オータムフェストが竜牙兵に襲われる!

作者:東公彦

 福岡町では秋にシダレエンジュの花祭りが開催される。百年近く前から行なわれるようになった新しい祭りだが、このシダレエンジュはそう美しいわけではなく奇異というのが町役所のモッパラの評判だった。なので町の一部の人々は全く別の催し物で町おこしを試みる。それが福岡オータムフェストである。
 オータムフェストは福岡町でも広大な敷地面積を誇る天川自然公園で行われ、福岡町や近くの町の特産品、郷土料理、大人気のグルメショップ、芸能人を呼んでの司会などなど、それなりに元手のかかったイベントを揃えていた。シダレエンジュに対抗して用意されたのはリンドウで、これは福岡植物園で生育されていたものをこの日のために苗から育てたものだった。花は大きな花壇いっぱいに紫色の花弁を広げ来場者を歓迎している。
 オータムフェストが行われるようになって福岡町には観光客も集まるようになっていた。当初こそ花祭りの開催日にぶつけていたフェストだったが、しいてはその競争が町に活気を生み出し、多少の対立を経て、いま二つの祭りは互いに寄与しあっていた。
 賑やかな会場に牙が降ってきたのは暮れに差し掛かる頃である。徐々に山際へ消えていく太陽を貫くような勢いで牙は地面に突き刺さった。4つの牙はそれぞれ形を変え、1mほどの背の低い骸骨となる。人間に似ているようで少し違うそれらは一様に鎌を握っていた。
「ケンの連中は相変わらずさかっておるの」
「我らエンに勝てると思っておるのでしょう」
 言葉にしながら、竜牙兵は騒ぎ出した人間達を値踏みする見る。そして不意に鎌をきらめかせた。農具のようにも見える小ぶりな鎌は、いともたやすく人間の肉を斬り裂いた。それは一瞬の出来事で、血が飛び散った後に悲鳴があがる。逃げようとする人間の背中へ竜牙兵達は鎌を突き刺して回る。
「丹念にの、根切りにせよ」
「キッキィー!」
 竜牙兵は人々に飛びかかり、鎌を血に濡らしていった。


「クリームたっぷりのプチシュー……チョコドーナツ……カラフルなマカロン……」
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)はうっとりと中空を見やっていたが、ケルベロス達の視線に気づいてハッとした。恥ずかしげに頬を赤くする。
「ごめんなさい! ちょっと思い出しちゃって……。竜牙兵がオータムフェストを襲うみたいなんです、美味しそうな催し物がいっぱいの会場に乱入してくるなんて酷いです! 竜牙兵の狙いがグラビティチェインなので皆さんを避難させてしまうと予知通りにならないのです……けど警察くんにも応援を頼んであるのでそこは大丈夫だと思います。ケルベロスのみんなは頑張って竜牙兵と戦ってください!」
 ひときわ風が強く吹いてフリルのワンピースを揺らした。ねむは服を押さえながら風に負けじと説明をつづける。
「竜牙兵は4体、お猿さんみたいですけど……怖いです。自然公園の会場はとっても大きいけど竜牙兵はまとまって人を襲ってたのです! なので竜牙兵の居場所はすぐにわかると思います、そしたら全面対決です! 戦う時にお店や会場を壊しちゃっても、しっかりヒールすればみんな許してくれると思います。それよりも人の命と甘いものを守らないとです!」
 甘いものについてはねむの主張であるが言い換えれば、会場を気にせずケルベロスの力を振るって人命を救ってほしい、ということであった。子供らしい言葉足らずなところもねむらしい。
「絶対に竜牙兵の作戦を阻止してほしいのです! みんなとフェストを守りましょう!」
 握り拳をつくってねむは体をはずませた。


参加者
ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)
木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)
コンスタンツァ・キルシェ(スタンピード・e07326)
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)
クルーアル・フローラル(其の掌は何を攫む・e25724)
ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)
アルクァード・ドラクロワ(爬虫類大嫌いな血晶銀龍伯爵・e34722)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)

■リプレイ

 フェスト会場に現れた竜牙兵に先んじて、まず地獄の番犬が牙を剥いた。潜伏していたファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)が思念を集中させると、竜牙兵を中心にして爆発が起こる。爆風にファルケのウエスタンジャケットとスカーフがはためく。指向性と範囲を見事に調整した爆発は竜牙兵のみを殺傷した。するとジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)が爆音にも負けじと声を張り上げた。
「ケルベロスが来ましたよって、もうだいじょーぶ! お祭り会場もちゃあんと直しマス!」
 語尾の上がる独特のイントネーション。敵を倒し祭りを守ることを確証してみせたジジの声で待機していた警察が動き出し、避難をはじめた。不意の攻撃に竜牙兵達が態勢を整えようとしたその刹那、銃弾が意思を持つかのように予期できない方向から竜牙兵へ襲いかかる。
 コンスタンツァ・キルシェ(スタンピード・e07326)の賑やかに装飾されたトンプソン型リボルバーが白煙をあげている。跳弾射撃にたたらを踏む竜牙兵達。その背後に影が起きた。影は気配も音もなく素早く刀をきらめかせる。魔を断つごとに切れ味を増す『叢雲』の刃が竜牙兵クモの胸を突いた。刃は鎧を突き抜けたが必殺とはいかない、相手は人間ではない。
「面倒ね」
 刀を引き抜きリーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)は再び景色に溶け込んだ。
「なんとっ」
「落ち着け。初手は取られたが、冷静にの」
 竜牙兵キリがきつと口にすると動揺はおさまった。キリはそのまま木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・e02879)に飛びかかる。不意の攻撃を愛用のギターである『ワイルドウィンド』で防ぐが、勢いを削ぐのが精いっぱいで、鎌は深くウタに刺さった。うめき声をあげて痛みに顔をしかめるウタ、しかしウタは歯を食いしばり地獄化した半身から炎に包まれた拳を突きだした。振るった拳はハリを守らんと身を乗り出したクモを炎弾のように速く激しく打った。
「そうそう自由には戦わせないぜ」
「木霊氏の言う通りでござるよ。拙者、足並みを乱すのはお手の物ですぞぉ」
 ウタが正面でクモと向かい合うなか、エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)は側面から駆け寄り手刀を振るった。クモも応戦するが、エドワードは無理に組み合わない。隙をついて手首を掴み、捻り上げ動きを封じてから膝裏を貫くばかりに足を蹴りだした。敵の体が崩れ落ちたところをオウガメタルをまとわせたブーツで蹴り飛ばす。
「貴様ぁ!」
 竜牙兵ハリとヘビがエドワードへ殺到するがクルーアル・フローラル(其の掌は何を攫む・e25724)がアルクァード・ドラクロワ(爬虫類大嫌いな血晶銀龍伯爵・e34722)と共に立ち塞がった。
「誰が冥府へ一番早くゴールできるか、競わせて差し上げましょう」
 クルーアルが無手に構え打ちかかる。数度攻防を重ねると、敵は素早く小手を返してクルーアルの腕を刃にかけた。鮮血が飛ぶが彼女はかまわず手足を振るい続けた。竜牙兵という存在そのものが彼女にとって因縁である。
 アルクァードは槍を構え敵に向かう。
「行くぞ……全員皆殺しだァ!!」
 駆け抜けながらアルクァードの頭に銀角が、背中からは翼が生え、臀部から尾が飛び出す。ドラゴニアンとしての力を存分に発揮させ近接に持ち込むアルクァードをヘビは厄介に感じたか、彼の足を薙ぎ切って後方へ飛び退いた。大した傷ではないな、アルクァードは更に前進を続けた。
 さて、エドワードに吹き飛ばされたクモは立ち上がるも、起き上がった彼の眼に飛び込んできたのは巨大な杭の射出孔であった。ジジは小さな体にはあまりに不釣り合いなパイルバンカーを持ち上げ、容赦なく追撃とした。射出された杭は絶対零度の冷気と共に竜牙兵の体に打ち込まれる。
「キンキンに冷やしてまうヨー」
 話し方からしても一見おっとりとした少女だが頭の回転は速く判断力も十分すぎるほど持っていた。思惑どおりクモの体は氷に侵食されはじめる。
「うふふ、どいつもこいつも大したことありませんわね。さぁ、おいでなさいな」
 クルーアルは少女とは思えない妖艶な笑みを首魁らしきキリにむけた。侮蔑に竜牙兵たちの眼が燃え上がる。
 氷に体を侵食されながらもクモは身近にいたジジを歯牙にかけんと鎌を振るった。袈裟懸けに振り下ろされる刃を懸命にかいくぐったジジだったが、背中に裂傷をつくる。満足そうに鳴くクモ、だがその命が滅ぶ時は近かった。
「とっておきだ! 死に行き、死するは我が杖の前。死を断つ水銀に映し、聖句を世界に伝えよ……降れや鋼!!」
 アルクァードの詠唱に一対の光蛇が空間から引き出され、神鋼棒と名づけられた一本の杖に巻きつく。一つの武具となった杖は竜牙兵へ一直線に降り落ちて銀鱗を散らし爆発を引き起こす。銀鱗の猛毒にクモの体が自壊し、ついに風に消えた。


「クモが滅びたか。まとまった行動も出来ぬの」
「そう出来ないように動いているからねぇ!」
 呟くキリにファルケが斬りかかる。炎をまとったルーンアックスは、しかし敵を捉えることなく空をきった。ファルケは振り払われる鎌を即座にリボルバーで受け止め、斧で弾き返し距離を置く。と、後方から理力で練ったコンスタンツァのサイコフォースが破裂する。攻防の隙をついた見事な追撃である。
 砂塵で視界定まらないなかをリーナは姿勢を低くして悠々と駆け抜けた。気配を感じ取り迎え撃つキリ、その鎌がリーナの体に刺さると、ふっと力なく彼女の姿がかき消えた。残像に気を取られたキリの急所を頭上から一閃するとリーナは再び砂塵にまぎれる。
 いまや竜牙兵達には状況の打開が必要であった。キリは手傷をも覚悟のすえ、砂塵の中から一直線にクルーアルへ肉薄した。ともかく侮蔑を後悔させてやらねばならない。気概と共にクルーアルへ鎌を振るう。ハリとの戦闘に集中していた彼女の反応は遅れ、鎌が腹部を深く斬り裂いた。どっと血が溢れ黒いドレスを汚した。
「この程度でっ、止まるものですか!」
 クルーアルは迫る二撃目を身をよじってかわす。ウタが加勢に加わるべく駆けつけるとキリはすぐさま身を引いた。傷が深いと判断するやウタはすぐに青の凱歌を口ずさんだ。地球のグラビティを乗せた歌がクルーアルの傷を癒し、再び闘う力を与える。その間、エドワードとジジは近づこうとする敵を牽制した。
 エドワードは大小武装の異なるドローン群を展開させ、射撃弾幕を形成させる。銃弾が面を形成し、ロケット弾頭が炸裂し視界を悪化させた。四方八方からの射撃に竜牙兵は身をひそませる。エドワードの攻撃は的確に彼らの時間を奪う。
 ともかく銃弾から逃れようとハリが動くと、即座に閃光がその体を撃ちぬいた。ジジはエドワードの攻撃から逃れ出ようとする敵をバスターライフルでよくよく狙い撃つ。二人の連携攻撃は見事に竜牙兵の足並みを乱した。しかし射撃が止むと、二体はすぐさま反撃へ転じる。鎌を手に近接戦へうつったハリがジジへ、ヘビがエドワードに飛びかかるとみせかけ、これもまたジジへと急旋回した。
「危ねえ!」
 エドワードが鋭く叫び、ジジの前に滑り込む。振り下ろされるヘビの鎌を片腕で防ぎ、避けられぬハリの一撃は身を反らして急所から外す。ハリは続けざまに攻撃をしようと身を翻したが、その眼前に黒衣の人影が立ち塞がった。クルーアルは傷ついたままの体で巨大なハンマーを振るい、力任せにハリへ打ちつけた。
「砕け散りなさい!」
 くぐもった悲鳴をあげながらハリは吹き飛ばされ、木立に当たり力なく地に伏した。一撃を見舞ったものの受けた傷に膝をつくクルーアル。しかし竜牙兵達が攻撃を加える隙はなかった。間断なく槍の雨が降り注ぐ。アルクァードが特別狙いを澄まして槍を投げると、矛先が見事にヘビを突いた。
「ケンの連中、我々エンが消えればさぞ満足だろうな」
 ヘビが呟くと、ファルケがうんざりといった様子で手を振った。
「はた迷惑な競争だねぇ。でも、そのケンとやらも人に危害を加えるようならケルベロスが駆逐してしまうはずだよ。さてと、俺もいっちょやってやりますか!」
 仲間達の奮戦にファルケはぺろりと唇を舐めた。体を斜にしてリボルバー銃を引き抜くと、目にも止まらぬ速さでハンマーを叩いた。ゆっくりと仰向けに倒れるヘビ。銃声は確かに一度、しかし竜牙兵の頭蓋には三つの穴があいている。果たして自分の命が失われたことに気づいただろうか。
「さっすが、アタシの彼氏っす。かっこいいっすよ~!」
 アタシらが凄腕だってとこ見せてやるっす。コンスタンツァはぐっと握りこぶしをし、力をため跳躍した。コンスタンツァの姿に闘牛のオーラが重なり、リボルバーから放たれた弾丸は赤く輝き荒れ狂う闘牛そのままに竜牙兵へ押し迫った。たった一発きりの銃弾とは思えない膂力に竜牙兵キリの体は四散した。


 幸い、竜牙兵が会場に与えた被害は小さいもので、むしろ被害箇所を探すためにケルベロス達は祭りを回りがてらヒールを施すことにした。決して、祭り自体が目的ではない。
「そう、遊んでるわけじゃないっすよ」
 誰ともなく呟いてコンスタンツァはうんうんと頷いた。隣ではファルケが両手に荷物を抱えている。大抵がコンスタンツァのねだったもので、そのたび持ちきれない分をさりげなくファルケが受け取っていた。
「あー、あれすごいっす!」
 口にしてコンスタンツァは特大のスペアリブが焼かれている鉄板へ走り寄って行ってしまう。あれも買うのだろうか、よしんばそれはいいが、はたして二人で食べられるか……。
「まっ、みんなで食べればすぐなくなるよねぇ」
 ファルケはカーボーイハットを押し上げる。ひらけた視線の先ではコンスタンツァが小さな体を懸命にはずませ、大きく手を振っていた。彼女がホットパンツであることにひと安心して、ファルケはゆっくりコンスタンツァに歩みよった。

『高原の美味しい牛乳』この宣伝文句にジジの足が止まる。衝動買いして即座にフタをあけ、ぐいっと瓶をあおる。市販のものより遥かに濃厚な牛乳の甘みが口に広がった。
「おぉ! いい飲みっぷりでござるなぁ」
「うちかて牛乳が好きでたまらんわけやないんです」
 ジジが頬をむくれさせる。エドワードも自分のジョッキを傾けた。琥珀色の中身はすぐに空となる。するとリーナが生クリームたっぷりのクレープを二人の目の前に差し出した。
「これ、美味しい……」
「くれるんですか?」
 ジジの顔がぱっと明るくなる。しかしリーナは静かに首を振ってクレープを食べだした。ものの数秒でそれらを食べ終えて一言。
「報告しただけ……」
「ま、まぁ、もともと拙者の飲み物には合わないでござるなぁ」
 大人の飲み物を注ぎつつエドワードはリーナを注視した。ジジも彼女が手に提げるビニール袋、しいてはその中身のスイーツ類に目をやる。
「……リーナさん、えらい食べますね」
「……そう?」
「あら、食べなければ戦う力が出ませんわ」
 控えめに微笑むクルーアル、しかし食欲は控えめではなかった。道々の店の食べ物を片端から買い上げて、小さな口ですっかり平らげてしまう。大食い選手権を早送りで見ているような、深い洞穴に食べ物を落としている感があった。それはリーナも同様で、彼女は甘いものだけを買い集めていた。リスのように大きくふくらむ頬で咀嚼している時だけ口元がはっきりと微笑をつくる。
 ジジは自分より年下である二人の食欲と、それをすんなり納めてしまう体に見入った。リーナのドレスは胸元から背中にかけて大きく開いており、均整のとれたプロポーションを強調していた。クルーアルは少女らしい見た目ではあるが、それは花の蕾に似たもので数年で大輪を咲かせることは容易に予感できた。ジジはふっと呟いた。
「やっぱ牛乳だけじゃダメなんやろか」

 フェストには福岡町の有名店も出店しており、行列が出来ている店もあった。普段から混みあう麺屋は地豚のチャーシューにラード、地産地消を目指す傾向に人気の一端があった。行列に並んでいたウタはようやくラーメンを手に入れ、さて、ヒールの場所を探すかと食べ歩きをはじめる。しばらく歩くとリュウタンの鮮やかな青や紫が目に入った。夕映えに唯一立ち向かう色彩をみせるその花に近づくと、ふと声が降りかかった。
「それは、なんであるか?」
 リンドウの花が咲く花壇の側にある枯れ木にアルクァードが腰かけていた。彼は高い所から花畑を一望していた。種族特徴を出さない、上品なスーツ姿のアルクァードは木の上にいることも相まって衆人の眼にはつかなかった。いや、フェストに来る客はリンドウならばまだしも、枯れ木など目に入らないのだろう。
「豚骨ラーメンだぜ。並んだんだから、とらないでくれよ」
「ふんっ、そんな臭うものを誰が」
「どうしてそんな所にいるんだよ」
 ウタが当然に抱く疑問を口にすると、アルクァードも当然と言うように答えた。
「リンドウが好きだからだ。色も形も美しい、竜胆という名前も高貴である」
 それに……悲しむ者を愛す、という花言葉も。思いながらアルクァードは腕に巻かれたスカーフを触った。
 ウタも風に揺れて花弁を震わすリンドウの姿をぼんやり眺めた。ふと思いついてギターをつまびく、澄む弦音はリンドウが風になく声のようだった。二人の男は音色に耳を傾け、リンドウも感じているだろう風を体にうけていた。と、
「男二人、夕陽に風、ギターの音色……うぅ~ん、おセンチでござるなぁ」
 突然に木々の間からエドワードが顔を出した。身をのけぞらせるアルクァード。なぜここに、と言葉の出る前に元気な声が響き渡った。
「いたーっ、いたっすよ!」
 コンスタンツァが勢いよく両手のビニール袋をかざす。
「買いすぎちゃったっすから、みんなで食べるっす~」
「スタンが買ったものがこんなにあるんだ。みんなも食べてくれるかい?」
 手際よくジジが花壇の側にシートを敷くと、ファルケが食べ物の山をおろした。リーナも、これでもかというほど両腕に下げていたビニール袋をおろしシートに座った。袋の中身はフェスト中のスイーツで、そのほとんどが自分ひとり分であった。
「確保……」
「なんか宴会みたいですぅ」
 ジジがにっこりと笑い、お気に入りの靴を並べてシートに腰をおろす。
「リンドウでお花見もよいかもしれませんわね」
 言いつつクルーアルの視線はもう山の中のスペアリブへ向いていた。ひざ丈のドレススカートをシワにならぬよう折っている。木から降りてきたエドワードは含み笑いを浮かべながらジョッキを片手に飲み物の相棒を食の山から発掘している。アルクァードは苦笑いをした、しかしそこには嫌悪の色はない。
「みんなで花見ってのもいいな」
 ギターをしまい、ウタは風に揺れるリンドウとそれを守った仲間達をながめた。

作者:東公彦 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年9月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 1
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