薄紅の夏薫り

作者:崎田航輝

 緑の道に吹く夏の風に、ほんのりと甘い匂いが乗る。
 歩む人々がふと目を向けてしまうのは、道の向こうに旺盛を迎えた果実の農園があるからだろうか。
 緑の茂る自然いっぱいの中に、薄い紅色の実を沢山に付けた木立が並んでいた。風に葉がさらさら揺れると、まんまるとした果実まで可愛らしく揺れて、青空に匂いを昇らせる。それは旬を迎えた桃農園だった。
 整然と並んだ木々がどれも実で彩られたその様は、文字通り桃色の並木道と言った様相。今まさに収穫の時期であるその一つ一つが甘く芳醇に育っていた。
 だがふと、その上空にふわふわと陽光を反射するものがある。
 それは実りへの祝福か、否か。風に流れて舞い降りてくる謎の胞子だった。
 桃の木に取り付いたそれは、またたく間に枝葉を蠢かせ、独りでに動き始める。
 風に薫る果実の芳香を感じていた道の人々は、その発生源が近づいてきたことに、気付いていたろうか。木々の間から抜け出るその姿に驚く暇も与えず、変貌した果実の異形は人々へと喰らいかかっていく。

 甘い果実の木が攻性植物となり、人々を襲う。
 予知に見られたこの事件にイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は困った表情を浮かべていた。
「丁度、旬を迎えた桃なんですね。元が木であるだけに、それなりの大きさを持った怪物と化してしまったようです」
 放置しておけばもちろん人命が危うい。他の果実や自然に被害があっても困るし、確実な対処が必要だろうと言った。
「ということでみなさんのお力をお借りしたいのです」
 現場は大阪市内。爆殖核爆砕戦の結果によって大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出している──その流れで今回の攻性植物も発生するに至ったのだろう。
「現場はお話しした通り、桃農園の近くの道となります」
 自然が豊かな緑の道だ。木々のある場所だが、道幅は広く障害物は無いと思っていいだろう。
 そこに、桃の攻性植物は真っ直ぐにやってくる。
「人通りのある道ではありますが、今回は警察や消防が避難誘導を行ってくれます。皆さんが到着して戦闘を始める頃には、丁度人々の避難も終わる状態になるでしょう」
 こちらは急行して討伐に専念すればいい、と言った。
 ところで、とイマジネイターは資料を眺める。
「ここの桃農園は、近くのカフェに新鮮な桃を提供しているみたいです。今の時期、そのお店では桃のスイーツが食べられるみたいですよ」
 店は絶賛営業中ということで、無事に戦闘が終わればそこに寄っていってもいいかもしれませんとイマジネイターは言った。
「季節限定メニューらしいので味わってみてはいかがでしょうか?」
 薔薇の花のように果実をたっぷりのせたタルトに、レアチーズの風味と果実の舌触りが楽しいムース。爽やかな冷たさとジュレが綺麗なフローズンヨーグルト、芳醇な甘さを楽しめるコンポート。桃フレーバーのサイダーなど飲み物も含め、どれも人気だと言った。
「そんな憩いのひとときのためにも。ぜひ、敵を撃破してきてくださいね」


参加者
ロゼ・アウランジェ(アンジェローゼの時謳い・e00275)
狗上・士浪(天狼・e01564)
シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)
楠木・ここのか(幻想案内人・e24925)
月岡・ユア(孤月抱影・e33389)
クラリス・レミントン(黎明の銃声・e35454)
ココ・チロル(箒星・e41772)

■リプレイ

●薫風
 緑の道へ到着すると、桃の薫りが漂っていた。
「夏休みにおばあちゃんの家に行くと、育てた桃をくれたもんでしたっけ……」
 薫る風に、楠木・ここのか(幻想案内人・e24925)は翡翠の瞳を閉じて思いを馳せる。その味を想起してぎゅっと自分の手を握った。
「……いやー懐かしい懐かしい。とにかく瑞々しいピーチでリフレッシュするために。今は一仕事がんばりましょー!」
「うん! も~も♪ 桃~! 桃を食べるために、ボクも頑張るの!」
 歩みに月色の髪を揺らす月岡・ユア(孤月抱影・e33389)は楽しげな表情。
 けれど輝く眼差しには、鋭さも同居している。
「──ねぇねぇ、だから大人しく狩られてよね? ……ねぇ?」
 と、呼びかける前方。
 そこに木々から現れた4体の異形があった。
 桃の攻性植物。薄紅の実を付けたまま、根で這ってきている。
 リティア・エルフィウム(白花・e00971)は藍の瞳をまん丸にしていた。
「桃が! 桃がーっ! あんなになってしまうなんて、勿体ないにも程があり過ぎます!」
「……まぁ、しかし、この手の事件も減らねぇな」
 一方の狗上・士浪(天狼・e01564)はふためく様子は無く、荒い素振りで大槌を携える。
 とは言え皮肉が口をつかないのは、この敵が罪の無い存在だったからだろうけれど。
「とりあえず、やるか。減らせるうちにやっとかねぇとな」
「ええ! 人を傷つけるなんて、いけませんから!」
 胸に手を当てるのは、ロゼ・アウランジェ(アンジェローゼの時謳い・e00275)。金蜜の髪を揺蕩わせ、七彩の薔薇を緩く踊らせながら声音にも色を込めた。
「そして甘くて美味しい、大好きな桃を頂くために! とびっきりのメドレーを聴かせてさしあげます! ──さぁ、桃の皆様! 甘くてからーい歌を、召し上がれ!」
 そして歌ったのは、前に進む者への賛歌。
 優しくも力強い歌声が敵の葉を散らしていくのが、開戦の合図だった。
 敵が歌に慄く中、青空に夜色が廻る。シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)がくるりと回転し、藍髪を棚引かせて守護の魔法陣を描いたのだ。
 ──夜空のように深い、護りの加護を。
「此れで惑わず、立ち向かって頂けるかしら」
「うん、ありがとう。しっかり、攻めさせて貰うね」
 加護を身に、クラリス・レミントン(黎明の銃声・e35454)は銃口を空へ向けていた。
 その射撃はしかし一瞬の静寂を運ぶ。
 撃たれた閃光弾が、頭上に消えたかに見えたのだ。
 だが直後にはそれが宙で分散。『彗星のち轟雷』の名に違わぬ雷撃を奔らせ、敵を痺れに陥らせた。
「バレ、一気に、行くよ」
 そこで豪快に速度を増すライドキャリバーに乗るのは、ココ・チロル(箒星・e41772)。
 ドリフトで4体へ突っ込めば、ココ自身は風に尾を揺らしながらもグラビティを発散。離れざまに爆風を生んで敵を足止めていく。
 その隙に士浪が砲弾を撃てば、リティアは剣でくるくると星屑を舞わせて防備も広げていた。
「これで守りも完璧ですよー!」
「では私は攻勢へ移ります──これぞ本当の桃狩り! ……なーんちゃって!」
 掌大の風の太陽を生み出したここのかは、一陣の風を放出。敵の果実を大量に吹き飛ばしている。
 間合いを取ろうとする個体へは、ロゼの奇蹟を顕す歌を背景に、ユアが迫っている。
「逃がさないよ、桃! キミを倒したら他の美味しい桃が食べれるんだから♪」
 食欲旺盛な月の狩人は、剣撃。さらに『月狂乱舞』を歌ってロゼにハーモニーを加えた。
 ユアから離れた3体は蔓で前衛を打つ。が、リティアが翼の輝きでそれを癒やすと、シャーリィンが逆に敵へ銃口を向けていた。
「人に害をなすなんて、いけないわ。──香り豊かで瑞々しい桃を頂く為にも。ここで速やかにご退場くださいませ」
 流星群の如き弾丸が襲い、1体が砕け散っていく。

●討伐
 桃の木はわななきを発する。まるで、得た命を奪われることへの訴えのようだった。
 それにクラリスは首を振る。
「皆の命が危ないのは勿論のこと……美味しい桃まで台無しにされて、私達ケルベロスが黙ってるわけないじゃない」
 声音には怒り。
 ただ、そこには同時に冷静さもあった。
 あの熊本で人々の死を見た時。自分は零の怒りに囚われていた。でも今は、自身の感情に向き合える。
 ──大切にしたいのは、守りたいのはプラスの感情。皆の心の支えになるため戦うって、決めたから。
 だから憤怒すらもそのために。
「桃源郷にデウスエクスは立ち入り禁止、なんだよ」
「ええ。こんなにも美味しそうな、香りなのに、残念ですが……他の桃に被害が、出てしまうなら、看過できません、から」
 ココも、威嚇してくる敵を真っ直ぐに見据えていた。
「ここで、食い止めましょう」
「うん、絶対に」
 応えて扇で敵陣を打ち据えるクラリスは、確かに心が澄んでいたろう。ロゼが歌う遊星──その旋律の遊び心に溢れたアレンジに、心地良さそうに目を細めていたから。
 敵が止まった隙に、ユアが1体に迫る。
「ねぇねぇ、この桃、焼いたらいい香りするかな?」
「炎……アップルパイならぬピーチパイができそうですね!」
 頷くここのかは逆方向から挟んでいた。その言葉にユアはじゅるり。
「ピーチパイ、焼き桃……美味しそう」
「というわけで行きますよ、ばーん!」
 ここのかはトゥシューズで地を踏むと壮観なアティチュードから、タンデュを得て優美なピルエットでひらり。『赫い靴』でバレエを演じて炎を起こす。
 燃ゆる焔の中で、ユアは闇の翼で旋転して一撃。火花を散らし、蹴り出すように炎を放って1体を灰にした。
 残る2体は微睡む薫りを放ってくる。だがクラリスがその全てを庇いきると、リティアは上方を仰ぎ、天空を煌めかせていた。
「これですぐに癒やしますよ~! さぁじゃんじゃか降りなさぁーい!」
 空から『降り注ぐ癒しの光』は、白色の輝きでクラリスを癒やす。
 同時にココは『癒の策・堅忍』。後を考えて甘さ控えめの丸薬を提供してクラリスの意識を保った。
「あと少しで、治療は、済みそうです」
「じゃあお願いしますね!」
 と、ここのかに頼まれたテレビウムはすぐに絶品桃デザートの応援動画を流す。
 仲間が万全となれば、シャーリィンは敵に手をのべていた。
「あなた達も──焦げてしまいなさい」
 ぽたり、と。落ちたのは紅い雫だった。それは呪いの血。『恋獄』に木々を閉じ込め、熱く焦がれる程に灼けさせる力だ。
「そろそろフィナーレの時間ですね!」
 そこへロゼは『ノルニルの鎮魂歌』を歌い、眩く光る終焉の大鎌を顕現した。
 運命を、時空を、終焉を歌う声で。鮮やかにその刃を誘って、燃える1体を両断した。
 僅か1体となった敵は距離を取ろうとする。が、士浪が先んじて行く手を塞いでいた。
「諦めろ。生きてここからは出られねぇよ」
 士浪の語る事実に、輪廻から外れた木は何を思ったろうか。激しくいなないて陽光にも負けぬ光を撃とうとする。
 しかし士浪はどこまでも甘くない。瞬時の回し蹴りで体勢を崩させると、直後に地を蹴って面前に肉迫した。
「終わりだ」
 一瞬の内に、氣を練り上げて瘴気へ変換、拳へ収束している。刹那、裂帛の一撃『烈咬衝』は繰り出された。
「──喰い千切れ……!」
 貫手の要領で抉り込まれたそれは、傷口から植生の内側へ流入。気脈を断ち切り、攻性植物を絶命させた。
 士浪は拳を下げながら、異形の命を生んだ元凶へ呟く。
「風情も憩いも……ユグドラシル連中の頭じゃ、捻っても理解できねぇ概念らしいな。まぁ、ああいう手合いだからこそ遠慮なくやれるんだが」
 それは、新たな敵を目の前にすれば遠慮はしないという宣戦でもあった。

●薄紅の憩い
「はー、いい汗かきましたっ!」
「桃カッフェー!! 行きますよエルレ~! うぇいうぇいうぇ~い!!」
 ここのかの笑みの傍らで、リティアがボクスドラゴンのエルレと共に駆け出す。
 というわけで、事後処理も済むと早速カフェに行くことになった。
 ユアははしゃいでシャーリィンの手を引く。
「お腹ぺっこぺこー! ねぇねぇ、ボク達も早く食べに行こう? ねっ!」
「ええ。わたくしも、動いたら益々お腹が減ったのだわ」
 宵の娘も柔らかに微笑んで続く。
 憩いの甘味空間は、すぐそこだ。

 涼し気な店構えのカフェは、中も快適な温度だった。
 内装は綺麗な塗装の木造りで、可愛らしいテーブルが並ぶ。皆はそこに着くと早速メニュー選び。リティアは品の写真を見て目を爛々とさせていた。
「うひょー♪ さすが桃カフェ! 何食べましょう! なんでも美味しそう!!」
「そうだな……まずはサイダーで一服といこうじゃねぇの」
 士浪がまずドリンクを頼むと、リティアはピーチティーを発見。高速で注文した。
「飲み物もめっつぁぴーちぴーちで行きますよー♪ 肝心のスイーツはどうします?」
「私はフローズンヨーグルトを」
 クラリスがちょっと目移りしつつも選ぶと、ココも橙の瞳をくりくり動かして結論を出す。
「タルトに、決めました。他のものも気になります、けど。まずは、これで」
 少し待った後、品々がテーブルに揃った。
 リティアもタルトとパフェも頼んであったこともあり、彩り豊かな光景だ。
「うぉ~! 桃祭りやぁ~~!!」
「うん、早速、桃満喫タイムにしよう……!」
 クラリスも思わずフローズンヨーグルトに見惚れてしまう。
 それは透明な器に白色が爽やかな一品。添えられたミントは可愛らしく、白桃色のジュレはきらきらと光っていた。
「夏の宝石みたい」
 瞳が輝き、笑顔が溢れる。
 年相応の少女の表情を見せるのは、きっと前より少し前向きになったから。戦闘以外ではガスマスクを外し、顔を隠さないのもその為なのだ。
 一口含むと、さらっと溶けるヨーグルトの甘酸っぱさに、ジュレの濃いめの甘さがコーティングされて美味だった。
「……んんんっ」
 一口一口が甘く冷たく身体に浸透していく。疲れが癒えて心地よい。
 ココもタルトを口いっぱい頬張っていた。
「ん……! おいしい、です」
 生地はさっくり食感で、果実は新鮮な甘味。溢れる果汁が両者の角を和らげて美味しくさせる。
 リティアもうほー! とタルトをぱくつきつつ、クリームたっぷりのパフェも頂く。合間に啜るピーチティーは紅茶にふわりと薫りが漂い、甘味と相性抜群だった。
「へえ、こいつは中々」
 と、士浪が呟くサイダーは甘さ控えめで、フレーバーが先に立つ清涼感。じゃあこれに合うものを頼むかね、と士浪もまたタルトを頼んで味わったのだった。
「ほら、エルレも一緒にぴーちぴーちしましょう!」
 その横で、リティアにタルトやパフェを貰ったエルレはしゃくしゃく、もふもふと可愛らしく咀嚼して喜びの鳴き声を上げる。
 それを見ていると、ココももっと食べたくなってコンポートを頼み手を伸ばした。すると、バレから食べすぎだろと言わんばかりのカチカチ音。
「す、少しだけだから」
 首を竦めるココだったが、ぱくりと食べるとその美味しさに頬は緩む。
 クラリスもそんな皆につられてふにゃりと笑顔を浮かべていた。
「しあわせ、だね」

「改めておつかれさまでした! 桃タイムですね!」
 隣のテーブルでは、ロゼが3人を見回して花やいだ表情。
 頷くユアは楽しげにメニューを開いていた。
「何頼む~? ボク、タルト食べるのー!」
「どれも美味しそうで、迷ってしまうわね」
 シャーリィンも視線をゆっくりと右左。豊富な品に月の瞳を煌めかせている。
 ここのかも少々お品書きとにらめっこ。可愛らしい困り眉になっていた。
「タルトも美味しそうですし。でもムースも諦めきれません……!」
「あ! それなら、沢山頼んでわけっこでもする?」
 ユアが思いつくと、ロゼも明るい笑み。
「私も賛成です! とっても楽しそう!」
「ふふ、分けっこするなら色んな種類を頼みましょうか。一つではきっと物足りないわ」
 シャーリィンも口元を綻ばせると、ボクスドラゴンのネフェライラがメニューを指すのを見て、早速注文した。
「わたくしはコンポートと、ピーチフレーバーティーが飲みたいわ」
「それじゃあボクはタルト! と、サイダーも! ……これで皆でシェアできるね!」
 さらにユアを始め、皆も食べたいものをオーダー。
 品々が来ると、一気にテーブルが華やかになった。
 ロゼはキラキラと顔を煌めかせる。
「色んなのが一気に味わえるなんて、最高ですね……! 頂きましょう!」
「ええ。さあネフェライラも」
 シャーリィンの膝に乗るネフェライラも、早速一緒にコンポートを食べ始めた。
 それは綺麗な三日月カットの果実がシロップで化粧された、艷やかな一品。つるりと滑らかに、芳醇な甘味が楽しめた。
「すごく美味しそう……じゃあ、私はタルトにします!」
 コンポートも羨ましくも、ロゼは薔薇型に果実の載ったそのタルトのお皿を取る。
「はい、ここのかさんもどうぞ」
「わぁ。ありがとうございます! なら皆さんも!」
 ここのかは大事に受け取ると、皆の前にもお皿を移動させる。
 そうして皆でぱくり。生地の歯応えと果実の瑞々しさに、ここのかはほわりと妖精の笑み。ロゼも思わず薔薇色の頬に手を当てていた。
「美味しい~!」
 と、喜ぶユアはサイダーも口にする。それもしゅわしゅわの小気味よさに、薫りが鼻先を撫でる涼しい一杯だった。
 ロゼもジュースを飲んでタルトを食べて。幸せを噛みしめる。
「桃だらけですね!」
「ええ。暑い日に飲むサイダーも最高です! ムースも絶品ですよ」
 ムースはレアチーズのまろやかさに、細かく切った桃が舌に心地よかった。
 ここのかはテレビウムがヨーグルトをさくさく食べているのも、微笑ましげに見ている。
 そして、顔見知りでもあったユア、旅団仲間でもあるシャーリィン、憧れの歌手のロゼ。皆と過ごせたのが嬉しかった。
「みんなでシェアすると、幸せが何倍にも膨らんだ気がしますね!」
「そうね」
 優しい表情のシャーリィンも、気持ちは似ている。
(「わたくしのお月様であるユア。桃のデザートがとても似合う愛らしいロゼちゃん。涼やかで美しい妖精のここのかちゃん──」)
 こんなふうにお茶会が出来るなんて、と。
「これも、今日頑張ったご褒美かしら」
「うん!」
 ユアも、その甘みに幸せの味を感じて3人を見た。
(「僕の夜のお姫様であるシャーリィン。桃を美味しそうに食べる親友のロゼさん。そして一緒に炎を決めたここのかさん」)
「皆で美味しい物を満喫できて幸せ!」
「ええ、本当に!」
 頷くロゼも同じ。甘い桃と甘い笑顔、大好きな人達と共に過ごす美味しい時間が幸せなのだと実感していた。
 甘い時間は早く過ぎるも、幸せな心は残る。
 皆は食べ終わると、お土産等を買う者もありつつカフェを後にする。夏風は甘く、けれど先刻よりも爽やかだった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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