リザレクト・ジェネシス追撃戦~王女の盾として

作者:きゅう

●守りたいもの、守るべきもの
「第二部隊の離脱も完了しました!」
 その報告を聞いた護衛騎士リィズは表情を緩め、残った部下たちに微笑みかける。
「ここまでは無事に終わりましたね。皆さんご苦労様」
 リザレクト・ジェネシスの戦いの後、護衛騎士リィズは、部下を10人ずつ、時間差をつけて戦場から離脱させていた。
 そして、部下たちが逃げていった方角から残った部下たちに視線を移し、
「……」
 次の言葉を躊躇する。
「隊長。次のご命令を。……もし言いづらいようであれば、私が」
 それを察したように、部下の1人がリィズをじっと見つめながら言葉を促した。
「……そうね。ごめんなさい」
 まだ経験の浅い部下たちが多く、この命令を出していいものかと考えていた。
 だが、そんな部下の言葉で踏ん切りをつけ、
「私達はこれより、離脱した仲間たちの安全を確保するため、ここで待機!」
 今残っているすべての部下に向けて、仲間の盾となることを宣言する。
「追撃が予想されるが、蟻の子一匹通さない。どんな犠牲を払ったとしても!」
 リィズは、王女の盾としての矜持を胸に、その大盾を高々と掲げ、
「私達はどこまでもついていきます!」
 その言葉に部下たちの心は高揚し、それぞれ武器を天に向けて掲げるのだった。

●追撃戦
「『リザレクト・ジェネシス』の戦い、お疲れ様でした」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、用意した紅茶とお菓子を振る舞いながら、先のケルベロス・ウォーの勝利を祝う。
「戦いはケルベロスの勝利に終わりました。ですが、戦場にはまだ多数のデウスエクスが残されています」
 しかし、彼女はその先の仕事のことも忘れずに告げ、
「そこで、追撃戦を行い、離脱するデウスエクスたちを討伐することになりました。
 皆さんには、第二王女ハールの部下、護衛騎士リィズの部隊の追撃をお願いします」
 彼らに今回の依頼を提示した。
 現在、護衛騎士リィズの部隊は、東京湾アクアブリッジから離脱をはじめているようだ。
「ただ、護衛騎士リィズ本人は未だ当地に残っており、迎撃の体勢を取っています」
 おそらくこの追撃を予想しているのでしょう。とセリカは付け加える。
「護衛騎士リィズは名前の通り、守備に優れたエインヘリアルです」
 非常にタフな相手であり、ちょっとやそっとの攻撃ではその守りを崩すことはできない。
「そして、その周りにはリィズの部下のエインヘリアルの騎士が9人。あわせて10人との戦闘になります」
 リィズの部隊は、護衛騎士リィズが最前線に立ち、攻撃を受けながら、部下の騎士たちが攻撃に専念することで相手の戦力を削るという戦術をとる。
「護衛騎士リィズに攻撃を集中させるのは簡単ですが、それで倒せないとなると苦しい戦いになるかもしれません」
 小細工なしの正面衝突が予想されるため、細かい戦術が勝敗のカギとなりそうだ。
「このままエインヘリアルたちを逃がしてしまうと、せっかくの今回の勝利が後々に生きてこないかもしれません。
 相手はかなりの強敵ですが、皆さんならやってくれると信じています」
 セリカはそう言って、王女の盾を貫くような一撃を。と、期待するのだった。


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
款冬・冰(冬の兵士・e42446)
新城・瑠璃音(相反協奏曲・e44613)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)

■リプレイ

●正面衝突
 普段は車の走る音が鳴り止まない長い道路。東京湾アクアブリッジ。
 そこを占拠する護衛騎士リィズたちは、静かにケルベロスたちを待ち構える。
「?」
 そんなリィズの目の前に現れたのは、何かに吊るされゆらゆらと揺れる木製の箱。
 パカッ。ギャーッ!
 その箱は眼の前でびっくり箱のように突然開き、驚いた顔で叫ぷ。
「……ぷっ」
 リィズは思わず笑みを漏らしながら、その箱をつんっとつついた。
「リリ。戻って」
 つつかれた箱を釣り上げるように、ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)は手に持った釣り竿で、ミミックのリリを手元に戻す。
「可愛い子。リリっていうの?」
「……ぅん」
 ラトゥーニは、彼女たちが逃げ出さないように気をひいて時間を稼ごうとし、
「……もう少し、じっくり見せてほしかった」
 リィズもまた、配下を逃がすために時間を稼ごうとする。
 そんな2人の思惑が一致して、両者は暫くの間距離をおいて睨み合っていた。
「俺はオウガ、柴田鬼太郎! 我と思わんやつは前に出やがれ!」
 だが、いつまでもそうしてはいられないと、柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)の名乗りとともに、両者は戦いの火蓋を切る。
「さーて何人生還出来るかなぁ? 楽しんでってねぇ♪」
 ナナツミ・グリード(貪欲なデウスエクス喰らい・e46587)の飛散する悪意が先手を取ってエインヘリアルたちを飲み込むと、
「怯むな! 1人ずつ確実に倒すのだ!」
 リィズは的確に指示を出し、ケルベロスたちを各個撃破するよう指示を出す。
 ケルベロスたちの狙いも全く同じ。お互い数的優位を作ろうと、攻撃を集中させた。
「戦闘開始」
 款冬・冰(冬の兵士・e42446)は嵐のように吹き荒れる敵味方の攻撃をかいくぐり、
「目標捕捉……シュート」
 高速滑走しながら杖を持った敵に近づき、その勢いで鎌を投げつけ、
「まれびと来たりて凍空を翔ぶ」
 続けて氷の長刀を生成すると、
「何者にも、阻まれる事無く」
 次の瞬間、まるで一羽の燕が滑空するように斬撃が放たれ、交差した敵がゆっくりと崩れ落ちる。
 冰が長刀を生成した後一息に距離を詰め、グラビティによるトンネル効果で敵の守りをかいくぐるように強烈な斬撃を浴びせたのだ。
「――冬影「通し燕」」
 冰は自壊する長刀には気も止めず、崩れ落ちた敵を確認しながら、剣を構え直した。
 数で勝るケルベロスたちは少しずつではあるがエインヘリアルを倒していく。
 一方、エインヘリアルたちも、個々の実力の高さを活かしながら、1人、2人とケルベロスを倒していく。
「あとは頼みます」
 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は致命の爪を相手に突き刺しながら集中砲火を受け、
「さぁ、こっちへいらっしゃい」
 満身創痍となったフィルメリア・ミストレス(夜の一族・e39789)は、敵を道連れにするように引き込み、戦場から消えていく。
「最後衛を任じるその気持ちには敬意を持って戦わせていただきます……参ります」
 新城・瑠璃音(相反協奏曲・e44613)は決死隊として戦う敵に敬意を表しつつ、
「ですが、手加減など失礼ですし、そちらも望まないでしょう?」
 白黒の翼を軽くはためかせながら、奇蹟を願う歌を歌い始め、その思いを言葉にする。
 その力によって敵の攻撃を阻害し、戦局を五分へと引き戻すのだった。

●護るべきもの
「仲間の為に自ら盾になる意志は、わたし達と通ずるものがあるけど」
 影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)は敵の結束した戦い方に感心しながら、
「私達もまた襲撃される訳にもいかないから。生半可な覚悟ではいけないね」
 相手もチームワークで実力以上のものを出すのなら、間違いなく強敵と判断し、
「まずは少し揺さぶってみるよ」
 リナは油断なく弓を構え、左右に動きながら狙いを定めて矢を放つ。
 その矢を追うように、ルエリラ・ルエラ(幸運エルフ・e41056)の幸運の矢Ⅴが雷槌の速さで追いつき、
「殿を守る騎士か。相手にとって不足は無い」
 九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)もまた、炎龍槍で同時に突くことで、エインヘリアルの腹を貫き、抉り取った。
 一方、クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)は、護衛騎士リィズと最前線で相対する。
「ボクと同じ盾の騎士なのでありますね。いざ勝負であります」
 お互いに守ることに長けた者同士。
 とはいえ、リィズの圧倒的なパワーの前に、クリームヒルトは耐えるのが精一杯となる。
「しかし、侵略者たるエインヘリアルと地球を護るケルベロス。護るものの重さが違うのであります!!」
 だが、クリームヒルトはそもそもの戦いの意義を口にし、自らを鼓舞すると、
「なるほど。だが、この戦いは私にとって、再起を図る陛下。並びに部下たちを護る戦いだ!」
 リィズの真っ直ぐな信念も決して折れず、お互い後ろに控える仲間を守り、鼓舞しつつ、武器、そして盾をぶつけ合う。
「これはなかなかしんどいっすね。でも、ボクは負けないでありますよ」
 クリームヒルトはリィズを攻撃を諦め、しぶとく生き延びることを最優先に切り替える。
「特別製だよ、ヒーリングバレット!」
 天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)はそんなクリームヒルトに、後ろから薬品の弾丸を放ち続け、2人でリィズの攻撃に対応する。
「自分を盾にしてまで目的を果たそうとするのは一人の戦場に立つ者としては尊敬するよ」
 だけれども、これは戦争。お互いの正義を主張させて戦う場だ。
「だから、悪いけど、ここできっちりと討たせてもらうよ、リィズ」
 蛍は過剰なまでのヒールをクリームヒルトにかけ続け、リィズを2人の眼の前に釘付けにするのだった。

●戦いの行方は
 両者の戦いは、お互い一歩も引かない互角の戦いが続いていた。
「死ぬことのなき亡国の姫、出会う者に祝福を謡う……」
 蛍がリィズの前で支援を続けているため、瑠璃音は攻撃を仲間に任せ、
「やがては別れになると知っていても」
 歌い上げるのは「孤独なる永久姫の詩」。
 永遠の命を望まずと得た姫が祝福をもたらす、少し切ないその歌で、傷つく仲間たちを奮起させ、攻撃に転じる。
「……」
 そんな仲間たちの攻撃を見ながら、味方が隙を突かれないように動き回るラトゥーニは、
「……みつけた」
 そう言いながらタイミングをはかり、
「……そぉれっ」
 ケルベロスたちが狙っているのとは別の敵に向け、虚無の物体を放り投げる。
 その攻撃は大きなダメージを与えることはできなかったが、それから少しの間、敵の連携が崩れて攻勢が弱まった。
 ラトゥーニは、敵が連携しようと指示を出していたエインヘリアルを狙ったのだ。
「むっ。いかんな」
 その様子を横目で見たリィズは自分が指示を出そうと大きな声で叫ぼうとして、
「リリ……シュート」
 しかし、それより早くラトゥーニがリリを放り投げ、彼女の口元で邪魔をする。
「くっ」
 リィズはリリを振り払うように攻撃し、リリは遠くへ吹き飛ばされるが、
「相手はボクがするっすよ!」
 すかさずクリームヒルトがリィズに反撃し、配下たちへの指示を妨害した。
 それでもエインヘリアルたちは態勢を立て直して攻撃を集中させようとするが、
「いつまでも好き勝手に攻撃させねぇよ」
 鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)が狙われたケルベロスの前に割って入り、いくつかの攻撃を代わりに受け止める。
「大丈夫か? バル!」
 すべての攻撃を受け止める事はできなかったが、繰り返しカバーリングすることで、ケルベロス側の被害が小さくなっていった。
「道弘殿。感謝する」
 道弘にかばわれた、彼の教え子兼ケルベロスの先輩であるビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)は、炎礫射撃で敵の足を止めながら御礼の言葉を口にし、
「これが俺の仕事だ」
 道弘は無理やり拉致って連れてきた教え子を、淡々と護る『仕事』を続けた。
「たまふりの声を、貴方に」
 さらに、集中攻撃を受ける道弘を援護するため、瑠璃音の喰霊刀から現れた魂が彼に重なり、活力を与え、
「そこですね、逃がしません」
 手が空いたところで攻撃に転じ、星型のオーラに力を籠めて蹴り飛ばした。

●王女の盾として
「……ここまでのようですね」
 僅かな乱れから主導権を奪われ、配下の半数を失ったリィズはそうつぶやくと、
「全員敵の攻撃に警戒しつつ後退! そのまま戦闘を離脱して生き延びることを最優先!」
 撤退の指示を出す。配下のエインヘリアルたちはその意図を汲んで躊躇したが、
「拒否は認めません。私を盾にして逃げなさい」
 リィズは有無を言わさずそう続け、背を向けた彼女たちに追撃するものがいれば、どんな手を使ってでもそれを防ぐという明確な意志でケルベロスたちを睨む。
 そんなリィズの行動に対して、ケルベロスたちは一旦攻撃を止め、
「自らの身は惜しくない、か。本当に……尊敬に値する相手だよ。リィズ」
 蛍は心の底からリィズを称賛しながら、
「だけど、私達も負ける訳にはいかない。こちらに攻める気を無くすくらい、徹底的に攻め落とさせてもらうよ」
 視線は彼女の動きからそらさずに。仲間たちの傷を癒やすために距離を取る。
「……感謝します」
 リィズはすぐには攻めてこないケルベロスたちに謝意を漏らすが、
「これは手加減ではありませんので」
 蛍と同じく仲間たちの傷を癒やす瑠璃音は、そう言って首を横に振り、
「リィズさんがどれだけの強敵かはわかっています。ですので、その盾を割るために、最善の行動をしているだけです」
 味方が万全の体制で戦うため。と答え、リィズはそうですかと一言返し、微笑んだ。

「改めて、護衛騎士リィズ……参る!」
 リィズの配下のエインヘリアルたちが撤退し、ケルベロスたちが万全の体勢を整えた上で、再び戦いは再開される。
「まだ倒れるには早いであります! 光よ!」
 リィズはクリームヒルトに向けて剣を振り、クリームヒルトは盾でガッチリと受け止めながら再臨の光で全身を包み、その猛攻を受け止める。
「――俺達を怒らせて、タダで済むと思うんじゃねーぞ!!」
 道弘はそんな怒りの感情を咆哮にこめ、大音量でリィズの耳元を攻撃する。
 赫怒の咆哮。と呼ばれる道弘のそれは、防御に長けたリィズといえども防ぐのは難しく、
「くっ」
 という声を漏らしながら一瞬怯む。
 その隙を逃さず、冰の冬影「通し燕」がリィズの硬い防御をもかいくぐって確実に傷をつけると、
「対象健在。リナ、マボロ、任せる」
 さらなる波状攻撃を導くために2人を誘導する。
「わたし達の全力で貴女を貫いてみせる!」
 リナは斬霊刀を構えて攻撃するが、リィズは簡単にその攻撃を防ぐと、
(「どんなに守りが堅くても、風の刃でかく乱して突き崩す隙を作ってみせる!」)
 リナは続けて刀身に風の力を纏わせて、
「風舞う刃があなたを切り裂く。風魔幻舞刃!」
 放たれた魔力と幻術が混じり合い無数の風刃となってリィズの鎧を切り裂いていく。
「まだまだっ」
 しかし、リィズはその風刃一つ一つを的確に防御しながら、剣をふるい反撃を試みる。
「そのくらいじゃあ、わたしは止まらないよ」
 リナは軽やかにその攻撃をかわし、舞い踊る刃をリィズの足元に集中させ、
「あとお願い!」
 自らも舞い踊るようにステップを踏みながら、リィズを足止めした。
 そこへ斬りかかるのは、刀に紅い稲妻を纏わせた幻。
「甘い!」
 だが、リィズは上体だけでその斬撃をかわし、盾で受け流す。
「何処に逃げても斬ってみせよう」
 幻は焦らず、稲妻の赤い光で彼女の盾を貫き、
 くひひ。という特徴的な笑みを浮かべながらリィズの反撃を紙一重で避ける。
「機会があるならば一度サシでやりあってみたかったよ」
 幻は一人で仲間を守り、最後まで戦い抜くリィズに興味を抱きながらも、訪れることのないその機会を惜しみつつ、彼女の喉元に向けて刀を伸ばし、
「楽しかったよ。さらばだ」
 二度と立ち上がり、その盾を持つことがないように渾身の力で突き、貫いた。
「も、もう、動かない……よね?」
 それでもなお、倒れることなくまだこの場を守ろうと立ち続けるリィズに、リナは少し怯えながら刀を構え、しばらく見つめる。
 だが、リィズが動き出すことはなく、しばらくの沈黙のあと、ようやく勝利の実感が湧いてくると、
「これで一区切り、ですね。お疲れ様でした」
 瑠璃音は刀を振るって鞘に納め、向けて軽く祈りを捧げ、疲れ切った体を癒やすように微笑むのだった。

作者:きゅう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年1月11日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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