雫に花歩む

作者:崎田航輝

 空から滴が注ぎ、風が潤いを帯びる。
 夏の陽気を前にして、仄かな涼やかさが訪れる時節。しとしとと小粒の雨音が快く響く中で、静かに賑わう道があった。
 それは色とりどりの傘の店が建ち並ぶ商店街。
 水玉模様、シックな色合い、パステルカラー。天蓋のような気品あるものから丸みを帯びた可愛らしいもの。番傘に蛇の目傘、和傘までが揃っていて。
 雨合羽や日傘までが手に入るから、多くの人々が訪れて──雨空の下、まるで花を咲かせるように傘を広げて人波が行き交っていた。
 と、そこへ雨粒を浴びながら道を踏みつける、巨躯の男が一人。
「ハッ、これだけ餌が歩いてるなんて、最高じゃねぇか」
 それは濡れた鎧を鈍く輝かせ、笑いを浮かべる罪人──エインヘリアル。手に鋭い刃を握ると、白に黄色に青、色とりどりの傘を差す人々を見回して。
「一人残らず、狩ってやる」
 その全ての色を赤に染めてやるとでも言うように。刃を振るって目につく全ての命を斬ってゆく。
 雨垂れまでが血の色に濁る。罪人はその景色に一層歓びを浮かべるよう、殺戮を続けていった。

「梅雨が始まる頃だね」
 静かな雨の注ぐヘリポート。
 雲が覆う空を見上げ、カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)は呟いていた。
 ええ、と応えるのはイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)。
「涼しさが気持ちいい季節でもありますね。とある商店街では、これからの時期に備えて雨具のお店も賑わっているとか」
 そう言いながら──しかし、と皆を見回している。
「そんな中にエインヘリアルが出現することが予知されました」
 現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
「人々にも街にも、被害が及ぶ前に対処しなくちゃね」
「そうですね。皆さんの力が頼りです」
 カシスの言葉にイマジネイターは頷き、説明を続けた。
 現場は商店街の一角。
 真っ直ぐに道が伸びるところで、エインヘリアルはそこへ歩んでくるだろう。
「一般の人々は警察によって事前に避難させられます。到着時には近場には人はいないので、戦闘に集中できるでしょう」
 周囲に被害を出さずに終えることも出来るはずですから、とイマジネイターは続ける。
「無事勝利出来ましたら、皆さんも傘など、見ていってはいかがでしょうか?」
 彩り豊かな和傘に洋傘、雨合羽などの雨具が売られている。これからの季節、一つ持っておいても良いのではないでしょうか、と言った。
 カシスは頷く。
「そのためにも、敵はきちんと倒さないとね」
「皆さんならば勝利を掴めるはずです。是非、頑張ってくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
曽我・小町(大空魔少女・e35148)
ファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)
煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)
笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)

■リプレイ

●雨空
 暖かな季節の風を、雫が涼やかに冷ましていく。
 快い温度の中を見回せば、家並みも艷やかに露濡れて。美しく映える街を笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)は見回していた。
「気持ちいいね。雨の日って、好きだなぁ」
「ええ。雨音がとても心地よいですね」
 呟く湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)も同じ気持ちで頷いている。
 けれど、と。
 静やかな声のままに、その視線を道の先に留めていた。
「そんな中で殺戮が行われるとは、放ってはおけませんね」
 云って海色の瞳で見据えるのは──雨の帳の中を歩んでくる巨影の姿。
 鈍色の鎧に剣を佩く罪人、エインヘリアル。
 皆は頷き合うと、即座に前進する。中でも、巨躯が如何なる者を毒牙にかけるよりも疾く──雨空に羽撃くのが曽我・小町(大空魔少女・e35148)。
「エインヘリアルの下っ端さん。何しに来たかはまあ分かるけど」
 軽やかな声を落として、白黒の二対翼で鮮やかに翻り。
「──あんたに降るのは絶望の雨ってね!」
 頭上から星を落とすように一撃。風を裂きながら鋭い蹴り落としを加えていた。
 衝撃に数歩下がりながら、罪人は初めて此方の存在に目を向ける。
「てめぇらは……」
「私達は、ケルベロスです──!」
 凛然と、真っ直ぐに。
 包囲するよう立ちはだかりながら、澄んだ声音を響かせるのは煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)。一歩歩んで正面から厳然と言葉を向けていた。
「血の雨を好む外道! 直ちにこの地より消えなさい!」
「ご挨拶じゃねぇか。……面白ぇ」
 罪人は僅かに表情を歪めながら、それでも好戦的に剣を構える。
 ふーん、と小首を傾げてみせるのは山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)。
「この天気の中やるつもりなの? アナタは雨でも平気かもしれないけど、鎧のほうは錆びちゃうよー?」
「尤も傘を欲しがっても……あんたが入れるサイズの傘は無さそうだけれど」
 残念だったわね、と。背後に着地しながら小町も声を投げていた。
 罪人は眉根を顰めて見回しながら──それでも剣を振り上げる。
「構わねぇさ。血を存分に浴びてやるだけだ!」
「暑苦しそうな輩ね。雨の日には似合わないけど」
 遠慮なくスカッとぶっ壊せそうで何よりだわ、と。
 大口径の砲身を掲げているのはファレ・ミィド(身も心もダイナマイト・e35653)。
 クク、と笑いを含みながら狙いを定めると、射撃。見る者すら身震いさせるような、巨大なビームを閃かせて巨体へ直撃させた。
「さあ、ヤッておしまい!」
 そのまま悪の女幹部を彷彿させる祭祀服で胸を張り、びしりと指を指してみせる。
 事実隙は生まれたから、麻亜弥が逃さず三叉槍をくるりと回して接近。
「卓越した技術の一撃で、氷漬けにしてあげます」
 氷気を纏った斬閃を奔らせ巨体を零下に蝕んだ。
 躰を軋ませながらも、罪人は嵐の如き斬撃を振り撒く、が。
「藍ちゃん、行くよ」
 前へ跳ぶことほに合わせ、傍らのライドキャリバーも駆動音を唸らせ疾走。前面で壁となり衝撃を庇い受けた。
 直後には、ぽつりぽつり、と。
 優しい霧雨の中に大粒の透明な雫が交じる。
「すぐに癒やすから、待っていてね」
 それはカシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が角杖を空へ翳し、雨雲を雷雲と成して喚び寄せた癒やしの雨滴。
 鋭い痛みも肉体を蝕む傷痕も、快い冷たさで拭うように消し去っていった。
「あと少し、お願いできるかな」
「なら、こっちでやっておくね」
 頷くことほは自ら治癒の光を輝かせて体力を保つ。
 同時に小町の翼猫のグリが爽風を仰げば、皆が万全。
「これで大丈夫ね。攻撃は頼んじゃっていい? ミントさん」
「ええ、判りました」
 と、小町に応えて前へと奔るのはミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)。
 ヘッドドレスと深青の髪を靡かせて。靴に煌めく魔力の茨で壁を咬み、高々と跳躍すると──流動する蔓に焔を纏わせて巨躯の頭上へ降下していた。
 瞬間、一撃。打力と共に激しい焔を灼きつける。
 呻く罪人は刃を振り上げ抵抗姿勢。だがそこへカナが手を突き出して、巫術の力を発現。
「その危険な武器、封じさせてもらいます!」
 刹那、虚空を紙風船のように弾けさせ、生まれた爆風で剣先を欠けさせた。
 そこへ愉しげにナイフを抜き放ち、艷やかに舞い踊るのが氷花。
「血の雨が浴びたいのなら──貴方自身の血で、真っ赤に染め上げてあげるよ!」
 奔る斬閃、響く靴音。鋭い切先と爛漫なリズムが刻む『血祭りの輪舞』は、容赦なく罪人の躰を斬り裂いていく。

●決着
 零れる巨躯の血が雨に薄らいでゆく。
 罪人は苦痛を表しながら、憎らしげに仰いでいた。
「……確かに、俺に雨は合わねぇな。てめぇらを斬っても、血の赤が流れちまいそうだ」
「血だとか、赤色だとか。そんなことばかりだね」
 カシスは呆れた声音で緩く首を振る。
「エインヘリアルには、自然の雨という風情が分からないのだろうかね?」
「……風情か。俺にはもっと大事なものがあるだけさ……!」
 罪人はあくまで云いながら、剣を握って奔り込んだ。
「全て、赤色に染めてやる」
「──いいえ。色とりどりの傘が織りなす素敵な場所……そんな場所を邪な欲望で穢させはしません!」
 と、カナが迷わず手を伸ばし。閃く魔力の輝きで巨躯の足元を硬化させる。
「もう動けませんよ!」
「……!」
 はっとして見下ろす罪人。その一瞬に、ファレは額に滾る焔──地獄化した正気を一層滾らせ己の力を増大させていた。
「いいじゃない、ノッてきたわ!」
 刹那、掌を突きつけると白煙が揺蕩い、空間が突如炸裂する。
「あーっはっはっはっ!」
 ファレは笑いを劈かせながらそのまま爆破を繰り返し、巨躯を大きく煽ってゆく。
 ファレ自身は心の赴くままに破壊活動をしているだけだったが──タイミングよく巨躯が壁際で止まれば、そこへ迫るのが麻亜弥。
「これで灰にしてあげますよ」
 ふわりとスカートを波打たせ、横に廻転しながら脚に焔を宿し。蒼く煌めく蹴撃で半円を描いて炎傷を刻みつける。
「氷花さんも、今のうちに」
「了解だよー」
 と、明るく返す氷花も、軽やかに飛び退る麻亜弥と入れ替わりに肉迫。
 こつんと地を蹴ると、円舞曲に舞うようにあでやかに。紅色の焔のアーチを作りながら灼熱の蹴りを叩き込んでいた。
「雪さえも退く凍気で、凍えてしまえー!」
 連続で魔氷を生成し、飛び散る火花ごと凍結させ巨躯を穿つ。
 血を吐く罪人は、それでも抵抗の刺突を放つが──ことほが篭手で受け止めてみせると、直後にはカシスが杖へ魔力を注ぎ込んでいた。
 瞬間、雨中に雷光を巡らせて風をショートさせる。ばちりと眩く弾けた雫は、光と魔力を含んだまま傷跡へ溶けて苦痛を祓っていた。
「後は頼むね」
「それじゃ、やり返しちゃうね」
 やられっぱなしじゃ悔しいもんね、と。
 ことほが刃を振るって巨躯へ一閃を加えれば──ファレも敵自身のグラビティ・チェインを地獄化させて。
「行くわよ──どかーん!」
 強烈な破砕音と共に『重力爆散』。体力を奪いながら失調を招かせる。
 膝を突く巨躯へ、カナも暇を与えず『煉獄寺流模倣剣技・無限斬舞』。
「消え去りなさい!」
 霊力の刃を煌めかせ、燿く剣閃を踊らせ全身を斬り刻んだ。
 倒れ込み、朦朧と這う罪人。その機にミントは隣を向いて。
「さぁ、行きますよ小町さん。力を合わせましょう!」
「OK、ミントさん。ショータイムといきましょ!」
 アメシストの瞳に蒼玉の視線を返し、小町はギターを奏でて歌を唄う。ミントも合わせてハーモニーを響かせて。
『綺麗な薔薇には 棘があるって きいたこと あるでしょう?』
『乱暴に 踏みにじったら 引っ掻き傷じゃ済まさないわ』
 艷やかに、鋭く。『薔薇の二重奏』は美しく共鳴し、その衝撃で罪人の命を千々に砕いていった。

●雨下の花
 涼やかな雨音に、愉しげな賑わいが響く。
 番犬達は戦いの後、修復と連絡を済ませて街の平穏を取り戻していた。人々の傘も咲き、花のような彩りの景色が広がっている。
 番犬達も歩み出す中──ファレは軒の一角で暫し雨に身を委ねていた。
「──うん」
 快い冷たさに戦いの熱をクールダウンさせて。それから家並みの屋根の下に入り、体を拭ってから雨具店に入ってゆく。
「ビーチパラソル級のを持った戦闘員を侍らせれば、私は楽チンなんだけどね」
 呟きつつ、勿論戦闘員は居ないので……傘を物色。
「やっぱり派手な奴よね」
 一つ一つ眺め、極彩色のものや、背の羽に合わせハロウィン風のものを手にとりながら。時にレースクイーン風のモデル立ちでポーズを決めたりしつつ──最後には店員に尋ねた。
「何かお勧めはあるかしら?」
「でしたら……」
 と、店員が見せたのは、色鮮やかながら、黒に縁取られてシックな雰囲気も兼ねた一品。季節を選ばず使えそうで、ファレは即決。
「それじゃ、これで」
 すぐに購入すると、早速それを差して。雨の中、軽い足取りで歩んでいった。

「折角だから、傘を見ていきましょ?」
 小町が雨空の下を歩みながら言えば──こくりと頷くのは隣のミント。
「行きましょう。今日だけでなく、これからの時期は雨が多くなりますし」
 新しく雨具を買うのも良さそう、と。ミントが店を見つければ、早速二人でその中へと入っていた。
 明るい色彩に、様々な模様。
 ずらりと並ぶ傘は色とりどりでどれも可愛らしい。
 中でも二人が足を止めたのは、ゴシック調の品々の前。深い色合いと上品さ、艶やかさを兼ねた傘に視線を惹かれた。
 鏡を見ながら手にとって、ミントは一つ一つ確かめる。
「どうでしょう、似合っているでしょうかね?」
「ええ。ミントさん、モノトーンも良いけど紫系も似合うわね」
 小町はそんな姿を見つめながら頷いていた。
 実際、紫も暗めの色で華美過ぎず、カトルフォイル──四葉模様も淡めに入っていて可愛らしく、ミントの佇まいにマッチしている。
 ミントは頷きつつ、小町の傘も見遣っていた。
「小町さんには、そちらのものが似合っていますね」
 それは黒を貴重にした傘で──縁に黒と白のフリルがついていて、丸みのある形が何処か天蓋を思わせる。
「ええ。これ、あたしも気に入ったのよね」
 と、小町もそれを差しつつ応える。
 柄が尻尾のようにくるりと曲がっていて、小町はそれもまた好きだから。雨でも晴れでも使えるということで、購入する事に決めた。
 ミントも紫の傘を買ったので、二人でそれを手にして雨の中へ。
「それじゃ、早速差して帰りましょ?」
「そうですね」
 美しい傘をすぐに使えるから、それも雨天のいいところだと。小町の言葉にミントは頷き、二人で傘を広げて歩み出した。

 行き交う人々が、彩り豊かな傘で歩んでゆく。
 それを眺めているだけでも、何処か愉しい気分になれるから──氷花はうん、と一つ頷いて歩み始めていた。
「私も傘、見ていこうっと」
「良いですね。私も丁度、見ていきたいと思っていたところです」
 と、麻亜弥も言ってアーケードの屋根の下に入る。そこで少々髪を拭っていると、カシスもまた雨の中からやって来て雫を払っていた。
「俺も、一緒にいいかな。そこのお店に入ろう」
 それに二人が頷くと──カシスと共に近場の店舗へ。グラデーションを描くように置かれた品々の中から、三人で選び始める。
 眺めはまるで花の蕾が並んでいるようで。氷花は一つ一つに感心の声音だ。
「色々な傘があって綺麗だねー」
「これだけあると迷うね。どんな傘なら似合うだろうか……」
 カシスが顎に指を当てながら考えていると、麻亜弥が立ち止まり見回す。
「折角ですし色々手にとってみましょう。カシスさんはどんなデザインが好きだとか、ありますか?」
「そうだね、少し気になったのはこのへんかな」
 と、カシスが示すのは和風の柄のものだ。
 ならばそこから合わせて見てみようと、麻亜弥は幾つか手にとって姿見の前に立たせた。
「どれも良いですが……暗めの色などどうですか?」
「うん。この中だとこういう──唐草模様の傘とか、中々良さそうだね」
 カシスは頷き、深い翠と情緒ある柄の一本を選ぶ。
「ありがとう」
「わぁ、それ可愛いね。麻亜弥さんは決めたの?」
 氷花が言いつつ見遣ると、麻亜弥は頷いて一本を手にとっていた。
「この水玉模様の傘とか可愛いかと思いまして」
 広げてみせるそれは、麻亜弥の髪と瞳を仄かに淡くしたような色合いで、模様が可憐な傘だ。
「似合っているでしょうか?」
「とっても可愛いよ。それなら私は……花柄の傘を買ってみようかな」
 頷く氷花が自分にと選んだのは、ピンク色の布地が広げる前から目を惹く一本。
 丁寧に差してみると、華やかな柄が一気に広がって。薄紅の花達が、一斉に花開いたように見える。
「これって可愛いよね!」
「ええ。とても氷花さんらしいと思います」
 麻亜弥が言えば、氷花は笑顔でうんと応えて。
 三者三様、選んだ傘を購入すると──雨の中でその傘を差し、帰路へついて行った。

 カナは和傘の専門店にやって来ていた。
 工房を兼ねるそこは、木造りの趣ある建物で──中を歩むだけでもどこか心が安らぐような気持ちになる。
「どれも、綺麗ですね──」
 そうして並ぶ傘を瞳に映せば、思わず声も零れた。
 閉じた鋭角の形、広げた歪みない円形。シルエットが美しいのは勿論の事……竹の靭やかさと油紙の色合いが何とも風流で。
 一歩歩むたびに、どの傘にも目移りしてしまうほど、だけれど──中でもふと目についたものを自然と手にとっていた。
「あっ、これ……」
 それは僅かに曲線を描く形と、朱色が目を惹く一本。
 雨の日に差せば、宛ら雫の間に咲く一輪の和花のように──とても映えるだろうと思ったから。
「この傘をください、この素敵な傘を!」
 決めれば早く、カナは購入。
 仄かに強さを増す雨の中、しゃらりとその傘を広げて歩んでいった。

 ゆっくりと並走する藍と共に、ことほは商店街を行く。
「うーん、傘もいいけど……」
 店々を流し見つつ、やっぱりキャリバー乗りとしては雨合羽かな、と。立ち寄ることにしたのはレインウェアの店。
 中に入って眺めると──赤に青に黄色、並ぶ品は色も柄も千差万別だ。
「どれにしようかな」
 伸びが効くスポーツタイプに、洗練されたデザインのコート型。本格的なウェアも数あって、中々に悩ましいけれど。
「柄が大きく見えて可愛いから……こっち!」
 と、最後に決めたのは、レインポンチョ。
 膝下まですっぽりと入る大きさで、フード付き。紫陽花模様が何とも可愛くて、試着して見せてみると……藍もうぉんと一つ音を上げて返すから。
「それじゃあ、着て帰ろっか」
 それを購入すると、早速着込み。ことほは藍に乗って、雨の中をゆるりと駆け出していった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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