爽やかなそよ風が、優しく吹き抜けてゆく。
初夏から夏の本番へと少しずつ移り変わってゆく時節。
陽気と涼やかさが同居する気候の中では、街へ遊びに赴く人も多く──店の並ぶ地域は賑わいに満ちていた。
中でも木造りの看板と暖簾が目立つ、趣深い商店街には、一際人波が行き交っている。
そこに並ぶのは和菓子の専門店の数々。
どら焼きに金つば、羊羹といったお土産が人気のところがあれば──餡蜜に団子、くず餅や善哉を日本茶と共に楽しめる甘味処もあって。
抹茶を使ったティラミスやかき氷、パフェといった和スイーツも勿論、客足を呼び寄せて。夏の合間の一時に、皆が涼風と甘味を味わい楽しんでいた。
けれど──人々の笑顔こそが、咎人を招くのか。
賑わう人波の只中に──真っ直ぐに踏み入る巨躯の姿がある。
「快い風に陽気。素晴らしい日だね」
声と共に愉しげな笑いを浮かべるそれは罪人──エインヘリアル。
「こんな日には何より、獲物を斬りたくなる」
言いながら、鋭い剣を抜き放ち。そのまま大振りに一閃、目の前の命を斬り裂いていく。
悲鳴が劈く中、罪人はただ愉快げに。静寂が訪れるまで凶行を続けていった。
「集まって頂き、ありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日は、エインヘリアルの出現が予知されました」
現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)は頷きながら、声を零す。
「エインヘリアルかぁ。心配してた通りの敵が出ちゃったね」
「ええ。ただ、くるるさんの警戒のおかげで、凶行を未然に防ぐことも出来ますから」
皆さんのお力を貸してください、とイマジネイターは見回していた。
現場は市街地の一角。
店の並ぶ道に、エインヘリアルは現れるだろう。
「一般の人々は警察により事前に避難させられますので、その点は心配は要りません」
「なら、戦いに集中できるっていうことだね」
くるるが言えばイマジネイターはええ、と頷く。
「それによって、周囲を壊さずに終えることも出来るでしょう。ですから……無事勝利出来ましたら、皆さんも和菓子など楽しんでいってはいかがでしょうか?」
甘味処にお土産のお店、様々な形で和の甘味を楽しめるだろう。
くるるはうん、と頷く。
「そのためにも、まずは敵を撃破だね」
「皆さんならばきっと勝てるはずですから。健闘をお祈りしていますね」
イマジネイターはそう言葉を結んだ。
参加者 | |
---|---|
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339) |
ゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597) |
涼風・茜姫(虹色散歩道・e30076) |
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053) |
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762) |
野々宮・くるる(紅葉舞・e38038) |
灰山・恭介(地球人のブレイズキャリバー・e40079) |
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082) |
●爽風
清らかな夏風が甘い残り香を薫らせていた。
和の彩の街角は、人の去った後でも長閑な賑わいを想起させる。風流で見渡す程に美しい家並み──故にこそ、踏み入る巨影が厭でも目について。
「わたしが心配していた事件が、本当に起っちゃうとはね」
降り立った野々宮・くるる(紅葉舞・e38038)は呟き、道の先を見据えていた。
遠方に垣間見えるのは、一人の巨躯。
鎧兜の罪人──エインヘリアル。悠々と狩るべき標的を探して歩んでいる。
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)は近場の建物の屋上へ飛びながら、静かにその姿を見つめていた。
心の赴くままに殺戮を求める、咎人。
「……あれを放ってはおけぬ。ここで倒さねばならないな」
「ええ。人々をしっかりと守れるように……頑張りましょう」
小さく応えるのは愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)。仄かな声音に、しかと決意を宿している。
そんな二人へゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)は瞳を向けて。
「……お前達に心配はしていない。いつも通りやるぞ」
それに水凪と心恋が頷きを返すのが、開戦の合図。
「始めるよ」
と、すらりと腕を伸ばすのはアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)。躰に巻き付く蔦を靭やかに揺らめかせ、揺蕩う魔力を七彩に煌めかせた。
陽光に美しく反射するそれは、風に乗って舞い散り。プリズムのように明滅しながら後方の仲間の力を押し上げた。
得た力を活かすよう、狙いを定めるのが水凪。
罪人が此方に気づくよりも疾く──死霊魔法を行使。地面より陽炎の如き死者の無念を這い出させていた。
『喚起』によって現出されたそれは、巨躯の脚を掴んで止める。そこへ水凪の匣竜、青嵐も飛翔し燿くブレスを浴びせていった。
罪人はその苦痛に初めて此方に気づく。
が、その頃にはゼノアが前進。猫の如く靭やかに地を蹴って跳ぶと──尻尾を棚引かせて廻転。昏き焔を抱く蹴撃を叩き込んでいた。
後退した罪人は──それでも愉快げに剣を構え直している。
「番犬か。この陽気に、斬りがいのある獲物じゃないか」
「陽気のいい日に斬りたくなるとか、分かりたくない気持ちですね……」
僅かに眦を下げて、心恋は声を零す。
「それに、そんな目的だなんて、意外とやる事が小さいような……?」
「狩りたいものを狩る。僕は自由を謳歌しているだけだよ」
罪人はあくまで言って踏み込んでくる。
だがそこへ真っ向から立ちはだかるのが、灰山・恭介(地球人のブレイズキャリバー・e40079)。
「思うようにはさせん!」
一直線に、迷いなく。
眩く顕現させた光の刃は、意志の力をも含んだ鋭さで。
「ここは貴様のような奴が来る場所ではない! 消えろ!」
咎人を真正面から否定してみせるよう、一閃。肩口を深々と斬り裂いて血潮を散らせた。
「……いいじゃないか、面白い」
罪人はよろめきながらも、好戦的に言って焔を飛ばす、が。仲間を襲う灼熱を、遮るように飛来する影がある。
「──通しはしない」
それは翼を広げて衝撃を受けるビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)。勝色の鱗で火花を弾き、耐え切っていた。
そこへ心恋が七彩のスポットライトを輝かせ、前衛を癒やしながら鼓舞すると──。
「私も手伝うよ。ちょっとだけ待ってて、ね」
ふわりと響く柔い声音を聞かせるのが涼風・茜姫(虹色散歩道・e30076)。
白の衣の袖内へ手を入れると、しゃらりと紙兵の束を広げて。その全てを宙に踊らせて霊力を舞わせ、護りと癒やしを齎した。
「崑崙も、よろしくね」
と、茜姫の声に翠竜の崑崙もひと鳴き。清廉な花風でビーツーの傷を拭ってゆく。
更に心恋のテレビウム、メロディも癒やしの音楽を聴かせると──ビーツーの視線を受けた匣竜、ボクスも白橙の光でその体力を保った。
「助かった」
皆へ返したビーツーは、反撃態勢。
罪人も無論次撃を狙ってきていた、が。
「その素早い動き、封じてあげるよー!」
地を跳ねて、風をも蹴り上がり。くるるが頭上へ上がっていた。
そのまま鮮やかに翻って苛烈な蹴撃を浴びせれば──よろけた罪人へビーツーが肉迫。零下の焔を撃ち下ろし、巨体を貫いてゆく。
●決着
そよ風の中で、罪人は膝をつく。
零す声は苦悶と共に、何処か嗤い混じりでもあった。
「……全く、計算違いだよ。沢山の笑顔を、存分に狩れると思ったのにね」
「成程。人々の笑顔がこいつらを招く、か」
ゼノアは静かに呟く。
「つくづく、相容れない連中だな」
「ああ」
ビーツーも瞑目してから、すぐに眼光を向けて。
「その猟奇的な思考をとやかく言う気はないが」
無論、実行に移すなら止めねばなるまい、と。剪刀へ自身とボクスの焔を煌々と纏わせていた。
「つまり、貴殿が斬られる側ということだ」
「……死んで、たまるか。こんな素晴らしい日に──!」
罪人は抵抗姿勢で剣を握り締める。が、手を突き出すアンセルムが『変容:妄執の毒蛇』──蔦を魔術に依って大蛇と成して。
「確かに素晴らしい日だよ……デウスエクスさえいなければね」
解き放つと、その鋭利な毒牙で巨躯の腕を咬み裂いた。
苦渋を洩らす罪人へ、恭介も刃へ疾風を纏い跳躍。
「その通りだ。ここは人々が笑顔になれる憩いの場! 罪人の殺戮場ではない!」
それを躰に刻み込んでやる、と。刃を踊らせ連閃、巨体へ傷を抉り込んでいく。
血煙を上げる巨体へくるるも連撃。
「これで、その身を焼き尽くしてあげるよ!」
紅炎を靡かす回し蹴りで、膚を激しく灼いていた。
罪人は悲鳴を零しながらも刃を振り回す。が、メロディがしかと防御してみせれば──アンセルムが銀灰の霧で治癒。
同時に心恋も『貴方の為に奏でる愛情歌』。可憐な声音で旋律を編んで癒やしてゆく。
真っ直ぐな声には、淀みも迷いもない。こうして支援に邁進できるのは──頼れる人がいるから。
「攻撃は、お願いします……!」
「ああ」
応えるゼノアは既に疾駆。エネルギーを集約して輝ける『金剛ノ腕』を現出、罪人の巨体をも掴み上げ投げ飛ばす。
「後は、行けるな」
「うむ」
そこへ銃口を向けるのが水凪。冴え冴えとした蒼色の直線を描くように──煌めく氷気の光線を撃ち出し巨躯を貫いた。
墜ちゆく罪人へ、くるるは跳んで『木枯らし乱舞』。
「全ての葉を散らすかの如き、華麗なる剣の舞を見せてあげるよ!」
踊るように躰を返し、レイピアで鮮やかな剣線。膚を十重二十重に斬り刻んでゆく。
倒れ込む罪人は、それでも這いずり決死の炎刃を放つ、が。
茜姫が銀に燿く粒子を飛散。はらりはらりと粉雪を降らすよう、仲間の意識を澄み渡らせながら苦痛を祓っていく。
崑崙が羽で撫ぜるよう、属性の力を盾役に注げば皆は万全。
「これで大丈夫、だよ」
その言葉に頷くビーツーは、煌々と双彩の焔を纏う刃で一閃。
「──お引き取り願おうか」
振り抜く『鋭双熱波』で巨躯の腕を斬り飛ばした。
明滅する意識で転げる罪人の──その頭上から恭介。
「どこを見ている? 俺はここだ!」
神速で跳躍から降下して『我流剣技・神速斬』。縦に奔った斬撃が、巨躯を両断して霧散させた。
●和彩
平和な家並みに甘い薫りが漂っている。
迅速に景色の修復と連絡を済ますことで、街には賑わいが戻っていた。今では人々も行き交い皆が店々を楽しんでいる。
番犬達も歩み出す中──ビーツーもまた道を漫ろ歩き出していた。
「暖かくなると、並ぶ物は涼やかになるな」
訪れる熱気に合わせて変わる品揃えを、眺めて。散策しながら注目するのはわらび餅や澄んだ水饅頭。
美しい和菓子は、見ているだけでも快くなるけれど、そんな中でもビーツーが目を留めたのは。
「水羊羹か」
その店に入って豊富な品々を見つめる。
プレーンな一品に、栗羊羹。抹茶を使って鮮やかな色のついたもの。どれも美しく、美味しそうだ。
「どれにするか──」
少々迷った結果、ここはボクスの色彩感覚に任せることに決めた。
ボクスはぱたぱたと数品を眺めてから──梅を使った臙脂色や、紅茶とはちみつの橙、果実を使用した赤やこがね色が揃った詰め合わせを選ぶ。
それにビーツーも迷いなく頷いて。
「ではこれにするか」
それを購入し、陽光の中を帰路についていく。
旧い褐色の木造建築が、景色に合って趣深く。
「日本らしいな」
感心の声音で眺めつつ、ゼノアは心恋と並んで歩んでいた。
折角一仕事終えた後だ、少しは甘味を食べてから帰りたいと思ってのこと。丁度風流な甘味処を見つけると見上げて。
「入るか」
「はい、お邪魔しましょう……」
心恋も柔く微笑んで、共に入店。
涼しい席に座ってメニューを広げて……ゼノアは冷緑茶とみたらし団子を、心恋は抹茶パフェを注文した。
オーダーを取っていった和風メイドを、ゼノアはふと見遣り。
「……偶にはああいう格好で給仕してくれてもいいんだぞ?」
似合うだろう、と少し悪戯っぽく言ってみる。
すると心恋は素直に頷いて。
「では今度、そうしましょうか?」
そうお返しするから、ゼノアは目を少し見開き……ああ、と、ちょっとだけ視線を逸らすのだった。
品が来ると、早速実食。
ゼノアはまず緑茶を一口。快い渋みと、ひんやりとした温度で喉を潤す。それからみたらしたっぷりの団子をモグモグ。
心恋もクリームの滑らかな甘味と抹茶の香りに瞳を和らげた。
ゼノアはそんな様子を見て。
「そっちも旨そうだな」
「では、一口、どうですか……?」
心恋が一掬いを差し出すと、ゼノアは口を開きあむり。抹茶アイスの爽やかな甘さを感じて頷く。
「そんならお返しに」
と、今度はゼノアが少し数の減った団子を対面の口元へ運ぶと。
「い、いただきますね」
少し緊張しつつ、心恋もはむりと頂いた。
「……少し行儀が悪いか?」
ゼノアは言いながら、それでも分け合う甘さが心地良く。一緒に食べ終わると次はお土産だと、また二人で並び歩み出す。
「和菓子、楽しみ、だね」
その言葉に小さく鳴いて応える崑崙と共に、茜姫は散策中。
右も左も甘く薫るから、目移りしながら歩んでいた。
「あ、お饅頭。昌親ちゃんの炊いた餡子と、どっちが美味しい、かな……」
大切な人を心に浮かべ、それを買ってみたりして。
お土産はどうしようかなと考えながら、甘味処の看板が見えれば──思わずそちらに視線を惹かれて。
「和パフェだって……!」
気づけば店内に座り、抹茶クリームに餡子、黒蜜入り白玉をあむあむ食べて幸せな吐息。
それから外に戻り、また寄り道していると──つんつん。
崑崙がつっついてくる。
「え、なぁに?」
目を向けると、崑崙はスマホを操作して示していた。
「おすすめの……お店情報……?」
どうやら近くにあるようだ。
大福に金つば、どら焼きとお土産も揃っているようで……うん、と頷く茜姫は歩み出し。崑崙の誘導にのんびりとついていくのだった。
腕に抱く人形と一緒に、アンセルムは散歩している。
眩い陽光を仰ぐと、最近暑くなってきたと実感できるから。
「冷やしぜんざいとか食べたいなあ……」
周囲を眺め、見つけた甘味処へ。
友人達にお土産をとも思っているけれど、まずは甘味を堪能してからでも悪くないと。早速注文して木の匙で一口。
たっぷりの小豆を含み、ほろりとほどける食感と涼やかな甘味を味わった。
「美味しいなぁ……」
疲れが言える感覚と共に、次は隣の店で串団子を買って食べ歩き。
餡とみたらし、どちらも贅沢に楽しんでから──更に次の場所では綺麗な水饅頭を購入。ぷるりとした食感と快い冷たさを堪能する。
「うん、満足満足」
言いつつ、どら焼きや羊羹があればそれも買ってつまみつつ。
「これ、持ち帰るのに良いかもね──」
思い立てば、それらを包んで貰ってお土産も万全。
帰路に生クリーム大福があれば、それも思わず自分用とお土産用に追加して。涼やかな気分と共に、アンセルムは道を進んでいった。
甘い香りに導かれて、くるるはお店に立ち寄っていた。
「お店の中、涼しいなぁ──」
頬を撫でる快い温度に寛ぎながら、メニューを眺めるとまた笑顔。蒼玉の瞳をくりっと動かして、どれを頼もうかと暫し逡巡する。
「抹茶パフェかぁ、とっても美味しそうだね」
中でも気になったそれを頼むと……やってきた品にわぁ、と感嘆を零す。
抹茶の翠が美しく、芳しく。アイスにクリーム、さくらんぼに餡子、ごろりと栗の実まで入って彩り豊かだ。
早速アイスで戦いの熱を冷ますと……瑞々しいさくらんぼをつまみつつ、餡と一緒に栗を食べて、和の甘味を存分に楽しんで。
「美味しかったぁ。折角だし、お茶も飲んでいこうかな」
本格的な緑茶も飲めると知れば、お冷で頂きその香ばしさを味わった。
「これからもっと、暖かくなるなぁ──」
そうして一息つくと、次はお土産を買おうと。陽気の下へと上機嫌に歩み出す。
恭介は甘味処でお品書きを眺めていた。
「さて、何を頼むか……」
元より甘いものには目がない恭介だ、品々の写真を見るだけでも静かに心躍る気持ちだったが──。
「よし、どら焼きと、まんじゅうだ」
たっぷりの餡子に惹かれて、お茶と共に注文。
品がやってくると、まずはどら焼きを一口。しっとりして仄かな甘さの生地と、ほくほく食感の粒あんが相性抜群だ。
お茶の風味も一緒に楽しむと、まんじゅうも実食。もちもちとした皮はほんのりと塩気があって、こし餡の優しい甘さにベストマッチ。
「この店、いい仕事しているな~」
満足の心持ちで呟きながら、ふと外の景色を見遣る。
すると行き交う人々が笑顔で楽しむ姿が見えて──恭介も自然と笑みを浮かべた。
「この笑顔が守れて、本当によかった……」
為すべきことを為せた。
その実感を胸に……今度はお土産の分の和菓子も注文するのだった。
木造りの建物が並ぶ道を水凪はゆったりと歩む。
風が吹くと、芳香が鼻を擽って。肩の上でぱたぱたと飛ぶ青嵐もそちらへ興味を示しているようだった。
「店に寄るか」
そんな様子に、水凪は言って店内へ。
暖簾をくぐって端の席につくと、お品書きを眺める。
「ふむ、丁度季節であるからな」
すると水無月の字を見つけて、抹茶と共に注文。美しい器に満たされた翠と並んで、綺麗な三角形のそれがやってきた。
土台は白のういろうと透明の葛。
そこに小豆が多めに乗って、上品ながら食欲を誘う。
早速ひとかけ切って食べると、やわく噛み切れる下地と豆のふくよかな甘味が良く合って。濃厚な抹茶を一口含むと、快い苦味と相まって一層──。
「美味だな」
水凪は呟き、青嵐にも分けてあげる。
青嵐がそれをはむはむと食べる様子を見ながら、水凪は暫しゆっくりと過ごして。
食事が終わればお土産の調達。紫陽花を象った練りきりと、蒸羊羹を買って帰路についていくのだった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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