超パビリオン 結果発表!

●はじめての超会議
「超会議……テレビで視聴したことはあるが、実際に来るのは初めてだな」
 超パビリオン部門の審査員を任されたセニアは、そう一人ごちた。
 何せ去年までは一般人であったセニアである。
 失伝ジョブ『ワイルドブリンガー』に目覚め、ドリームイーターにさらわれて日本でケルベロスとして戦うことになったが、ケルベロス超会議に、しかもケルベロスとして参加するのは当然ながら今回が初だ。
「しかも、その場で審査員を務めることになるとは……」
 内心では緊張している部分もあるが、そうも言ってはいられない。
 ケルベロスは度胸が肝心なのだ。
「では行くとしよう」
 そして、セニアは集計された投票結果を受け取ると、上位入賞を果たした旅団へと向かうのだった。

●3位:ワンマン食い倒れ横町(S.S.F.M
 セニアが最初にやって来たのは、黒塗りの巨大なトラックの元だった。
「この企画、お祭り屋台村に突っ込むはずだったのに、超パビリオンになってんの。ウケる。いやウケてらんねえわ。助けろ」
「もう無理だな」
「げ」
 失敗に気付いた時から30時間ぶりぐらいに、八代・社(ヴァンガード・e00037)の目が死んだ。
 このトラックは、旅団S.S.F.Mがパビリオンとして展示しているものだ。
 が、実際は団長である社がいうように、お祭り屋台村で参加するはずだったらしい。
 昨年1位を獲得した旅団としては、適切な舞台で勝負したかったところであろう。
「まあ3位に入ったので、来年は気をつけてくれ」
「マジか!? 趣旨違うのに投票してくれた皆には感謝だぜ……」
 セニアの報告に、社の死んでいた目に、再び光がともった。

 さて、この企画の一番の目玉は何かといえば、トラックの荷台にそびえ立つ『ガチャ』である。
「運試し、か……明らかに値段以上のものが出ている場合もあるようだが採算度外視」
 セニアはガチャマシーンを見て呟いた。
 500円で回すことの出来るガチャに応じたメニューを、店員たちが即座に用意してくれるという。

「アブラナシカラカラニンニクマシマシチョモランマ一つ」
 ガチャから『No.015 【C みそラーメン】』を引いたアルヴァ・シャムス(逃げ水・e00803)が即座にオーダーする。
 それはどこぞの店舗の独自メニューのような気もするが、店員たちはアルヴァの注文に応えて山盛りのモヤシをサービスで追加していた。

「では、私もやってみようか」
 セニアは500円を投入すると、甘味ガチャと軽食ガチャをそれぞれ回してみることにする。
 その結果は、
「甘味が【C あんず飴】……プラムか。軽食が【C カリフォルニアロール】だな」
 ガチャで引いたあんず飴を物珍し気に舐めながら言うセニア。
 手軽さと簡単に運試しが出来るということもあって、かなり多くの人が訪れていたようだ。
「適切な部門であれば、より上位が狙えたかも知れんな」

●2位:激走!エクストリームオートレース【魔王杯】(超魔王城ゾディアパレス
「ここはまた……すごい場所だな」
 セニアが訪れたのは、超魔王ゾディアこと天蓼・ゾディア(超魔王・e02369) 率いる超魔王軍の本拠地『超魔王城ゾディアパレス』。
 だが、ケルベロス超会議にあたり、魔王城は既に熱気が溢れるオートレースの会場へと変貌を遂げていた!
「……いや、すごい城だな。流石は超とつくだけのことはある」
 超パビリオン部門の受賞に恥じぬ城であろう。
「フゥーハハハハハ! よくぞ我が玉座の間(エントランス)まで来た! 何用だ、セニア・ストランジェよ!」
「ああ……超パビリオン部門、今年の2位は貴方方の企画だ、超魔王殿」
 微妙に気圧されながらも、淡々と告げるセニア。
 彼女からの朗報に、ゾディアの魔王笑いが一層強まった。
「これでまた超魔王の偉大さが全人類に知らしめられてしまったなぁ! では貴様も大儀であった。とくと観戦していくが良い! なんなら参加していっても良いぞ?」

 マントを翻し、颯爽と去っていくゾディア。
 おそらくはレースのために、色々とやることがあるのだろう。
 そんな風に思いながら、セニアは彼の後ろ姿を見送ると、観客席に移る。
 この日のために予算を費やして造られた観客席では、レースの様子がモニターに移し出されていた。

『フゥーハハハハハ! よく来たな! 新たな挑戦者よ! そして伝説の見届け人(視聴者)たちもだ! さぁ新たなる挑戦者よ!栄光のゴールを目指して七難八苦のレースを走り抜くがいいぞ!』

 モニターに映し出された超魔王ゾディアがそう告げると、レースが開始される。
 ケルベロス最速の人間を決める、超魔王ゾディアパレスのレース場。
 参加者には速度はもちろん、運や判断力も要求されるようだ。
 レースの途中でマシンを降りたり、大食いチャレンジじみたことをさせられたりもしているが、視聴者が特に不思議に思っている様子もない。この程度で驚いていては、超魔王城では生きてはいけないのだろう。多分。

「しかし、なんという熾烈なレースだ……」
 魔王城のアイドルこと日輪・稲子(元気処方箋・e05271)がヤサイマシマシアブラカラメニンニクマシマシを他の参加者の分も食べさせられ、なんだかすごい有様になっているのを見てレースの過酷さを悟り、セニアの頬を汗が伝う。
 さすがにカロリーダメージはヒールでも治らない気がする。
「アイドルも大変だな……」
 稲子の他にも、魔王城のケルベロス達が体を張ってレースに貢献している。
 彼らやレースに挑むケルベロス達の体を張る姿ももまた、支持を集める原因であるのだろう。
「やはり、ケルベロスが実際に奮闘する姿は良いものだな」
 そう思いながら、セニアは超魔王城を後にするのだった。

●審査員特別賞:【超会議2018】グラビティ語り場 (-Feather-
 毎年恒例という、旅団『-Feather-』のグラビティ語り場。
 今年も、何十人ものケルベロスが、思い思いに自分のグラビティについて語っていた。
「私がケルベロスになったのも今年だからな。先輩方の意見は参考になった」
 審査員特別賞の受賞を、団長の幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)に伝えるセニア。
 鳳琴は微笑んで言った。
「ケルベロスとして生きる以上、グラビティは切っても切れない関係にありますからね。皆さんのお話を紹介する場を設けさせてもらって、こうして超会議の場で公開して貰えるのは幸運ですよ」
 一般人でもケルベロスに憧れる若者達は、様々なケルベロスから話を聞ける機会ということで強い興味を惹かれている様子だった。
「セニアさんも、ぜひ色々聞いてみていって下さいね」
 そういう鳳琴の言葉を受けて、セニアは会場のあちこちで語るケルベロス達の話を聞いて回る。

「レゾナンスグリード、めっちゃよく使うわー。ブラックスライムをインド洋に見立てて敵をずぶずぶと沈めちゃう感じで」
 と、藤・小梢丸(カレーの人・e02656)のように、武器のグラビティに独自の見解を示す者もいれば、
「『影遁・暗夜之攻』……ケルベロスになった際に初めて編み出した自己流忍術の影遁を使ったグラビティだな。虚をついた一撃を死角から放てるから便利なんだよな。色んな敵と戦ってきたが一番使い勝手がいい」
 と、ルーク・アルカード(白麗・e04248)のように、自ら編み出した独自の技について語る者もいる。
 昨年の超会議の後から新たに使えるようになった『ワイルドグラビティ』について実演して見せる者もおり、召喚する相手との強いつながりを感じさせた。

「やはり、命を懸けた戦いの場で用いる技には、それぞれに思い入れが生まれるものなのだろうな」
 ここで語っていないケルベロス達にも、きっと自らのグラビティに対する思いがあることだろう。
 セニアは改めてそう感じつつ、最後のブースへ向かうべく、語り場を後にするのだった。

●1位:難解謎解き企画 ~風雲ふたば城 古代MM文明の謎~(MMCITY
 セニアが次に向かったのは、昨年に続き、超パビリオンの投票で1位を獲得したMMCITYである。
 こちらも複数の旅団を横断する、大規模な企画だ。
 多くの人々が訪れ、謎解きに挑んでいる。
『参加者の皆は、こっちに並んで頂戴ねー、こぉら、そこっ、割り込みはだぁーめ、順番にね♪』
 丁寧に案内をしているリカール・マグニフィコ(愛は惑星を超える・e51255)から解答用紙を受け取り、セニアはモニターの置かれた部屋へと向かう。

 モニターに映像が映し出される。
『古代MM文明――――それは、メソポタミア・エジプト・インダス・黄河に続く第五の文明――――』

「ほう、日本ではそう教わるのか」
 当然ながら日本人でないセニアには、まずこの説明からして新鮮だったらしい。現在学校では四大文明と教えたり教えなかったりしているらしいが、そんなこととは関係なく説明は続く。
『魔王、イチコイーノ・フタバーナ二世が収めたとされる歴史の闇――――だが、その存在証明は未だなされていなかった。今日、この時までは――――』
「なるほど、そういう設定か。しかし2位が超魔王で1位が魔王……流行ってるんだろうか、魔王」
 首を傾げつつ、セニアは先へと進んだ。

 そして、説明をしてくれた考古学者にしてケルベロスであるところのランコード・バックミンスター(猫は死なずに今を生きる・e00326)が頼りになりそうだと思ったら直後にらぬ人になったり、ヒントを貰いにいったらなぜかザイフリート王子がいたり、なんとか宇宙・艦長(森の艦長・e30559)やアーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)と出会い、数十分を経て……。

「はぁっ!!」
 セニアは遺跡横の店舗にあった物販スペースにいたアリル・プルメリア(なんでも屋さん・e00097)から『モヤッとボール』を受け取り、思いっきり投げつけていた。
 あははと笑うアリルに、セニアは振り返る。
「まだスッキリボール投げてる人2人しかいないようだが大丈夫か。もう超会議終わるぞ!?」
「まあ、今年はまだロスタイムあるし、挑戦してもらえるといいんじゃないかな?」
 笑いながらそう答えるアリル。
 果たして、この難関をクリアできる者は超会議の終了までに増えるのであろうか。
「魔王イチコイーノ・フタバーナ二世……恐るべき相手だ」
 超パビリオン企画第1位、MMCITYの高い壁を前に、セニアは解答用紙を再び睨みつけ……。
「……いかん、1位だと連絡するのを忘れていた」
 再び受付に向かったセニアは、改めてリカールにMMCITYの1位獲得を伝える。
 やがて場内のモニターに、部門1位獲得と応援してくれた人々への感謝を伝えるメッセージが表示されるのだった。