●開幕! ケルベロス大運動会
熊本滅竜戦をはじめとする、度重なるケルベロス・ウォーの発動。
その代償として、世界経済は大きく疲弊してしまいました。
このままでは世界中が不況に陥ってしまいます。
そこで、面白いイベントで世界を盛り上げ、経済を刺激しようという事になりました。
そのためのイベントが、『ケルベロス大運動会』です。
ケルベロス大運動会は、世界中のプロモーター達が考案したものの、危険過ぎる故に使用できなかった「ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション」の数々を、頑健なケルベロスたちが挑戦するスポーツの祭典です。
今回、第3回目となるケルベロス大運動会は、ブラジルのアマゾン流域で行われます!
広大なアマゾン川と鬱蒼たるジャングルで、様々な種目に挑戦しましょう!
●子供たちに夢と希望とサッカーを
「はい、みんな注目!」
脇にサッカーボールを抱えたキャロン・ティービー(シャドウエルフのミュージックファイター・en0138)は、太鼓を叩きながら周囲のケルベロスたちに呼びかける。
「今回ケルベロス大運動会が開かれるブラジルでスポーツと言うと、いちばんに思い浮かぶのはこれ。サッカーね」
サッカーは世界的にも大人気のスポーツだが、南米での熱さは特に高いと言えるだろう。
「それでね、ブラジルのたくさんの子供たちから、ケルベロスとサッカーをしたい。ケルベロスにサッカーを教えてもらいたいって、お願いが来ているのよ」
そこで、運動会の宣伝も兼ねて、ケルベロス大運動会の前日である、8月10日にケルベロスサッカーを行うことになったのだ。
「参加してもらうみんなには、地元の子供たちとサッカーの試合をしてもらうわ」
子供たちの前でスーパープレイをしてみせたり、彼らと交流するのが主な目的となる。
「勝ち負けにこだわるというよりは、未来のある少年少女に夢を与えるような、そんな楽しい時間を作り上げてもらえると助かるわね」
時には圧倒的な強さを見せ、時には花を持たせ……ある意味真剣勝負よりも難しいかもしれない。
「でも、深く考えすぎず、みんなでサッカーを楽しむんだって思っておけば問題ないわ」
そして、試合が終わった後は、ケルベロスからのサッカー指導などのイベントも行うので、そちらの協力もお願いしたい。とキャロンは付け加える。
「もちろん、サッカーが終わった後で、ケルベロス大運動会に参加するのは問題ないから、できる限り多くの人に参加してもらえると、良い宣伝にもなるし助かるわね」
お祭り前にみんなで盛り上がりましょ。キャロンはそう締めくくると、手に持っていたサッカーボールを高々と蹴り上げた。
●キックオフ!
「今日は子供達と一緒にサッカーを楽しみに来たぜ! ブラジルといえばサッカーのメッカだからな!」
と、意気込む疾風は、飛んできたボールをものすごくスタイリッシュなボレーシュートでゴールに叩き込む。
「いえーいっ!」
味方のゴールに入れたこと以外は完璧だったそのシュートに大喜びの疾風に、プレー技術への賞賛と、笑い声が捧げられる。
ケルベロスたちと、子供たちとのサッカーの試合は、ケルベロスをたくさんの子供が取り囲み、点の取り合いが続いていた。
「人数はこっちの10倍? 臨むところってな!」
子供たちのサッカー選手になりたい! という強い希望を持った目を見つめながら、
「良いぜ良いぜ、夢を持つのはいいことだ! そのためならいくらでも手伝うぜ!」
ブリュンヒルトは慣れない足さばきながらも、一生懸命ボールをキープする。
「おーおー、慣れないのに一生懸命にやってるなハニィ♪」
そんな彼女の動きを見ながら、パスを受け取った虎次郎は笑みを零し、
「……っと、余所見は禁物か!」
直後、油断してボールを奪われそうになると、尻尾をつかってボールをひょいとかわす。
「おじさんずるーい!」
子供たちは一斉に文句を言うが、
「残念、今のはハンドじゃないからセーフだぜ♪」
と言って、ボールを足に戻して再び全力での奪い合いに興じ、
「ん、たまには子供と遊ぶのも楽しいよな♪」
というブリュンヒルトの笑顔に、虎次郎も頷くのだった。
●猫とサッカー
旅団『Emotion DB』のエンブレムを刺繍したおそろいのケルベロスコートをユニフォームにした仲間たちは、守備に攻撃にと連携しながら存在感を出していた。
「わわわっ。みんな上手いなぁ……」
巧みなドリブル、そして正確で素早いパス回しで攻めて来る子供たちに、ノルは素直に驚きながらも、
「そのパスはお見通しだよっ!」
相手の数秒先の行動を予測して足を伸ばし、ボールを奪い去って笑みを浮かべる。
「サッカーなんだから、みんなで楽しくやろうぜ」
そして、そう言って前線にボールを蹴り出し、
「里桜。どっちが点を稼げるか勝負だ!」
ナザクはボールの落下点に走り込み、そのままボレーキックでボールをゴールに力強く蹴り込む。
そのミドルシュートにGKの少年は反応できず、ゴールネットを揺らした。
「ふふっ。楽しそうじゃねえか」
ゴールに喜ぶ仲間たちをピッチの外から見つめる陣内は、
「ん? 俺はいいんだよ。ケルベロスコート着てるからさ、動くと暑いじゃん……」
監督として、仲間たちの、そして可愛いウイングキャットの猫の姿に目を細め、
「お楽しみは、これからだ」
ニヤリと微笑んだ。
「いきますよ」
かごめが放ったシュートは惜しくもポストに弾かれ、ボールは里桜の前に飛んでくる。
「私も負けないよ」
ナザクに続いてゴールを狙う里桜だが、
「って……ボールに陣内の猫ー!?」
蹴ろうとしたボールの上にいつの間にか陣内の猫が乗っており、
「蹴っても大丈夫……?」
躊躇している間にボールは届かないところに、不自然に飛んでいっていってしまう。
「ちょっと怖いけど……葉っさん、お願い」
飛んできたボールに、フローライトは葉っさんを固くして、頭が痛くならないようにヘディングを試みようとする。
「あ……ボールに陣内の猫……」
だが、彼女も猫に気づき、慌ててソフトタッチでヘディングするも、コントロールが乱れて味方のゴール前にボールが転がってしまう。
「キリノ。頼むぞ」
眸がこっそりつぶやく間に、そのボールはジェミがヘディングでクリアする。
「ああー! もしかして……」
しかし、そのボールは空中でくにっと曲がり、味方ゴールの方へと戻されていくのに気づいたジェミは慌てて走り出す。
「あっ、あー! 待ってー!」
眸のビハインド、キリノがボールの軌道を変え、それを陣内の猫が運んで子供たちの絶好のチャンスボールを配給したのだ。
「俺はでかいから高いとこなら任せとけっ」
GKの広喜は、小さな個体と呼んでいる子供たちとの遊びに終始笑顔で、ボールを弾き返す。
しかし、そのこぼれ珠を拾った子供たちは、
「おじちゃん、いくよー!」
という可愛い声とともに、広喜の足元を左右に翻弄するようにボールを回し、
「やるじゃねえか」
完全に逆をつかれてゴールを決められた広喜は、まるで自分がゴールを決めたかのように、嬉しそうに子供たちを讃え、
「この試合……猫に支配されている気が……」
フローライトは猫の活躍に喜ぶ陣内の方をそっと見つめた。
「背が高くなくっても、こうやって華麗に……」
恭志郎はフローライトの方を見て微笑みながら、ダブルジャンプでボールを弾き返そうとして、
「――猫ぉ!?」
またもやボールに乗っている陣内の猫に驚き、
「……うん、任せた」
チャンスを逸したのをごまかすようにサムズアップして、グレッグに処理を任せる。
「わかった……おっと。危ないっ」
広喜と交代でGKに入ったグレッグは、少し慌てながらもそのボールを両手で掴み取った。
「頼むぞ」
そして、ボールを遠くへ飛ばそうと高く蹴り上げる。
だが、そのボールは明後日の方へと向かってしまい……、
「フォローおねがいしまス」
そのボールの軌道を予測していたエトヴァが、サイドラインギリギリでボールをコートの中に残し、
「まかせて!」
そのボールを追いかけるジェミは、
「すばしこさには自信あるよ!」
子供たちの間をかけるけるように走っていき、ボールを胸でトラップする。
そこからノル、フローライトとパスを繋いでいき、
「猫は俺がしっかり見張ってるぜ!」
また悪さをしないように、ナザクが陣内の猫を見張るように駆け回り、ボールは素直に前に運ばれていく。
「かごめ殿。お願いしまス」
前線に上がってきたエトヴァがボールを受け、それをスムーズにかごめにパスを送る。
「す、すごいっ」
かごめはトラップした後、振り向きざまに放ったシュートは寸分狂わない精度で飛んでいき、子供たちは感嘆の声をあげる。
「私のプレイなんて序の口、本命は里桜さんです。きっとすごいシュートを決めてくれますよ」
だが、かごめは里桜へのハードルを上げながら、ボールをゴールポストに当て、高く舞い上がらせた。
「小早川、跳べ!」
眸は里桜をより高く跳躍させるために、宙に手を伸ばして足場を作る。
「よーしっ!」
里桜は更に高く飛び上がり、真下に蹴り落とすかのように、
「オーバーロード・ケルベロススペシャルッ!」
バイシクルシュートのような態勢でボールをゴールに叩き落とす。
「サッカー、すっごく楽しいっ!」
着地して、ゴールが決まったのを確認した里桜は笑顔で喜びを表現し、
「ナイスゴールだ!」
「皆すげえっ」
陣内や広喜たちの祝福を受けながら、もみくちゃにされるのだった。
●メイド服とサッカー
今回、おそろいのメイド服姿でサッカーを楽しむのは、旅団『Chambre la fraise』の女性たち。
ちょっとおませな男の子は照れながら、動きづらくないか? と聞くが、
「そんなことは、ぜんぜんまったく」
結乃はそう答え、彼の華麗なドリブルに翻弄されながらも、しっかりとついていく。
「この日の為に密かに練習をしていました」
そこへキーラが男の子の行く手を塞ぎ、しっかりマークすると、男の子は苦し紛れにシュートを放った。
「慈雨の一滴よ、純潔の一片となれ……!」
GKの蘭華は氷の力を使い、氷晶の花にも似た特製アイスグローブを装着する。
「これなら完璧……あらっ?」
掌のサイズが3倍ほどになってボールを弾きやすくなった蘭華だったが、手の届かないところに飛んでいったボールを掴むことはできず、
「失敗してしまいました♪」
ボールはそのままゴールに吸い込まれていった。
さらに続く子供たちの攻撃。ゴール前に上げられたセンタリングに対して、
「シュートコースに割り込めそうな位置に入って……えいっ」
フィアッカは空中で、胸をクッションにしてぽよんっとボールを受け止め、そのままくるりと一回転して姿勢を制御し、ボールをキープした。
「おーっ」
華麗なプレーに特にお父様方から歓声が上がる中、フィアッカは素早く前線にパスを送る。
ハーフウェーライン付近の右サイドでボールを受けた結乃は、そのままダイレクトでゴール前にセンタリングを上げ、
「今がチャンス……! 受け取ってくださいっ!」
芝を少し凍らせ、スケートのように落下地点に滑り込んだ水咲が、頭で折り返す。
「いきますよっ」
子供たちの頭の上をかすめるようなそのボールに、いちごは子供たちの合間を縫うように入り込み、ヘディングでボールを流し込んだ。
「やったー!」
いちごは仲間や周りにいる人達にハイタッチして、喜びを分かち合うのだった。
●戦いに必要な心意気
「ゴールを割らせるわけにはいかない!」
リューディガーはドイツ人として、誇りを持ってブラジルの子供たちのシュートを本気で止めに行き、ことごとくシャットアウトする。
そして、大きく蹴りしだしたボールに真吾が合わせ、ズババーン! とゴール目掛けて蹴り込む。
だが、そのシュートは相手DFの決死のブロックで弾かれ、
「真吾君。もう一度だ」
こぼれ球をキープしたエリオットが、真吾が届くかどうかギリギリのところへパスを送り、
「サッカーで大切なのは、周囲に気を配り、戦局を見極めること。仲間と力を合わせること……そして何より絶対にあきらめないこと」
真吾が全身を使ってボールに足を伸ばし、ゴールに向けて押し込むのを見ながら、
「サッカーでもケルベロス活動でも、戦う者として大切な心構えです。覚えていてください」
エリオットは子供たちに戦う心構えを教えた。
そして、それか子供たちはエリオットの教えに従って次々と声を出し合い、連携して、
「……見事だ!」
ついにゴールを奪われたリューディガーは、彼らを素直に賞賛するのだった。
「Wunderbar!」
子供たちのシュート、そして彼のセービングに対して、ヴィクトルは称賛する。
「今度はおじさんからボールを取るわ!」
今度はそんなヴィクトルにボールが渡ると、子供たちはわらわらと押し寄せてくるが、
「ひとまず俺はおじさんではなく、お兄さんだからな……?」
そう訂正しながら、身体能力で翻弄して、
「とったぞー!」
ある程度楽しんだ後は、それっぽい隙を見せてボールを奪われると、
「決まれー!」
ボールを奪った少年は、絶妙なループシュートを放つ。
リューディガーと交代でGKに入ったミスティアンの頭上を越えようかというボールを、彼女はわざと見逃しながら、
「残念でしたっ!」
前方宙返りの要領で足を頭上に伸ばして蹴り返す。
着地したミスティアンは子供たちから歓声を浴び、ここで時間切れの笛がなるのであった。
●サッカーに大切なもの
試合が終わった後は、ケルベロス達によるサッカー教室が開催され、たくさんの子供達が人だかりを作る。
「……いや俺こう見えて17歳だから! キミよりお兄さんな!」
中学までサッカー部で活躍してた理弥はコーチを買って出て、集まる子供たちにケルベロスならではの力強いシュートでゴールネットを破ってみせると、
「簡単なシュートもいろいろあるから教えるぞ。あとはリフティングとかでボールに慣れることだぜ」
といって、お手本を見せながら子供たちに真似をさせる。
「よ、よろしく、ね……」
そんな子供たちに混じって練習に参加する灯は、スポーツが得意ではない自分を少しずつでもいいから変えたいと思い、懸命にボールを追いかけ、蹴り続ける。
「笑顔で遊ぼうぜ。サッカーは楽しんだ者勝ちじゃん」
そんな彼女に理弥が近づき、目いっぱいの笑顔で優しいパスを送る。
楽しく練習することでよりうまくなる。
笑顔を心かけた灯は、みるみるうちに上達していくのだった。
「ゆっくりした受けやすいパスは、逆に言うと守備側からは防ぎやすいパスなんです」
ほのかはそう言って、弘幸に何本かのパスを出し、それを子供たちにカットさせる。
「マークするのも大変ですし、何よりフリーになりやすい」
パスの速度に比例して、弘幸の速度も上がり、パスをいい形で受けられることを説明する。
最後のパスを受け取った弘幸は、そのままリフティングを始める。
「試合に必要ないなんて言われるが、いざって時のボールコントロールに繋がるんだぜ」
比較的簡単な、試合に応用の効きやすい技をいくつか披露して、
「最初はワンバンしたのを蹴るとやりやすいぜ」
と、実際にやって見せてアドバイスした。
「試合の気分を高める方法として、験を担ぐという行為があります」
キーラは試合に望むときの心の持ち方についてアドバイスし、
「大事なのは、誰かのために動くこと……だと思います」
と、水咲は蘭華たちをに視線を向け、
「大切な人を持つことですね♪」
蘭華は最愛の凛那をみつめ、惚気るように照れ笑いする。
「それともちろん、サッカーが好きだからという気持ち。ですよっ♪」
そして、いちごの言葉に、子供たちは頷くのだった。
「君、さっきラボーナしってたよね、格好いい! 生で見るの初めてだ! ねえ、僕もやりたい! 教えて!」
万里は、逆に子供たちから教わろうとして、彼らを拝み倒す。
「ごめんなさい。万里。試合中からみんなのプレイに興奮しっぱなしで」
終はそう言って万里をフォローして、
「できれば、みんなのすごいプレー、もう一度見せてくれるかな?」
子供たちによる万里へのテクニックのレクチャーが始まった。
「すごいな。みんな基本的なことはしっかりできている」
梓は子供たちのテクニックを褒め、彼らの頭をなでて笑いかける。
そして、気分を良くした子供たちはさらにすごいプレーを披露する。
「……守れるといいね、これからも、この笑顔を」
「だな。この子たちが当たり前に将来を望み幸せを選びとれるように」
終と梓は彼らの笑顔を見ながら、ケルベロスとしての彼らをなんとしても守りたいと思うのだった。
作者:きゅう |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年8月11日
難度:易しい
参加:34人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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