おなかがへって、ひもじいガデッサは、まちにおりてごはんをちょうたつすることにしました。ほどうのすみにまるまって、くぅーんくぅーん、はなをならします。おねだりではありません、ないているだけです。
くぅーんくぅーん、しゃていたちへのあいさつみたいなものです。するとあらふしぎ、みちゆくひとがたべものをくれます。きっとおおかみのいげんにひれふしたのでしょう。
と、ひとりのだんせいがたちどまっていいました。
「こりゃおどろいた、きみはうるふどっぐそっくりだ。きみのようなのをさがしてたんだ」
はなしをきけば、ちかぢかおーぷんするてーまぱーくにとらぶるがあって、うるふどっぐがまにあわない。にほんではとてもめずらしいわんちゃんなので、どうしてもおまねきしたい。
「そこできゅうよのさくとして、きみにきてもらいたいのだ。わんちゃんは、もとはといえばおおかみがごせんぞさま。つまり、みぃんなきみのこぶんみたいなものだよ。それをほおっておくなんて、できるかね」
なるほど、あにきぶんのおれにはむしできねえ。けどおおかみとしてのぷらいどを、
「ごはんもおきゅうりょうもでるよ」
「――! しょーがねぇからやってやるぜ」
こうしてガデッサはせんだつのぎむをまっとうすべく、いぬかふぇではたらくことになったのです。
けれどひみつはかんたんにはまもれません。だれかがこんなふうに、みなさんへしょうたいじょうをおくっているのですから……。
●
招待状には事の顛末と共に男性が新たに開くという施設の概要も添えられていました。
従来のドッグカフェは安全の観点から一部小型犬のみとのコミュニケーションを主としていましたが、広い敷地を利用して運営することで中型・大型犬とも触れ合えるテーマパークの形態をとることが出来たようです。
ここでは主に下記のことができます。
『ドッグラン』
小型犬、中・大型犬用にわけられたドッグランがあります。アレスチック遊具も置かれており自由に犬と遊べますが飲食は禁止です。
『カフェスペース』
テラス席のある店内スペースです。飲食自由、わんちゃん用の食事もありますがお酒はお出ししていません。
『おさんぽコース』
リードをつけてわんちゃんとお散歩できます。コースは緩やかな傾斜の山道です。
「わぁー、すごいです! 色々なわんこがいっぱいです!」
仁江・かりんの歓声が桐谷ドッグパークに響いた。広大な芝生のドッグランでは大小様々な犬達が来場者に寄り添ってのびのびと過ごしている。
「アリシア、おおきい、いぬ、いっしょ、あそぶ!」
「あ、待ってくださいアリシア。僕もいくのですー」
駆けだしたアリシア・マクリントックを追いかけてかりんが走り出す。小さな二つの背中が遠ざかってゆくのを見やりセレスティン・ウィンディアは呟いた。
「無邪気ね」
小雪には珍しい麗らかな陽気、こんな日には外でゆっくりと過ごすのも良いだろう。とはいえ、視界の隅に見つけたお目当てのウルフドッグは子供達に囲まれている。あの年頃の少女達にまじってはしゃぐのは流石に気が引けた。
少しだけ、カフェで休憩しようかしら。それからでも遅くないはずよね。
言い聞かせるようにひとりごちてセレスティンはドッグランを離れた。
差し込む陽が照らす霜月の山は、未だ晩秋の気配を残している。
このところ続く陽気に調子がくるってしまったのだろうか。緩やかな傾斜の左右に林立する木立は秋紅葉の衣を半ば纏ったまま未だ冬支度を終えていなかった。
だが油断は大敵。時折ふきおろす風が、そんな紅葉をはらはらと散らす。もう師走の足音は近い。
瑞澤・うずまきは立ち止まり、少し襟をひらいた。するりと忍び込んでくる冷気が汗ばんだ肌に心地よい。と。
「うわわ」
不意に強い力に引っ張られて体がつんのめった。踏み止まったうずまきを、つぶらな瞳が見つめる。するとリーズレット・ヴィッセンシャフトがくすくすと笑い声を転がした。
「なんだか私たちが散歩されてるみたいだな」
「ふふっ。かもね」
「よーし、もうちょっと頑張るぞー!」
リーズレットが踏み出すと、足元でじゃれついていたビーグルが道案内を買うように前に出た。
「ボク達も負けないよ。ねー?」
声をかければレトリバーも応じるように尻尾をふるった。
踏みしめた落ち葉の絨毯がスウィングする。多年草の花が白い蕾をゆらして風とダンスする。薄絹のような雲がのんびりと空を泳いで、今日は絶好のお散歩日和だ。
二人が息を荒くさせ額に大粒の汗がにじむころには、ドッグランを一望できる山の中腹に辿り着いた。
錦繍の輝きこそ失せたものの、広がる山の裾野には自然特有の雑然とした美しさがあった。
「おー、絶景かな絶景かな!」
リーズレットがぐっと背筋を伸ばす。うずまきも真似をして背を伸ばすと、途端に山の清凉な空気が胸いっぱいにおちてきた。そよそよと風が木の葉を揺らす、そっと頬を撫でて過ぎてゆく。まるで赤子をあやす母のようにやさしく……。
「こういうのって…なんだか…とても、新鮮、だね……」
「だな! そういえば私、犬の散歩って初めてかもしれない。響ちゃんだけで満足しちゃってたからなぁ。うずまきさんもねこさんが居るし――ってうずまきさん!? リラックスし過ぎてこんな所で立寝はいかんぞー?!」
「ふぁ! そそそうだね、ボクん家はえっと――」
リーズレットの言葉に思い浮かべたのは、優雅に燕尾服を着こなす洗練あれた猫の姿だ。
どっちかというとボクの方が面倒を見られているような……。
「あ、見てリズ姉。あの白いわんちゃん、すっごく速いよ」
直視したくない真実に行き当たって、ひとまずうずまきはドッグランに視線を転じた。
「ほんとだ! すごい速さだなぁ。どんなわんちゃんか気になるぞ」
これにまたリーズレットが素直に誘導されるわけで。目を輝かせながらビーグルに拳をにぎった。
「よーし、私達ももうひと頑張りだ!」
「だね。頼んだよレトリバーくん」
閑散とした冬の木立に、賑わいは幾重にもこだました。
●
「いくですよー。――えいっ」
がんぜない声はボールと共に青空に吸い込まれた。
空に描かれる放物線を追ってレースがはじまる。脇目もふらず一直線、ボールへと駆け抜けて――ひときわ高く跳びあがった白い影がボールをキャッチした。
「こんど、アリシア、かち、した!」
「アリシアすごいです!」
アリシア・マクリントックが抱えたボールを仁江・かりんが受け取る。一緒に遊ぶ犬達は、すぐさまかりんの周りをグルグルと回った。
はやく、はやく、次は僕らがとるよっ。
今度は僕が褒めてもらうんだい。
新しい友達になんて負けないからね。
「ちょ、ちょっと待つですよ~」
すりよる犬にもみくちゃにされて、かりんがくすぐったそうに声をあげた。ふかふかの毛並みや耳尻尾に親近感を抱いているのか大人気である。
「次も、アリシア、とる、するぞっ」
「わぅん!」
「ふふ、わんこさんもアリシアも元気いっぱいですね。でも今度はぼくも一緒に競争するのです!」
かりんはドッグランに点在する遊具を指さして、えへんと胸をはった。ぼくだってウェアライダーのはしくれ、見ているだけではないのです!
「どっちがアスレチックを早くクリアできるか競争しましょう。今日のおやつを賭けてのしんけんしょうぶですよ! よーい、どーーん!」
あっという間もなく、元気な声を残してかりんが駆けだす。
「あー、アリシア、まける、ない! おやつ、たくさん!」
急いでアリシアが追いかけると、今度こそと犬達も勢いよく走りだした。
さて、彼女達が子供は風の子とばかりに走り回っていた頃。
エトヴァ・ヒンメルブラウエも風を切って疾く々、走り抜けていた。小さく息を吐き、鋭く吸う。身体の隅々にまで新鮮な酸素を行き渡らせて、み空色をした冬空のもと思う存分に体を解放する。地上を駆け回る鳶色の影を追うには、それでも足りないくらいかもしれない。
小型犬は年代性別を問わず人気であるらしく、エトヴァの前に連れて来られたのはジャーマンシェパードという熊のような大型犬であった。長い鼻をした精悍な顔つき、発達した四肢は筋肉質で、なるほど触れるのを憚るような迫力があった。
別段お目当ての犬種があるわけでもなく快諾したエトヴァだったが、飼育員にアジリティーという競技を勧められてからというもの、飽くことなく幾度もストップウォッチを押していた。
アジリティーとは人と犬が身ひとつで共に行う障害物競争で世界大会も開催される海外でもメジャーなドッグスポーツだ。トンネル、ハードル、シーソーなどの障害物を犬が駆け抜ける、そこに並走して指示を下すのが人の役割である。
エトヴァが走るのは最も簡易的なコースだが、世界大会ともなると障害物を巡る順序は非常に入り組み、これを転回する視野のなか正確に把握しなければならないのは至難であることがよくわかった。
「Gut!」
コースの最終トンネルに先回りをしてエトヴァは声をかけた。独語に反応したシェパードが加速をつけて一気にトンネルを潜り抜ける。と、そこへ中座するエトヴァ目掛けて飛びついた。
どっと芝生に倒れ込んだエトヴァの顔がベロベロと舐められる。くしゃくしゃになった強面が目の前にあった。
「Groß、Groß、良い子デス」
ちぎれんばかりに尻尾を振るうシェパードの首元を満足するまで撫ででやる。少しかたい手触りの短毛が肌に触れてこそばゆい。
「ふふふ、喉も渇きましたシ、カフェに行きまショウカ」
目を合わせて語りかけると、シェパードはわぅんと吠えた。なんだかすっかり意思疎通が出来るようになってしまいマシタ。心中でひとりごちて、エトヴァは草の海のなか立ち上がった。
●
「はぁぁ~」
エリザベス・ナイツは草の海に寝ころがり、のんびりと流れる雲をぼんやり見つめて息をはいた。お日様が爛々と降り注ぐ今日、寒暖相見える天気にお昼寝は最適だ。
遠くで楽しそうな笑い声が聞こえる。風にのってゆっくりと運ばれてくる。少し前までエリザベスも同じように愛らしい豆柴と遊んでいたのだが、こうして日向で一休みをするや、ぬいぐるみのような豆柴は気持ちよさそうに寝息をたてていた。
無防備なお腹をそっと撫でる。困ったようなしわくちゃの顔は独特の言い表せない魅力があった。
と、不意に視界が翳って、エリザベスは顔を戻した。つぶらな金色の瞳がこちらを覗きこんでいる。エリザベスはふっと笑ってポンポンと芝生を叩いた。
「仁江ちゃんも隣にくる?」
「は、はいです!」
元気よく返事をしてかりんが仰向けに寝転んだ。ちょうど豆柴と川の字を描くような具合で二人と一匹が並ぶ。小さな体をぐーっとのばしてお日様に挨拶をすると、ぽかぽかとした陽気が体を包み込んでくれる。
「私は豆柴くんとずっと一緒に遊んでたんだけど、仁江ちゃんは?」
「ええと、アリシアやわんことボール遊びをしたり、お菓子をかけて競争したりしました」
「それは負けられない勝負ね!」
「はいっ、競争はぼくが一等賞でした!」
「へぇ、すごいわ! 仁江ちゃんって足が速いんだ」
「えへへ……アリシアがうんていをうまく進めなかったから追い抜けました。ノロマな亀さんが勝ったのです」
「でもたーくさん遊んだんだね」
「はい、たくさん遊んで楽しくって――」
かりんが小さくあくび声をもらした。「なんだか眠たくなってきちゃいました」
「あはは、実はわたしも」
つられてエリザベスもあくびをした。「ちょっと、ちょっとだけ、寝ちゃおっか……」
はにかむようなエリザベスの表情に、かりんはとろんとした眼差しのまま頷いた。まぶたが落ちる寸前、エリザベスはふと思った。仁江ちゃんと一緒だったアリシアちゃんはどうしたんだろう?
さて、彼女がどうしているか。
「あはは、うるふ、まてー!」
「がぅぅぅ!」
ウルフドッグは泣きたい気分だった。子供に散々っぱら追い回されてクタクタなところに、疲れを知らない狼少女に出くわす。これほど不幸なことがあるだろうか。
「うるふ、はやい。アリシア、かけっこ、とくい! たのしい!」
逃げ足ばかり磨いてきたのが仇になったか?
「かけっこ、ろーぷのひっぱりっこ、すもう、いっぱい、あそぶ!」
いやどうにかして逃げねば。29歳の男にとっては18の少女のエネルギーは危険すぎる。
こうしてアリシアが十分に満足するまで追いかけっこは続くことになるのだが……眠りに世界に誘われた二人がそれに気づくことはなかった。
「おいおい、何やってんだアイツ」
狼少女に追いかけ回される狼を見やりながらグラハ・ラジャシックはひとりごちた。薄日さすカフェテラスからドッグランの様子はよく見渡せる、同行者や付き添いが子供から目を離さぬようにとの配慮だろうか。少なくとも追いかけ回されるガデッサを眺めるのは食事の肴にはなった。
五人前の食事をぺろりと平らげると、グラハは傍らに目をやって店員を呼んだ。
「同じ量のもん頼むわ」親指を床に向ける「こいつにもな」
卓上に積まれた平皿にぎょっとしながらも、店員は注文をとってさがった。
間もなくして料理が運ばれてくると。のそり、黒い影が屹立した。頭は競りあがりテーブルをゆうに越えて、発達した首元から胸にかけて筋肉が隆起している。
足を含めれば成人男性ほどの体躯を誇る超大型犬、グレートデンだ。
そんな巨体が運ばれてきた皿の前でいじらしく体を縮こめている。躾の賜物か、すぐには飛びつかない。じっとグラハの反応を待っているようだった。
「オレらの界隈じゃ番犬といやぁケルベロスで通っててな。本来そこはお前らの領分なわけで、こいつもいわゆる侵犯ってんなら詫びをいれんのが筋ってもんだ。まぁ理屈なんざいいから遠慮なく喰えや」
グラハが、にっと犬歯を見せた。と。
「随分と大きな犬サンですネ」
見覚えのある勿忘草の微笑が隣に掛けた。突然のことではあったが自然な語り口に悪い気はしない。
「ああ。こんなイカツイ顔だが無暗やたらと好戦的じゃねぇ、だが敵が一歩でも縄張りに入ったら豹変して容赦なく攻撃する……。強者ならではの余裕があるわな。まぁ、なにより」グラハはくすりと笑い、深皿に顔を突っ込み食事に興じるデンへ視線を投げた「喰いっぷりが気に入った」
「なるほど」彼の瞳に好意的な色を見てとってエトヴァは妙に合点できた。似た者同士、ということでしょうカ。
「飼育員の受け売りだけどな。そっちも随分と気に入られてるみてえだな」
「ええ、他人……いえ、他犬のような気がしまセン」
「そうかよ。まぁ、同じ番犬のよしみだからな、そっちのも腹いっぱい喰えや」
グラハは目を細めて卓上の皿を一枚、床におくった。すっかり番犬の顔に戻ったシェパードが警戒するように匂いを嗅ぐ。
「おっと、そうこうしている内にもう一匹の番犬が入ってくるなァ。おいガデ――」
と声を発しようとしたグラハの口元にエトヴァが指を立てた。
「本人はまだ気づいていないようですし、ここはそっとしておきまショウ。それにタネ明しにはより相応しい方がいるようですよ」
「ああ――なるほどな」
店内の窓際のテーブルで頬杖をつく女性の姿を視止めて、グラハは腑に落ちたとばかり呟いた。
●
ペットドアがめくれあがった。ぐったりとした様子でカフェのなかに入ってきたウルフドッグは店内に目を向けた途端、唖然と口をあけて固まった。
あまりにも滑稽な仕草だ。笑い出しそうになるのを必死に堪えて、セレスティンはわざと素知らぬふりをした。ウルフドッグはしばらくウロウロと歩き回ってから、観念したように店内の隅で体を丸めた。今がチャンスだ。
セレスティンは空になりかけたカップを持ち上げて、さりげなく店員を呼ぶ。
「ハーブティーをお願いします。それと――」隅で丸くなっている白毛玉に指を向けて「あの白い子。な、撫でてもいいですか?」
「もちろんどうぞ」
輝かんばかりの笑顔で店員が応えた。ギクシャクと四つ足を交互にしてウルフドッグが近づいてくる。隣でちょこんと鎮座するのを待ってから、セレスティンはゆっくりと手を伸ばした。
もふもふ。手が豊かな白毛にうずまる。冬にむけて生え変わったばかりの下毛は羊毛のような手触りがあった。
「……」
逡巡した後、セレスティンはひょいと狼を持ち上げて椅子にのせた。「がぅ」とわずか躊躇するように鳴いたものの、ウルフドッグは借りてきた猫のようにおとなしい。
そっと頭を抱えるようハグをすると、ふかふかの毛から太陽と土の匂いがした。
「皮を剥いで上掛けにでもしようかしら」
「ぎゃう!?」
「っ、ふふっ。冗談よ」
尻尾をピンと張らせて硬直したウルフドッグの頭を指でかきながらセレスティンはちいさく告げた「一年記念日ね。誕生日おめでとう、ガデッサ」
途端、ウルフドッグ――ガデッサは跳びあがって膝から降りた。
「ななな、なんで知ってんだ!?」
「あら、みんな周知の通りだけれど」
「招待状が届きましたので」
ひょこりと顔を見せたエトヴァが手紙を差しだすと、肉球が奪い取るように攫う。
「な、なんじゃこりゃぁ、こんなもの出した憶えはねえぞ!」
白い狼は青い顔になって震え出した。
「じゃぁ俺様がガキ共にもみくちゃにされたのも」
「大人気だったわね」
「狼女から逃げてたのも」
「ああ、大変楽しそうでしたネ」
「こっそり小学生に綱引きで負けたのも!」
「……そりゃ藪蛇だな。いやケルベロスがそこらへんのガキに負けてんなよ、誕生日祝いがてらあとで缶詰でも送っておいてやるから食って力つけろや」
「ああ、俺からはシュトレンを用意しまシタ。ナッツとフルーツがたっぷり、日保ちがするのデ、保存食にもなりマス。冬を暖かくこしテ、お腹も幸せも満ちる一年となりますように」
エトヴァが卓上にプレゼントを置いた。と、明るい声がカフェに雪崩れこんでくる。
「リーズレット、おそい。うずまき、はやい! でも、アリシア、かけっこ、いちばん!!」
「まさか白いわんちゃんだと思ってたのがアリシアさんだったなんてね」
「だなぁ。息は切れるし肩は重いし、二人の若さが怨めしいぞ~」
「あははは……バレーボール二つも下げてる人には負けないかなー」
「う、うずまきさん目が怖いぞ!? あ、ガデッサさん誕生日おめでとうだぞ、この犬ガムをあげよう!」
「えーっと、ボクからは骨付き肉のキーホルダーを。はい、どうぞ。あっ、こっちは食べちゃダメだよ」
「て、てめぇら俺様は犬じゃ――」
と吠え掛かろうとしたところで、
「みんなお揃いだねー」
「あ、アリシアここにいたんですね。探しましたよー」
顔を出したのはエリザベスとかりんだ。ぐるりと店内を見渡して目ざとく包装箱を見つけると、苦笑しながら小さなそれを並べる。
「あはは被っちゃったー。あたしのはショートケーキ。誕生日おめでとう、ガデッサさん」
「けーき? アリシア、けーき、たべたい!」
「うーん、じゃぁここで食べちゃいましょ。みんなで食べた方が美味しいもの」
「それではシュトレンを切り分けまショウ。厨房に頼んで包丁を借りてきますネ」
エリザベスの鶴の一声で、みんなが美味しいケーキ目指しててきぱき動き出す。ケルベロスの連携ならばさもあらん、といった所だろうか。
「ったく、騒がしいやつばっかりだぜ」
全く調子が狂う。ケルベロスってのはお節介な連中ばっかりだ。だがこんな騒がしさなら、たまには悪くはない。
「あら、感動しちゃったかしら?」
「う、うるせぇ! あ、俺様の分はでっかく切れよ」
セレスティンの言葉にそっぽを向きつつ、食い意地の張った狼は大いに吠えた。
作者:東公彦 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年11月30日
難度:易しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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