知性と共に見境を失ったオーク

作者:崎田航輝

 深夜の交差点を横切るのは、車ではなかった。
 体長2メートルの、浮遊する怪魚。下級の死神である。市街地の中、空中を回遊するように動く死神が、人気のないその場所を行ったり来たりすると……。
 その軌跡が、まるで魔法陣のように浮かび上がる。
 するとその魔法陣の中心に、1体のデウスエクスが召喚された。
 ブタ人間のような容姿に、背中の触手。
 第二次侵略期以前に死亡した1体と思しき、オークだった。
 そのオークは、しかし、生前とは違い……その瞳に知性を感じさせる光はない。逆に巨大化した触手がうねり、目の前のもの全てを蹂躙し尽くすかのようであった。
 男も女も関係無い……知性がない故か、そう言わんばかりのオークは……。
「ブッヒヒヒヒヒィィィーーーー!!」
 ただひたすら、触手の餌食を探すように、咆吼するのだった。

「お集まり頂きありがとうございます。栃木県の鹿沼市で死神の活動が確認されました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロス達を見回して言った。
「今回現れたのはかなり下級の死神で、怪魚のような見た目の、知性を持たないタイプのようです。第二次侵略期以前に地球で死亡したデウスエクスを、変異強化した上でサルベージし……戦力として持ち帰ろうというのが目的でしょう」
 死神の戦力が増えることを、看過はできないとセリカは言う。
「今から急ぎ、撃破して頂きたく思います」

 状況の詳細を、とセリカは続ける。
「今回の敵は怪魚型死神が3体と……サルベージされた、オークが1体になります」
 場所は市街地。深夜であり、避難勧告もできているので、戦う際には周囲を気にする必要は無いだろう。
「戦闘には適した環境と言えるかも知れません。ただ、敵は4体と少なくないので、注意は必要でしょう」
 中でも、変異強化されたオークは非常に戦闘的になっているという。
「強さとしては元のオークからそれほど変わらないかも知れませんが、頑丈になっており少々倒しにくくなっていると思われます。それと……」
 少しだけ言葉を濁してから、セリカは続けた。
「変異し、知性が失われたからでしょうか……普通のオークのように女性を付け狙うことはなく、むしろ男性も女性も見境なく、触手で襲おうとしてくるようです」
 繁殖する能力まではさすがにありませんが……とセリカは言う。
「ともかく、獣と化しているので気をつけてください。能力としては、毒溶解液、触手による巻き付き、触手による服破り攻撃をしてきます」
 死神の方はドレイン効果のある噛みつき攻撃を主にしてくると言った。
「死したデウスエクスをなお自分たちの戦力としようとする死神の策略は、阻止しなければなりません。是非、迅速な撃破をお願いしますね」


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
朝倉・ほのか(ホーリィグレイル・e01107)
シェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・e02527)
葉月・静夏(陰陽寺のアルバイト・e04116)
夜刀神・煌羅(龍拳の聖・e05280)
御剣・冬汰(恋するどえむ・e05515)
カナリア・ラインフォード(忌まわしき過去への情愛・e15203)
ケーシィ・リガルジィ(幼き黒の造形絵師・e15521)

■リプレイ

●出現
 夜の帳の降りた街。ケルベロス達はその道を歩き、交差点へと向かっている。
「死神のサルベージ事件が、続きますね……」
 上空を眺め、朝倉・ほのか(ホーリィグレイル・e01107)はぽつりと言う。ほのかが死神の事件に関わるのは、都合三度目だ。
「気になる動きですね。他の事件もですが……楽ではありませんでしたから」
「サルベージされると、蘇るだけじゃなく強化されたりするからねー。厄介だよ本当に」
 平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は頭の後ろで手を組み、敵影を探しつつも応える。
 ケーシィ・リガルジィ(幼き黒の造形絵師・e15521)もこくりと頷いた。
「苦労して倒した敵があっさり復活させられたら、と思うと、相手にしたくないところだけどにゃ……と」
 そこでケーシィが気付く。
 ちょうど交差点が前方に見えたとき。空中を回遊する死神と……。
 光る魔法陣の中に召喚された、獣と化したオークの姿が現れていたからだ。
 そちらへ駆け出しながらも……葉月・静夏(陰陽寺のアルバイト・e04116)は、少しだけ感心したように死神を観察している。
「でも、死体をも戦力にしようっていうのは、不屈の精神みたいなものも感じるかな」
「死神にも、死神なりの理由があって、やっているのかもしれません、けど」
 シェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・e02527)は死神を見上げると、小さく続けた。
「死んだ者の眠りを邪魔するのは、医者として、見過ごしておけない、です……」
「もちろん。私達も負けずに……打ち倒そう」
 言って、静夏が戦闘態勢を取れば……メイド服を着ていたカナリア・ラインフォード(忌まわしき過去への情愛・e15203)が、それをばさりと脱ぎ捨てる。
 蒼が眩しい、高露出の鎧姿となったカナリアは、剣を敵へと向けた。
「では、殲滅するぞ!」

「まずは予定通り、各個対応と行くかの」
 最初に死神の前へ出たのは、夜刀神・煌羅(龍拳の聖・e05280)。
 その3体を睨みつつも、攻撃の矛先は、オークへ向けている。
「倒れてもらうのは……お主からじゃ」
 そこからドラゴンブレスを吐き、初手からオークを炎で包んでいく。
 オークは咆吼を上げ、早速ケルベロス達に狙いを向ける。だが……。
「では、私も」
 と、それより早く、ほのかが構えていた。
 普段の内気さはなりを潜め……冷静な瞳で射貫くと同時、ペトリフィケイションを命中させた。
 ただ、まだオークの傷は、浅い。
「さすがに、頑強そうですね」
「攻撃のし合いに、なるかもです、ね」
 ほのかに言いながら、シェスティンは、ライトニングウォールを前衛の仲間へ展開する。
「こちらの防備も、整えておきます、です……!」
 弾ける光を見て、オークは吼えるが……その眼前に、静夏が滑り込んでいた。
 その手には鉄塊剣、退魔の撞木。
「攻撃するなら私を狙ってー」
 そう言って繰り出された単純な剣での殴打が、オークを数メートル、吹き飛ばした。
 起き上がるとかすかに怒りを浮かべるオーク。
 さらに、死神も空中からケルベロス達に迫るが……この間に、和がその死神への攻勢に入っていた。
「こっちは抑えさせてもらうよ! さくっとね!」
 言うと同時、和は御業を放ち、その1体を鷲掴みにして締め上げる。
 すると他の2体が和へと動くが……ケーシィがびっと指差していた。
「行くにゃ! ぼっくん!」
 言葉と共に、ケーシィのミミック、ぼっくんが愚者の黄金をばらまき、3体を打つ。
 それでも死神は噛みつきにかかるが、その間に距離を詰めた煌羅と静夏、そしてぼっくんがうまく仲間を庇って受けた。
 ケーシィはブレイブマインを発散、前衛の攻撃力を高めている。
「頼むにゃ!」
「引き受けた」
 言ってオークへ跳躍するのはカナリア。肉迫するオークをその目で見ると、思うところはあった。
(「第二次侵略期以前のオーク……昔の個体でも、やはりやることは同じだったんだろう、な……」)
 過去の記憶、それに首を振ると、カナリアは二振りの剣で十字の斬撃をたたき込んだ。
 よろけるオークだが……それでもまだ、健常。狙いを付けていた静夏へと、触手を伸ばした。
「ブヒィィ!」
「わっ、と」
 巻き付かれ持ち上げられる静夏。だが、既にそこを狙っているものがいる。
 御剣・冬汰(恋するどえむ・e05515)。オークへと生み出すのは、滅びし妖精8種族が残した業の一部から作り上げた、魔法矢。
「ただでさえ気持ち悪いオークなのに、醜さに拍車が掛かってるなぁ……」
 と、どこかあっけらかんと言うと、その力、『Pumpkins★Trickster!!』を行使。
「それに、早々に、オレの悪戯を見たいようだね? なら、披露してあげるから……存分にイイ声で鳴いて……愉しんで?」
 撃ち出された矢は……正確にオークを追尾。
 幻想的な橙の光を弾けさせると同時、核を穿って、静夏を捕らえる触手をもはじけ飛ばした。
 ブヒィィ、とオークの声が響く中、冬汰は、投げ出された静夏を受け止める。
「よっ、と。平気かい?」
「ありがとう。でもこれくらいの方が、命を懸けている実感があるね」
 応える静夏は……受けたダメージにも、喜色を浮かべていた。
 それは、戦いへの楽しみ。地面に降りると、退魔の撞木を投げ捨て……左拳をオークへ突き出した。
「さて、ここからが、本番だよ」

●触撃
 オークは憤慨するように鳴くと、さらに触手を蠢かせる。
 が、空から降りてくる煌羅がそれを遮った。
「やらせぬよ」
 と、旋刃脚をオークの真上からたたき込む。オークは体液を散らせて、たたらを踏んだ。
「さすがに体力も減って来たようじゃな」
「このまま、倒してしまいましょう。動きは単調です」
 ほのかも剣を掲げ、オークへ肉迫している。
 欲望に任せたオークの動き、それを縫うように、懐へ飛び込むと……二振りの剣がかすかに輝きを帯びた。
「我が守護星たるアクエリアスよ、剣に宿りて敵を討つ力を!」
 深々と喰らわせるのは星天十字撃。その衝撃にオークは転げ、もだえた。
 攻撃の間に、シェスティンは再びライトニングウォールを発現。死神の噛みつきで出来た仲間の負傷を、治癒していく。
「全快とは、いかないかもしれないです、が……」
「充分。後はオークに、そろそろ静かになってもらいたいかな」
 剣を手放した静夏が、発生させたのは……線香花火の様な、奥ゆかしい火花。
 その火球を纏った左拳でオークへ放つのは、『サイレントサマー』。ゆっくりとした動作と、風鈴の音と共に訪れる衝撃は、しかし弱くはなく……炎でオークを燃え上がらせていく。
 和は目の前の死神をブラックスライムで捕食し、確実にダメージを与えている。その間もオークを注視しつつ。
「オークはもう少しか。頼りにしてるよ」
 と、和が声をかけるのは巫山・幽子。幽子も御業でオークにダメージを与えつつ、頑張ります……と和に応えていた。
 実際、オークの体力は残りわずかだった。
 だが、うめくように起き上がると……そこで最後の足掻きと言わんばかり、触手を伸ばしていた。
 狙いはちょうど死神の攻撃に押し戻された、和。
「ひゃっ!?」
 元々、和は声、顔立ち、身長とも女子と見まごうようだが……それでも普通のオークならば狙わない対象だった。とはいえ、そこは見境のないオーク。ここぞとばかり和の服の中に、触手を滑らせた。
「ちょっ……やめっ、ひぃうん!? ……あっ、だ、だめっ……そこは……!」
「それ以上、させるか!」
 飛び込んだのは、カナリア。
 カナリア自身、間近で触手を見れば、今でも過去の経験が疼くことがある。
(だが、過去のことだ……慣れねば、なるまい)
 だからこそ、というように、鎧の脚部で思いきり旋刃脚を打ち込み……触手を断ち切った。
 ぽてっと地面に着地した和は……少しばかり、涙を浮かべてじたばたする。
「うぇ~ん! ボクもうおうち帰るー!」
「大丈夫かにゃ? 傷は、今治すにゃ」
 そこに、ケーシィが介抱に入り……ジョブレスオーラをかけ、心身を癒していくのだった。
 オークへは、冬汰がガトリングガンを向けて対応に出る。
「いやあ、酷いことをするもんだね。まあ、マゾ心としては触手にも、興味は唆られるけど……」
 そこから、ガトリングガンを連射。オークが声を上げるが、すぐには止めない。
「今回はゴメンかな☆ そっちでいっぱい苦しんで☆」
 しばらく連射を続け、蜂の巣にしてオークを瀕死へと持ち込んでいくのだった。
 和はその間に、何とか触撃のショックから立ち直っていた。
「ごめん。少々取り乱したよ……」
「まだ、怪我が残っているだろう」
 と、言うのは支援に駆けつけたロイ・メイ。癒しの劔、『造られざる棺』を和に振るっていた。
「春高楼は遙か遠く、我が心臓は燃え狂う。 幾千の刃に耐え主の下へ。 地に伏し血に伏し、棺に横たわる因果、 我が劔を以て断ち切る」
 その、祓い癒すような力が、和の浅い傷を、ほぼ完治させた。ありがとう、と和が応えると、その横でロストーク・ヴィスナーが口を開く。
「許せない敵だね」
 ロストークも、ヒールドローンで前衛の仲間の防備を固めつつ……オークへ目を向けた。
「僕らもこうして、支援するから……標的が増える前に、撃破を頼むよ」
「無論じゃ。ベルセルクならぬバイセクオーク……これ以上の悪業は、許さぬ」
 煌羅が息を吸い込み、炎の息でオークを包み込むと……もはやオークは、死を待つのみ。
 その運命を決定づけるのが、ほのかだった。
「虚空の彼方に封印されし冥界の王、死を司るものよ、我が敵を滅ぼす力を」
 唱えると同時、異界の門より「封印されし冥王の剣」を招来。それを握ったほのかが放つ力こそ、『死の剣』。
「これで終わりです」
 その刃で、オークを斬り捨て、裁断し……その体を跡形もなく消滅させた。

●攻勢
「ほのかお姉さん、すごい、です」
 シェスティンは小さく言いながらも、さらに雷を発生させ、前衛を覆っていく。
「後は死神だけ、です。だから最後まで、万全で挑みましょう、ですっ」
 その雷が仲間の傷を修復し……ほぼ万全の状態にまで持ち直させていった。
 それでも直後、死神2体が猛って、静夏へと噛みつく。
「大丈夫、ですか」
「ちょっと危なかった……けど、これが戦いって感じだね」
 シェスティンに、静夏はうまく飛び退きながら、笑顔で応えた。そのまま素速い動きで、跳び上がり……1体を脳天からアックスで打つ。
「すぐ癒すから、どんどん戦ってくれにゃ! ぼっくんも!」
 と、すぐにジョブレスオーラで静夏を回復させるのは、ケーシィ。同時にぼっくんも同じ1体に大きく噛みつき返していた。
「よしっ、オークさえいなくなれば!」
 和も、そう言って攻勢に転じている。
 別角度から攻撃を狙う1体を禁縄禁縛呪で掴み上げると……カナリアもそこに接近、大きく拳を引いている。
 直後、降魔真拳が直撃。悲鳴を上げる死神を見ながらカナリアは横へ顔を向けた。
「消耗した1体を頼む。もう瀕死のはずだろう」
「りょうかーい☆ というわけで、カタを付けようか♪」
 冬汰は軽い足取りで一歩、下がると、グラビティを発現。
 瞬間、天空より無数の刀剣が生まれ出た。
「はーい、頭上にご注意☆ ……もう遅いけど☆」
 冬汰の言葉と同時、刀剣は雨のように飛来。さらにそれらの刀剣が踊るように舞い、死神達を切り刻んでいった。
 その威力に、瀕死の1体は言葉通り、刀の錆となって消滅する。
 残る2体も、斬撃から逃れ得ず、その牙を大きくそぎ落とされていった。
「いい光景だねぇ☆ 自分がされたらと思うとぞくぞくするよ♪」
 と、最後まで楽しげに言う冬汰だった。
「残りは2体、か。締まっていくかの」
 煌羅は引き続き、死神を警戒して見上げるが……死神も甲高い声を上げ、獰猛さを増している。
 2体で一気に突撃し、煌羅へ噛みついた。
 しかしその直後。後衛から、撫子桜・千夜姫が跳躍。触れ合わせた唇と指の間に、癒しの力を顕現する。
「重力の鎖よ、紡げ。癒しの口づけ」
 その力、『嘆吸』を手裏剣型にして投擲すると……煌羅の負傷がみるみる回復していった。
「ジャンジャン投げるですから、怪我は心配いらないです」
「すまぬの。……ならば、魂を奪い合ってみるか」
 応える煌羅は、すぐさま死神に向かい合っている。
 拳を突き出し、放つのは降魔真拳。その1体を吹き飛ばす。
 そこで、ほのかが地を蹴り、空中で煽られるその1体に狙いを定めた。そのまま撃ち出したトラウマボールを、違わず命中させる。
「このまま、1体ずつ確実に叩きましょう」
「わかり、ました。私も攻撃、します」
 そう言って、杖を振るうのはシェスティン。
 シェスティンは、本当は、誰かを傷つけるのは苦手だった。それでも、仕事を全うするためにやらなければならないことも、ある。
 杖からほとばしるのはライトニングボルト。その雷撃が死神を撃つ。
 焼け焦げる死神に、静夏がサイレントサマーの一撃を、和がレゾナンスグリードでの捕食を喰らわせていくと……一気に、体力は減ったようだった。
 だがこの1体も、必死の形相でカナリアに牙を立て、自身の体力を回復させる。
 ただ、それでもカナリアは、治癒しようとするケーシィに声をかける。
「私はまだ平気だ。皆で攻めて、体力を削ろう」
 言って、サイコフォースの爆撃で死神を強襲。ケーシィも頷いて、ぼっくんから巨大な絵筆を取り出す。
「それなら、見せるのにゃ、ぼくの世界!」
 そうしてケーシィが絵筆で、イラストを象ったブラックスライムを放つその能力は……『視覚的な夢物語』。
 刀剣を持った獅子獣人の戦士のイラストが、死神に次々と攻撃を加えていく。
 そこへ冬汰も魔法矢を放てば……死神も苦悶を浮かべた。
「おっと☆ そろそろ終わりかな?」
「引導を渡してやるかのう」
 と、肉迫するのは煌羅。極限まで高めた力で、真っ向から拳を放つ。
「毎自作是念 以何令衆生 得入無上道 速成就仏身!」
 敵を内部から破壊する絶招、『龍慈菩薩拳』。
 打ち終えた煌羅が地面に着地すると同時……死神が、爆発するように四散した。

●決着
 残った死神は……しかしその能力もあり、体力のほとんどを残しているようだった。
「死神は一番嫌いだー、ってにーちゃんが言ってたにゃ。今なら、ぼくもそんな気がするにゃ」
 ケーシィが言うと、ほのかは頷きつつも剣を構える。
「でも、残りは1体です」
「うん。にゃから、絶対倒すにゃ!」
「ええ」
 ケーシィが気合いを新たにすると同時、ほのかも応え、疾駆。跳びながら、縦の斬撃と横の斬撃で斬り込んだ。
 シェスティンは、気力溜めで作り出したオーラをカナリアへ放出。受けた傷を回復させ、最後まで盤石の体勢を保っていく。
「多分、もう少しです、から。皆さん、頑張って下さい、です」
「うん。最後まで、止まらずいくよ」
 と、言いながら跳ぶのは静夏。アックスを上段に構えると、そのまま大きく振り下ろして重い一打を加えた。
「どう? 集中攻撃されれば、回復も追いつかないよね」
 それでも死神は何とか蠢いて、和に噛みついてくる。だが和は構わずに、御業でその体を捕縛。
「今更そんな攻撃、気にしないさ。そして、平和を乱す奴はー、ぶちのめす! オレって平和主義者だから!」
 言って、死神を引き剥がすと、そのまま御業をもって締めつけた。
 そこにケーシィも、ブラックスライムを伸ばす。
「これでどうにゃ!」
 鋭い槍の如く変化したブラックスライムが、死神の体を、深々と貫く。
 空から落ちかける死神に、全兵装で全弾発射し……捨身の突貫をするのは、カナリアだった。
「これで最後だ! くらえ!」
 飛び込みながらの、全力での滅多切り……『最終決戦奥義全兵装全開放突貫捨身斬』。
 死神が死滅すると同時、その負荷に耐えきれなくなったのか……カナリアの防具が全て、弾け飛んだ。
 全裸となるカナリアだが……どこからか飛んできたバスタオルが、ぎりぎりのところで大事な部分を隠したのだった。

「さよなら、です」
 シェスティンは、散っていくデウスエクスに対し、柔らかく告げる。
 戦闘後。剣を収めたほのかが皆の方へ振り返っている。
「あの、皆さん無事ですか?」
 それに、皆は肯定を返した。回復の手が良く回っていたために、皆の傷は浅く済んでいた。
 それでも、ケーシィは少し息をついた。
「でも、結構大変だったにゃ。もう復活したりしにゃいといいけどにゃ」
「完全に消滅させたつもり、だけど。でもそれで死神のサルベージを防げるかは、わからないね」
 静夏が何となく、敵の消えた跡を眺めると、和も考えるように言った。
「サルベージって、何なんだろ? 残留思念の実体化、とかなのかなー?」
「分かりませんが……事件がまた続くなら、注意が必要ですね」
 ほのかの言葉に、カナリアが頷いてみせた。
「出てくれば、倒す。それが仕事さ」
 ちなみにカナリアは、煌羅から上着をかけてもらっていた。オークにやられた……というわけではないのだが、煌羅の僧侶としての心遣いだった。
 煌羅は、死んだ敵へと、題目を上げていた。
「南無妙法蓮華経。……これが、供養になればいいがの」
「じゃ、帰りましょーか!」
 冬汰が言うと皆も頷き……ケルベロス達は、帰還することとなった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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