灰色密林の交錯戦

作者:崎田航輝

 静寂の市街。
 ひとけの無い街並みに冷たい風だけが吹く、そんな中を進む八つの影があった。
 人型の姿形を持つそれは、障害物の無い道から道へ素早く移動。先頭の影が前方の状況を確認すると、手による合図で他の影を呼び寄せる。
 建物がある場所では物陰に潜むように匍匐し、ときに周囲に注意しながら高台で索敵をしていた。
 刃を持つ個体、銃を持つ個体、槍を持つ個体。武装は様々なれど、一様に竹から出来た体を持つデウスエクス──攻性植物。
 大阪の緩衝地帯の街で、索敵、侵攻。人の住まう市街地を目指して進んでいた。
 隠密をしながらの移動は滞りなく進む。なれば、目的地は遠くない。大きな音を立てず、竹の人型は前へ。警戒を怠らず、コンクリートの密林を進んでいく。

「今回は、市街地での攻性植物に関する作戦となります」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は皆に説明を始めていた。
 大阪城への潜入作戦が成功裏に終わって、暫く。
 手に入れた情報は貴重なものとして今後に生かされるだろうとイマジネイターは語る。
「しかし同時に、それによって攻性植物の警戒レベルが上がってしまったようです」
 現在、大阪城周辺の警戒区域に、竹型の攻性植物の軍勢が展開が確認されている。
 彼らは大阪城へ接近するケルベロスを警戒しつつ、大阪市街地への攻撃を行い、支配エリアを拡大させる事を目的としているようだ。
「こちらの目的は、緩衝地帯を進む竹型攻性植物を見つけて、撃破することです」
 そのために是非力を貸してください、とイマジネイターは言った。

「敵となる竹型攻性植物は8体。無人の市街地を索敵しつつ進んでいます」
 敵はケルベロスの侵入がないと確認すれば、人のいる市街地へ攻撃を開始するだろう。
 そのため、こちらは緩衝地帯で確実に迎撃する必要がある。
「ただ、敵は隠密行動を取りながら、連携をとって進行しています。仮に無策で臨んだ場合、敵に先に発見されて奇襲攻撃されることは免れないでしょう」
 そのために──こちらも索敵しつつ進行することになるだろう。
「敵は戦闘時も連携してきて、戦力的にはこちらと互角……なので、奇襲に成功した側が非常に有利になります。索敵段階から最大限の警戒を持って当たってくださいね」
 イマジネイターは資料を示しつつ、ホワイトボードに市松模様──黒白のチェック柄を描く。
「今回の現場は大まかに、比較的高層の建物が多い区画と、比較的低層の建物が多い区画の2種類の区画があると思って下さい。その2つがチェック状に並んでいるイメージですね」
 高層区画は周りに比して高台を取ることが多くなるだろう。
 逆に低層区画では四方がビルなどに囲まれることになる。
「1つの区画は広くはありません。けれど区画をいくつもまたいだり、高低差のありすぎる状態で別行動を取るとすぐには合流できなくなるので注意をしてくださいね」
 そして、戦闘にあたっては全力で撃破を、と。
 イマジネイターは声に力を込める。
「大阪城への再潜入のチャンスに繋げる事や、敵の数を確実に減らすこと……目的はいくつもあります。けれどまずは人命を守るために。是非、頑張ってきてくださいね」


参加者
シエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
罪咎・憂女(刻む者・e03355)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
ハル・エーヴィヒカイト(ブレードライザー・e11231)
瑞澤・うずまき(ねこさんのペット・e20031)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
アルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)

■リプレイ

●索敵
 音を立てずビルの角に踏み寄り、姿勢を壁に平行に保つ。
 正面から徐々に角の先を警戒するカットパイ。
 のちにクイックピークでその道に敵影が無いと確認すると、ハル・エーヴィヒカイト(ブレードライザー・e11231)は合図で仲間を呼び寄せた。
(「これで──少なくとも周辺は問題無し、か」)
 ハルの心境に応えるかのように、こくりと頷くのは四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)。底の深い茶色の瞳で、一度ぐるりと見回していた。
 周辺は静寂だ。
 事前に入手した地図とは所々で変わってしまっているところもある。だが、少なくともこの一帯ではスーパーGPSでざっくりとした地形の確認は可能。索敵と共に、“待ち伏せ場所”の選定に役立てることは出来た。
 それは千里が見上げる視線の上──丁度、今位置するビルの上。
 千里やハル達をA班として、遠くない位置にB班もいる。地上の警戒が済んだところで、皆で高台に上がろうと隣り合ったビルの非常階段を上り始めた。
 B班の罪咎・憂女(刻む者・e03355)はA班にもハンドサインを送り、登攀の際にも警戒を欠かさない。
 その一瞬一瞬が、隙の無い隠密行動を生む。少しの後には問題なく全員でビルの屋上に上がることが出来ていた。
 無論、高台こそ気を抜けない場所でもある。高層区画の上部とも言えるそこは、行き来できる他の屋上も合わせれば広い空間だ。
 そんな中、小棟や給水塔、設備の影から小さな鏡を伸ばし、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)はしかと安全を確認。手の合図と共に可愛らしい微笑みを向けて、B班の皆を先導しつつ移動していく。
(「うん、この辺りならよく見えそう」)
 そしてイズナが近づくのは、空間の北東端に近い位置。北と東の低層が見え、北東の高層にも目が届く場所だ。
 一方、そこへサインを返すアルト・ヒートヘイズ(写し陽炎の戒焔機人・e29330)はA班として北西側へ。B班と合わせて広域をカバーできるように位置していた。
(「さて、と。あとは待ちつつかね」)
 双眼鏡と肉眼を交互に、アルトはつぶさに広域を見渡す。
 羽猫のアイゼンにも定位置の頭からどいてもらっているのは、本気の表れ故だろう。同時に緩やかに移動しつつ至近の索敵も続けた。
 アルトの後ろに続くシエナ・ジャルディニエ(攻性植物を愛する人形娘・e00858)は、敵部隊以外にも攻性植物の戦闘痕がないか、一歩一歩観察していた。
(「Rechercher……ここには何も無さそうですの」)
 少しでも攻性植物の情勢に関する情報が欲しい。だが、何も見つからない。
 無論、目の前の戦いも大切だ。だからシエナは索敵にも集中する。
 秋の風が吹く。
 ビルの上は爽やかですらあるのに、どこかぴりぴりと不穏さが肌を突く。それはおそらく、戦いの時が迫る予感がしたからかもしれなかった。
 B班として街を見据える燈家・陽葉(光響射て・e02459)は、そんな空気の中でも焦る様子もなく。ただ落ち着いた表情で、隠密を保ちながら双眼鏡を覗く。
(「あの低層区画の南側、少し怪しいね」)
(「うん」)
 と、視線に応えて頷く瑞澤・うずまき(ねこさんのペット・e20031)も、その顔に緊張は表さない。寧ろ朗らかさすら保って、真っ直ぐに北東側を見ていた。
 しかと敵を見つけようと、よしと一つ頷いて見せるのは明るい表情。
 反面、心ではそれを必死に保とうとしている部分があった。
 嫌われないように、と。誰かの役に立てるように、と。それは自分を認められない気持ちからくる、もがくような心。
 それでも役に立ちたい気持ちが本物だからこそ、この作戦を絶対に成功させたい心は強かった。
 そのうちに、きらりと眼下で反射する光を見つける。
 陽葉が既に皆に合図を出していた。
(「皆、敵だよ──!」)
 それはこのビルにもほど近い、北側低層区画の東部。南方向へ進行するように、人型の影が見えていた。
 敵も全方位を警戒しているが、こちらが動きを少なくしていることや頭数を分かれさせていること、都市迷彩に身を包んでいる事も功を奏して発見はされていない。
(「しかし、戦術はどこで学んだのでしょうね──」)
 憂女は目を細める。
 実際、敵の動きも無駄がない。気を抜けば奇襲も免れなかった事だろう。
 ならばこちらも隙を作らぬように。
 皆は静やかに迅速に。戦闘態勢を取ってその時に備える。

●迎撃
 八体の竹の人型は、クリアリングを繰り返し前進。高層区画へ侵入している。
 それは淀みのない隠密行動のはずだった、が。
 そのまま高台へ上がり、周囲の索敵に移ろうとしたその時。ひらり、と目の前を舞う一匹の蝶がいた。
 幻想的な緋色に煌めいて、宙に遊ぶ光の蝶。
 先頭の攻性植物はそれにふと目を奪われる。すぐにはっとして槍を構えるが、既に遅い。
 ──その一瞬が致命的だよ?
 そんな可憐な声が聞こえたのは、それがイズナの顕現させた『緋蝶』だからだ。浮遊するそれはいつしか敵一体の心を魅了するように動きを止めている。
「このまま行けるよ!」
「うん、任せて」
 イズナの声に続いて響いたのは陽葉の声音だった。
 眩い光の軌跡が奔る。陽葉は地を蹴って跳び、空靴で宙を駆けていた。
 そのまま美しい煌めきを生みながら、陽葉は吸い込まれるように敵へ。完全に無防備だった脳天を烈しく蹴り抜き、その一体を四散させていた。
 ふわりと着地する陽葉はあくまで穏やかに、目を向けてくる敵に言ってみせた。
「ここで食い止めさせてもらうよ。これ以上人が住める場所を減らせないからね」
「ええ──市街地には一歩も近づけさせません」
 ──だから全力を出させてもらう、と。
 憂女は静やかな表情の中にどこか刃物のような鋭い空気を湛えていた。
 瞬間、『戦龍の咆哮』で大気を震わせる。重力鎖を塗り替えるほどの声で、仲間に魔を砕く力を宿らせていた。
 時を同じく、うずまきは鎖を踊らせて白く輝く魔法陣を展開。仲間の防護を固めている。
「これで一先ず準備は整ったよ……!」
 うずまきが明るく言う頃には、皆で包囲を始めている。こちらの内、四人が上手く奇襲による先手を取ることが出来た形であろう。
 敵は先鋒を皮切りにして武器を向けてきた。が、そこに不意に空間を侵食するような領域が広がる。
「悪いが、簡単には譲らない」
 その中心にいるのはハル。それは無数の刀を内包する領域だった。
 さらさらと髪が靡くのは、黒色が本来の白に戻るから。手にした喰霊刀に加え、具現化した斬霊刀を握ると、ハルはそれを真っ直ぐに突きつけていた。
 刹那、無数の刀剣までもが具現化されて雨嵐のように降り注ぐ。『終の剣・久遠の刹那』──刃の奔流が敵に突き刺さってゆく。
「さあ、この隙に」
「うん……攻めるね……」
 風と共に緋色が奔る。疾駆する千里の瞳が茶から淡い光を帯びたものへと色づいていた。
 敵先鋒の個体はよろめきつつも迎え撃とうとする。が、千里が間合いを詰める方が早かった。
 きらと光るのは和の意匠が美しい機甲靴”雪月花”。千里が両手を前方の地に付けると、それは『月』の文字を浮かべ、夜空の月のような煌きを纏った形へ変化する。
 瞬間、千里は倒立回転の如き動作でそれに弧を描かせ、真正面から踵落としを打ち込んだ。
 一体が吹っ飛ぶ間に、敵後衛は狙撃を試みようとする。が、そこへはシエナが立ちはだかり、弾丸を受け止めてみせた。
 同時、シエナは自身の攻性植物ヴィオロンテに大顎の形をとらせる。そこから激励の咆哮『リュジスモン・ヴァジー・フォンス』を上げさせて自身を癒やしていた。
「Prevenir……攻撃を通したければまずはわたしを倒すですの」
 言葉に誘われるようにもう一体の先鋒が刺突を仕掛ける。
 が、アルトが手を伸ばすと、周囲に陽炎にも似た揺らぎが生まれていた。幻術のように辺りを取り巻くそれは、シエナを包み込んで癒やすと共に仲間の防護も兼ねていく。
「よし、アイゼンも頼むぜ」
 ようやく頭の上に戻っていたサバトラの短足気味なマンチカン──アイゼンは、ひとつ鳴き声を返してぱたりと羽ばたき、仲間の守護を手伝っていった。
 敵中衛は、前衛を癒そうとしてくる。だが物陰から物陰へと遷移して死角を取っていたイズナは、螺旋の力で前衛の一体の後頭部を狙撃して撃破する。
 陽葉も阿具仁弓を強く引き絞っていた。雪の霊力を纏うそれは『風花の矢』──命中すると一体を凍結させていく。
 憂女は納刀状態の刀を取ると視線を千里へ。
『前の敵は任せるぞ』
「了解……後ろは頼むね……」
 千里は機甲靴を『花』の文字に変化させて跳躍していた。
 そこへ銃口を向ける敵後衛。だが、憂女は鞘走りで火の粉を散らすと、そのまま炎を纏った抜刀。焔で薙ぎ払うように後衛の三体を襲う。
 千里はその間に降下。花吹雪の如き火花を舞わせると、鮮やかな蹴撃を叩き込んで前衛の個体を撃破した。

●秋風
 攻性植物達は、ゆっくりと一歩下がっていた。
 微かな呼気は番犬の猛攻へ呻きを零しているようでもある。
 イズナはえへへ、と。どこか蠱惑的に笑んでみせていた。
「攻性植物なのに人の軍隊の真似をしてもダメだよ。ぞろぞろ出てきて支配エリアを増やしたいみたいだけど──飛んで火にいる夏の虫だからね?」
 敵はそれに対して言葉を返さない。だが、形勢が不利になっても退かない、否、既に退くことが出来ないとも理解しているようだった。
 ならば攻めるだけ、と。一瞬後にはまた踏み寄ってくる。
 シエナは微かにだけ眉尻を下げる。
 この敵は味方にすることも保護することも出来ない相手だ。だから自分が死なぬ限りは、倒さねばならない。それが少し、哀しい。
 だからせめて想いだけは知りたい。
「Le doute……あなた達も──同胞の為に戦っているのでしょうか?」
 そしてどんな思いで死地に乗り込んだのか。ほんの少しだけでも、それを心に刻みたかった。
 攻性植物は、ただ攻撃を繰り返すばかり。だがその容赦の無さと必死さに、敵もまた己の生き残りの為に死戦に挑んでいるのだろうと感じられる、そんな気がした。
 事実、敵の猛攻は尚烈しい。
 後衛が一斉に行う掃射は火の雨で、気を抜けば倒れてしまいそうな程だ。
 それでも、うずまきは耐えて耐えて、倒れない。
 前までだったら多分、誰かの為ならいの一番に倒れてもいいと思っていたかもしれない。
 けれど、自分はきっと少しずつ変わっている。友人が出来て、大切な人が出来て。ただ必死にもがくだけではなくて、自分を大切にして、自分を保っていかないと周りを護る事も出来ないのだと気付き始めたから。
 何よりここにいるのはたった一時だけど大切な仲間。
 だから皆が無事に帰れる様に、倒れてはいられない。
「大丈夫、だよっ……!」
 表情は真っ直ぐに保って。繕ってるだけかもしれないけれど、そうすることで強くなれる部分もきっとあるから、と。『標的自動追尾機会☆改』にて自己回復と仲間の強化を兼ねると、羽猫のねこさんの羽ばたきも加えて体力を癒やした。
 次いでシエナもヴィオロンテに輝く果実を生らせ、更に小竜のラジンシーガンにも属性の力を注がせて前衛を万全にする。
 この間に陽葉は光を湛えた矢を番えていた。
「狙いは中衛だね。みんな、畳み掛けるよ」
「じゃあ俺もやるかね」
 オウガメタルの銀粒子を撒き終わっていたアルトは、赤の装甲に包まれた腕をぎしりと握り込んでいる。
 そこに練り込まれるのは赤々とした焔気。刹那、陽炎の刃が生成されると同時に神速の踏み込みを見せていた。
「行くぜ、夢現の境──刻んでやるよ!」
 敵の精神すらも斬ってみせるその一撃は『戒焔剣:白昼凶夢』。まるで心が焔に包まれたかのように、爆撃役の個体は蹲って苦悶する。
「私が続こう」
 ハルは二刀を閃かせ、風を巻き込むかのような剣舞。流麗にして鋭利な剣閃を踊らせて一気に体力を削り取っていった。
 そこで陽葉は矢を放つ。光の流線を描いたそれは正確無比にその一体へ飛来。速度のままに体を貫き、光に散らすように爆散させていった。
「次はリーダー格かな?」
『ああ、では──叩くとしようか』
 憂女は黒紅色の流体装甲を腕に集中させると、素早い踏み込みを見せている。
 首領格は剣闘で応じようとしてくるが、憂女は敵の刃ごと叩き割って連撃。腹部に重い拳を叩き込んで吹っ飛ばす。
 壁に激突させれば、イズナがそこへ狙い違わぬ狙撃を連続させ、首領格も打ち砕いていった。
「これで、あと少しだね?」
 頷く憂女は返す刀で後衛に接近。刃を縦横に走らせて、炎で弱っていた後衛の一体を千々に裁断していく。
 残る二体は自己回復を繰り返していた、が、それでも効果は厚くない。
「……もう遅い」
 千里は妖刀を目いっぱいに引くと、強烈な刺突。重力エネルギーを含んだ一撃『千鬼流 伍ノ型』で胸部を貫き絶命させた。
 ハルは刀を掲げて領域を広げると、無限の刀剣を残る一体へ突き刺していく。
 串刺しにされて動きを失ったその個体へ、ハルは疾駆。無数の刀ごと、二刀で両断した。
「──さよならだ」
 その声が響く頃には敵は崩れ落ち、辺りには静寂が帰ってきていた。

「終わったな」
 アルトが非戦闘状態へと戻ると、皆も頷く。
 敵の気配の消えた市街地はただ静かで、涼しい。シエナはそんな中、攻性植物を丁重に弔っていた。
「Pleurer……これがわたしに出来るせめてもの償いですの」
 埋めた残骸すらそのうち消えゆくだろう。それでもシエナは自分の中でやるべきことをやっておきたかった。
 皆の無事を確認すると、イズナは少し周囲を調べてみた。
「うーん、手がかりみたいなものはないね」
「そうだね。でも、敵をしっかり倒せてよかったよ」
 陽葉が言えば憂女も頷く。
「ええ。被害は最小限に抑えられました。とはいえ、ここ自体を早く解放できればいいのですが……」
「うん……でも今は作戦を成功させられたことが一番……」
 千里は茶の瞳で、風の吹く市街へ視線を巡らせた。
 ここは未だ緩衝地帯に過ぎない。けれど今日のような戦いの積み重ねが、きっと望む平和を招くと思うから。
「敵が出たら……また倒す……」
「そうだな。今は先ず、脱出しようか」
 ハルが踏み出すと、うずまきは元気に頷いた。
「うんっ。みんなお疲れさまっ」
 そうして跳ねるように進んでいく。
 風に秋の匂いが強まっていた。ここで季節をもっともっと、平和に感じられる日がくればいい──それぞれに思いながら、皆は緩衝地帯を脱出していった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年10月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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