焔の邂逅

作者:崎田航輝

 優しい風が吹いている。
 それに髪を仄かにそよがせながら――マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は夏の始まりの海を見つめていた。
「キレイだね」
 呟く言葉に、シャーマンズゴーストのアロアロもそっと身振りで応えてくれる。
 先刻までは眩い程の夕焼けだったけれど、今はその陽も水平線に沈み、ブルーアワーも過ぎ去って――代わりに月が輝き始めていた。
 時が移ろうにつれて多彩な表情を見せる景色。こんな穏やかな海を眺めていると、故郷を思い出すようで。
「……」
 郷愁の心の中に、温かくも少しだけ寂しい感情が湧いた。
 ――だから、という訳ではないだろう。
 不意に風に混じる違和感に、マヒナははっと周囲を見渡す。膚に触れるその温度は、夏にすら相応しくない熱気を伴っていたから。
 誰、とは口にしなかった。
 意識するまでもなく、近づく気配の正体を自分は知っていると思ったのだ。
 まるで強い感情の塊のような、一際強い熱波が吹き付けて――マヒナはその方向に視線を留める。
 そこに豊かな髪を熱気に揺らがす女性が立っていた。
 鋭い枝となっている四肢の先で、地を咬むように歩き。心を発露させるような焔を明滅させながらこちらを見据える――デウスエクス。
「見つけたわ」
 一言目は静かだった。けれど、そこには根深く、そして焦げ付いたような忿怒が滲んでいた。
 マヒナはじっと見つめながら――それでも戦いの態勢を取らねばならない。瞬間、眼前の彼女は殺意と共にマヒナへと踏み込んだ。

「緊急の事件についてお伝えします」
 夜が訪れて間もない、藍色の空の下。
 静かな風の吹くヘリポートで、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「マヒナ・マオリさんが、デウスエクスの襲撃に遭ってしまう事が予知されました」
 マヒナは現段階では敵とは遭遇していない。
 だがマヒナへ連絡を取る事が出来ず……マヒナ自身も既に現場にいる状態だろう。戦いが始まってしまう所までは、予知された事実を覆すことは出来ない。
「それでも、今から現場に向かえば充分に状況を打開できる可能性があります」
 合流まで、ある程度の時間の遅れは出てしまう。それでも戦いを五分に持ち込み、マヒナと共に勝利を目指す事は可能だ。
「ですから、皆さんのお力が頼りとなります」
 現場は海辺。
 周囲にはひとけは無い環境で、一般人については心配は要らないだろう。
「敵は攻性植物のようです」
 炎を操る女性の姿をしており……戦闘力は相応に高いだろう。マヒナを探していたらしい事実もあり、危険な相手だと言える。
「皆さんはヘリオンで到着後、急ぎ戦闘に入って下さい」
 障害物のない海辺だ。マヒナを発見すること自体は容易だろう。
「マヒナさんを助ける為に。さあ、行きましょう」


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
愛柳・ミライ(明日を掴む翼・e02784)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
ノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)

■リプレイ

●紅焔
「……あれか」
 夜の帳の降り始めた、藍色の世界。
 その遠景に閃く紅を、空の機上から身を乗り出すピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)は視界に捉えていた。
「焔、か」
 開いたハッチからタラップに足をかけ、ノチユ・エテルニタ(宙に咲けべば・e22615)も呟いて彼方のそれを見やる。
 ここからでも判るほど、それは烈しく燃えていて。
 距離が狭まってくれば、ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)もゴーグルを展開してそれが敵影なのだと確認していた。
「間違いありません」
「それじゃ、行くか」
 言葉と共に空へ飛び出た日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は、ジェットパックを機動。落下速度に飛行速度を乗せるように加速し、一気にその戦場を目指す。
 同時、ピジョンもテレビウムのマギーと共に空へ踊った。
「……マヒナ」
 そこで戦う大事な人の名を、呟く。
 アロアロもいるから、命の心配こそしていない――けれど。
「……」
 そこに在るのがもっと深く、マヒナの心を掻き乱すものであるような気がして。ピジョンは風を浴びながら下方を見下ろし、一秒でも疾くと願った。

「アナタは……!」
 それはきっと本能的なものだった。
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は意識せず一歩下がり、それから近づくデウスエクス――ペレリケの顔に記憶を強く呼び起こされていた。
 忘れもしない、あの日……故郷を燃やし尽くした存在。
(「どうしよう」)
 足が竦むのを自覚する。それは紛れもない恐怖だった。
 ペレリケは後ずさる事も許さぬよう、腕先の枝を鋭く尖らせる。
「逃しはしないわ」
 そうしてそれを鞭の如く撓らせてくる、が。
 瞬間、そこへ飛んだのがアロアロ。怯えに震えながら、それでも枝の一撃を自分の体で受け止めて――同時に爪での斬撃を返していた。
 頬に傷を作られ、ペレリケは眼光をアロアロへ向ける。
(「……戦わなきゃ」)
 その光景に、マヒナは迷っている猶予はないと知った。
 自分が勝てるのか、そう躊躇う暇もないのだと。手をのばすと月光の煌めきを宿した魔弾を発射する。
 弾ける衝撃と冷気にペレリケは僅かに後退した。それでも、その熱量を以て全てを燃やし尽くそうとするように――紅焔を燃え盛らせる。
「こんなもので倒れはしない。あなたも、灰燼になればいい」
 あの二人のように、と。
 繰り出される烈火は、あらゆる物を飲み込まんと襲いかかる。が――そこにもアロアロが飛び込んで衝撃を通させない。
「アロアロ!」
 マヒナの声に、アロアロは大きくよろめきながらも――まだ倒れてないと示すよう、自身を光に包んで癒やしていた。
 次の一手が来る前に、マヒナは眩い光線を放って反撃。ペレリケが足止めされた一瞬に、更に追撃を加えてゆく。
 だが――ペレリケは倒れない。
 焔の如き忿怒と、嫉妬。
 その憎しみだけを糧と原動力にして。眼前のアロアロを、まずは排除にかかろうと踏み寄ってきた。
 ――けれど、その直前。
 宙にきらりと細かな光が明滅する。
 それは高空から舞い降りながら、ピジョンが生み出す魔法の針と糸。『ニードルワークス改』――鋭く飛来したそれがペレリケの足元へ突き刺さっていた。
「残念、そこでストップです!」
 と、続いて降り立ったのが据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)。素早くマヒナの前に位置して、相手と分断させる。
「今のうちに」
「了解、任せてくれ」
 応えて刃に雷光を纏わせるのは蒼眞。
 ジェットパックの勢いを殺さぬまま、豪速で肉迫して一撃。痛烈な刺突を叩き込んでペレリケを後退させていた。
 その間隙に、愛柳・ミライ(明日を掴む翼・e02784)がアロアロへ駆け寄っている。
「アロアロちゃん、待っててね」
 声をかけると、アロアロは辛そうにしながらもしかと意識を保って身振りを返した。
 それに優しい笑みを返してあげながら、ミライはそっと手を伸ばして――自身に内在する煌めきを温かな治癒の力へ変えた。
 輝きに包まれたアロアロの傷が、徐々に癒えてゆくと――ミライは同時にドローンを展開。マヒナ達を敵の視界から外している。
「後は、私が」
 次いで、源・那岐(疾風の舞姫・e01215)が掌を翳し、癒やしのオーラを顕現していた。
 那岐の心そのものとも言えるその燦めきは蒼空色。
 全てを澄み渡らせるように、浄化してゆくように――アロアロの苦しみを流し去り、体力を保たせていた。
 同時、ノチユが鎖を踊らせ星色の守護陣を描けば、赤煙も魔法の赫きを宿した粒子を風に乗せて飛散。前衛を攻防に支援し戦闘態勢を整えている。
 その頃にはマギーも「よく持ち堪えたね」とでも言うようにアロアロを回復させ、万全にしていた。
 それで那岐は一先ず息をつく。
「これで大丈夫ですね」
「みんな……ありがとう」
 そこには安堵の色もあったろう。マヒナは皆を見回し心から声を零していた。
 赤煙はゆるりと頷く。
「大きな戦いで肩を並べて戦った仲間ですから」
「ああ、義を見てせざるは勇なきなり……なんてな」
 蒼眞が笑んでみせれば……ノチユもまた、マヒナへ視線を向けていた。
 自分にもそれなりに返したい恩がある。マヒナ自身が思っていなくとも、ノチユは彼女の何気ない優しさに感謝しているのだから。
 ――此処に来られなかった花の人だって、きっと。
 だから彼女の分まで、と。
「あなたを守らせてよ」
「……うん」
 マヒナがこくりと応える、その視界の奥で焔が燃え上がる。
 ペレリケが再び火炎を滾らせ攻撃を仕掛けようとしていた。けれど――奔るミントがそれを見逃すはずもなく。
「まずはその動きから、封じてあげますよ」
 ミントにとっても、マヒナは欠かせぬ旅団員の一人だ。
 何より――大切な友人に他ならないのだから。
「外しません」
 刹那、体を翻したミントは一撃。風を裂くが如き蹴撃でペレリケへ痛打を加えてゆく。

●灼熱
 吹き飛ばされて後退したペレリケは、それでも地を滑りながら踏みとどまり――すぐに眩い焔を上げていた。
 正視するのも躊躇われる程の灼熱の奔流。
 それが何らかの正当なる復讐ではなく、純粋にマヒナの存在が許せぬだけという感情の発露に見えて――蒼眞は呟きを零す。
「……彼女は一体――」
「失礼ですが……マヒナとはどういったご関係で?」
 臆するでもなく問うたのは、ピジョンだ。
 ペレリケがただ一歩一歩と歩み出す中、赤煙も構えを取りながら声を投げる。
「マヒナさんを探して狙ってきた。ならば深い因縁があるのでしょう?」
「……ただ、これで終わるだけよ」
 ペレリケは憎しみの中に、失意を交えて睨んでいた。
「あの人は最期まで、振り向いてくれはしなかった。だからあの人も……私からあの人を攫った恋敵も亡き者にした。後は――その娘だけ」
「娘……」
 マヒナは呟いてはっとする。
「それがワタシの、こと……? あの人、って、恋敵って……ワタシの、お父さんとお母さんの、こと……?」
「最初はどうしても見つからなかった」
 肯定の代わりに、ペレリケは深い怒りを声に宿す。
「私を恐れた彼女が……他所へ隠していたのでしょう。家も、木も、何もかも。居る筈の場所の全てを焼き尽くしても出てこなかった」
 それでも見つけた、と。ペレリケは夜空にまで焔を昇らせた。
「“マカナ”……彼女がそう呼んだ、忌々しい娘を」
 マカナ――それこそマヒナに付けられた本来の名だった。
「……嘘」
 マヒナは唇が震えて、言葉を失う。
「あの故郷が燃えたのは……ワタシがいたから? じゃあ、故郷が滅んだのは、ワタシのせいなの……?」
「もう、どうでも良いこと。あなたもすぐに、灰になる」
 言ってペレリケは炎を放出しようとする。
 が、僅かに疾くミントが真っ直ぐに手を突き出していた。
「やらせは、しません」
 瞬間、空気が爆縮されて焔までもがねじれて消える。ミントはその圧力を一気に炸裂させるよう、エネルギーを解放した。
「これで――吹き飛んでしまいなさい!」
 起こる爆破は強烈に、ペレリケの体を空中へ煽ってゆく。
 その隙を逃さず蒼眞は跳躍。閃光の如く燦めく光を刃から刷きながら、一瞬でそこへ迫っていた。
「手加減はしないぜ」
 刹那、振り抜く刃で無数の斬撃を奔らせてその生命を削り取ってゆく。
 ペレリケは鮮血を零しながら、それでも戦意と炎は薄らがず。辺りを紅の海にする程の火炎を押し流してきた。
 けれど那岐が下がらずその衝撃を受け止めると――直後にはミライが清廉な声を風に響かせ、清らかなメロディで焔を収めて前衛を癒やす。
 ミライはそのまま野いちごを一つ、食べてみせた。ペレリケの事を、嫉妬深い女神のようだと挑発して見せるように。
「焼き尽くしてなかったことに出来るのなら、世界はとっくに焦土なのです」
 眼光を鋭くするペレリケへ、ミライは真っ直ぐ見据えて言った。
「……わかってるのでしょう? マヒナさんを燃やしたって、その怒り、収まりはしないのです」
 何より、この暴虐にマヒナを好きにさせる訳にはいかない。自分にとってもマヒナは大切な人なのだからと。
 那岐も火の粉を払いながら、花風を吹かせて自身を万全に保つ。そして心同じく頷いた。
 愛による情熱を、理解出来ない訳ではないけれど。
「その炎が深い愛ゆえだとしても――今を精一杯生きているマヒナさんの現在と未来を燃やす尽くしていい理由にはなりません」
 だからここで倒れるつもりはないのだ、と。
 ペレリケはそれでも退かず連撃を狙う。
「この怒りは、理屈ではないのよ」
「ならば、こちらも力で対抗するだけですよ」
 そこへ砲身を向けているのは赤煙。回避させる猶予も与えずに、放った砲弾で足元を爆撃していた。
 ペレリケはよろめきながらも、枝で地を咬み倒れない。揺らぐ焔は風すら強く熱してくるから――蒼眞は僅かに腕で目元を隠す。
(「……熱いな……」)
 ただ高温なだけじゃない。激情によって深い熱を得た、赫怒の灼熱だ。
 それでも――ノチユは躊躇わずそこへ飛び込んでいた。
 一度だけマヒナへ振り返る。
(「彼女も――家族を、奪われたのか」)
 心に抱けば、拳に力が入る。
 それでも想いを口にはしない。今自分が出来る事は――恨みがましいこの焔を少しでも弱める事だから。
「そんなに燃えていたけりゃ、こっちの焔も喰らえよ」
 色を奪うような、冴え冴えとした灰焔。ノチユのその一撃に、ペレリケは尚紅炎で対抗しようとする、が。
「それ以上はやらせない」
 奔るピジョンが、その毒牙をマヒナへ届かせない。
 渦巻く熱量は、熱くて堪らなかなった。それでもピジョンは冷気を渦巻かせ、その全てを切り裂くように――ペレリケへ鋭い斬撃を喰らわせる。

●夜風
 一瞬の静けさが訪れ、海風の音が耳朶を打つ。
 ペレリケが倒れ込んでいる、その間隙にピジョンは息を整え――マヒナへ向いていた。
「マヒナ」
「……うん――」
 マヒナは胸の前で拳を小さく握っている。
 自分の事、故郷の事。多くの事が去来して、微かに震えていた。
 でも、ピジョンの顔を見つめて……ほんの少しだけ落ち着く。
 見ればアロアロが寄り添ってくれていた。見回せば、心を支えてくれる仲間がいる。
 心には多くの思いがあったけれど。大切なもの。守るべきもの。それをここで失わないために。
 マヒナは頷きを返す。皆もそれを合図に再びペレリケへ向き直っていた。
 ペレリケは立ち上がり、稲妻を降らせて自身を強化していた。けれどその直後にはミントが直走り――。
「この杭で、貫いてあげます」
 青薔薇意匠のパイルバンカーで一撃、魔力を宿した打突で加護を打ち砕く。
 同時、蒼眞は高く跳躍。直上で掲げた刃に光を纏わせ、雷を落とすが如く――輝きを描く刺突を叩き込んでいた。
「頼む!」
 蒼眞のその言葉に応えるよう、ノチユもペレリケへ迫っている。
 ペレリケは枝で捕らえようとしてきた、が、ノチユは掻い潜るよう回転。旋風の如き蹴りを打ち込んでみせる。
 衝撃にペレリケが傾げば――那岐は向けた銃口に鮮麗な冷気を凝集していた。
 ペレリケはそれを焔で弾こうとする、が。その火力を貫き、凍らせて破砕するように――放った那岐の光線が違わず体を穿ってゆく。
「このまま連撃を!」
「はいっ……!」
 ミライも指先に冷気を収束。渦巻く煌きを弾丸へと形成していた。そうして相手が反撃の挙動に入るよりも速く発射し、砕けた氷晶で全身を裂いてゆく。
 そのままミライが飛び退くと、その間に赤煙は温かな雷光を発現。マヒナへ眩さを纏わせて力を与えていた。
 ピジョンもまた、マヒナの背を押すように――穏やかな詠唱を響かせて勇気と力強さをその身に宿させる。
「マヒナ」
 後は君が、と。
 そのピジョンの言葉に頷いて、マヒナはペレリケへ歩む。
 ペレリケは炎を燻ぶらせながら、それでも抗おうとしていた。マヒナはそんな彼女へそっと手を伸ばし――その体を抱き寄せる。
「アナタのことは怖いし、アナタがしたことは簡単に許せることじゃない……」
 でも嫉妬と怒りに、怒りと憎しみを返すのもきっと違うから。
 今はただ、自分の色んな想いと一緒に、『アロハ・ハグ』。
「アロハの心を、アナタに」
 ――いつか、ワタシがワタシ自身を許せるように。
 マヒナが最後に与えた、愛と許しを伝えるハグ。それが優しく静かにペレリケの魂を浄化し、その命を消滅させていった。

 夜の海から、波音が響いてくる。
 炎の消えた暗さの中で、蒼眞は刃を下ろしていた。
「終わった、か」
「……そうだね」
 言って頷いたピジョンは、マヒナにそっと声をかける。
「大丈夫かい?」
「……、うん――」
 マヒナは小さく応えながら、自身の手を見下ろしている。そこにあったペレリケの体は光の粒子になるように薄らぎ、消えていっていた。
 様々な感情が去来しているだろう。けれど赤煙は余計を承知で、口を開く。
「手遅れにならなくて良かった」
 マヒナ自身の為に、そして誰よりマヒナを大切に想うピジョンの為に、と。
 ミントも静やかに声を継ぐ。
「マヒナさん、お疲れ様でした」
「……、ありがとう」
 マヒナは言いながら……それでも今は心の整理が出来なかった。
 ペレリケの亡骸が完全になくなって、跡に何かが転がる。それはマヒナがしているピアスの、もう片方だった。
「……っ」
 それを握り締めると、涙がぽろぽろと零れる。その内にマヒナは――溢れ出る多くの感情に任せるように、泣きじゃくった。
 ピジョンは殊更に物言わず、そっとその傍に居る。皆はそれを静かに、見守っていた。
 夜が更け、月が煌きを増してくる。
 それが穏やかな風と共に、心を癒やしてくれるだろうか。夜を照らす美しい光が、海の水面を優しく輝かせていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2021年7月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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