女騎士VS空飛ぶオーク?

作者:きゅう

●コスプレ会場にて……
「お前たち、よいな?」
 マッドサイエンティスト風のドラグナーの男は、目の前に居るオーク……彼の『作品』たちに向け、
「人間の女をグボッと孕ませてェ、お前たちの子孫を作るのだ!」
 そう指示しながら、ハイテンションに高笑いをあげる。
「お前達が産ませた子孫を実験体にすることで、飛空オークは更なる進化を遂げるだろう!」
「うおおおおっ!」
 オークたちはやる気十分に大きな返事をすると、
「その暁にはこの私の崇高なる研究は……」
 まだ何かをつぶやいているドラグナーの男の言葉を聞かず、獲物を求めてドタドタと走りだした……。

「我は聖騎士ロッテンマイヤー! 我が剣に切れぬものなど無い!」
 山梨県北杜市にある公園で定期的に開かれている野外コスプレ大会。
 規模は大きくないが、広々とした自然の中で思い思いの姿になりきることができるため、口コミで広まっていき、近所の名物イベントとなっていた。
「ロッテンマイヤー様、素敵ですわ」
 そんなイベントに毎回テーマを決めて参加している数名の女性たち。
 今回のテーマは『ファンタジー世界のお姫様と女騎士』である。
「おのれ現れたな下賤の者め。我が剣の錆に……え?」
 聖騎士ロッテンマイヤーが剣を掲げて空を見上げ、仮想の敵を思い浮かべようとして、顔を歪める。
「女だあああああああっ!」
 彼女に向け、鳥のように滑空してくる巨体が自分を狙って飛んできたのだ。
「え、何?」
 気づけば友達のお姫様や女騎士たちは肉の塊のようなオークにフライングボディプレスの用な感じでのしかかられ、押し倒されていた。
「くっ、殺せ」
 押し倒された聖騎士ロッテンマイヤーは反射的にお約束の台詞を吐くと、オークたちも嬉しそうに下品な鼻息を鳴らし、殺すわけがないだろうという顔でネチャネチャと触手を絡めてくる。
「嫌あああああっ」
 そして、その場は絶望の饗宴と成り果てるのであった……。

●空飛ぶオークが現れました
「海を泳いだと思えば次は空を飛ぶ……オークもなかなかすごいですねぇ」
 中条・熊之助(ウェアライダーのヘリオライダー・en0080)は感心したような、
「でも、やってることは変わらない……これもある意味すごいですね」
 呆れ果てたような声でから笑いする。
 オークの品種改良を行っているドラグナー、マッドドラグナー・ラグ博士が生み出した、飛空オークという、飛行型のオーク。
 彼らが女性たちを襲う事件が予知されたのだ。
「幸い、高い場所から滑空して飛んで来るだけのようで、上空に舞い上がることは出来ないようですが……」
 一瞬、ヘリコプターのように舞い上がるオークを想像して、その妄想を全力で否定すると、
「飛空オークに襲撃される女性を守り、彼らを撃破していただけますでしょうか?」
 その場に居合わせたケルベロスたちにそう依頼するのだった。
「オークたちが狙うのは、野外コスプレ大会に参加している女性たちです」
 場所は丘に囲まれた大きな自然公園の中の広めの草原だ。
「コスプレ大会の参加者などもいますが、人払いは難しくはないでしょう」
 ただし、オークたちは滑空しながら襲撃場所を探す為、事前に避難活動をしてしまうと、予知と違う場所に降下してしまい、別の女性たちが被害にあってしまう。
「そのため、避難を開始するのはオークたちが降下する直前になってからにしてください」
 また、オークが好きそうな行動を女性たちが行わなかった場合なども、襲撃場所が変更になる場合もあるようだ。
「その場に他の人がいると彼女たちもノリノリで演技したりしなくなるかもしれません」
 彼女たちのそばにいながら襲わせるために、コスプレとは言わずとも、彼女たちのノリに合わせて彼女たち、オークたちと接するとうまくいくだろう。
「オークたちの数は7体。戦闘能力は普通のオークと変わりありません。女性たちは5人居ますので、上手く助けてあげてください」
 依頼に同行するキャロン・ティービー(シャドウエルフのミュージックファイター・en0138)は騒ぎたがりの血が疼いているようだ。
「コスプレ大会って、面白そうなお祭りよね。でも、何のコスプレしていこうかしら?」
 悩む彼女に、そのままの姿でも普通にコスプレに見えるとどこからともなくツッコミが入るのだった。


参加者
エニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)
楡金・澄華(氷刃・e01056)
アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)
シータ・サファイアル(パンツァーイェーガー・e06405)
セレナ・スフィード(ケルベロス・e11574)
エルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)

■リプレイ

●女騎士とお姫様の饗宴
「このブラウ、天槍騎士の名誉にかけて……か弱き者を守ってみせましょう!」
 高々と槍を掲げて決めゼリフを披露するのは、天槍姫ブラウ・サファイアルことシータ・サファイアル(パンツァーイェーガー・e06405)。
 彼女のサファイアルという名前は、彼女が好きなこのゲームのキャラクターに由来しており、姫としての優美さと、騎士としての機能性に優れたドレスを身にまとった彼女に周囲の参加者から歓声と拍手が沸き起こった。
「んっ、この武器か? これは……」
 ブラウ姫を守るように影のように寄り添う不器用な騎士。黒の軍服と軍帽、マントを着用したセレナ・スフィード(ケルベロス・e11574)は、周りの騎士たちが興味を持った死を刻む刀について丁寧に説明する。
「ははっ、テンション上がるじゃねぇか!」
 ヴァルキュリアのエルフリーデ・バルテレモン(鉾槍のギャルソンヌ・e24296)は、コスプレとはいえ、戦乙女と呼ばれる自分の同胞を目にして共に戦っていた昔を思い出し、心躍っていた。
「……そのままでもコスプレに見えるから凄いよね」
 あまりやる気のなさそうな騎士レイヤーを装ったラトリア・コードレイフ(紅焔・e00118)は、その辺をぶらぶらしながら、さり気なく空を見上げてオークの襲撃に備える。
 勇ましい女騎士たちに囲まれたエニーケ・スコルーク(黒麗女騎・e00486)は、優雅な物腰で微笑みかけ、
「ふふ、皆の頼もしさを私にも譲ってほしいものです」
 そういう彼女の雰囲気はただ護られるだけの存在ではなく、どこか勇ましさを感じさせた。
 そんなエニーケ姫とは対照的に、白いドレス姿でどこか浮世離れした雰囲気のあるお姫様姿のイブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)は隣で静かに腰掛ける。
 思わず護ってあげたくなる雰囲気に、彼女の周りにもコスプレ騎士たちが集まっていた。
「可愛い……」
「僕っ娘いい!」
 イブは無表情でたどたどしく彼女たちと話しながらスカートに隠した刃を握り、周囲を警戒していた。
 そんな姫たちをキャロン・ティービー(シャドウエルフのミュージックファイター・en0138)と陰ながら護る楡金・澄華(氷刃・e01056)は、鉢金に黒の道着、黒の具足、足元は足袋に草鞋姿でクールビューティな武者を演じる。
「この身に代えても、必ずお守りいたします……!」
 その笑顔と言葉に魂をこめて、視界の隅に見え始めたオークたちへの警戒を強めた。
「コスプレは初めて?」
「初々しいね」
「見習い騎士って感じだね」
 先輩コスプレイヤー達に囲まれ、可愛がられるアニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)は、
「一応一人前の騎士なんですけど……」
 本物の騎士であるはずの自分がそう見られていることにちょっと凹み気味だった。
(「どうしてなのかな?」)
 迫力やオーラ……『騎士らしさ』がいまいち足りないと先輩たちは感じているのだが、
「!」
 次の瞬間、アニエスが双剣を抜き放って俊敏に振り回し、その先にオークの巨体が現れると、先輩たちはその考えを一瞬にして改めていた。
「ここは私たちに任せて先に行ってください! 大丈夫です、すぐに追い付きますから」
 アニエスの明るい言葉に先輩たちは頷いて、
「こんな状況で死亡フラグ立ててないで、しっかり生き残りなさいよ!」
 可愛い後輩を激励するように叫ぶのだった。

●豚どもの狂災
「来たかオーク共め、私は貴様らなどに屈しない! まとめて……かかって来いッ!」
 天槍姫ブラウは槍を掲げてシータの姿に戻り、滑空して襲いかかるオークを迎撃する。
 襲いかかってくる触手をできるかぎり引き受け、1本ずつ突き落とし、払い退けていく。「こっちだぜ」
 エルフリーデはアニエスとシータが守るコスプレイヤーたちを手早く集め、出口方面へと誘導するが、空から襲いかかるオークたちの何体かが彼女たちの方へと進路を変えて滑空してくる。
「豚が空飛んでるんじゃありませんわよ!」
 パニックに陥りそうになるコスプレイヤーたちの集団の前に立ったエニーケは神斬鋸【ベアグルント】を構え、
「騎士を護ろうとするお姫様……そんな勇壮な姫騎士がいてもいいじゃないですの」
 襲いかかるオークを弾き返す。
「冥くん、後ろは任せたよ」
 エニーケをかいくぐって襲いかかる別のオークに、ラトリアは背後の女性たちを冥に任せ、
「……悪いけど、此処から先は行かせるわけには行かないんでね」
 おっとりとした口調は変えず、目の色を変えて襲撃してくるオークを挑発すると、オークは雄叫びを上げ、ラトリア目掛けて突進するのだった。
「や、やだ……こないで。こわい……」
 一方、最初にオークの襲撃のあった場では、5体のオークがそれぞれ獲物を定めてケルベロス達に襲いかかっていた。
 2体のオークに狙われるイブはお姫様の演技を続けながら後ずさってオークの加虐心をくすぐり、
「姫は……俺のモノだ!」
 オークたちに自分を襲わせる。
「弁えろ。その汚いモノで彼女に触れるな」
 だが、その触手は彼女に届く前に、彼女の騎士、ロアが棘の刺槍で触手を切り落とす。
「ロアくん、何かいつもとフンイキ、ちがう……。怒ってる?」
 必殺技で次々とオークの触手を切り落としていく彼の姿、表情にイブはほっと安心しながらも、
「気のせい、かな?」
 その並々ならぬ殺気を不思議に感じていた。
「姫、お退がりを! ここは私が引き受けます!!」
 もう1体のオークは澄華が抑え、
「姫に仇為す者、この私が全て斬り伏せて見せましょう」
 オークを挑発しつつ、文字通り身を盾にして触手による攻撃を防いでいくが、捌ききれなかった触手が四肢に絡み、動きを封じられる。
「この、程度で……私は屈しない……!」
 澄華はイブを、そして後ろで避難しているはずの女性たちに視線を向けながら、遠慮無く巻き付いてくる触手をある程度好きにさせ、反撃の時まで耐えることを選んだ。
「貴様ぁ、よくもこの様な辱めを……」
 同様に、女性たちが逃げる時間を稼ぐため敢えて捕まったセレナは形だけ抵抗しつつ、力づくで四つん這いでお尻を突き出した格好をさせられ屈辱と羞恥に顔を歪める。
「くうぅ……」
 セレナは蠢く触手に弄ばれ追いつめられ、
「はぁっ……っっ、も、もう……これ以上は……っ」
 もうどうしようもないというフリをして、歪めた顔を赤く染めながら、
「オーク様……ありがとう……ございます」
 屈服の言葉を口にした。
 その様子に気を良くしたオークはセレナを孕ませようと動き出し、
「オーク様……オーク様……これは卑しい私からのお礼でございます」
 セレナは歓喜の言葉を紡ぎながら、女性たちの避難が完了したのを確認して、
「死を刻んでやろう」
 絡んだ触手をねじり切るように力強く体を捻り、手にした死刻刀で一閃した。

●騎士たちの反撃
「覚悟しろ豚共、遊びは終わりだ」
 セレナは先程までの乱れた姿を一切感じさせず、凛々しい瞳でオークを睨みつけ、
「我は姫を守りし竜人の騎士なり。汚らわしき異形の者よ、命が惜しくば大人しく帰るが良い」
 名乗りをあげ、刀による斬撃であっという間に形勢を逆転させると、
「いでよ、我が魂」
 死刻刀とグラビティを媒体に、魔力を帯びた白銀色のハルバードを錬成し、一太刀でオークを両断する。
「上辺だけの穢れなど私には些細な問題だ。この魂の輝きが曇らぬ限りお前らに屈することは無い」
 セレナはそう言うと、体に巻き付いていたオークの触手を無造作に払い落とした。
「よくも好き放題やってくれたな……!」
 その横で、オークの触手を引きちぎった澄華が無詠唱でオークの足元に魔方陣を作成する。
「倍返し……いや、チリも残さぬように消えてもらう!」
 澄華の力が魔方陣を輝かせると、現れた鎖がオークの四肢を雁字搦めに捕らえ、翼を貫く。
「まだまだ行くぞ!」
 澄華の必殺技、紅鎖陣の攻撃はまだ終わらない。
 完全に動きを封じられたオークの体に向け、次々と追加の鎖を突き立てていき、
「少しは、貴様らにやられる女性たちの気持ちがわかったか? なら、死ね!」
 最後に複数の鎖で胸を貫き、絶命させた。
「くっ……意外と厄介……ふあっ」
 オークの攻撃を受け流していたシータも反撃に転じていたが、触手が体を撫で回すような攻撃に悪戦苦闘していた。
「……意外と、気持ち……、はっ」
 シータはオークの与えてくる刺激に思わず呑まれそうになるが、何とか気持ちを立てなおして槍を回転させ、触手を切り払っていく。
「この十秒の間、可能な限り敵に撃ち込む……行くぞ!」
 そして持久戦は厳しいと判断すると、短期決戦で勝負を挑むことを選択した。
「リミッターリリース、オーバードライブシステム……ブースト!!」
 ODS・アクセレイションバラージ。
 一時的にリミッターを解除し、超高速機動戦闘モードに移行、速度を生かし弾幕を敵に限界まで叩き込むシータの切り札だ。
 自身への負担と消費エネルギーの問題から起動可能時間はたった十秒。
 その間にオークを倒しきろうと次々弾丸を撃ちこみ、起動時間一杯撃ち尽くした頃には骨の欠片すら残さず殲滅していた。
「僕を見て。……僕の歌を、聴いて」
 ロアとオークの死闘を目の前で見ながら、イブは切なくなるような声でオークに囁きかける。
「存るべきモノを在るべき場所へ――示し導くこと、其れが僕の存在理由」
 Harmonious-Ideologue。
 朽ち行く者へと捧げ失われた恋の旋律がイブの猛毒の唇から紡がれ、
「食べてもいいよ、毒林檎だけどね」
 天啓の詩はオークの心を幻惑させ、その身体の内部から感覚を鈍らせる。
「あぁぁぁぁ……」
 歌の合間に囁きを混ぜるイブの声にオークを恍惚とした声をあげて跪くと、
「飛べない豚に、してあげる」
 イブは歌を続けながら猛毒の唇でくすっと微笑み、ガトリングガンを構え、時を凍らせる弾丸で動きを止めると、オークの体を鋼鉄の弾丸で穴だらけにした。
「ふえぇ……」
 アニエスかせ放つ斬撃は偶然にもことごとく避けられ、逆にオークの攻撃を何故か受けてしまう。
「わわわわわわわっ」
 オークの攻撃に翻弄されるアニエス。
(「もしかして、さっきまでノリノリで口走ってた死亡フラグのせい?」)
 そんなことを考えているうちにオークに組み敷かれたアニエスは、
「くっ……」
 殺せ。とお馴染みのセリフを言うにも度胸が足りず、涙目になりながら何とか押し返すと、
「射殺す光……スタブライト!」
 矢の様に真っ直ぐ突撃し、煌めく光を纏った武器で回避困難の強力な刺突を繰り出す。
「はぁ……はぁ……」
 その一撃に倒れ、動かなくなるオークを見下ろしながら、アニエスは助かったという安堵の表情を浮かべながら体の力が抜けていき、その場に膝をついた。

●勝利と栄光を
 一方、避難する女性側に襲いかかるオークに立ち向かうラトリアは、鉄塊剣を振り回しながら追い散らす。
 彼女の攻撃は空を切り、オークは目立った傷を受けていなかった。
 しかし、その迫力ある斬撃がオークに恐怖心を芽生えさせると、
「こっちだよ。こっち」
 ラトリアは剣を振るいながらオークを巧みに誘導し、
「ア……ッアァ……! これが、私の……とっておき……!」
 その背中に樹の幹を背負わせ動きを制限したところで、胸から引き抜く様に出現させたグラビティ・チェインを地獄の炎を両手とグラビティ・チェインに纏わせ、
「……潰れて燃え散れ! 一撃滅殺! ダーイン……スレイヴ!!」
 巨大な剣の形状に変化したそれを、眩い炎を撒き散らしながら質量で押しつぶすように縦一文字に敵を叩き斬った後、巨剣を爆発させる。
「焼豚になりなさい」
 焉極ダーインスレイヴ。ラトリアの繰り出した奥の手がオークを爆散させ、後には黒焦げになった焼豚の残骸が残るのみだった。
 最後までコスプレ騎士たちを追いかけようと一番奥深くまで彼女たちを追いかけていたオークを、エニーケは懸命に弾き返す。
(「いらぬ辱めを与えるような不届き者は、ぶっ殺してやる!!」)
 と、やる気満々で戦うかたわら、
(「でも、もしあの触手で……」)
 オークに為す術もなく身も心も堕ちていく……というあらぬ妄想を思い浮かべ、
「犯せるものなら犯してみなさいな!」
 心の声を惜しげもなく披露してオークを挑発しながら、
「あなたに未来なんていりませんのよ。自らの行いをあの世で悔いながら死ぬがいいですわ」
 オークへの殺人衝動を力に転換。アームドフォートのレーザー砲から回避を許さない特殊軌道の光線を発射する。
「『くっ、殺せ』って言うのがお決まりみたいだが……生憎、私は生き意地汚ねぇんだ。戦乙女の誇りある限り、貴殿達の思う様にはさせないぜ?」
 エニーケの殺意に怯んだオークにエルフリーデがすかさず肉薄すると、
「おら、気合入れろよ!」
 ゲシュタルトグレイブでひっぱたくような斬撃を繰り返し、オークの脚を払って転ばせる。
「おいおい、女に自分が貫かれてどうすんだ?」
 エルフリーデはオークの尻に槍を鋭く突き刺し嘲笑うと、
「お、俺は……女騎士になんか負けない!」
 オークは最後の力を振り絞って強がって叫ぶ。
「ふっ。この一撃で、冥府に叩き落してやるぜ」
 エルフリーデはその心意気に敬意を評して全ての余剰武装を解除し、Geirscogulの名を冠する相棒を振り上げ、
「……さあ、先に逝った仲間を追う時間だぜ」
 迷い無く銀閃をきらめかせる。
「女騎士には……勝てなかった……よ」
 再び尻に槍を突き刺されたオークは、か細い断末魔を残して力尽きるのだった。

「色々とひどい目に遭ったわ……」
 シータは辟易しつつまとわりついた触手や体液を払い、
「でも、コスプレって楽しいわね」
 天槍姫ブラウへと戻り、彼女の自分をもうしばらく楽しむことにする。
「姫、ご無事ですか?」
 セレナはコスプレイヤーたちを連れて戻ってきたエニーケとイブに傅きながら彼女たちの様子をうかがい、目立った負傷がないことに安堵する。
「ええ。助かりました。私も久々に暴れられましたし……」
 エニーケはそう言ってセレナの手を取るとくすりと微笑んで、
「いかがでしたかしら? 私の姫騎士姿は……」
 彼女たちに優雅に一礼した。
「せっかくなのでみんなで記念撮影とかしておきたいですね」
 すごい、すごいと先輩騎士たちに讃えられ、もみくちゃにされながら、アニエスは満面の笑みで仲間たち、そしてコスプレ大会の参加者たちを集める。
「そうだな。嫌なことはできるかぎり忘れてしまおう……空飛ぶ豚は悪夢だからな」
 それは私にとっても。心のなかでそう付け加えながら澄華はつぶやく。
「はい、チーズ♪」
 その言葉を合図に、草原に花咲く女騎士とお姫様の一行は、笑顔でカメラに顔を向けるのだった。

作者:きゅう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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