスの判断を、地球の人々は受け入れ、バックアップしてくれている。
竜十字島発見のために命を落としたケルベロスや、彼らと関わった者達の談話などもあり、ケルベロスの攻撃の決断を後押しするムードは日増しに強まりつつあった。
●『いま君といる時間を、未来へ繋ぐ』
ケルベロス達の戦意も、地球の雰囲気に惹かれるようにして高まっていく。
その集大成ともいうべきイベントは、作戦発動から3日を前にして、城ヶ島と同じ神奈川県内の横浜国際総合競技場で開催されていた。
蒼鴉師団による大型イベントだ。このイベントについては、白馬師団の協力も得て、事前にマスコミやSNSを通じて広められている。
スタジアム内ではケルベロスによる戦争を想定しての模擬戦が行われていた。
普段から開催されている闘技大会よりも大人数での戦いに、観客として訪れた者達からの歓声がケルベロスに届いていた。
定命化したばかりのアイスエルフやタイタニアといった種族にとっては、この戦争が初の大規模な戦争となる。派手、かつ各種の技術を駆使した戦意高揚に、面食らっている者も少なからずいるようだった。
「人口からして全然違うみたいですからね」
ブルローネ・ウィーゼル(モフモフマスコット・e12350)は、妖精達の反応を見ながらそう考える。アイスエルフやタイタニアが一度エインヘリアルに滅ぼされたのは、地球侵攻が開始されるよりもさらに古い時代となのだ。
現代の文化を学んではいるものの、ギャップは大きいだろう。
妖精8種族を迎え、また有志によるショーやライブを行う──そのための参加者選出、舞台のセッティングからリハーサルまで突貫で済ませるために寝ずの作業を済ませた蒼鴉師団。
人々とケルベロスとを繋ぐ仕事の後にも、まだ実戦に向けたブリーフィング等が待っている。彼らはなおも休むことなく、自分達が己に課した役割に取り組んでいった。
●大阪城牽制作戦
竜十字島は東京から約1,200km、大阪城からだと約1,700kmの距離がある。
途方もなく長いかといえば、高速型のドラゴンにとってはそうでもない。
ケルベロス達でも、ヘリオンや航空機があれば数時間で横断も可能な距離だ。
が、少数の高速型ドラゴンが戦場に辿り着いたところで、ゲートを守り切る役には立たない。
加えて個別に移動するようなら、ヘリオライダーの予知を受けたケルベロスに撃破されるのが関の山だ。魔竜ですら、複数のチームが協力すれば撃破できる。
「となれば、ドラゴン側が行おうとしているのは、大阪城に移動した時と同様……『大規模かつ広域に開しての移動』でしょうか」
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)を含め、隠密裏に緩衝地帯に潜入した黒猫師団の部隊は、大阪城の監視に当たっていた。
多方面に展開しての移動で被害範囲を広げられれば、ケルベロス側にも阻止することは難しい。
その事実は、既に大阪城への移動において、ドラゴン勢力側にも把握されている。
「阻止するためには、出鼻をくじかなくてはいけませんね」
ケルベロス側は、とにかく時間を稼ぐ必要があった。
こちらがゲートを破壊するまで、ドラゴン側に魔空回廊を破壊さえされなければ良いのだ。
巨体のドラゴン達の動きは、隠そうとして隠せるものではない。
ドラゴンが飛び立つべく集結しているのを確認し、秋櫻は他の師団に連絡を取るべく、仲間に伝令を頼んだ。
黒猫師団の監視班から、ドラゴンが動き出そうとしているとの連絡が届く。
同時に黒猫師団に続いて大阪城周辺の緩衝地帯に突入したのは、灰色狼、緋色蜂、金糸雀の四師団だ。
「本隊は前進! ドラゴン達を地上に引きずり降ろして!!」
金糸雀師団、大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)の号令一下、ケルベロス達の攻撃が地上から飛び立とうとしたドラゴン達へと飛び、守りに入った竜牙兵達を撃墜する。
「城ヶ島や竜十字島から、ドラゴンに追従してきた者達……!!」
個々の力は一対一でも余裕で勝てるほどだが、とにかく数が多い。
それらに紛れる形でドラゴンが飛び立ち始めるのを、金糸雀師団のケルベロスは撃ち落とさんと攻撃を繰り出していく。
「ブースト・レイノルズは!? それに他の魔竜も……」
狂風を纏う魔竜の一体、ブースト・レイノルズをはじめ、各魔竜の所在を探そうとするケルベロス達にとって、迫る配下種族は厄介なものとなりつつあった。
「攻性植物達は手を出して来ないのう。こっちの狙いは伝わっておるとして……」
緋色蜂師団の端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)は、そう推測しながら銃弾を放った。
飛翔形態をとった竜牙兵の先端部にめり込んだ弾丸は、大地と竜牙兵を縛り付け、その身体を落下させた。墜落した竜牙兵にはたちまちケルベロスのグラビティを受け消滅する。
「まあ、来て早々にドラゴンが力を借りるわけにもいかないのは分かるのう」
大阪城の主である攻性植物をはじめとして、今は同盟を組んでいるデウスエクス同士も、(カンギ戦士団のような例外を別とすれば)互いに信頼しているわけではない。
同盟の発起人で盟主ぶった振舞いをしているハールからして、東京湾で十二創神を蘇生(サルベージ)しようとする死神達の援護に、捨て駒のレリ王女しか送らなかったような輩だ。
信用などあるはずもなく、互いに利益があればこその薄氷の協力関係だった。
心理的なものを考慮しなかった結果、タイタニアの離反も招いている。
そして『ケルベロスの本拠地への襲撃』という危機において、かつてカンギ率いる攻性植物は(攻性植物としての作戦こそ阻止されたが)ゲートを守り切った実績がある。
ドラゴンもまた、独力でしのぎ切り、その『力』を示さねばならない。
「でも、今さら足掻いても遅いわ。ドラゴンの最強の称号は今日、地に墜ちる……! それを指を咥えて見ていなさいな!」
ビルから跳躍した円城・キアリ (傷だらけの仔猫・e09214) の全力の体重を乗せた蹴りが、飛翔せんとしたドラゴンに炸裂した。苦痛の声が大阪の空に響き渡る。
竜十字島へ帰還する者達への妨害を許すまいと、オークや竜牙兵、ドラグナーといった配下種族達、また定命化が迫り、戦力にならないようなドラゴン達も、ケルベロス達にかかって来ていた。
この『妨害への妨害』の指揮を執っているのは、魔竜マガツ・イクサガミと魔竜フォーマルハウト・グラビティ。
生存している魔竜のうち、竜十字島に現れるのが予知されていなかった2体だ。
「仮にケルベロスがこのまま大阪城を攻撃した場合には防衛に着く……というところだろうな」
そう嘯きつつ、ナザク・ジェイド (とおり雨・e46641)は師団としてターゲットとする魔竜アストラ・ワイズの所在を確認、先行する部隊へと攻撃の指示を伝える。
「アストラ・ワイズ……もう定命化の痛みと喜びを感じているんでしょう? 私たちケルベロスがお前らに齎した呪いと祝福を、存分に味わうがいい……そしてお前らには、私たちの邪魔は、絶対させない!」
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)がアストラ・ワイズに言葉を投げかける。
魔竜は、その言葉に反応を示すこともなく、ただ殲滅のための魔力を解放していった。
『魔竜ワード・ブレイカーとブースト・レイノルズが突破したわ! 対応をお願い!!』
金糸雀師団から、さらに東側で待機する部隊に連絡が飛ぶ。
魔竜ワード・ブレイカーとブースト・レイノルズに率いられる形で、高度を上げて突破を図ったドラゴン達。それを迎え撃ったのは東側に待機していた紫揚羽師団と銀狐師団だ。
「ドラゴン、接近してきます! 飛行船には近づかせないでください!」
深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)の指示と共に、緩衝地帯東側に浮かぶ飛行船から迎撃のグラビティを打ち放つ紫揚羽師団。
ドラゴンの一隊を伴い、高度を落とした魔竜ワード・ブレイカーの放つ雷が、彼らの乗る飛行船を次々に破壊していくが、随伴するドラゴンや竜牙兵もまた、ケルベロスからの攻撃を受け、相次いで撃破されていく。
さらにその守りを抜けた、烈風を操る魔竜ブースト・レイノルズ率いる最高速度のドラゴン部隊の前には、生駒山に布陣した銀狐師団が待ち受けていた。
ケルベロス達は山上の遊園地周辺のドリームイーターの妨害を避けながら、用意された気球や巨大風船を利用し、空へと昇る。
気球の中には、以前の戦いでも使われ、ヒールされたものも混じっていた。
この不確かな足場が、ケルベロス達がドラゴンを迎撃するための最後の砦となるのだ。
「易々と突破なんてさせるか……行こうぜ、みんな!」
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)は手のひらに現れた球状の雷雲を生じさせると、それを上空へと投げ上げる。
「雷雲よ、みんなに力を! 奔れ、研ぎ澄ませ、《閃(ブリッツ)》ーーッ!!」
詠唱と共に降り注いだ雷が、仲間を賦活させる。それと同時に、激しい戦闘が生駒山上空でも開始される。
●水中の戦い
大阪にも、ドラゴンの制圧下にある地域が存在する。
大阪南港の人工島が改造された、クリフ・ディ・ドラグストラグル。
定命化等によって弱体化したドラゴン達が集う、危険な島だ。
水棲型のドラゴンや竜牙兵は、この島の近くの海中に現れていた。
大阪城ユグドラシルと呼ばれるが、地上に見えているユグドラシルは、攻性植物の拠点の一部に過ぎない。
大阪城地下には、攻性植物の『ゲート』を含めたさらに巨大な地下空間が存在している。
その地下空間を流れる大河を使い、ドラゴン達は大阪湾へと進出して来ていた。
水棲型のドラゴンを率いるのは、白き魔竜ジェノサイド・サードだ。
『レプリゼンタめ。易々と我らを自分達の拠点に受け入れるか。我らに見せたところで構わないと思っているのか……』
ケルベロス達にゲート近くまでの侵入を許して以降、他の種族との連携や度重なる改造を行い、大阪地下のユグドラシルはさらに守りを堅牢なものにしようとしている。
地下大河の出入りも、カンギの配下である死神達が許可しなければ不可能だ。
移動予定の水棲型ドラゴンが揃ったのを受け、ジェノサイド・サードは指示を下す。
だが、いざ城ヶ島を目指さんとした彼らにとって予想外の事態は生じた。
移動を開始した直後、海中での戦闘が生じたのだ。
言うまでもなく、ドラゴンを攻撃したのはケルベロス達だった。
「海中に大型の反応を感知、ドラゴンです! 戦闘を開始して下さい!!」
黄鮫師団は、ノル・キサラギ (銀花・e01639)の指示と同時に一気にグラビティを解放していく。
「旋風斬鉄脚!」
相馬・泰地(e00550)の蹴りが水ごとドラゴンを切り裂いた。
大阪湾の海水がかき乱され、海水が爆発したように噴き上がる。
『読まれていたか……』
ジェノサイド・サードは苦い声を発すると、ケルベロスの船舶の破壊に入る。
だが、ケルベロスへの応戦を強いられたドラゴンや竜牙兵は多数命を落とし、この方面からの侵攻もまた食い止められていた。
●竜十字島へ
魔空回廊を抜け、参戦するケルベロス達は竜十字島に辿り着いていた。
大阪での七師団による攻撃は、東へ向かおうとするドラゴン達の勢いと戦力とを削ぎ落としている。
この戦争中に固定型魔空回廊がドラゴンにより破壊される可能性は、断つことが出来た。
だが、大阪城での牽制に力を注いだ分、ケルベロス達も救護の準備は出来ていない。
普段よりも重傷を負う危険性は高いだろう。最強種族と言われるドラゴンを相手に、それは大きな危険ともなりうるものだ。
「今回の戦いは今までのような、ドラゴンの企てを阻止する守りの戦いではありません。
最強種族ドラゴンに、こちらから攻め込んでの大勝利を掴むチャンスです」
ブルローネは、直接、あるいは通信を通してその声を聞くケルベロス達に告げる。
「ドラゴンのゲート破壊に失敗すれば『恐るべき破局』が訪れる……。
けど、僕達は負けない。700年前から、侵略に耐えてきた人達がいた。
オラトリオが、地球の滅亡を巻き戻してくれた。
3年前、ゲートを発見し、ドラゴンに定命化の危機を与えてくれた仲間がいた。
世界中から、私達を支えてくれる人達がいる。
そうして『今』がある。『恐るべき破局』なんて、ゲートと一緒に壊して『今を未来に、つなげましょう』!」
ケルベロス達は、鬨の声と共に進軍を開始する。
ドラゴンを敵とし、決戦が今、始まろうとしていた。
師団 | ファースト アタック | 結果 |
黒猫師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
銀狐師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
灰色狼師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
白馬師団 |
応援募集 |
各ターンの重傷からの復活率が「20%」に上昇!
各種媒体を通じ、広範な応援への呼びかけを行いました。また、ドラゴンに勝利することへのメリットデメリットを示したことで、世界的に覚悟が決まった向きもあるようです。
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蒼鴉師団 |
テンションアップ |
戦力600以下の戦場を無視可能に!
戦争までの長期に渡る宣伝広告と、大型イベントやブリーフィングの開催を並行して行いました。
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金糸雀師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
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紫揚羽師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
緋色蜂師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
黄鮫師団 |
大阪城牽制 |
魔空回廊破壊は行われません(7師団合計)。
|
今回の「テンションアップ」
戦力600以下の戦場を無視可能に!
今回の「救護準備」
救護準備は行われませんでした。戦闘不能時の重傷・死亡率は低下しません。