「ハロウィンの時期がやってきますね」
秋も後半を迎え始め、風の涼しさが増す頃。
そうケルベロス達を見回しているのは――イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)だ。
アダム・カドモンとの最終決戦、ケルベロス・ウォーに勝利して4か月。現在、新型ピラーの開発は順調に進んでいるという。
「そしてダモクレス本星マキナクロスにおける、ケルベロス達の居住区の建造も形になってきました」
今年のクリスマス頃には、降伏したデウスエクスと、ケルベロスの希望者を乗せて……外宇宙に進出する事になるだろう。
「今回は、その船となるマキナクロスのお披露目も兼ねたイベントです」
即ちマキナクロスを使って日本だけでなく、海外で行われるお祭りにも参加してしまおう、という事である。
イマジネイターは皆に笑顔を見せた。
「沢山食べ歩いたり、ゆっくり過ごしたり……楽しい一日が過ごせると思います。是非、参加してみませんか?」
今回立ち寄るのは、日本とイタリアだ。
「日本では例年盛り上がるハロウィンイベントに参加します」
思い思いの仮装をして行進に加わるパレードに、公園にてお菓子を持ち寄ったり、その場で調理をして楽しむパーティが催される。
ジャック・オ・ランタンを作って飾り付けたりお土産にするイベントの他、様々な屋台も出て大きな盛り上がりになるだろう。
「お菓子にグッズに、色々とこの日だけのお土産を売るお店もありますから」
そういった場所を巡っても楽しめると思いますよ、とイマジネイターは笑んだ。
一方、イタリアの一地方でもハロウィンのイベントが行われるという。
「万聖節や万霊節といった祝日の前夜祭として、こちらも昨今ではとても盛り上がるそうですよ」
人形のような形の砂糖菓子に、フルーツを象ったマジパン。他では見られない伝統的な食べ物に出会う事が出来るだろう。
そうでなくとも、イタリアは食の宝庫。スイーツやレストランなど、美味を巡るだけでも楽しめるはずだ。
「賑わいを楽しんだら、少し静かな方面を歩いてみても良いかも知れません。田園などの長閑で美しい風景も味わえるでしょう」
また、日本とイタリアの両方の開催地にて、それぞれに由緒正しい教会があるという。
「ケルベロス同士で結婚をした、という方がいらっしゃるなら……そこで式を挙げたりしても、一層盛り上がると思います」
新たな門出を迎えたものだけでなく……最終決戦から時間も経って、それぞれに責任ある立場になったものもいるだろう。
皆が各々の人生を歩み出している。
だからこそ、と。
「久しぶりに会って、旧交を温め合うのも良いと思います」
そのために、煌めく祭りの一夜を過ごしに行ってはいかがでしょうか――と。イマジネイターは皆へ笑いかけていた。
「賑やかだな!」
歩む大地も風も、彼の故郷もの。
思う程に、ラウルの育った国を知る事が出来るのが嬉しくて――シズネはわくわくと石畳を歩みゆく。
うん、と答えるラウルもまた自然と表情が緩んでいた。
イタリアでシズネと過ごせるだけでも心弾むのに……共に前夜祭を楽しめるのが嬉しくて。
「見えてきたね」
と、望む屋台に並ぶのはマジパンで作られた色鮮やかで愛らしいドルチェ。
周りからも甘い匂いが漂っていて――シズネはラウルの甘いもの好きのルーツが分かった気がして、笑ってしまう。
勿論――笑みが絶えないのはラウルが楽しそうだからでもあるけれど。
「イタリアでは死者の日に食べるお菓子なんだよ」
と、そんなラウルは言いながら……林檎に似せて作られたドルチェをシズネへ。
好奇心混じりに頬張ったシズネは――その甘さに目を見開くけれど。
「うまい!」
興奮気味に伝えると、見ていたラウルの笑みも深まっていた。
それからラウルも檸檬の姿のものを一口。一緒に食べると、大好きな甘いものがより美味しくなる……そんな実感と共に。
「次はどこに行くんだ?」
「イタリアにはまだまだ美味しいものがあるからね」
ラウルは応えて導いてゆく。
「カンノーロも、カッサータも。美味しいよ」
初耳な名前に、シズネはぐるぐると目を回しながら――それでもカンノーロを実食すれば、香ばしい生地からリコッタチーズクリームが溢れて美味。
カッサータは緑のアイシングが華やかで美しく。
「これもうまい!」
味わいながら、シズネは思う。
この国の菓子を制覇する頃には――。
「オレも負けず劣らずの、甘いもの好きになっちまいそうだ」
これからふたりで歩く道を、想像しながら。
その言葉に、ラウルも微笑んで。
「この街で――甘くて幸せな想い出を沢山咲かせようね」
そうしてまた共に歩み出す。
伝統を思わす家並みに、長閑な遠景。
異国情緒あふれる景色を眺めながら――雪斗とヴィは隣り合って歩みゆく。
「イタリアってすっごい綺麗な街やね」
言いながら、雪斗が何より心踊るのは……今年も一緒にハロウィンを過ごせるから。
そうだね、と返すヴィはもまた同じ心で。買ったお菓子をつまみながら、顔を綻ばせた。
「これ美味しいよ。雪斗も食べる?」
「あ、それ、イタリアのハロウィンで定番のお菓子!」
雪斗は笑顔を向ける。
「パン・デイ・モルティっていうクッキーやったかな?」
「へー、そういう名前のお菓子なんだ」
ヴィが言って差し出すと、雪斗は受け取ってぱくりと一口。ドライフルーツとナッツの食感が何とも良くて。
「美味しい!」
「向こうのも食べていこうか?」
そうして二人で幾つもの美味を巡ってゆく。
と、そんな折……リン、ゴーン、と鐘の音が聞こえた。
見ると、教会に人々が集まっている。近づいてみると……輪の中で幸せそうにしている二人と、祝福を送る人達の姿があった。
結婚式だ。
「わぁ――」
雪斗は思わず感嘆を零して見つめる。
と、不意に手がぬくもりに包まれた。ヴィがきゅっと手を握ったのだ。
――この温もりは、いつでも心を満たしてくれる。
思いと共に雪斗が視線を向けると、ヴィも雪斗を見ていた。
「……ね、雪斗。……ずっと一緒にいようね」
「うん、いつまでも、二人で幸せでいよう」
顔を見合わせて笑うと――雪斗はヴィの手の甲に、口付けをひとつ。
ヴィは思わず顔を赤くしながら……多くの事を思い出す。
互いに指輪を贈り合ったときのこと。
二人で紡いできた幸せな日々のこと。
だからこれからも――ずっと君のそばにいる。
この誓いは永遠に。
雪斗もまた、同じ心。その誓いを薬指の輝きに込めて――二人は未来へ手を繋いでゆく。
『レッツスイーツ!!』
そんな勢いでイタリアへ降り立ったリーズレットと陽は――街の盛り上がりに合わせて自分達も仮装をしてきていた。
リーズレットの姿は、帽子とローブで着飾った魔女で。
「リズ姉、とっても似合ってるよ!」
「ありがとう、そっちも似合ってるなー!」
と、リーズレットが見つめ返す陽は、所々に包帯イメージのリボンを巻いたミイラスタイル。
「つまり……陽にゃんは私の眷属……ファミリア達はさしずめ使い魔かな?」
リーズレットと陽の頭にはそれぞれハムスターと猫も乗っている。頷く陽は、少し大げさに腕を掲げながら。
「よーし、みんな仲間にしちゃうゾー!」
「おー!」
リーズレットも続き、暫し賑わいの輪の中で楽しんだ。
それからレストランに向かうと――本場のティラミスで蕩ける美味を味わって、ジェラートの濃厚な甘味も堪能。
果実の形のマジパンも楽しむと、オーダーで二人の姿の砂糖菓子も作って貰い――。
「めっちゃばえんじゃん! 陽にゃん、写真とろとろー!」
「勿論!」
という訳でパシャリ。二人で一緒に写ったものもまた撮影して大満足。
「SNSに投稿しような♪」
「うん!」
そうしてお菓子を堪能した後は、配る番。
テラス席で外を眺めつつ、道行く人に配りつつ――。
「とりとり~☆」
そんな様子もまた写真に残すのだった。
後は街に出てお土産探し。
「陽にゃんはどんなお土産が欲しいとかある?」
「そうだね~、お世話になった人たちへ、美味しい物を探せたらいいな」
「それだったら、形に残るものもいいかな?」
二人で相談しながら、マジパンだけでなく、ベネチアングラスや香水も選んでみつつ。
「夜はまだまま始まったばかりだし、ゆっくり選ぼうか!」
リーズレットの言葉に陽も頷いて――店々を巡ってゆくのだった。
明媚な家並みに川のせせらぎ。
ハルとエリザベスはフィレンツェを歩み始めていた。
「良い景色だな」
恋人としてのデートは初めてで、ハルは柄にもなく緊張するけれど――頷くエリザベスはいつも以上に楽しげで。
「ねっ。ハル、知ってる? フィレンツェはね、ルネサンスの先駆けとして中世のヨーロッパを席捲したことで有名よね――」
「ああ」
応えるハルに笑むと、次は腕を引いて橋へ。
「ここも有名よね。渡っていきましょ?」
と、人の流れに乗りつつ川を横断してゆくと……。
「この先も美味しいお店があるらしいの!」
二人で本場のパスタを味わい、また歩み出すと――。
「観て観てー! あの赤い瓦屋根の向こうに見えるのがね……サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂だよ」
「あれか。写真でみたことはある気がする」
「僧帽の様なあのシルエット、とっても壮麗で綺麗よね……」
見惚れるエリザベスに、ハルも瞳を細める。
彼女がここを好きなのがとても伝わってくるようで。
「俺は詳しくないから、色々と教えてくれると助かったよ」
いつも以上に彼女の勢いに振り回されてしまったけれど――それがすごく楽しくて。
「ねぇ、ハル――」
と、エリザベスも笑みを向ける。
「私ね、イタリアに来れて嬉しい。でもそれ以上に、ハルと二人でここに来れたことがね、とっても嬉しいんだ」
「うん、俺も二人でここに来れてよかったと思うよ。……それにしても」
教会か、とハルは見やった。
「昔は考えもつかなかったけれど、あぁいう場所で結婚式というのも憧れるね。二人で挙げる時は英国かフィレンツェどちらがいい?」
「結婚式……! もぉ、ハルは気が早すぎよ!」
エリザベスは少し慌てて、笑んでごまかす。
けれど。
「私は――」
――あなたとならどこでも。
風にかき消されるような声で、そう紡いでもいた。
通りに並ぶ屋台に見える、甘いものの数々。
その香りと見目に惹かれながら、眸と広喜はイタリアを歩む。
「これ、美味えなあ!」
広喜が味わうのは本場のジェラート。濃密な甘さが快く――その笑顔を見て、眸も食べながら表情を和らげていた。
「次はあれにしよウ」
と、二人で買うのはカンノーリ。チーズの薫るクリームが美味で……更にバーチ・ディ・ダーマはお土産に。
難しい名前だけれど、どれもが美味だから広喜は楽しくて――暫し食べ歩いてゆく。
その後は、小さな教会を見つけて一緒に入った。
「へへ、ヒトがいねえから貸し切りだっ」
そこに流れるのは静謐な空気だ。
「俺は神様とかよくわかんねえけど――構造のしっかりした建物だし、すげえ綺麗で、いい場所だな」
「そうダな」
眸も信仰心はないけれど、ここが人の祈りが募った場所だとはよく判る。
だから視線を巡らせていると――ふと手に触れる温度。
広喜が自然と手を伸ばし、その手を握っていた。機械の両手で、眸の機械の右手と――ヒトの左手、両方を。
「……」
眸は少しだけ驚きながら、微笑んで指を絡め返す。
だから広喜も笑った。
側にいると、離れないと約束した。
その気持ちは今も、これからも、絶対変わらないから。
「ずっと、一緒だぜ」
眸もそれに頷く。
今更「誓う」までもなく、広喜の側にいる事はごく自然な事だから。けれどこの想いを――この場所にいる目に見えない者に寿いでもらえるなら幸せだ。
そして広喜も――教会で誓うときはどうすればいいか知っている。
「愛してる」
囁いて、そっと顔を近づけて。
「――愛してる」
眸も唇の狭間に囁きを返し、目を閉じて――口づけを。
自分達の命は永遠には続かない。だから定命の時間を、命を精一杯生きてゆくのだと。
この地球で、一日一日を――これからもずっと一緒に、いつまでも。
想いの重なる静謐。それは未来まで続いてゆくようだった。
遥かな地平まで、優しい翠色が続いてゆく。
その穏やかなイタリアの田園地帯を清春とモヱは歩み始めていた。
「少し風があるな」
「そうデスネ」
確かに肌寒い季節。けれど応えるモヱは――前に貰ったマフラーが今年も大活躍。それをしっかりと巻いて心まで暖かかった。
ふっと笑む清春も、首元までしっかりと厚着しているから問題ないけれど。
「手、冷たいから」
それを理由にモヱの手を握ると……モヱもまたその手を握り返し、二人で美しい道を行く。
「パレードも教会は賑やかだけど、この辺りは静かなもんだねぇ」
「ええ。物語の世界に出てくるような、とびっきりのどかな田園風景には――憧れていたものデス」
草や梢が揺れる音、動物の鳴き声。
そしてそんなモヱの言葉に耳を傾け、清春はその手を引いてゆく。
「憧れの風景か。こいつはたしかに物語や絵画のなかの世界だねぇ」
「そこで、何をするというわけでもないのデスガ――」
モヱは言って視線を巡らす。
それが現実に存在するのだということを直視すると……世界は広く、自分の知ることなどほんの一部に過ぎないのだと実感するから。
「長い人生、これからもこうして……二人で、未知の世界を旅してゆくことになるのデスネ」
「ははっ、長く楽しい旅路になりそーじゃん」
清春はそう返してみせた。
旅は道連れ、ならば今より賑やかな道行きもまた楽しいのかも知れない。
同時に、広い世界の全てを知れなくとも――家族の軌跡はいつでも思い出せるようにあろう、と。
いまこの瞬間が、眩いくらいに煌めく大切な時間なのだから。
「趣深いものデスネ――」
と、モヱは日本にはない組み方の煉瓦や、興味深い尖塔状の屋根を見つける。
清春もその視線を追い、新しい魅力に心を踊らせた。
この季節を祝うささやかな飾りつけも、共に楽しんで。異国情緒を味わいながら、二人はゆるりと歩んでいった。
「ユウコ、ハッピーハロウィン!」
賑わいの中、マヒナは巫山・幽子を見つけて声をかけていた。
「こんばんは……」
ぺこりと頭を下げる幽子に、マヒナはバターモチを渡す。ハワイ生まれのスイーツだ。
「作ってみたからどうぞ」
幽子はお礼を言って早速一口。
もちもち食感と風味に、瞳を細めていた。
「美味しいです……」
「良かった」
それからマヒナはピンクのバラを繋げたレイを首にかけてあげた。
「ピンクのバラには感謝とか、幸福って花言葉があるの。ユウコと彼をずっと見てて、ワタシも幸せをたくさん貰ったから」
「ありがとう、ございます……。とても綺麗……」
礼を言う幽子に、マヒナは微笑む。
「ワタシ、実は最近結婚して、一週間後にハワイで結婚式挙げるんだ」
「結婚……! おめでとう、ございます……!」
「ありがとう」
だから――お互いこれからも幸せでいようね、と。
贈られた言葉に、幽子もまた頷きを返すのだった。
「約束、すぐに果たせてよかった」
合流した幽子と共にイタリアへ降りたノチユは――それが嬉しくて、一緒に店々を巡る。
まずは美しい砂糖菓子やマジパンを買ってあげると、ご両親のお土産にもと、包んであげる事にした。
コーヒーで口直しすると、甘いジェラートは二色頼んで一緒に実食。
少し寒くなったら、焼きたてのピッツァを半分こにして。
他にも幽子の思いのままに。
「――今日のあなたは、お姫様だよ」
「嬉しい、です……」
甘いものも温かなものも、はむはむと幽子は味わって楽しげ。
そんな中、教会での結婚式を見かけると――。
「幽子さんはドレスと白無垢、どっちがいい?」
なんてノチユは聞いてみる。
「私は……機会があるなら、どちらでも……」
幽子の照れた言葉に、ノチユは頷いた。
それが訪れると、言ってみせるように。
「あのさ、幽子さん。お願いがあるんだ」
そうしていつしか星の見える景色の中へ、幽子を導く。
花と星に満ちる場所。
そこに訪れるのはきっと、幸せな未来への時間に違いなかった。
教会にて、互いを愛する一番星と月夜は結婚式に臨む。
蜜月と、何より大切な秘月を首に下げる新郎は――御影。
タキシードに身を包むその姿が、いっとう素敵で。
「――」
横に並ぶ新婦――エトワールは見惚れて言葉も忘れる程。
ただ、蜜星と、何より大切な秘星を首に下げる、そんなエトワールの姿こそ……月と星をモチーフにしたウェディングドレス。
花を飾ったヴェールまでも美しく。
「――」
だから御影もまた、その眩さに見惚れないではいられなかった。
それでも心惑わず……御影は跪いて改めて誓う。
「――あいしてる」
永久に隣に、エトワール、と。
「――ぼくも、あいしてます」
永久に隣に、御影さん、と。
想い交す二人の左薬指には、金の結びと金の誓いも輝いていて。
式の終わりには、御影はエトワールの体を抱えて教会を出る。
「ふにゃ、ボク重たいよ!?」
重いわけない、と。御影は微笑んでから、ヴェール越しの額にそっとくちづけを落として――腕の中のぬくもりを抱き締めた。
その優しい笑みに簡単に融けてしまうから、エトワールもぎゅっと身を寄せて。外の景色を共に瞳に映す。
見える美しさに、二人が思い出すのは大切な二つの森。
生まれた森、護る森。
星流れた深緑と、星の護る真白。
それを心にしながら、一番近くには御影がいて――エトワールは思いを零す。
「……しあわせ」
「……おれも」
御影も眦を緩めると、エトワールは瞳を向けて。
「ずっといっしょだよ。ボクだけの、旦那さま」
それに少し耳を震わせながら――御影も頷いた。
「うん、おれだけの、いとしい奥さま」
そしてそのまま歩み出して。
「美味しいものを食べに行こう、か。お酒もきみと嗜めるし、な」
「ん。お酒、とびきり甘いの飲も?」
エトワールも応え、寄り添う未来へ向かう。清らかな景色が、それを見守っているようだった。
見えるのは、華やかな街並み。
観光バスから身を乗り出すようにして、リュシエンヌはイタリアの景色を楽しんでいた。
「まあ、綺麗!」
「ルル、あまり乗り出すと危ないよ」
隣のウリルも言いながら――ワクワクしている様子の妻を微笑ましく思う。
と、リュシエンヌが道の一角を指した。
「うりるさん、見て見て! ちっちゃい子の仮装、かわいい!」
「ん? ああ。可愛いな……あの子は何歳くらいだろうか」
まだ幼さの残る子供が、フェイスペイントと仮装をしていて……独特の趣がある。
「子供たちが手に持ってるお菓子は何かしら。ルルも食べてみたい……」
「ラングドシャやキャンディを配ったりするらしいけど――ルルはイタリアでも菓子に興味津々だね」
何よりも、その相変わらずの様子にウリルは笑いを零すのだった。
それから二人は街の中を散策。
「うりるさん、ドルチェッティ・オ・スケルツェッティ!」
「ん、ドルチェッティ、と答えるのがルルへの正解になるのかな?」
言ってウリルは屋台で手に入れたマジパンをあげる。
リュシエンヌは早速それを食べて瞳を細めつつ。
「そうだ、はちみつが入ったお菓子もあるんですって」
「それは土産にもしたいね。きっと双子が喜ぶと思うし。砂糖の人形は?」
「怖いからパス!」
「ああ、カロリー的な意味で?」
という事でリュシエンヌはガイコツを模したロリポップを選んで行く。
勿論、折角のイタリアなのだから、と。
「うりるさん、ピッツァを食べに行きましょう」
「うん、ピッツァとパスタを……あれ、パスタはいいの?」
「パスタはね、うりるさんの作った方のが美味しいもん」
「そう褒められると――ルルだけのために作りたくなるじゃないか」
君は本当に褒め上手だ、と。
ウリルは少し照れつつ笑みを返して。
「お礼にこの生ハムをあげよう」
「それじゃあ、半分コね?」
リュシエンヌも笑って応える。そうして二人はピッツァの店へ赴いて――イタリアの味と幸せを堪能してゆくのだった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2021年10月31日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
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