紐使いの美女

作者:きゅう

●死因は「れいのひも」
「ルームサービスでございます♪」
 扉をノックすると同時に、艶のある、色っぽい声が男の耳に響く。
(「ルームサービスなど頼んだ覚えはないのだが……」)
 ガチャリ。
 男がそう考える間に、声の主は扉を開け、部屋の中へと入ってくる。
「いや、何かの間違い……」
 そう言いかけた男は、女の美しさ、そして何より大きく開いた胸元に一瞬視線を奪われ、
「間違いでは、無いですよねぇ?」
 女はゆっくりと胸を上下に揺らして男の首を縦に振らせた。
 男は、台湾ではそれなりに名のしれた実業家である。
 女性に言い寄られることは茶飯事で、彼女以上の胸の女性もその中にはいた。だが……
「この紐が気になりますかぁ?」
 彼女の両方の二の腕に括りつけられた紐が、胸を下から支えるように張っていて、
(「目が……離せない」)
 ブラジャーで支えているのとは違う、胸を強調する不自然な動きの虜となってしまう。
「ふふっ」
 女は胸を揺らしながら男に近づき、
「今日のサービスは、わ・た・し。対価は……あなたの命♪」
 男の首に抱きつきながら、紐を彼の首に巻き付ける。
「だ、誰かっ!」
 男は大声で部屋の外に待機しているはずのボディガードを呼ぶ。
「あの人達なら、先に私のサービスを受けて頂きました♪」
 しかし、僅かな希望も女の言葉に打ち砕かれた男は、頭を胸に押し付けさせられ、
「こうやってぇ……えいっ」
 紐から発せられる霊力で首をきつく縛られて、
 ――ゴキッ
 鈍い音とともに首の骨を粉々に砕かれるのだった。
●台湾で暗躍する螺旋忍軍
「というわけなのよ」
 ノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)が持ち帰った螺旋忍軍の噂は、
「ノワルさんの仰る通り、私の方でもその事件が起こると予知されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の予知と合わせて事件の概要を浮き彫りにしていた。
「螺旋忍軍は、先のケルベロス・ウォーに大きく貢献した、世界各地の有力者の暗殺を狙っています」
 ケルベロスたちに協力するとデウスエクスに粛清されるという恐怖を人々に与えるのが目的のようだ。
「地味ではありますが、非常に効果的な作戦ではあります」
 だからこそ、この作戦は阻止したい。
「今回ターゲットとなった男性は、台湾の実業家です」
 彼はホテルで行われる政治家のパーティに出席し、部屋へ戻った時に狙われるようだ。
「男性には、予定を変更すると螺旋忍軍が標的を変える恐れが有るため、予定通り行動して欲しいと伝えてあります」
 彼を極秘に護衛して、螺旋忍軍を撃破するのが今回の作戦となる。
「敵の螺旋忍軍は1体。美しい女性の姿をしています」
 彼女は、男の部屋にルームサービスと称して潜入し、暗殺を試みるようだ。
「ボディガードが部屋の入り口に2人いるのですが、特に何もしなければ、彼女は実業家の男を殺すのと同じ手口で彼らも殺してしまいます」
 部屋への通路は1本しか無いため、女の侵入経路の捕捉は簡単にできるだろう。
「怪しまれないために、みなさんもパーティに出席して、螺旋忍軍が動き出したら暗殺を阻止してください」
 実業家の男は、細かい段取りはケルベロスたちに合わせてくれるとのことなので、席を外すタイミングなど、作戦を立てて動くのが良いだろう。
「次に螺旋忍軍の戦闘能力ですが、螺旋忍軍の能力に加えて、不思議な紐を武器として使うようです」
 この紐には何か霊的な力があるようだ。
「最近一部で流行っている紐よ。こうやって……胸の下に這わせて持ち上げるの」
 ノワルは1本の紐を取り出し、たわわな胸を揺らしながら実演して補足した。
「……むぅ。みなさん、胸の大きな螺旋忍軍なんかには負けないでですぅ」
 何かに怒ったのか拗ねたのか、セリカは口をアヒルのようにして、強い口調で激励する。
「セリカも似合うと思うわよ?」
 そんなセリカにノワルは紐を渡して妖しく微笑んだ。


参加者
アマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119)
水無・ゆかり(オラトリオの巫術士・e00258)
神楽・ヒナキ(くれなゐの風花・e02589)
ヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019)
照月・朔耶(白鷲陽炎・e07837)
鷹司・灯乃(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e13737)
クラウス・レオンハルト(飢える騎士・e15782)
マリオン・オウィディウス(響拳人形・e15881)

■リプレイ

●華やかなパーティの裏で
 台湾の政治家が主催する大きなパーティは、華やかながらも独特の緊張感が漂い、ケルベロスたちはその場にうまく入り込もうと神経を尖らせる。
「初めまして。私、アマルティア・ゾーリンゲンと申します」
 黒を基調としたイブニングドレス姿のアマルティア・ゾーリンゲン(リビングデッド・e00119)は、
「今後とも、よしなにお願い致しますね?」
 良家の御嬢様を装い、丁寧に挨拶する。
(「意外と覚えているものだな」)
 彼女の過去の記憶と経験は、幸せなものばかりではなかったかもしれない。
 だが、今、この場所で堂々としていられるのは、その頃の経験によるものだろう。
 アマルティアは紳士達と楽しく談笑しながら、時折出入り口の方にちらっと視線を送った。
「今のところ、動きはないようです」
 そんなアマルティアに耳打ちするのはマリオン・オウィディウス(響拳人形・e15881)。
「紐をつけてる女性は一人だけですね」
 そして、神楽・ヒナキ(くれなゐの風花・e02589)の二人だった。
(「胸のことはよく分かりません。ですが紐についてはとても興味がありますね」)
 女性が身に着けている「れいのひも」。その不思議な力はどのようなものなのか。
(「まずは螺旋忍軍を倒さなければ。紐に触れることすらできませんから」)
 ヒナキは自らの好奇心を満たすためにも、必ず勝つことを心に誓い、
「その女性に絞って監視を続けます」
 目立たないように女性へ視線を送ると、
「引き続き、入口の方の確認はお任せします」
 マリオンは淡々と事務的に囁き、今度は実業家の男の姿を目で追いかけ始めた。
「はいはーい!」
 参加者たちが優雅にひとときを楽しむ中、だれよりも大きな声を出し、
「お客様、只今、お飲み物をお持ちしまーす!」
 会場の端から端へと動きまわるのは、照月・朔耶(白鷲陽炎・e07837)だ。
「お食事は此方で宜しいでしょうかー?」
 彼女は給仕としてパーティに参加し、元気よく、愛想よく駆け回った。
「おっと」
 だが、人混みを縫うように食事を運んでいた朔耶は一人の女性を避けきれず、
「きゃっ」
 ドンッと肩でぶつかってしまう。
「申し訳ございません!」
 朔耶は慌てて頭を下げながら彼女の腕と胸にかけられた紐を確認し、
(「あの紐……螺旋忍軍ちゃんだよね」)
 わざとぶつけた肩をさすりながら、さり気なく彼女の動きを監視した。
「そろそろ時間か」
 鷹司・灯乃(ウェアライダーのブレイズキャリバー・e13737)はイヤホンマイクをつけ、
「ご主人様。そろそろ……」
 実業家の男に耳打ちして、ボディーガードの男と役割を交代する。
「後、いくつか確認したいことがあるんやけど……」
 灯乃はボディーガードの男に、連絡手段や男性の部屋周辺のフロアの間取りを確認し、
「彼は俺が絶対に守ってみせるさかい。安心してや」
 真剣な瞳で彼を見つめて大きく頷き、その強い意志を伝えた。
「後は任せてもらおう」
 同時に、もう一人のボディーガードもクラウス・レオンハルト(飢える騎士・e15782)と入れ替わる。
(「あれがれいのひも。か」)
 実業家の男とともに会場を後にする際、クラウスは螺旋忍軍の女の紐をちらりと見つめ、
(「あんなものでも快楽エネルギーを得られるものなのか、少し気になるな」)
 彼女と目を合わせないように気をつけながら、その場を後にした。

●狩りの時間
 黒スーツに帽子を被ったヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019)は、
(「てめぇ、なんか用でもあんのか?」)
 マフィアのリーダーらしい堂々とした出で立ちと、凶悪な顔つきで周囲を黙らせ、
「護衛対象はそろそろ部屋についた頃か」
 会場の隅で細葉巻をくわえ、螺旋忍軍と思われる女性をしっかり捕捉していた。
 そして、そんな彼女がさり気なく会場を外に出ようとするのを見て、
「おっ、動き出したか?」
 ヴァーツラフは細葉巻を口から離し、
「おい、てめぇら、紐が動いたぜ」
 スマホを手にとって灯乃とクラウスに短く伝え、
「狩りの時間だ!」
 今度はマリオンたちにそう告げ、他の仲間たちに対しても順次連絡を送っていく。
 大人っぽい姿に変身した水無・ゆかり(オラトリオの巫術士・e00258)は、
「お嬢さん、これが終わったら、是非私と……」
 胸の谷間を強調したセクシーなドレスを着こなした彼女の魅力の虜になった紳士の言葉に、
「えっ、いや……困ります」
 カクテルグラスを片手に持ちながら困惑し、引き下がらない相手に四苦八苦していた。
 どうにか追い払うものの、好奇な視線は後を絶たず、彼女はなかなか落ち着かなかった。
(「こういう服を着ると、大人の女性って感じで憧れるのだけど……」)
 次々と現れる求愛者に辟易していたゆかりは自分の胸元に視線をやり、溜息をつく。
 そんなゆかりの目に、普段は見ることのない豪華な食事が並べられたテーブルが映った。
(「せっかくだし少しぐらい、お料理食べても大丈夫ですよね」)
 ゆかりは美味しそうな料理をつまんで食べ始め、
「もぐもぐ……。美味しい!」
 その絶妙な味に舌鼓をうつ。だが、その仕草がまた非常に蠱惑的に映ったのか、
「お嬢さん、お隣よろしいですか?」
 また別の男性が彼女に言い寄ってくる。
「んぐっ……けほっ」
 突然の呼びかけにゆかりは何度かむせ返ると、
「大丈夫ですか?」
 男は彼女の背中を優しくさすり、気づけば後ろから優しく抱きしめる体勢になる。
「え、ええ。大丈夫……です」
 ゆかりは困惑しながら、どうやって男を振り切ろうかと悩んだ時、
「おい、何やってんだ!」
 ヴァーツラフからの連絡が、ゆかりに手を出していた男を怯ませ、彼女を自由にした。
「は、はいっ! すぐに行きます」
 ゆかりは慌てて走りだし、パーティ会場をぬけ出すのだった。

●誘惑されたのは……
 その頃、螺旋忍軍の女は実業家の男の部屋の前までたどり着いていた。
(「螺旋忍軍ってのはどうしてこう、スタイルがえぇお姉ちゃんが多いんやろね」)
 灯乃は目の前に現れた、白い礼装姿の女性を下から上へと見つめ、
(「まぁ目の保養になってえぇけど、あんま好き勝手ヤンチャされるわけにはいかんのや」)
 鮮やかな色の「れいのひも」に押し上げられるように揺れる胸から視線を外した。
「ねぇ、私とい・い・コ・ト、しませんかぁ?」
 しかし、女はしなを作りながら灯乃にすり寄り、両手で彼の顔に触れ、前を向かせると、
 ――たゆ~ん。
 腕の動きと連動して紐が動き、彼女の胸が上下に揺れ動く。
「ふむ、なるほど。確かにひもの効果はあるかもしれないな」
 気圧される灯乃を助けるように、クラウスは2人の間に割って入る。
「あら、おにーさんが相手してくれる?」
 見せつけるように紐をゆっくり上下に動かす女に対して、
「……だが、私……サキュバス相手にする誘惑としては……足りんな」
 素敵な笑顔で返すと、彼女の顔に指で触れ、その瞳を優しく見つめた。
「あん♪」
 女はぴくっ。と体を震わせて、クラウスの胸に抱きついて悩ましげに体をすり寄せる。
 だが、それは彼女が相手を油断させるために行う行動とは、少し違うように見えた。
 クラウスは女の髪を撫でながら、彼女の身を包む快楽を少し奪い取っていたが、
「無事ですか、クラウス」
 駆けつけたマリオンの声で女は我に返り、クラウスから素早く離れて首だけ振り返った。
「……と、いかんいかん」
 女にサキュバスの快楽を与えていたクラウスも我に返り、
「灯乃殿、皆には内緒だ。はは……」
 少しバツが悪そうに灯乃に苦笑いしながら耳打ちする。
「息災なら何より、あとで目の前でたゆんたゆんしてあげましょう」
 女に誘惑されていたと勘違いしたマリオンは、クラウスが無事なことに安心したようだ。
「……!!」
 だが、その次の瞬間、女は無言で素早く動き、扉をぶち破ろうと試み、
「ここは行き止まりや!」
 灯乃が部屋の扉を背にして立ち、女のタックルを受け止めながらその場を必死に死守する。
 先程までのお色気はどこかへ投げ出したかのように冷静に動く女は、
「死ねっ!」
 両腕を素早く灯乃に絡めてその首を紐でくくり、スナップをきかせて思い切り締め付ける。
 灯乃は首に力をこめて痛みに耐え、無理に反撃せずに紐を外すことに専念した。
 文字通り、一筋縄ではいかない灯乃に女は舌打ちし、
「はっ!」
 みぞおちを膝蹴りしながら灯乃を扉ごと押し倒そうとする。
「はい、そこまでー!、それ以上はやらせないよっ!」
 しかし、灯乃が踏ん張っている間に追いついた朔耶が刀を構え、
「どうやら、形勢逆転やな?」
 他の仲間たちも駆けつけて、通路の前後で挟むように彼女を追い詰める。
「この飾り気のない通路が貴様の墓場だ、デウスエクス」
 アマルティアはそう言うと、日本刀を下段に構えて素早く背後から斬りかかった。

●紐の役割は
「その紐に何か意味があるというのなら、まずはそれから叩き斬ってやろう」
 アマルティアの斬撃は緩やかな弧を描く。
 ほとんど直感的にそれを避ける女に、アマルティアは素早く二の太刀を放つ。
「地獄よ、音を刻め。憤怒の炎を灯せ。咆哮せよ、我が心臓」
 彼女の心臓……地獄化された部位から溢れる力を全身にたぎらせると、
 ――ギアを上げるぞ?
 その言葉が女の耳に届くより早く、『揺光』が彼女の背中を捉える。
 女が振り返って身構えると、そこには瞳を真紅に輝かせるアマルティアの姿が映った。
「お姉さんってスタイルもよくて、憧れちゃうよ……」
 ゆかりは改めて見る女の姿に魅了されたかのように釘付けとなり、褒め称える。
「でも、そんな紐……あざといだけですよ? それに、私のほうがないすばでぃなのね!」 しかし、その次の言葉で一気に蔑み、相手に精神的ショックを与えようとする。
「何よ!」
 女は落ち込んだ素振りは見せなかった。
「私のほうが……胸だって……こんな風に!」
 むしろゆかりに対して怒りを覚えており、別の意味で精神にダメージを与えたようだ。
 そんな2人のやり取りを見て、「れいのひも」の役割に気づいたアマルティアは、
「……ああ、大きさを示したいのか」
 はあ、と大きくため息をついて首を横に振り、
「大きくても、邪魔なだけだろうに」
 目の前の2人に負けない何かがその動きにつられてそよぐように揺れ動いた。
「貴方はここで討ちます。覚悟してください」
 ヒナキは掌から呼び出したドラゴンの幻影を女に飛びかからせて攻撃すると、
「お尻がお留守やで!」
 ほぼ同時に、灯乃が杖を犬に変化させ、女の背後からふくらはぎに噛みついた。
「ちっ」
 女は前後からの挟撃に手を焼き、徐々に追いつめられていく。
 だが、まだまだその動きは機敏で、瞬く間に朔耶の目の前に移動すると、
「もらった!」
 拳で殴りつけながら、紐で彼女の日本刀をから絡め取ろうとした。
「っと、中々やるわね……」
 朔耶は刀を1本奪われそうになるが、なんとかそれを回避すると、
「調子こいてんじゃねぇっ!」
 彼女の後ろでリボルバーを構え、照準を合わせていたヴァーツラフが吠え、女の動きを止める。
「でもまだまだまぁ!」
 その隙を逃さず、朔耶は目を閉じ、
「我が心の深層に眠りし識よ……」
 彼女の奥底に眠る第八の感覚、阿頼耶識(アラヤシキ)を一気に解放する。
「……邪悪滅すべし!」
 その強烈な力は朔耶の体を飛び出す衝撃波に変わり、
「がぁっ」
 女はその力になすすべなく吹き飛ばされ、背中を壁に叩きつけた。

●たゆんたゆん
 手負いの女豹に対し、猟犬は狩りの手を緩めない。
「ダモクレスもぶち抜く徹甲散弾、一発一発がチタンの特注品だ!」
 ヴァーツラフは愛用しているソードオフショットガンの銃口を女の胸元に向け、
「ミンチになりやがれぇえええっ!!」
 まるで火口から吹き上がるような重い散弾で彼女の体を壁に磔けた。
 その重厚な威力の反動で、銃を持つヴァーツラフの手にも重い衝撃が跳ね返る。
 さらに射程距離が極端に短いという難点はあったが、彼の必殺技はそれを補って余りあるほどの威力を誇っていた。
「火よ、風よ、水よ……そして土よ!」
 これ以上は苦しませずにその生命を断ち切ろう。
 クラウスは敵ながら美しい女性にせめてもの情けをかけるかのように、
「世界を司る全ての事象よ、私に力を!」
 四大元素の精霊の力を集めた光の刃で彼女を包み込み、
「終わりです、NINJA。少し前はそちら側に居たよしみです、苦しまずに送ってあげましょう」
 マリオンは胸に備えた発射口を開き、女の両耳目掛けてビームを放ち、その意識を奪う。
「殲滅……完了」
 そして最後にヒナキの放つ紫色の光が、女を物言わぬ石の像に変え、
「その力、私が頂きます」
 女は身につけていた紐だけを残して砂のように崩れ去り、ヒナキは紐を掴んで手にとった。
(「この紐、私達の力の糧にならないでしょうか?」)
 彼女は紐を武器に戦う女を見て、ずっとそれを考えていた。
 だが、実際に手にとって見た紐は、何の力も感じ無い、普通の紐のようだった。
 残念そうに溜息をつくヒナキが紐を床に置くと、ゆかりがそれを手にとって
「こう……でしょうか? やっぱりあざといですよねー」
 女がやっていたように、紐を使ってたゆーんとしてみたりする。
 彼女が妙齢の女性になっていることもあってか、男性陣は視線を彼女に向けてしまう。
 ――たゆーん。
 ゆかりから紐を受け取ったマリオンも同じように紐で遊びながら、
(「セリカやみんなもこれでたゆんたゆんさせたい。揺れる余地が無さそうでもたゆんたゆんさせたい!」)
 と、壮大な野望を密かに胸に秘めるのだった。

作者:きゅう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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