夏風と猫の街

作者:崎田航輝

 眩い太陽の下に爽風が吹いて、快い波音を響かせる。
 からりと晴れた青空の日に、海の匂いを香らす空気が涼やかで。明るい陽光の中、街を闊歩する猫達も一層元気だった。
 翠の映える山々と、雄大な海に挟まれた自然の美しい港町。
 季節の本番が訪れても過ごしやすい気候が続くこの場所は、野良猫達にとっても寛げる場所なのだろうか、そこかしこに猫の姿が垣間見えている。
 陽を浴びながらも活発に走り回る子猫や、ベンチに登ってそれを見守る親猫達。海風に冷やされた地面で微睡む猫や、木陰を辿って林道を散歩する猫達もいて。
 公園や山沿いの高台、神社とどこを見ても猫がいるから──それを見にやってくる観光客もまた少なくなかった。
 黒に白に茶毛、沢山の猫と戯れれば暑さも吹き飛ぶように、人々は愉しげに写真を撮っては猫をじゃらしていた──けれど。
 そこにただひとり、猫ではなく──人へ獰猛な視線を向ける巨躯の姿。
「やっと獲物がいたか」
 それは鎧兜に陽光をぎらりと反射させ、その手に刃を握る罪人、エインヘリアル。
「せっかく自由になったんだ。好きなだけ狩らせてもらうぜ」
 愉快げに嗤いを零すと、人波の只中へ歩み入ってゆく。
 人々はその姿を目にし、声を上げて逃げ始める。だが罪人は、それをも楽しむかのように──剣を振り上げてそこへ踏み出していた。

「集まって頂きありがとうございます」
 夏の陽射しが明るいヘリポート、
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へと説明を始めていた。
「本日出現が予知されたのはエインヘリアルです」
 アスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
「現場は海に面した皆と町です。猫さんが沢山見られるという町で、観光客も多く訪れているようですが……敵はそこを襲おうとするようですね」
 放っておけば人々が危険だ。
「猫さんの生活を守るためにも、この敵の撃破をお願いしますね」
 戦場は港の傍に伸びる道。そこを真っ直ぐに進んでくる敵を、こちらは迎え討つ形となるだろう。
 人々の避難誘導は警察が行ってくれる。こちらが手を貸さずとも、戦闘前には一帯は無人状態となるだろう。
「皆さんは猫さん達を逃してあげつつ、敵を待ち伏せて迎撃してください」
 周囲の環境を傷つけずに倒すこともできるはずだ。
「無事勝利できれば、周囲を散歩したり猫さん達と遊ぶ時間もあるでしょうから。ぜひ撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう声音に力を込めた。


参加者
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
シャルンホルスト・レギンレイヴ(静寂を奏でる熾天の抱擁・e22853)
ネフティメス・エンタープライズ(手が届く蜃気楼・e46527)
ルージュ・エイジア(黒き使者・e56446)
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)
エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)
キャルディム・ヴァレファール(黒猫は自由を求め天意に叛逆す・e84163)
兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)

■リプレイ

●迎撃
 照りつける太陽が、煌々と眩くて。
 季節の最盛を思わせる港町に降り立ったウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)は、夏色の空を仰いでいた。
「暑い季節になってきたな」
 そしてこの中でも元気だな、と視線を下方へやれば──見えるのが猫達。
 にゃあにゃあと声を上げる可愛らしい姿にシャルンホルスト・レギンレイヴ(静寂を奏でる熾天の抱擁・e22853)は仄かに瞳を輝かす。
「自由な猫たち、可愛いですね」
「ああ。では、今の内に避難してもらうとしよう」
 頷くウリルは早速、カリカリの猫用おやつを手にしゃがんでいた。
「さあ、ここは危ないから一緒に涼しい場所へ行こう」
 そうして足元の猫達をおびき寄せていく。
 興味を示す猫達が移動を始めると──シャルンホルストも隣へ向いた。
「ネフティ、キャルちゃん。私達も始めよう」
「うん」
「わかったわ」
 と、頷くのがネフティメス・エンタープライズ(手が届く蜃気楼・e46527)とキャルディム・ヴァレファール(黒猫は自由を求め天意に叛逆す・e84163)。
 まずはシャルンホルストが道の子猫達へ目線を合わせ──。
「ごめんね、ちょっとだけ隠れていてくれる?」
 みんなの事もこの街も、私たちが護るから、と。
 言葉で導けば、その近く。日陰で微睡む黒猫達をキャルディムがそっと起こしていた。
「さ、ここは危ないわよ。いい子だからみんな向こうに行ってなさい」
 懐くように顔を擦り付ける猫達が、素直に応じて歩み出せば……二人が移動させたその猫達を、ネフティメスが道の先まで案内。
「少しの間だけ、戻らないでいてくださいね?」
 言って戦場から遠ざからせてゆく。
 物陰で寝転がる白猫達がいれば、歩み寄るのがエトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)。
「あのねあのね、あっちに逃げてほしいなーって」
 身振り手振り、遠くを差しつつ優しく語りかければ──猫達はなーおと鳴いて。意図を理解して遠くに駆けていった。
 その後も避難を続けながら、ネフティメスは改めて見回す、と──。
「それにしても、猫ちゃんいっぱいの街だなんて素敵ですね。残念な事にまたお邪魔なエインヘリアルがいるみたいですけれど」
 振り返って見る先。
 そこに一人の巨躯の姿を捉えて、呟いた。
「自由を勘違いしたお馬鹿さんにはお仕置きが必要みたいですね」

 剣を手に歩む罪人──エインヘリアルは、道の静けさに視線を巡らせていた。
 違和を感じながら、居るはずの獲物を探してのことだった、が。
「余所見はしないことだ」
 そこへ奔る影。
 黒衣を靡かせながら距離を詰めるルージュ・エイジア(黒き使者・e56446)。地を蹴ってくるりと翻ってみせると──。
「相手は此方だ」
 言葉と共に、風を裂くが如き蹴撃を叩き込んでいた。
「……ちっ、番犬か」
「ええ」
 呻く罪人に応えたのは兎波・紅葉(まったり紅葉・e85566)。桃色の髪をゆらりと揺らしながら、躰に魔力を揺蕩わせて立ちはだかっている。
「ここから先は通しませんから」
「はっ、良いぜ。獲物が変わるだけだ」
 罪人は言いながら剣を振り下ろした。
 が、紅葉は正面から受けながらも、紅の光で己を包んで治癒と防護を兼ねて──その場から退かない。
 その間に据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)は、最後に残っていた猫達を抱えて避難。
「これで大丈夫ですかね」
 にゃー、と去ってゆく猫を見送れば──皆と共に戦線へ。殺意を以て此方を見回す罪人に、声を差し向けてみせた。
「侵略されるのも勝手に流刑地にされるのも困り物ですが、せめてどちらかにして貰えませんかな」
「……俺には関係のねえことだ」
 ただ狩りをするだけだからな、と罪人は嗤って刃を振りかぶる。
 だから赤煙は軽く息をついた。
「まあ、戦いを挑んでくるなら、こちらのやることは変わりませんが」
 翳す手元より霊力を広げて、前線を癒やしながら護りを広げていた。
 こくりと頷くエトワールも心は同じく。
「物騒なのはお帰りください! ってことで……手加減とか絶対にしないんだからねっ。お姉ちゃん、行こ!」
 声に応える翼猫、ルーナが燦めくリングをうち当てると──エトワールも翡翠の杖をしゃらりと鳴らして『月の子守唄』。
 美しく、優美に。清らかな旋律で虜にするように巨躯を押し留めた。
 そこへウリルが低空を加速して蹴撃を叩き込む。後退した罪人は、それでも剣圧を放ってくる、が。
 直後にネフティメスが炎雷の魔法陣を描き前衛を護れば──。
「キャルちゃん、お願い」
「ええ」
 キャルディムが植装の茨を伸ばし『エリュシオンローズ』。毒を宿した茨で巨体の全身を蝕んだ。
「任せるわよ」
「うん!」
 凛と応えるシャルンホルストも魔槍で一閃。蒼空に真紅の線を描くよう、鮮やかな刺突で巨体を貫いていく。

●決着
「人間を求めて来たってのに、居るのは番犬と……猫ばっかりか」
 罪人は血を流しながら、遠景に響く猫の鳴き声に呟きを零していた。
 その声音にも憎しみが混ざっていると判るから──紅葉は刀を抜いて構えてみせる。
「猫たちは心を癒してくれる、とてもありがたい存在です。そんな猫たちを苛めるつもりなら、罰を与えますよ」
「そうね。猫を傷つけたり怖がらせたりするなら、許さないわよ」
 キャルディムも僅かに声に鋭さを込めていた。
「大体、ゴミみたいなエインヘリアルに自由なんてものは勿体ないわ。犯罪者なんだから大人しく死ぬか捕まってるかしてなさいよ」
「……解き放たれたってことは、放免ってことだろ」
 罪人は言って抗うよう、再度刃を振り上げる、が。
「おっと残念、そこでストップです!」
 赤煙がオーラを鋭き鍼の形に凝縮して投擲していた。『飛鍼』──秘孔を突いた衝撃が経絡を遮断して、巨体の動きを淀ませる。
 そこへ紅葉は奔り抜けて一閃。
「この斬撃を、見切れますか?」
 三日月を象る斬線を閃かせて足元を斬り裂いた。よろける罪人の、その視界に燦めくのがルージュの握る刃。
「さぁ、お前のトラウマをこのナイフに映してやろう」
 視える世界を支配する悪夢。
 巨躯は苦悶しながらも剣を振り回す、が。その一撃をネフティメスが防御すれば──。
「それ以上は、させないからっ!」
 まるで流星を燦めかすかのように、エトワールが鎖を振るった。優美な軌跡を描いて奔ったそれは、巨体を縛って挙動を抑え込む。
「今のうちだよ」
「ありがとうございます」
 応えたシャルンホルストは精霊を召喚して『セイレーン・コンチェルト』。
 ──貴女の声を聴かせて。
 美しき“風に歌う幽玄の調べ”と共に、自身も鮮やかに舞い踊り傷を浄化していく。
 同時に視線を受けたキャルディムが、雷光を帯びる浮き輪を射出。眩い稲妻を放たせて巨体の足元を浚った。
「お願いね」
「うんっ」
 そこへネフティメスが『ライトニング・ファッシネイション』。雷の閃光を囮に魔眼を発動し、精神に這い寄って罪人を夢幻に閉じ込めた。
 それでも藻掻く巨体へ、紅葉が砲撃を見舞えば──ルージュも『黒の天罰』。天より漆黒の雨を注がせて。
「闇に染まるが良い、そして自身の行為を悔いる事だな」
 巨体の鎧も膚も朽ちさせてゆく。
「最後は任せよう」
「ああ」
 頷くウリルは『Enfer』──煌々と滾る焔の檻で咎人を閉じ込めた。
「獲物は逃さない、それは俺達も同じだよ。ここで終わりだ」
 残念だったね、と。
 言葉が響く頃には、罪人は燃え尽きて跡形も残らなかった。

●猫街
 にゃーにゃーと街に鳴き声が満ちる。
 番犬達は景観を修復し、平穏を取り戻していた。
 既に人波と共に猫達の姿も帰ってきていて──番犬達が各々に歩み出す中、赤煙も公園へと赴いているところ。
「さて」
 と、芝生に面した遊歩道の一角にベンチを見つけると、腰掛けて一息つくことにする。此処にも海風は届いていて、膚を撫ぜる空気が快くて。
 それでいて陽光も暖かだから、見回せば沢山の猫がいた。
 その中で、赤煙の膝にのそのそと登ってくる褐色毛の猫が数匹。先刻避難させた時に懐いた猫達だ。
 そのまま日向ぼっこをし始めるので……赤煙も共にゆっくりと寛ぐ。
「──ふむ」
 ぽかぽかと、太陽と猫の温度が心地良く。
 赤煙は実感を得るように空を仰いでいた。
「我々が戦う意味は、こういう時間の中にあるんですよ」
 多分、ですがね、と。
 呟くと、猫が応えるかのようににゃあと鳴く。赤煙は仄かに瞳を細めて──暫しゆるりと過ごしていった。

「またここに来られるなんて思わなかったわ」
 草花が涼やかにそよぐ丘。以前のことを思い出しながら、キャルディムはぐるりと視線を巡らせている。
 そこは既に沢山の猫がいてにゃあにゃあと賑やかだ。
 キャルディムは勿論、猫は好きだし──シャルンホルストもネフティメスも一緒だから一層嬉しくて。
「早速遊びましょ」
「うんっ♪ さあ、こっちだよ~」
 と、ネフティメスは早速猫達を招く。
 すぐに数匹の子猫がやってきて、ネフティメスが柔らかな毛並みをなでなでしていると──シャルンホルストはそれを眺めつつもきょろきょろ。
「どこかにエノコログサは生えていないかな?」
 通称猫じゃらし、それがあればもっと戯れられそうだからと……見回すと程なく、短い草の間に生えるそれを発見。
 摘み取るのは可愛そうだからと、猫達をそこに誘導してみると──虎猫に縞猫、何匹もの猫がにゃー、とやってきて。
 猫パンチして触れたり、ごろごろとじゃれたり。それが可愛くて、シャルンホルストはそんな猫達を抱き上げて穂先に近づけてあげたり、一段落したら膝に乗せて休ませてあげた。
 横になったその猫を撫でながら、シャルンホルストは表情を和らげて。
「やっぱり可愛いね」
「そうだね、どの子も可愛い~♪」
 ネフティメスは寝転がっている猫のお腹をすりすりと撫でて。なーご、と寛いだ鳴き声を零させている。
「キャルちゃんの植物、すごいね」
「そう?」
 キャルディムは小さな人型の植物を使って猫と追いかけっこ。追ったり追われたり、楽しませつつ……蔓に興味を示す猫達に触らせてもあげていた。
 キャルディム自身に猫が懐いてくれば、勿論撫でてあげる。猫に囲まれてるだけで楽しいし……皆とこの時間を過ごせて思いは一入だ。
「みんな可愛くて、楽しいわ」
「うん。あ、私はこの真っ黒な子が一番可愛いな」
 と、ネフティメスはふとどの猫かを指すような口調で応えた。
「つやつやした毛並みが綺麗で。キリッとした表情はつれない感じもするけど、実は寂しがり屋でそっとそばに寄ってきてくれて……撫でてあげると気持ちよさそうに目を閉じるの」
「へえ、どの子?」
「名前はキャルちゃんっていうんだけど」
「ふうん……ってそれ、あたしじゃないの」
 キャルディムが照れたように言うと、ネフティメスは頷いてキャルディムをなでなで。もう、と呟きながらも、キャルディムも嫌そうな素振りではないのだった。
「ふふ」
 と、シャルンホルストはそんな様子も嬉しそうに眺めて。
 沢山遊んで、キャルディムが疲れて眠ってしまってからも──丘に座ってゆっくりと、幸せな一時に浸っていた。

 道を歩むと右から左から、遠くからも猫の声が響く。
 そんな街なら猫と一緒に散策してみたくて。紅葉は歩み出しながら──ルージュへと言葉をかけていた。
「良かったら一緒に散歩してみませんか?」
「勿論だ。私も見て回ろうと思っていたからな」
 静やかな声音ながら、ルージュは鷹揚に頷いて。紅葉に並んで、共に道を進み始める。
 すると懐いてきていた猫達が道案内をするかのように──林道を通り、公園を抜けて、坂を上がり始めた。
 それについていくルージュは……景色も見てほうと感心の吐息。開けていて景観を遮らぬ坂は、海まで続く町並みを一望させていたのだ。
 吹く風も涼しくて。
「やはり、こういう日には猫と一緒に散歩するに限るな」
「ええ、本当に。つい楽しくなってしまいます」
 言いながら、紅葉は足取り軽く。駆け上がっていく猫達を追いかけるように自分もたたたっ、と走っていた。
「あまり走り過ぎて転ばない様にな」
 微かに表情を柔くしながらも、ルージュが言うと──紅葉はわかってます、と言いかけてつんのめり、べたん。足を地面に引っ掛けて転んでしまう。
「いたた……」
「大丈夫か?」
 ルージュが手を伸ばすと、紅葉はお礼を言って立ち上がる。
 幸いどこも擦りむいたりしていなかったので……埃だけ払って、少しそこで休憩していくことにした。
 見れば茶猫に灰猫、いつしか沢山の猫が集まってちょっとした群れのようで。紅葉は膝に乗せてあげる。
「猫は本当に可愛いですね」
「ああ、そうだな」
 ルージュも猫と過ごすのは心が和んで好きだから。その猫達と一匹一匹戯れてあげながら、また紅葉と共に散策を続けていった。

 爽風に木々がそよぐ林道は、穏やかで快い時間が流れている。
 その一角にあるベンチは、木陰がかかって涼しくて──ウリルはそこに座って一息ついていた。
 周囲を眺めれば、同じく日陰で涼む猫が沢山垣間見えて。
 ごろごろと寝転がる猫に、毛づくろいをする猫。そのどれもが魅力的だ。
「可愛いものだね」
 そう感じるからこそ、その姿を妻にも見せたかったとつい思う。
 勿論、今この場では叶わないけれど。
「そうだ、写真を撮ろう」
 思い立って、猫達を驚かせないようにスマホを向ける。興味深げにレンズを覗く猫達に、ウリルは語りかけるように。
「この写真を見せたい人がいるんだ」
 アップに引き画に、幾枚もその姿を収めていった。
「うん」
 どのショットもよく撮れて、ウリルは満足。
「ありがとう。また今度来るよ」
 被写体になってくれたお礼に優しく撫でながら。ニャアと返事をする猫に微笑んで──ウリルは帰路へ歩み出す。

 ぱたりと羽ばたくルーナと共に、エトワールは広場へ。
「わあ、猫さんがいっぱい!」
 沢山の猫達が戯れる景色に──声音を華やがせていた。
 猫達もまた、エトワール達に興味深げ。
 小さな子猫からやんちゃな若猫まで、とことこと歩み寄ってくると肉球でぺたぺたと触れてきている。
 そんな猫達を撫でながらエトワールはルーナへ向いた。
「あのね、あのね。ボクお姉ちゃんのお友だち探したいなあって思うんだよ」
 余計なお世話かもだけど、と。
「その、お姉ちゃんにも──」
 言いかけると、ルーナがふと尻尾を寄せてくれる。
 自分にも幸せになってほしい、その妹の気持ちを解っているというように。
 だからエトワールはへにゃりと笑って。
「仲良くなれそうな子、いるといいな」
 そんな思いと共に猫達と暫し戯れた。
 すると懐いてくれたのは、先刻助けた白猫だ。
 なー、とお礼を言うように鳴いて、ルーナとも何か言葉を交わす。
 ルーナもその猫と散歩を始めるから──エトワールは暫く、その姿を微笑ましげに見つめていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年8月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
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