リザレクト・ジェネシス セカンドアタック

君乃・眸VS量産型日輪・月輪

<リザレクト・ジェネシス セカンドアタック>

●救護準備(銀狐師団)
 救護準備を担当する銀狐師団は、今回の戦場でいかにケルベロスを救護するかに苦心していた。
「三都県にまたがる戦場、東京湾マキナクロスの影響によって航空機や通信機器の使用が困難となっている状況……」
「移動が面倒ですよね」
 イッパイアッテナ・ルドルフ (ドワーフの鎧装騎兵・e10770)と若生・めぐみ (めぐみんカワイイ・e04506)は、地図を見ながら知恵を絞っていた。
 現状、(1)東京都心部、(16)川崎浮島ジャンクション、(30)東京湾観音の3か所に救護本部を設けているが、戦闘と戦闘の合間に負傷者を搬送する場所として、これだけでは足りない。
「いちいち移動するには戦場間の距離が離れ過ぎてるよね」
「前線となる地域に適宜支部を設けていく必要がありそうです。どう繋げるかも問題ですが……」
 セラフィ・コール (姦淫の徒・e29378)とイッパイアッテナ・ルドルフ (ドワーフの鎧装騎兵・e10770)も頭を悩ませる。

 今回の戦争の舞台となる範囲は、面積だけをとってみても過去最大級だ。
 特に海上を敵に抑えられ、マキナクロスにより通常の航空機の利用や通信を封じられているのが、銀狐師団にとっては大きな問題だった。
 デウスエクスとの戦いで、通信を封鎖されるのには慣れているが、広い範囲での戦いと話は変わって来る。
「晴海埠頭要塞さえ制圧してしまえば、この辺りの効率も増すんでしょうけどね……」
 スノードロップ・シングージ (抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)は、送る情報を取りまとめつつ思う。
 冬の寒さへの対策に加えて海での戦闘ということもあり、用意したい物資は多い。
 だが、沿岸部はデウスエクスによって多くの場所が抑えられてしまっているため、移動には大回りを強いられている。
 自衛隊や在日米軍、ケルベロスを支援するために残った人達も運送役になってくれており、ヘリオライダーも全力で動いてくれているが、輸送量にはおのずと限界がある。
 物資は事前に適切な場所に配置しておく必要があり、さらにそれらを戦いが進むごとに動かし続ける必要があった。
「物資は流動的に動かせるようにしておきましょう」
「怪我をした人のところに無いと、意味がないですからね……」
 物資の搬入を忙しくこなす銀狐師団。
 準備の段階から、戦いは始まっているのだった。

●応援募集(白馬師団)
 白馬師団のパウル・グリューネヴァルト (森に焦がれる・e10017)は、静岡県内に設けられた避難所の一つを訪問していた。
 この避難所は、東京湾沿岸部から早期に避難した人々が生活を行っており、体制が安定している方だ。
 最悪の場合は関東平野が丸ごと水没する危険性もあるということで、人々はかなり遠距離への避難を強いられている。
「どうか爺さんの墓を海に沈めさせるようなことにはさせんでください」
「……ええ、分かっています。必ず勝ちますとも」
 老人達から懇願されるパウルの姿は、テレビカメラに収められている。
 他の地域の避難所にも、白馬師団のケルベロス達が訪問し、同様に人々の慰撫と、応援の募集に向けた活動を行っていた。
 もちろん、この避難所一つの人々からの応援を得たところで意味は薄い(それ以前の問題として、関東平野二千万人ほどの人々は、ほぼ100%ケルベロスを切実な理由から支持している)。
 こうした様子を適切に編集した上で報道し、さらなる応援の呼び水とするのだ。
「こういう方面は専門家に任せるに限るな」
 膨大な映像や音声の中から『良い場面』を作り出していく、マスコミの編集技術をゼルガディス・グレイヴォード (白馬師団平団員・e02880)は間近で見ていた。画面が切り替わると、今度は銀狐師団のケルベロス達と連携し、救護拠点の設営に当たる人々の姿が映し出されている。
『地元を救う助けになるならと志願しました』
『前に、あのガイセリウムでしたっけ? 変な宮殿に家が踏みつぶされたので、今回はお手伝いしようと』
『ケルベロスの皆さんなら、きっと勝ってくれるって信じてます』

 こうして一般からの支持を集める一方、世界各国でロビー活動に当たっていた。
 自国の指導層との連携を示されれば一般の支持を得やすくなり、一般層の支持を得れば指導層もケルベロスへの支援をしやすくなる。
「こういうのも必要なんだろうね。頭では理解していても、それで応援をわざわざ寄越すかと言えば別だから」
 ノーフィア・アステローペ (黒曜牙竜・e00720)は、そう考える。
 ケルベロスが負ければ人類は第一次大侵略期に逆戻りし、最悪、また地球が破壊される。その危機感は、人類が一丸となることを強く要求しているが、それでケルベロスへの応援を内心で留めず、表に表してくれるかというと別だ。
 心理的障壁を下げ、動機付けをしなければ、その数は限りなくゼロに近付いてしまうだろう。

 避難生活を強いられた人々は、普段の生活と完全に切り離された日々を送ることを意味している。
 そうした人々に、「普段の生活」を取り戻すための働きを、ケルベロス達は期待されていた。
 人々に勇気を与え、応援を引き出すため、東雲・苺 (ドワーフの自宅警備員・e03771)は状況を人々に向けて公開していた。
「東京湾を制圧されるという派手な状況が目立っているけど、実際、そこまで劣勢に置かれているわけでもないよね」
 ケルベロスはダモクレスの地球最大の資源採掘場を破壊し、死神の十二創神蘇生(サルベージ)計画を既に阻止した。さらに、先だっての奇襲攻撃によって、充分な戦果を挙げてもいる。敵による被害の説明と共に、そうした戦果と勝利の可能性をきちんと伝えられれば、人々がケルベロスに寄せる応援のメッセージにも自然と熱が籠る。

 避難所から出たケルベロスは、その入り口にクリスマスツリーが飾られているのに気づく。
 人々のせめてもの心の慰めとするためだろう。
 戦争が終われば、24日にはクリスマスイブが訪れる。
 その時、人々が元の家に帰る支度が出来ているかは、ケルベロス達にかかっていた。

●(20)木更津ジャンクション(黒猫師団)
 大ルーン結界を司る、15人のエインヘリアル。彼女達を守るため、第二王女ハールが各戦場に置いている女性エインヘリアルの数は決して多いとは言えない数だった。それはケルベロス達がつけこむ隙であり、同時にハールの支持層の少なさを示しているとも言える。
 齋藤・光闇 (リリティア様の仮執事・e28622)は、視界に敵の姿を捉えながら考える。
「エインヘリアルはどうも、女性差別がかなり強いようでございますね」
「たぶん、強い人に男性が多いとかあるんでしょうが……攻性植物相手の前線を担当してるうハール王女でそれとは、世知辛い話ですね」
 綾小路・鼓太郎 (見習い神官・e03749)はデウスエクス勢力の多くで、権威が実力によって支えられていることを思い出す。
 第二王女ハールは十二創神『狂戦士オーディン』の力を得ようとしているが、それで直接的に大規模な虐殺などを行おうとはしていない。他の王子王女達から隔絶した力を得ることで、英雄王シグムンドの後継者としての地位を確保せんとしているのだと見られていた。
 おそらく単純な話として、地球での勇者選定を担当していたヴァルキュリアに『エインヘリアルになりうる勇者』と認められるような活躍を、地球の女性が行う機会が乏しかったことも影響しているのだろう。
 地球でも、女性の権利が認められ始めたのは近代に入ってからだ。
 惑星アスガルドのエインヘリアルの間では、地球の過去にあったような、女性の立場の軽さが保存されているようだった。

 黒猫師団は市原市から、ハール配下の女性エインヘリアル達が守る木更津ジャンクションへと攻め入っていく。
 東京湾アクアライン東側入口となる木更津ジャンクション。
 防衛を担当するのは、ドラゴニアンの女性からエインヘリアルとなった剛竜騎士レティアだ。
「やはり来たわね! でも、そう易々とやられるわけにはいかないわ!」
 レティアの勢いに引きずられるようにして、エインヘリアルは黒猫師団を迎え撃ちに来る。
 時折魔法を使う兵士もいるが、近接戦闘が主体のようだ。
「この辺りはそういう人が多いのでしょうか……ハッ!!」
 大義・秋櫻 (スーパージャスティ・e00752)は四肢のリミッターを解除すると、エインヘリアルへ向け、次々と拳を撃ち込んでいく。
 その交戦の最中、南北から現れたのは、木更津ジャンクションの道路を利用して、南北から現れたのはライドキャリバー部隊だ。
 同乗していたウェアライダー達が飛び降り、敵陣をかき乱しにかかる。
「この程度で!! 各人、力を見せなさい!!」
(「要するにすぐに対応する作戦は取れないってことかなぁ」)
 尾守・夜野(虚構に生きる・e02885)はレティアの言葉に、作戦が上手くいったことを感じる。
 ライドキャリバー部隊の接近と同時に、一度全軍で退いて態勢を整えられていたらマズかったかも知れないが、この相手なら充分だ。その場で各個に迎撃にかかる敵が態勢を立て直すより早く、かき乱された敵陣を黒猫師団は食い破り、撤退していった。

●(29)横須賀米海軍施設(灰色狼師団)
 横須賀市の米海軍施設は、エインヘリアル『妖黒術師セイート』率いるエインヘリアル部隊によって制圧されていた。
「とはいえ、エインヘリアル達は米軍との直接の交戦を経て制圧したわけじゃないんだね」
「事前にヘリオライダーが警戒していたからな」
 ピジョン・ブラッド (銀糸の鹵獲術士・e02542)とナザク・ジェイド (甘い哲学・e46641)を含め、灰色狼師団のケルベロス達は、米軍基地も間近な横須賀市立常葉中学校へと進軍し、拠点としていた。
 今回はヘリオライダーから事前の警告が行われていたこともあり、米軍は敵の侵攻前に撤収していた。デウスエクスに機材を渡してはなるまいと、移動可能なものは洗いざらい他の基地へ移動させ、移動できない設備や機械は使用不能にした上でだ。
 アルフレッド・バークリー (エターナルウィッシュ・e00148)が、米軍関係者から渡された端末を手にいう。
「ところで、頼んだら普通に基地内の情報も教えてもらえたんですけど……」
「まあ基本身内だしな」
 大上・零次 (螺旋使い・e13891)が応じた。なにせ『全世界決戦体制』である。米軍もまた、その全力をかけてケルベロスに協力する者達の例外ではない。

 そして、灰色狼師団は基地への攻撃を開始する。
 制圧しているエインヘリアルは千名にも満たない。これは、この基地に勤務している職員よりずっと少ない数だ。
「不慣れでやたら広い基地、警備機能も使えない。……これ、相手の監視体制って……?」
 社守・虚之香 (宵闇に融ける蒼黒の刃・e06106)が何となく思ったように、敵の防衛態勢は大したものではなかった。
 正面から切り込んだ灰色狼師団は、敵が集結するよりも早く、正門側にいた敵勢を駆逐し、基地内へと突入していく。
「伝令を出せ! 海の方にいる者達も集めろ!!」
 エインヘリアル達の様子に、プラン・クラリス (愛玩の紫水晶・e28432)は一瞬、海の方に視線をやった。
「八景島が海から攻撃を受けた影響もありそうですね」
 八景島を攻め落とした際、ケルベロス達は海からも攻撃を仕掛けていた。
 その影響は、ここでも出ており、敵は海に面した各方面にも監視を向けねばならず、戦力は各方面に分散されている。

 敵の指揮を執るセイートの姿は、前線には無かった。偵察部隊は基地施設内にいるのだろうと推測していたが、場所までは特定できていない。
「実力的にはいざ知らず、直接の切った張ったを得意とするタイプではなさそうだからな」
 フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン (ほら吹き男爵・e15511)はそう考える。
 副団長2人が既にやられた状況下で、前線に出る判断を敵はできてないようだった。
 先立っての奇襲でも、エインヘリアル達がルーンを持つ指揮官を守ることを第一に考えているのは確認されている。セイートが前線に出て来ない間に、灰色狼師団は確実に敵への打撃を与えていった。

●(8)浦安マキナクロス(金糸雀師団)
 金地にカナリアの紋章をあしらった腕章をつけた金糸雀師団は、千葉市から浦安マキナクロスへと攻め込んでいく。
「なんだか、船に乗っているような感じがするわね」
「まだ定着していないっていうことかな?」
 コマキ・シュヴァルツデーン (翠嵐の旋律・e09233)や大弓・言葉 (花冠に棘・e00431)が立つ機械の地面の下には、まだ海水があるようだった。

 東京湾マキナクロスが出現して以降も、東京湾に流れ込む各河川がせき止められて大規模な氾濫を起こすような事態にはなっていない。
 マキナクロスはまだ『巨大な浮島のような状態』で、湾の水自体はそのままだ。
 有識者は、おそらく水の力をマキナクロス内部での発電等に利用する目的だろうと推測していた。
 ファクトリアをはじめ、ダモクレスの海底基地は幾つも確認されている。海の利用に関して、ダモクレスが地球側を上回っているのは確かなようだ。

「前方、『日輪』と『月輪』が来るぞ! 小型の量産タイプ!」
 リューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)が警告を発する。
 巨大な手の形をしたダモクレス、『日輪』と『月輪』。
 バックヤードを守る強力な機体だが、その優秀さからかダウンサイジングされたものが大量に量産が開始されているようだった。量産された一機ごとの力は、もちろん海底でケルベロスを苦しめたものに劣っているが、その数は脅威そのものだ。
 この2種類のダモクレスに加え、終末機巧大戦で姿を見せた量産型ダモクレス達も次々に姿を現して来る。金糸雀師団の先遣隊は、ただちに戦闘に突入した。

 一方、船橋市側でも金糸雀師団は行動を開始していた。
 千葉市から侵攻した者達が敵の目をひく間に、こちら側から攻め入る本隊だ。
「先遣隊との合流は難しそうですネ」
 君乃・眸 (ブリキノ心臓・e22801)は、そう判断する。
 互いに侵入地点は知っているのでおおよその居場所は分かるが、マキナクロス内は見た目だけでは用途すら分からない機械の塔が乱立し、互いの調べた地理情報を共有する手段も無い。
 対して、敵は迅速にこちらの侵入に対応していた。
「コア出力最大……Oath/Emerald-heal……承認」
 眸のコアエネルギーが仲間を癒し、攻撃の継続を可能とさせていく。

●(7)江東マキナクロス(蒼鴉師団)
 浦安市側から突入した蒼鴉師団は、金糸雀師団と別れると沿岸部を西進した。
 右手にダモクレスが築いた城壁を見つつ、江東区側へと向かいながら、フローネ・グラネット (紫水晶の盾・e09983)は思考する。
「マキナクロスは、まだそこまで広がっても、複雑化してもいませんね……」
 五大巧は、ファクトリアに併設されていたバックヤードは、貯め込んで来た膨大な物資をフルに使って今回の作戦を仕掛けて来たのだろう。
 だが、それでも東京湾を丸ごと機械化するという大事業を行うには充分とは言い難い。
 バックヤードが出現し、晴海埠頭要塞を構築するに際しても、現地にあった機械や施設を吸収することで、その不足を補っていたのが確認されている。
「今も、ダモクレスの一部は無人となった千葉県沿岸部で収奪を行っているな」
 玉榮・陣内 (双頭の豹・e05753)は、遠く千葉県側を見た。
 マキナクロス出現時に利用したグラビティ・チェインはエインヘリアル第二王女ハールが奪いつつある。そのため、ダモクレスは物理的に補うことで、この東京湾マキナクロスを定着させようとしていた。
 その試みは成功しつつある。
 大阪城ユグドラシルと同様の状態になるが、規模が広範囲であるだけに性質が悪く、悪影響も大きい。
「阻止しなくてはなりませんね……全隊、止まってください!」
 フローネの警告と同時、走る蒼鴉師団の前には、次々とダモクレスが現れ始める。
 どこかに警報装置や監視装置でもあったのだろうが、ケルベロス達の目にはどれがそうなのかは判断がつかなかった。
 佐々木・照彦 (レプリカントの住所不定無職・e08003)が顎に手をやる。
「しっかし、どこからこれだけの敵を連れて来たんや……?」
「既にゲートとつながる魔空回廊を設けているんでしょうね」
 前方を遮る多数のダモクレス。
 その猛威に立ち向かいながら、蒼鴉師団は敵の数を漸減させていく。

●(42)大房岬(紫揚羽師団)
 千葉県南房総市、大房岬。
 異様な暴風が、この地を支配していた。
「なんだろうね、あの海は……」
 ウォーレン・ホリィウッド (ホーリーロック・e00813)の目には、海水が奇妙な渦を作るのが見えていた。
 この大房岬にいる『暴風の死神』キューモドケーと対岸、三浦半島にいる『暴雨の死神』キュマトレーゲ。2体の死神によって引き起こされる大潮は、関東平野を水没させようとしている。
 眼下の光景が、その前兆であろうことは、考えるまでもなくウォーレンには分かった。
 そして、海中を泳ぐ魚型の死神達の姿も見えている。
「いるいる……大漁ですね」
「渦の中でもお構いなしですね。大潮が発生したら、そのまま内陸部まで侵攻する気でしょう」
 あれらの死神達の存在もまた、関東平野水没という大事業を為すための、魔法的な要素の一つなのかも知れない。
 紫揚羽師団は当初、水中部隊も編制する考えでいたが、その計画は早々に中断し、本隊に合流させていた。
 尾方・広喜 (量産型イロハ式ヲ型・e36130)がしみじみという。
「こうなってしまうと船で海からの接近も困難だろうな。大浦海水浴場と鋸山を抑えていなければ、どうなっていたことやら……」
 現在は拠点となっている二地点の周辺も、雨と風とが支配しつつある。
 そうするうち、紫揚羽師団の飛行偵察を行っていた者達が、次々と本隊に合流して来た。
「来るぞ、死神だ!」
 その報告からさほどの時間を経ずして、風を裂いて飛んで来る者達がいる。
「オールスターだね」
 ザルバルクにアメフラシ、ブルチャーレ・パラミータにメラン・テュンノス。
 海棲生物型の死神達が次々と飛来し、ケルベロスとの交戦を開始する。
 さらに道を埋め尽くすように現れたのは、3種の屍隷兵(レブナント)達だ。
「やはり、居ましたね……」
 今回の戦いで、特に人々の怒りを買っているのは死神達だった。
 死神集団ネレイデス。その中でも、特定の感情を持った人々を直接的に屍隷兵(レブナント)にして徹底して利用して来た者達への、人々の怒りと嫌悪は強い。
 ネレイデスは十二創神の蘇生(サルベージ)をケルベロスに阻止され、再び一発逆転を狙っている。破れかぶれと言ってもいいような侵攻を、ケルベロスは再び阻止するために挑んでいった。

●(24)横浜港(緋色蜂師団)
 横浜港を闊歩しているのは、『ユミルの子』と呼ばれる異形達だった。
 その数は、他の戦場と比較するとやや多い。
 ハイレインが、他のエインヘリアルと比べても重要であることを示しているのだろう。
「あれ、絶対エインヘリアルじゃないよね?」
 七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンエンド・e15685)は、改めてユミルの子の巨体を見て思う。
 ユミルの子は、体高の面でもエインヘリアルをさらに上回る、『巨人』と呼ぶべき存在だ。
 かつては佐賀県唐津市に出現し、ケルベロス達に苦戦を強いた強敵だった。当時よりもケルベロス達の力は大きく増しているとはいえ、侮れない存在であることには変わりがない。
「巨人……アスガルドにもいたらしいけど」
 エインヘリアルの母星アスガルドに、かつて巨人族が存在した。その伝承は、シャドウエルフやドワーフにも伝わっている。
 だが、巨人族は何らかの要因で滅んだ。
『死なない』デウスエクスが、どうやって滅んだのかは、現状定かではない。
 残霊無法地帯に残霊が出現している攻性植物の将『最終生存体(レプリゼンタ)・スルト』の存在からも、その滅びは確かなはずだが……。
「『ユミルの子』と巨人族、関係はありそうだが……ま、考えるのは後回しにしようぜェ」
 レヴォルト・ベルウェザー (叛逆先導アジテーター・e00754)は言って、ダブルネックギターを構えてみせた。

 遠距離からの観測で、ユミルの子が最も重点的に守っているのが、横浜港の山下埠頭であることは既に判明していた。
 他の戦場で交戦したエインヘリアル達の動きからも、師団員達はそこにハイレインはいると推測している。だが、偵察部隊からの報告に、兎塚・月子 (蜘蛛火・e19505)は目を細めた。
「ユミルの子にはエインヘリアル達も随伴しているって。ユミルの子達の指揮役だね。統率されてると見ていいと思う」
「ここは乙作戦じゃな」
 端境・括 (鎮守の二挺拳銃・e07288)の指示で、敵指揮官の捜索と強襲は中断された。
 ユミルの子が好き勝手に暴れるだけならまだしも、指揮官役がいるとなれば、ハイレインへの直接攻撃は難しい。
「これ以上踏み荒らさせてたまるか……守るんだ、土足上がりのバカ共から……!! 」
 フロッシュ・フロローセル (疾風スピードホリック・e66331) の叫びと共に、緋色蜂師団はユミルの子との交戦を開始する。
 即座にそう判断した緋色蜂師団はハイレインを強襲するのではなく、数を削るべく巨人へと挑んでいく。

●黄鮫師団(18)海ほたるPA
 東京湾アクアラインの中間地点となる、海上パーキングエリア海ほたる。
 ここには、西側から撤退して来たエインヘリアルの部隊が集結している。
 そのため、戦力は他の戦場と比べても多い。
 だが半面、この戦場を制圧すれば、団長レイラトゥーと軍師でもある術士チハヤ、敵騎士団にとって重要な2人のエインヘリアルを倒し、2つのルーンを破壊できる可能性があった。

 その上空、そして地下通路を通り、ケルベロス達は奇襲を開始していた。
「なんですかね。前と似たような手を使って……?」
 チハヤは上空から飛び降りて来たケルベロスを迎撃する部下達の報告に、不審なものを感じていた。頭数は揃えたようだが、エインヘリアルとまともに戦えるケルベロスの数はそこまで多くない。そのことは、文字通り一目で露見していた。
「とりあえず、今来てる分は私のところだけで対処できそうですね。また副団長をとった時と同じ陽動の可能性もありますって、団長には伝えておいて下さい」
 チハヤの指示を受け、エインヘリアル達は動き出す。

「陽動ってバレたのかな?」
 敵の動きに、スノーエル・トリフォリウム (四つの白翼・e02161)はそう感じていた。
 とはいえ、バレたらバレたでやりようはある。上空から降下した者達にとって、チハヤが指揮所を置いている、海ほたるの展望台は遠くは無い。
「このままチハヤを取りに行きます!!」
 叫ぶことで敵の注意を引き付ける。この場にいる者達を、アクアトンネルに向かわせないだけでも価値はあるだろう。

 黄鮫師団が制圧したアクアトンネルと海ほたるの境目は、エインヘリアルによって簡易な防御陣地が組み上げられ、黄鮫師団とエインヘリアル達が一定の距離を保っての睨み合いを続けていた。
 星霊甲冑オーディンさえ完成してしまえば良いエインヘリアル達は、積極的に攻めようとはしていない。この場においても、状況を動かしたのは、やはりケルベロス達の側だ。
「参りましょう!!」
 陽動部隊が行動を開始してから2分、ロジオン・ジュラフスキー (筆持つ獅子・e03898)の叫びと共に、一斉にケルベロス達が前進し、攻撃を開始した。
 一瞬は動揺を見せた敵側だが、それも長くは続かない。
「やっぱり来やがったな……いいか、フェーミナ騎士団の力を見せつけてやれ!!」
 報せを受けて駆け付け、前面に立って指揮を執るのは巨人殺しのレイラトゥー。向けた銃口の先に、既に彼女が消えているのに舌打ち一つ、アルトゥーロ・リゲルトーラス (蠍・e00937)は別の敵へと弾丸を放つ。
「自分が討ち取られることなど考えてもいないな」
「そういうタイプのリーダーですか」
 ノル・キサラギ (銀花・e01639)はレイラトゥーを観察する。
 こうして対峙してみると、レイラトゥーの力が凄まじいことがよく分かる。
 ルーンを持つレイラトゥーは重要なはずだが、軍師にしても、レイラトゥーが負けるようなことがあれば、この海ほたるの陣地も終わりだと認識しているのだろう。
「ですが、勝たせて貰いますよ」
 アクアトンネルと海ほたるの境界での激しい戦いは、黄鮫師団が一時後退するまで続いた。
師団セカンド
アタック
結果
黒猫師団 (20)奇襲 奇襲により「(20)木更津ジャンクション」の敵戦力が350減少!
指揮官の性質を利用し、側面攻撃により戦果をあげました。
銀狐師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が10%低下!
広範囲での戦いに備える準備を行いました。現在、東京湾マキナクロスの存在に強い悪影響を受けています((6)を制圧することで、救護準備の効果が上昇します)。
灰色狼師団 (29)奇襲 奇襲により「(29)横須賀米海軍施設」の戦力が400減少!
敵は広大な基地を持て余しており、一点集中しての奇襲は有効に働きました。ちなみに軍事機密等でも師団で必要と判断して頼むと大抵は教えてくれます。
白馬師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「20%」に上昇!
避難所への訪問、人々への戦いへの状況を伝えるなどといった活動を行い、様々な手段での応援を募集しました。
蒼鴉師団 (7)奇襲 奇襲により「(7)江東マキナクロス」の戦力が300減少!
東京湾マキナクロスは、魔空回廊によってゲートとつながり、戦力が送り込まれています。マキナクロス内では終末機巧大戦時に出現していないダモクレスが出現する可能性があります。
金糸雀師団 (8)奇襲 奇襲により「(8)浦安マキナクロス」の戦力が250減少!
戦力を分けて挑みましたが、敵中を突破して合流するには至らず各個に撤退しています。
紫揚羽師団 (42)奇襲 奇襲により「(42)大房岬」の戦力が400減少!
出現する敵は事前予想の範囲内であり、優勢に戦いを進めました。
館山湾付近に、巨大な渦が出現しています(キューモドケー&キュマトレーゲによるものと推測されます)。
緋色蜂師団 (24)奇襲 奇襲により「(24)横浜港」の戦力が250減少!
ユミルの子には、魔術を得意とするエインヘリアルが随伴し、指揮を執っているようです。これらのエインヘリアルを優先的に撃破したことで、攻撃は有効に働きました。ユミルの子がいる戦場は、他の戦場よりも敵が手強くなっています。
黄鮫師団 (18)奇襲 奇襲により「(18)海ほたるPA」の戦力が250減少!
警戒に当たっていた敵と、一進一退の攻防を繰り広げました。アクアライン西側にいた戦力が合流しており、他のフェーミナ騎士団員がいる戦場に比べ、戦力はやや多いようです。
・今回は「テンションアップ」を行った師団が無いため、戦場を制圧しない限り、その先は攻略できません。