爆殖核爆砕戦 ファーストアタック

シャイターン『シルベスタ』VSティクリコティク・キロ

<爆殖核爆砕戦 ファーストアタック>

 大阪のシンボルである大阪城の無残な姿は、攻性植物が他のデウスエクス種族に劣らぬ侵略者であることを、地球の人々に改めて知らしめていた。

 2016年秋に発生した攻性植物による地球への大規模な組織的侵略は、少なくとも表沙汰になったものとしては、長きに渡る侵略の歴史の中でも初のことだ。
 しかも、主星である世界樹ユグドラシル自らがその一部を攻め込ませるという、他の種族との間の戦いと比べても異例の事態である。
 それで『ゲート』の位置が判明したのは、不幸中の幸いというところか。

 世界樹ユグドラシルは攻性植物の主星であるとされているが、『ゲート』から出現した部分の威容を見る限り、地球のような惑星とはかけ離れたものらしい。
 地球に出現しているユグドラシルは、宇宙のどこかにあるユグドラシルの一部分に過ぎない。
 短期間に近畿地方を覆い尽くすまでに広がりうる成長速度は、ユグドラシル全体の大きさからすれば僅かかも知れないが、地球に生きる者達にとっては脅威の一語だ。
 エインヘリアルの本星アスガルドは、世界樹ユグドラシルに支えられる形で隣接しているという。
 ユグドラシル本体に加え、ケルベロス達が召喚を阻止した無敵の樹蛇ミドガルズオルム等までいれば、エインヘリアル達が攻性植物を駆逐できぬまま緊張状態を保つにとどまっているのも自然というべきだろう。
 地球の守護者たるケルベロス達は、決死の成長阻止作戦を行わんとしていた。

●ケルベロス・クリスマスアートフェスティバル
 大阪府吹田市の万博記念公園では、『ケルベロス・クリスマスアートフェスティバル』が開催されていた。
 主催しているのは黒猫師団と灰色狼師団だ。
 会場にはクリスマスツリーが飾られ、各ステージではケルベロス有志によるライブだの漫談などが行われている。
 会場内ではカルロス・マクジョージ (煌麗の満月と白狼の料理長・e05674)や上野・零 (絶望と希望を死焔に籠めて・e05125)をはじめ、志願した料理人達が集い、関西のものを中心に料理が振る舞われていた。
 会場の様子は、日本をはじめ世界各地のサテライト会場にも伝わっており、会場を訪れる人達からの応援のメッセージが次々に担当のケルベロス達の元に届いている。

「会場内は賑わっていますが、街は寂しいものですね」
 エフイー・ノワール (e07033)が、会場から街の方へと視線を送る。
 ここに来るまでに見た街は静まり返っていた。
 この静けさは、万博記念公園周辺だけのものではなかった。
 既に今回の戦争に関わる者や、ギリギリまで警戒に当たる警察消防の関係者などを除き、一般人は既に近畿地方から避難している。

 ケルベロス・ウォーの宣言と共に、近畿地方で開始された住民の大規模な避難はケルベロス・ウォーの宣言と同時に開始され決戦前日の今日、既にほぼ完了していた。
 予め人々がユグドラシルのはじまりの萌芽による成長範囲内から避難していれば、成長するユグドラシルや同伴する攻性植物に即座に殺害される人も出ない。
 人的被害が出なければ殺害によるグラビティ・チェインの奪取は行われず、敵の勢力拡大も抑制される。
 そうした事情もあって、ユグドラシルゲートの所在地である大阪をはじめ、被害の予想される近畿一円では各自治体からの指示の元で避難は順調に行われた。

『くりすますはおうちでさんたさんをまちたいです』
『岡山に避難しております家族一同、皆さんの勝利を心から願っています』
『ケルベロスの皆さんが、勝利して無事にクリスマスを迎えられるよう祈っています』

「経済的に影響の大きな大阪に、歴史ある文化財も多い京都奈良もありますから、短期間での避難も一大事業ですね。と、これは……」
 有名な寺社の責任者だという人から送られて来た必勝祈願の掛け軸(達筆)を眺め、深海・小熊 (旅館の看板娘・e24239)は首をかしげた。
 たぶん応援メッセージだろう。芸術性は高いような気がする。
「まあアートフェスティバルと名前をつけたのは私達ですが」
 同じように避難した京都奈良の仏教関係者から応援として送られて来た絵画や書道がまとめられた一角に、その掛け軸も展示しておく。
 どうもクリスマスと名のついた企画だが、他の宗教関係者もケルベロスに応援は送りたいという悩みからの産物らしい。
 その一角だけ妙な雰囲気になっていたが、それでも他の応援メッセージと篭められた願いは共通している。ケルベロス達の勝利だ。
 一般人にも知名度の高いケルベロス達を各地に派遣しての呼びかけに対し、大阪に本社や支社を置く企業をはじめ、世界各国の企業から多数の協賛が得られていた。
 編成された特別報道番組でも、避難した人々からの応援と激励が多数寄せられている。
 爆殖核爆砕戦はゲート周辺まで到達するか、全ての爆殖核を爆砕することが目的となるが、それで現れたユグドラシルが消えるわけでもなく、大阪城周辺の半径500m内は被害を免れることはできない。
 人々の後の生活にも、影響が出ることは確実だ。
 既にゲートの位置と、その最終決戦勝率「18%」であることは判明した。
 それが増減するかはケルベロス達次第だが、勝率すら見えない長い歴史を重ね続けた地球の人々は、その数字を『不可能ではないし、いずれ上がる』ものと見ていた。

 やがてイベントは滞りなく進み、ケルベロス有志による宣誓が為される。
「今、我々が食べた料理は、この近畿に根ざした料理であり、この地で取れた食材で作られている。だが今、我々が立っているこの場所を奪おうとしている者がいる。大阪城に現れた攻性植物だ」
「既に侵攻は始まっている。……だが、それを黙って見ている我々ではない! 今回の戦争で、我々がすることは何か。この人達の帰る場所を守り、このふるさとの味を明日もまた食べられるようにする事だ。我々には、この災禍を止めることが出来る!」
「人々の帰る場所を守ろう! この地の自然を救おう!
 そして、あの大阪城が人々と共に積み重ねてきた歴史を、取り戻そう!
 守るべきものは、ここにある!我々が戦う理由は、ここにそろっている!」
 世界各地で、人々は改めて戦う決意を表明したケルベロス達に賞賛を送る。
 その信頼を背負い、ケルベロス達は必勝を期して戦場へと向かっていく。

●紫揚羽師団 奇襲:(13)虹天爆殖核

 12月18日早朝、大阪の上空を、ヘリオンと輸送機の群れが一斉に飛んだ。
 目指すは攻性植物の群れ集う大阪城公園のユグドラシル。
 最初に交戦を開始したのは、虹天爆殖核への奇襲を行う紫揚羽師団だった。

 地表部に表れているユグドラシルは、巨大な半球のような姿をしている。
 紫揚羽師団のケルベロス達が狙う虹天爆殖核は、その小山のような大きさを持つユグドラシルの上部に位置していた。
「世界樹ユグドラシル……これでも、本体からすればごく一部なんだろうね」
 紫揚羽師団のウォーレン・ホリィウッド(ホーリーロック・e00813)は、虹天爆殖核を目指しユグドラシルを駆け下りていく。
 本来ならば無敵の樹蛇『ヨルムンガンド』によって守られていたであろう空は、光明神域攻略戦の勝利によって、ケルベロス達の攻め入る隙を生んでいた。

 近付いてみれば、爆殖核の位置は簡単に分かった。
 外部から見てもユグドラシルの根の隙間から、虹色の光が漏れていたからだ。
 虹天爆殖核の周辺に現れている敵は、かつて茨城県かすみがうら市に出現した『オーズ兵器』と呼ばれる攻性植物達だ。
「だが、力は遥かに弱いな。俺達が戦ったオーズ兵器は、もっと強かったぞ?」
 かすみがうら市でオーズ兵器と交戦したケルベロス達が、眼下のオーズ兵器達の力量を確認して怪訝な顔をする。
 外見こそ似通っているが、敵の強さはかすみがうら市に現れたものよりずっと下だ。
「ケルベロス! やっぱり来ましたね……。先輩達の仇は討たせてもらいます!」
 不意に声が聞こえ、戦場に緑色の爆炎が巻き上がった。
 オーズ兵器達に命じ、ケルベロス達を迎撃に掛かったのは、星霊戦隊アルカンシェルの一員、緑色の鎧を着た女性エインヘリアル。
「あれが、スターヴェールの方か。マスターブランはまだ奥のようだな」
 スターヴェールも決して弱くは無いが、これまでに倒して来た強敵達に比べればさほど強力と言える域ではない。
 戦場全体の指揮を執っているのは、もう一人の方なのだろう。
「彼女は後回しですね。今は可能な限り敵戦力を削っていきましょうか」

●金糸雀師団 奇襲:(4)竜忍爆殖核
 金糸雀師団のケルベロス達は、追手門の内側に降下していた。螺旋忍軍が守る爆殖核を目指し、先遣部隊の者達はユグドラシルの外皮を貫かんとする。
 だが、傷つけられたユグドラシルは即座に再生してしまっていた。ダメージが蓄積されている様子も無い。
「これは、時間の無駄だな」
 自らも攻撃を繰り出しながら、君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)は眉をしかめた。
 光明神域攻略戦の壁のように爆発してダメージを受けるようなことも無いが、性質の悪さでは良い勝負だ。
「地道に攻撃して、削れるような代物ではないか」
 はじまりの萌芽によって広がるユグドラシルも同様だとすれば、ユグドラシルに奪われた地域を奪還するのは相当に困難となるだろう。

 次々にヘリオンから飛び降りて来ている金糸雀師団のケルベロス達だが、作戦の前提としていた侵攻用の穴をあける作戦が頓挫したため、別口で侵入口を探す必要があった。
 周囲を探り、リューディガー・ヴァルトラウテ (猛き銀狼・e18197)が報告する。
「大きな隙間があるが、あそこから出入り出来ないか?」
 巨大であるが故、ユグドラシルにはケルベロス達のサイズなら出入りでいる隙間が幾つもある。
 それが侵入に使えるであろうことを、現れる敵の姿が教えていた。

「「「貴様らに、我が竜人忍法を見せよう!!」」」
 異口同音に言ったのは、同じ装束に身を包んだ螺旋忍軍、竜人忍者達だ。ブレイズゲートでも姿を見ることのできる存在だが、彼らは全てこの戦場を守る『羅剛』の分身体だという。
「出て来てくれたのは好都合。各自、交戦を開始しろ!!」
 金糸雀師団のケルベロス達は、敵螺旋忍軍との交戦を開始する。だが、そうする間にも敵の数は次々に増えて来ていた。敵の種類も増えて来る。
「3方面から敵の増援を受けているのが大きいな」
「おそらく、本来の戦力は螺旋忍軍だけだろう。一人で一戦場を構築してしまう分身能力は脅威的だが……」
「ハクロウキの部下の割に、ハクロウキより強い気がするぞ」
 何か術に秘密があるのだろうが、それを暴いている時間は今のケルベロス達には無い。多少強引でも本体ごと倒して爆殖核を爆砕するしかない。
「包囲される前に、撤退するぞ」
 そう判断し、ケルベロス達は撤退に移った。

●緋色蜂師団 奇襲:(12)イルミナルセイバーズ!
 空挺陽動部隊に、外部にいたドラグナーや竜牙兵達の相手を任せ、緋色蜂師団の地上浸透部隊は、半球状のユグドラシル内部へと突入していた。

 迷宮のようになったユグドラシルの根の隙間は、巨大な攻性植物が余裕を持って動けるほどに広い。
 敵勢に発見される前に内部へ浸透したケルベロス達は、やがて巨大なドーム状になった場所へと出る。
 そこで待ち受けていたのは、白銀色に輝くイルミナルセイバー・ドラゴンだった。
『先制顔面とはやるじゃねぇか!! だが、今度は俺のターンだ!!』
「誰か、あのドラゴンの顔に攻撃を……? いや、カードバトル用語かのう」
 事前にカードバトルに詳しいケルベロスがまとめたアンチョコを捲りながら、端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288)が首をひねる。どうも熱いカードバトルというのはプロプレイヤーがやるようなものとはまた違うらしい。
「えーと……お主もカードバトラーならば、儂らとのデュエルから逃げはすまいな!」
『俺はカンギにリベンジするまで、誰にも負けねぇ! アタックステップ! 天翔ける星導騎士団が、我が友の守り手となる! 行け、俺のカード達! フルアタックだ!』
 神星竜イルミナルセイバー・ドラゴンが叫ぶと、その声に応じてドラグナーや竜牙兵達が動き出す。そして特にカードは関係なく普通にケルベロス達に襲い掛かって来た。
「……正直あのドラゴン、一見話が通じそうでまともな話できない類のような気が」
 兎塚・月子 (蜘蛛火・e19505)が半眼で呻く。
 だが、その戦闘力が高いのは一目で分かる。
 3つの爆殖核に隣接する超重要地点を任されるだけあるということだろう。
『さあ、来いよケルベロス! 熱いカードバトルのはじまりだ──!!』
 神星竜イルミナルセイバー・ドラゴンにとって配下のデウスエクス達がカードならば、人類もまたカードなのだろうか。
 カードとは、人類とは、デウスエクスとは。
 そんな哲学的な疑問を抱きつつも、ケルベロス達はイルミナルセイバー・ドラゴン軍を引き付けつつ戦力を削っていく。
 先の戦場に向かう師団は、指揮官がカードバトル(という名の普通の戦闘)に夢中になっている間に、迅速にこの地帯を通過することに成功していた。

●蒼鴉師団 奇襲:(14)天守爆殖核
 大阪城の歴史は長い。
 豊臣秀吉公の築いた大阪城は、およそ350年に渡るオラトリオの調停期がはじまってすぐの大阪の陣の後に埋没され、現在ケルベロス達が見ることのできる大阪城は、大阪の地を治めるために徳川氏が建てたものの遺構である。
 ヘリオンから飛び降りた蒼鴉師団の空挺部隊が放ったグラビティの最初の一撃は、その歴史ある大阪城の天守閣に巣食った攻性植物達の一群を、たちまちのうちに消滅させた。
「怖い怖い……さすがにイグニス様達を倒しただけの事はあるねぇ」
 現れたシャイターンの少年が、ケルベロス達の姿に心底嫌そうに言う。茨城県かすみがうら市でオーズの種による寄生事件を引き起こしたシャイターン『シルベスタ』だ。
 攻性植物を指揮するシルベスタの姿を目にし、ティクリコティク・キロ (リトルガンメイジ・e00128)は首をかしげる。
「随分と強いですが……東京防衛戦の時に居なかったのは第五王子イグニスの指示なんでしょうか」
 種族はシャイターンで間違いないだろう。だが、強さがおかしい。
 東京防衛戦で戦ったシャイターンには、当時のシャイターンの種族中でも屈指の強敵が揃っていたはずだが、それらの力を上回っている。
「オーズの種を扱っていた事といい、第五王子イグニスの指示で別行動を取っていたのか?」
「判断材料が足りませんね。素直に話してくれるとも思えません」
 そうするうちに、植物迷宮を突っ走って来た地上部隊も戦線に加わる。
 まともに交戦する時間は、10分と定めていた。
 敵が本格的にこちらを包囲殲滅するような態勢を取る前に、蒼鴉師団のケルベロス達は撤退に移っていた。

●白馬師団 奇襲:(8)中芯爆殖核
 白馬師団のケルベロス達は、ユグドラシルの中心部へ向けて侵攻していた。
 ユグドラシル地上部は絡み合い、その内部では通行可能な隙間に攻性植物が繁茂して侵入者を迎え撃つ。
「そこまで複雑なわけではないが、立体的な移動を伴うのが面倒だね」
 メイザース・リドルテイカー (夢紡ぎの騙り部・e01026)は、攻性植物との遭遇で傷ついた仲間を治療しながら呟く。
「通信ができれば、もっと効率よく動けたんだがな」
 ゼルガディス・グレイヴォード (白馬師団平団員・e02880)が肩をすくめた。
 危惧されていたように、迷宮内では通信が行えていなかった。情報管制局は完全に用を為していない。
 大阪市内という土地柄故、電波自体は中まで届いていてもおかしくないのだが、どうもカンギ戦士団に妨害を行っている者がいるらしい。
 カンギ戦士団にはダモクレスや螺旋忍軍といった、科学技術や情報工作に長けた種族が所属したり協力したりしている。
 これらのデウスエクス種族が通信妨害を行うと、地球側の科学技術で妨害を破るのはまず不可能だ。
 鎌倉防衛戦の舞台となったビフレストやローカスト・ウォーの舞台となったゲートたる暴殖要塞アポルオン内では問題なく通じていた。関与する種族の違いは大きい。
「まあ、敵地潜入でもあるからな……」
 相互連携も取り辛い中、ケルベロス達は個々の撮影機器やアリアドネの糸、スーパーGPSなども使い、可能な限り効率よく進攻していた。

 中芯爆殖核に近付くにつれて通れる場所は狭くなっており、出現する攻性植物も迷宮の外縁部に比べると、小さいものが増加して来ており、質も上がっている。
 現れる敵の中には、寄生型攻性植物も多く含まれていた。
 こちらの捜索を逃れた攻性植物にどれほどの人々が命を奪われたのか。
「一筋縄ではいかない相手だな」
 幾度目かの小規模な交戦を経て、次第に敵が白馬師団は撤退を決める。

●黄鮫師団 奇襲:(17)虚月ヶ原
 城正面、大手門側から侵入した黄鮫師団のケルベロス達は花獣達に追われつつも、ユグドラシルが開けたと思しき大穴から眼下のススキの草原を目にしていた。
 ノル・キサラギ(e01639)の号令と共に、意を決して飛び降りたケルベロス達のグラビティが、着地ざまに一帯を埋め尽くす『ススキ型攻性植物』に向け解き放たれる。
 着地地点にいた攻性植物達が、たちまちのうちに消し飛ばされた。
「本当に夜の草原みたいだね。映像を映し出しているようなものなんだろうけど」
 巻き起こる戦いの中、ノルは一瞬だけ頭上にある月を見上げた。
 この奇妙な地下の光景は、師団のケルベロス達によって録画保存されていた。
 通信は地上同様に途絶している。
 妨害されないように有線通信なども検討されていたが、そのためのケーブルはここに来るまでの間に、上層を守る花獣達に発見され、余計な交戦を招く一因となっていた。
 他の師団が攻め入っている場所なら、そのために労力を費やせば維持できたかも知れないが、隠密裏の行動とは相性が悪かっただろう。

『敵襲!』『敵襲!』『敵襲!』

 月明かりを浴びていたススキ型攻性植物の群れが、ケルベロス達の照明に照らされ一斉に動き出す。
 敵襲を互いに伝えあい、黄金の波のように揺れ動く攻性植物達の根元から起き上がったのは、寄生された人々だ。
 土に汚れた姿を省みもしない彼らの自意識は戻ることは無い。
 攻性植物の一部とされ、生かされている状態の彼らを救い出すことは、ケルベロス達をもってしても不可能だ。

 こちらを包囲せんとする攻性植物群を、黄鮫師団は確実に撃破していく。ススキ型攻性植物に寄生された者達の攻撃能力は、過去に確認されたものと同一のようだ。
「でも、ススキの攻性植物だけじゃないみたいだね」
 スノーエル・トリフォリウム (四つの白翼・e02161)は、ススキの上を飛んで来る、妖精のような攻性植物の存在を認めて皆に警戒を促す。
 スノーエルが目にしたものだけでなく、他の種類もケルベロスを撃破すべく集まりつつあった。
「潮時だね。撤退しよう」
 ゲートから現れ、地上に飛び出しているユグドラシルは、ケルベロス達の撤退にも使うことができる。
 そのユグドラシルを伝い、黄鮫師団のケルベロス達は撤退していった。

●救護準備(銀狐師団)
 ケルベロス達の地上での進軍開始地点となる大手前芝生広場には、空輸されて来たコンテナが次々と着陸していた。
「展開急ぐぞ!」
 霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)の号令の元、銀狐師団の者達が次々とコンテナに取りつき、中に収められていた物資を運び出し、救護本部を構築していく。
 先に奇襲を終えた師団からの協力のもと、敵や迷宮内に関する情報も、この拠点に集約されつつあった。
「地下への昇降ウインチは分解持ち込みかな」
「高低差がだいぶありますから、重傷者の搬送が……」
 綺羅星・ぽてと (クリスマスはバターぽてと・e13821)やセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)が打ち合わせをしつつ、慌ただしく本部を出ていく。
「こっちは敵の情報まとめ、と」
 敵の情報がまとめられていたので、カイトはざっと目を通す。
 奇襲が行われた地域のうち、外縁部に出現した攻性植物には巨体のものが多く、迷宮深部に行くにつれて小型(人間大)が増える。
 大型のものは頑健重視の場合が強く、逆に小型のものは理力重視の傾向が強い。
 主に受けるバッドステータスは【捕縛】、【催眠】、【毒】といったあたりだ。
 だが、種族が混在するカンギ戦士団の場合、その偏りを補うように人間に寄生した攻性植物や他の種族が混じっている。
 人間をはじめ、他の生物に寄生したもの等は、寄生した相手の能力を駆使するため、その限りではない。
「対策する気なら戦場ごとに、か。面倒な相手だな」
 ユグドラシルの、そしてゲートの護り手としてケルベロス達の前に立ちふさがるカンギ戦士団。多種多様な種族を取り込んだ敵との戦いが、始まろうとしていた。
師団ファースト
アタック
結果
黒猫師団 応援募集 各ターンの重傷からの復活率が「19%」に上昇!
クリスマスアートフェスティバルという名称は特に国外で困惑を招いた模様です。
銀狐師団 救護準備 ケルベロス全体の重傷死亡率が10%低下!
大手前広場に救護本部、高高度侵入ポイントに支部を設置。
攻性植物は頑健と理力のいずれかを重視しているものが多く確認されています。
灰色狼師団 テンションアップ 敵戦力350以下の戦場を無視可能に!
クリスマスアートフェスティバルに協力。宣誓で戦意を盛り上げました。
避難済みの無人の街を抜けて訪れるメイン会場で、明るい気分で盛り上がるのは中々難しかった模様。
白馬師団 (8)奇襲 奇襲により「(8)中芯爆殖核」の戦力が300減少!
中枢部では活動しやすい小型で理力重視の攻性植物が多いようです。
通信妨害の有無は土地柄よりも敵の性質に左右されます。
蒼鴉師団 (14)奇襲 奇襲により「(14)天守爆殖核」の戦力が300減少!
シルベスタはシャイターンですが、東京防衛戦の時に現れた同種族の精鋭達より実力は上です。戦場には『オーズ兵器』も確認。
金糸雀師団 (4)奇襲 奇襲により「(4)竜忍爆殖核」の戦力が200減少!
本来は竜人忍者「羅剛」の分身だけが守っていますが、増援により種類が増えています。
増援地点1か所制圧につき、その時点での戦力の約3割を削ることができそうです。
紫揚羽師団 (13)奇襲 奇襲により「(13)虹天爆殖核」の戦力が300減少!
戦場の敵攻性植物主力は『オーズ兵器』の量産型ですが、かすみがうらに出現したものから著しい弱体化が見られています。
緋色蜂師団 (12)奇襲 奇襲により「(12)イルミナルセイバーズ!」の戦力が300減少!
イルミナルセイバー・ドラゴンは確認された地上部のデウスエクスで最強です。なお、会話が通じるかどうかと配下は微妙です。
黄鮫師団 (17)奇襲 「(17)虚月ヶ原」の戦力が350減少!
過去にも確認されているススキ型攻性植物を中心とした、寄生型攻性植物の混成。
【炎】【催眠】注意。