翠と水の風

作者:崎田航輝

 さらさらと水が波紋を作り、陽光に燦めいている。
 木立は夏風に葉を揺らし、花壇の花々も優しくそよいで人々の目を楽しませていた。
 街の一角にある噴水広場。
 円の形に造られた美しい憩いの場は、夏に入っても人々の足が絶えない。
 花壇にはハイビスカスやダリア、百日紅と夏の花が咲き始め、鮮やかな色合いを見せている。木立は緑が濃くなって、花香りの中に爽やかな翠の匂いを交えさせ──宛ら都会のオアシスだった。
 人々はそんな景色を愛でながら、流水が作る涼風を浴びて一休み。待ち合わせに利用するものや、散歩に訪れるもの……それぞれの時間をゆったりと過ごしていた。
 けれどそこに踏み入る、悪意がひとり。
「とても、良い景色じゃないか」
 喜色を含んだ声音に、同時に殺意を滲ませながら、一歩一歩と歩む巨躯の男。
「なら、人などいないほうが一層、美しい」
 優男のようなおもてに、そぐわぬほどの鋭利な剣を振り上げて。目の前の人間を躊躇わずに切り捨てる──エインヘリアル。
 血煙が上がって噴水が紅く濁りゆく。そうすると男は愉快げに笑った。
「美観に人間は不要だよ、そう思うだろ?」
 その声に応えるものはもういない。命が絶えて静かになった噴水広場で、ただ一人、エインヘリアルだけが悦びの表情を浮かべていた。

「とても、綺麗な広場のようですね」
 夏の風に彩られたヘリポート。
 涼やかな声音で言う翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)に、こくりと頷くのはイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)だった。
「ええ。花も咲いて、木立もあって……憩いの場所としてとても人気みたいです」
 けれど、そんな中にエインヘリアルが現れてしまう。
 それが予知された事件なのだとイマジネイターは言った。
「コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれた罪人で……殺戮を躊躇いはしないでしょう」
 放置しておけば人々が危険だ。
「そこで皆さんに討伐に向かっていただければと思います」
「ええ。私達にできることがあるならば」
 風音がそっと頷くと、寄り添っていた箱竜のシャティレも、鳴き声で応えていた。
 イマジネイターは頷いて説明を続ける。
「敵は広場の外から入ってきます」
 広場内には人が多くいるが……今回は警察や消防の協力によって避難が行われる。
 こちらが到着する頃には人々の退避も完了しているということで、被害を心配する必要はないと言った。
「私達は迎え撃つことに集中すればいい、ということですね」
「はい。皆さんの到着の直後に敵が現れますので、すぐに戦闘に入ってください」
 そうすれば、周囲に被害も無く終われるはずだ。
 ですから、とイマジネイターは続ける。
「勝利できたら、広場で休憩していっても良いかも知れませんね」
 ゆったりした時間を過ごすのもいいですから、と言う。
「移動販売のクレープ店なども訪れるので、それも楽しみつつ景色を眺めると、疲れも癒えるのではないでしょうか」
「その為にも……景色も傷つけずに終わりたいですね」
 風音が言えば、イマジネイターは頷いた。
「皆さんならば、きっと勝利を掴めるはずです。ぜひ、頑張ってきてくださいね」


参加者
ゼレフ・スティガル(雲・e00179)
ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)
蓮水・志苑(六出花・e14436)
御影・有理(灯影・e14635)
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)
御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)
カタリーナ・シュナイダー(血塗られし魔弾・e20661)
鉄・冬真(雪狼・e23499)

■リプレイ

●夏の剣戟
 陽光が翠を色づかせ、仄かな水音が耳朶を打つ。
 広場は季節の祝福で美しく、佇むだけでも寛ぎを齎すようだ。
 だけに、遠くに罪人の姿を見つけると──ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)は小さく息をついた。
「こんな綺麗な公園に随分に無粋な輩が来たものだね」
「うん。招かれざる客、という表現がぴったりな敵だ」
 言いながらも、御影・有理(灯影・e14635)は月形の刃を手に握る。
 それが斃すべき敵なれば。
 隣に立つ鉄・冬真(雪狼・e23499)も有理と見合って、戦いへと心を向けていた。
「人々の生活を守る為にも、力を尽くそう」
 頷く皆も、戦いの準備は十全。真っ直ぐに駆けて、巨躯に立ちはだかっていく。
 罪人──エインヘリアルはとっさに剣を抜いてきたが、ヴィは譲らず一閃。先制で敵の剣を弾き上げ、その刃先を欠けさせていた。
「ここから先は通さない」
「……、君達は、何者だい」
 僅かな驚きと共に、罪人は一歩引いて見据える。
 ヴィは応えるように刃を突きつけた。
「ケルベロス。悪いけど、君の思い通りにはさせないよ」
「そういうこと」
 と、ゼレフ・スティガル(雲・e00179)も柔い声音で肯く。
 一度眩い空を仰ぎ、夏だねぇと呟きながら。
「只でさえ、あんまり得意な季節じゃないんだからね。このうえ惨劇まで起こしてもらっちゃ困るし」
「……景色の邪魔を排除する。それだけのつもりさ」
 巨躯が退かずに言うと、冬真は既に銃口を向けていた。
「──さて、美観に不要はどちらだろうね」
 言うまでもないというように。氷気の光を撃ち出し巨躯の胴を穿っていく。
 罪人はたたらを踏みつつも、前進を目論んだ。が、そこに清らかで麗しい声音が響く。
 ──風精よ、彼の者の元に集え。
 ──奏でる旋律の元で舞い躍り、夢幻の舞台へ彼の者を誘え。
 自然の慈愛を受けるように、そよ風に翠髪を揺らして。それは翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)が唄う『風精の幻想曲』。
 精霊が唄い踊る様を詠う声は、詩を具現化させたかの如く一層の風を喚び、巨体すら押し留めてしまう。
「さあ、今の内に」
「……ええ。参ります」
 嫋々、淑やかに踏み出し真白き刀を握るのは蓮水・志苑(六出花・e14436)。
 細雪が風に踊るよう、靭やかな動きで眼前に迫りゆき、一刀。嫋やかながら怜悧な斬閃を滑らせて、足元を刻んでみせた。
「蓮さん」
「……ああ、任せろ」
 応えて跳んでいるのは御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)。
 志苑の動きから間断を作らぬよう、浅い高度から黒革のブーツで一撃、容赦ない蹴り下ろしを叩き込んでいく。
 同時に駆けた四国犬の空木が、斬撃で敵の体勢を崩せば──その間にゼレフが雲間に奔る雷光のような、美しき光を広げて防護を整えていた。
 巨躯も反撃の剣を振るう、が。それを冬真がしかと防御すると、有理が即座に詩篇を紡いでいた。
 ──冥き処に在して、三相統べる月神の灯よ。
 ──深遠に射し、魂を抱き、生命の恵みを与え給え。
 朗々と、加護を齎すそれは古代語魔法『月神の揺籠』。
 月と魔術の女神を讃え、白き光を降ろして冬真を癒やす。有理の黒竜リムと、風音の翠竜シャティレが闇光と清風を注げば体力は万全だ。
 敵へ反撃の光を撃ち出すのは、カタリーナ・シュナイダー(血塗られし魔弾・e20661)。かつりと靴を鳴らし、銃口から煙を揺蕩わせて罪人へと歩み寄っていた。
「飛んで火に入る何とやら。獲物を求めた果てに捕食者がいるのはどんな気分だろうな」
「……捕食者だって?」
 罪人はその言葉に、俄に怒って剣を振り上げる。
「弱者を狩るのは僕の方だよ」
「──果たしてそうかな」
 カタリーナは言って、惑わない。相貌に敵が怯むほどの凶暴さを垣間見せると、至近から銃を連射。血潮を散らせて圧力を与えていく。
 巨躯も剣を突き出す、が、ゼレフがそれを弾いて護っていた。
「やらせないよ」
 返す刀で、明滅させるのは『遠き君』。
 刃から竜の顎を模る琥珀の炎を滾らせて──巨体に烈しく咬みつかせ生命力を奪い取る。
 よろめく罪人に、カタリーナは地を蹴って肉迫。
 銃口を零距離で当てて、接射していた。
「驕りを知ると良い」
 眩いマズルフラッシュが瞬いて、金属を貫通。鎧を砕いて巨体を吹っ飛ばす。

●決着
 罪人は苦痛の面持ちで立ち上がる。
 その声音は、訴えるようでもあった。
「酷いじゃないか。僕はただ、この美観を保ちたいだけだというのに」
「……この噴水広場の景色の美しさ、それは同意しましょう」
 そっと声を返して、風音は水面の陽のような美しき瞳で視線を巡らせた。
 花と翠、光に風。
 自然の薫るその魅力を、自分も感じているから。
「ですが……そこに不要なのは人ではなく、貴方の殺意です」
 日輪の輝きを招来するように、眩い光の刃を構えてみせながら。
「花が咲き、人々が憩う……そんな美しい噴水広場を汚す事は許しません」
「ああ。だから、早々に終わらせる」
 蓮が言えば、志苑もまた頷いた。
 この美しい広場を血に染めさせる訳にはいかないから。
「景色も、人々も。傷つけさせはしません。お覚悟を」
 瞬間、風のような踏み込みから『桜花霜天散華』。凄絶な冷気から、はらりはらりと凍れる白雪の桜を踊らせて。鋭き剣閃で巨体を刻んでいく。
 蓮は古書に宿る思念を降ろし『鬼滅舞妖降』。赤黒い影の鬼を具現化させ、豪腕に雷風を巻き起こさせて衝撃を畳み掛けていた。
 風音が横一閃に斬撃を重ねると──罪人は呻きながらも炎の刃を返してくる。
 けれど悪意の炎熱は、耀く薄雲から注ぐ水晶の如き雨滴に濯い流された。
 それはゼレフの降らせる癒やしの慈雨。優しく撫ぜるように肌に触れたそれは、傷も炎も、煙に変えるようにして消していく。
「これで、大方は問題ないかな」
「では、あとは私が」
 有理が指先を踊らすと、虹の彩が広がり傷が癒える。魂を鼓舞する色彩は、同時に仲間の力も増強させていた。
「ありがとう」
 応えて力を活かすのは冬真。黒塗りの短刀“哭切”を抜くと巨躯の懐へ一閃。澱み無き剣閃で急所を刻んでいく。
 苦悶の巨躯に、慈悲を与えずカタリーナは銃撃。白色の氷線を撃ち出して、怜悧な衝撃で腕を貫通。同時に膚を凍らせ氷晶で蝕んだ。
 罪人は堪らず自己回復する。だが直後にはゼレフが刺突。得た力も体力も、厳寒の疾風の如き一撃で穿ち砕いてみせた。
「無駄なことだよ」
「……っ」
 巨躯はよろけて膝をつく。それでも抵抗しようと手を伸ばした、が。
「それ以上はやらせない」
 平和な一日に惨劇なんか要らないから──とっととご退場願おうか、と。
 ヴィは直剣に、蒼空に耀く陽光の如き眩い焔を宿して一撃。巨躯の腕を切り飛ばした。
 だけに終わらず、連続で『White flame』。閃光の如きメーザーを放ち足元を爆破させる。
 倒れ込んだ巨躯へ、歩み寄るのはカタリーナ。
「知っているか? ライオンやトラだって時には捕食対象に殺されることだってあるんだぞ。この世に絶対の捕食者などいない」
 言ってガトリングを向ける。
「油断すれば捕食者自身の命が狙われる。獲物を舐めてかかるのは三流のハンターがすることだ」
 故にこそ、と。高速で機巧を輪転させ、全弾をばら撒いた。
「──貴様のその認識の甘さ、身をもって思い知るがいい!」
 降り注ぐ弾丸に、巨躯の体は蜂の巣になっていく。
 斃れゆく罪人へ、風音は剣から花嵐を顕現。
「これで終わりです」
 季節の美しさに攫うように。巨躯を花弁と共に散らせていった。

●夏の憩い
「有理、怪我はないかな?」
「うん。冬真こそ、怪我は無い?」
 冬真は有理を抱きしめて、その傷を確認し合っていた。
 二人は健常で、皆も同じく無事。周囲を修復して人を呼び戻せば、そこは長閑な広場だ。
 カタリーナは見回して、一度目を閉じる。
「……誰も、傷つかずに済んだか」
 呟きは、誰にも聞こえない大きさだったけれど。
 吐息にはほんの少し安堵も混じらせて──平和を確認すると、広場を去っていった。

 爽風の吹く中を、ゼレフは散歩中。
 さてどこかで一休みしようかと見回していると──。
「お、移動販売か」
 カラフルで可愛らしいペイントとひさしが特徴的な、販売車がゆるゆると入ってくるのを発見。どれどれと見ていくことにした。
「クレープ、美味しそうだね」
 銀の瞳をゆるりと動かし、フルーツの乗った一品を選ぶ。それからベンチを見つけると、そこに座って噴水を眺めることにした。
 ひんやりとしたクリームが快いクレープに、涼しい風。木陰でもあるそこは気温が高くなくて過ごしやすい。
 どうせ暑いなら少しでも心地好く。はむりと甘味を齧ると暑さも紛れた。
「……夏の空は青いなあ」
 白雲が流れていく。
 髪をさらさらと風に揺らし、ゼレフは空を見つめていた。

 ヴィはのんびりと広場を見て回っている。
 花々は彩り豊かで、噴水は耳に心地良く。
 だからそれだけでも楽しかったけれど……移動販売がやってくれば、いそいそとそこへ向かった。
「やっぱり、クレープがほんばn……げふんげふん」
 呟きつつも、花より団子だからしょうがないと開き直って。興味はもう、メニューに向いている。
「チョコバナナに、ストロベリーとか……どうしよ」
 かたや淡い黄色のクリームにたっぷりのチョコソース。かたや綺麗な薄紅にふんだんな果実とジュレ、小さなベリー類のおまけまで。
 どちらか迷ってしまう、けれど。
「チョコバナナとストロベリー両方ちょうだい!」
 最後には両方注文すればいいと元気よく。
 両手にクレープ状態で、一角に座って寛ぐことにした。
 バナナはとろける甘味にチョコの香りが相性抜群。イチゴは果汁溢れる果実がふわふわクリームに包まれて、ぷちりと弾けるベリーも美味だった。
 そうして眺めると、景色も一層美しく。
「うん、平和が一番だね!」
 笑顔でまた、ぱくりと食を進めた。

「気持ちの良い場所ですね。憩いの場も人々も……汚されず良かったです」
「……ああ、そうだな」
 志苑の優しい声に、蓮は頷き景色を眺めている。
 澄んだ空気に花々が美しい広場は何とも居心地よく。蓮もまた無事守れた事に安堵する心は同じだった。
 二人は並び合い散歩中。と、そこで志苑は販売車を見つける。
「景色も良いですが甘い物を御一緒に如何です?」
「クレープか。付き合おう」
 ということで隣り合ってそちらへ。
 志苑は苺クレープとお肉のお惣菜クレープを購入した。
「空木さん、お疲れ様です」
 と、お肉の方は空木に差し出す。
 はむはむと食べるその姿が可愛らしく、志苑はそっと撫でていた。
「……おい、あまり空木を甘やかすなよ」
「ふふ、これくらい、いいでしょう?」
 言いながら志苑は暫し、空木を眺めている。
「……仲がいいのは結構だが、空木に構いすぎだろ」
 そんな声を零しつつ、蓮は志苑達を横目に抹茶生地に餡とアイスのクレープを購入。一口食べてみた。
「……甘い」
 茶の風味が濃厚で、それは良かったけれど……蓮の視線は変わらず志苑へ。
 志苑はというと、空木が食べ終わるのを見届けていたが──その後は蓮の方に視線を吸い寄せられていた。
「……なんだ」
 ようやくこっちを向いたかと思えば、と。蓮は呟きつつ、彼女の心が判る。
 ほら、とクレープを差し出した。
「食べてみるか?」
「……良いのですか?」
 志苑ははたと目を開いて。
(「そんなに欲しそうに見えたのでしょうか……」)
 そんな恥ずかしさも抱きつつ、それでもお礼を言って一口。
「ん、美味しいですね」
 微笑んで、その甘味を楽しんでいた。
(「幸せそうに食べるな、本当」)
 蓮はそれを見つつ、自分もまた一口。甘い、と思った。
(「あんたは空木に甘く、俺はあんたに甘い」)
 それも仕方ない、と。蓮は涼しさの下で、その甘さに身を委ねた。

「有理、デートしませんか?」
 そう手を差し出した冬真に、有理は「喜んで」と微笑み返し。
 折角だからクレープ屋に寄っていこうと、二人は手を繋いでそこを訪れていた。
「有理、リム、何が食べたい?」
 冬真が艷やかな黒の瞳を向けると、リムはがう、とひと鳴き。
「リムはチョコバナナが良いみたいだね。私は苺とクリームが乗ってるのにしようかな」
 小竜が指し示すそれを見つつ、有理も鮮やかな一品を選んだ。
「冬真はどれにする?」
「そうだな、僕はチョコとバニラアイスにしようかな」
 そうしてそれぞれに受け取ると、ゆったり歩み出し。冬真はその甘味を味わいながら、隣の口元へ差し出してみた。
「有理、食べてみる? はい、あーん」
「あーん、ん、美味しいね」
 有理はひんやりとした美味に瞳を細めると、お返しに自分のも彼の口へ。
「私のも味見してみる? あーん」
「ん、ありがとう」
 冬真はぱくりと頂くと、果実の仄かな酸味とクリームの甘味に柔らかな笑みを零した。
「一緒に食べると美味しいね」
 と、有理が笑っていると、冬真はその笑顔が愛しくて。唇の端についたクリームもまた可愛くて、口を寄せて舐めとった。
「ついてるよ。──苺チョコの味だね」
 それは悪戯っぽい囁きのキス。
 有理は思わず恥ずかし気に頬を染めてしまうけれど。
「……もう、冬真ったら」
 そっと呟くと、自分からもお返しのキスを。
 夫との口付けは苺よりもチョコよりも甘くて。だからもう少しだけ、こうして彼と二人きりで──抱くのはそんな思い。
 冬真も同じだけ夢中になってしまうと、周囲の景色が目に入らなくなる──何よりも美しく、愛しい花が隣にいるから。
 流れる甘い時間は、短くも永遠のように濃密だった。

 そよぐ木々と花、響く水音。
 可憐な小竜はそんな景色に上機嫌で空を舞う。
 風音はそれを微笑んで見つめながら、一緒に広場を散策していた。
「心地良い日ですね。……クレープ、買いましょうか」
 移動販売の店を見つけると、風音は歩み出す。シャティレも勿論、惹かれるようにそちらへ羽ばたいていた。
 品数は豊富で色とりどりだ。けれどシャティレはやっぱり苺が気になる様子。
「では……苺とフルーツと、クリームのもので」
 風音はふんだんな果実が宝石のような、それを選んで購入。
 噴水が陽光にきらきら光って見えるベンチに座り、共に食べ始めた。
 シャティレは苺をとても嬉しそうにはぐはぐ。クリームも一緒に食べるとぴゃう、と美味しさを伝える。
 風音は優しく笑んで、自分も一口。ふんわりとした生地が仄かに甘く、果実も新鮮で美味だった。
「たまにはこういった場所でクレープを食べながら、ゆっくりするのも良いですね」
 季節に彩られた光景に、一息ついて。
 ふと見ると、シャティレのリボンと花が夏風に揺れている。
「綺麗な花々、噴水、心地よい風、皆さんの穏やかな時間……」
 これからも続きますように。
 風音はそんな思いと共に、美観と甘味を楽しんだ。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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