女武者を狙うオークたち

作者:きゅう

●女騎士? いいえ、女武者です。
「あっ……で、ですから。私のスライムを使って……うぅ。やっ」
 オークにスライムを手渡すスライム忍者・雷霧は、彼らに執拗に体中をくすぐられ、
「集まった女たちを……やめてぇ」
 身をよじらせながら、彼らの注意を逸らした隙に何とかその魔の手から逃れる。
「はぁ……はぁ…………もうヤダ……」
 彼女は息を切らせながら、魔空回廊を渡るオークたちを死んだ目で見つめるのだった。

 福島県では、毎年初夏になると一風変わった草競馬、「甲冑競馬」が行われる。
 甲冑を身にまとい、旗指物をさして駆け抜ける様は、かつてこの野を駆けた武士のように、勇壮な姿をみせていた。
 そんな中、ひときわ盛り上がりを見せるのは、戦場に咲く華。
 女武者たちによる競走である。
 彼女たちは重厚な、しかし綺麗に塗装され、美しく装飾した甲冑を身に着け、
「今年は私が勝たせてもらいます」
「負けないわよ!」
 それぞれ愛馬のもとへと向かう前に、ライバルに向けて火花を散らす。
「堅そうな女たちダ。だが……グフフ」
 だか、そんなにらみ合いは突然の乱入者によって意図しない終焉を迎える。
「何? 熱っ……」
「何よこれ! 鎧が溶け……」
 オークたちが彼女たちに放ったスライムが甲冑を溶かし、彼女たちを半裸の姿に変えていく。
「きゃーーーーっ!」
 それと同時に襲い掛かるオークたちに向け、彼女たちはただ悲鳴をあげることしかできず、彼らの思うがままにされるのであった。

●祭りを狙うオークたち
「このままですと、オークたちによって、彼女たちもお祭りも滅茶苦茶にされてしまいます」
 中条・熊之助(ウェアライダーのヘリオライダー・en0080)は、困った顔をしながらケルベロス達に助けを求める。
「オークの目的はいつもの通り、女性たちを攫うことです」
 今回オークたちの標的は、お祭りに参加するために甲冑を身に着けた女性たちだ。
「女性の数は12人。場所は、競馬の行われる敷地内の、馬の待機所の脇になります」
 屋外で比較的広さはあるため、一般人を遠ざけることは問題はないようだ。
「ですが、女性たちを事前に避難させてしまうと、オークたちは別の場所を襲ってしまいますので、女性たちの避難はオークたちが現れてから行ってください」
 また、今回オークたちは服だけを溶かすスライムを使用する。
「この特殊なスライムは女性たちの甲冑を溶かし、そのまま消えてしまいます」
 体への直接的な被害などはないようだが、気を付けた方がいいだろう。
「オークたちも女性たちと同じ12体。いつものように、触手を使って女性を弄ぼうとしたり、敵を攻撃したりします」
 優先順位は怪しいところはあるが、基本的にケルベロスが攻撃してくるのであれば反撃を優先するようだ。
「ただし、数が多いですので、手空きになったオークは女性に手を出す可能性はあります」
 それ以外には特筆するような能力はなく、ごくごく普通のオークのようだ。
「そんなに強い相手ではありませんので、落ち着いて対処すれば問題ないかと思います」
 ただし油断だけは禁物だと熊之助は付け加えた。
「せっかくのお祭りを台無しにさせるわけにはいきません」
 このお祭りを楽しみにしている人も沢山いる。
 その人たちのためにも、オークの蛮行をやめさせ無くてはならない。
 熊之助はそう言って、ケルベロスたちを激励した。


参加者
キーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)
皇・露(記憶喪失・e62807)

■リプレイ

●鎧乙女とオークたち
 甲冑姿の凛々しい女武者があつまる待機所は、祭を前に活気に満ちていた。
「ふむ」
 そこへ紛れ込んだエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は、
「ヴァルキュリアの鎧とは趣が異なるが、美しく、何より格好良いな」
 女武者の甲冑をじっくり観察し、その造形や漆の色に目を奪われ、
「なんとしても守り抜かねば」
 自分が身につけているやはり美しい甲冑に目を落とし、気持ちを高める。
「オンナァ!」
 そうしている間に、彼女たちのいる近くの空間がゆがみ、
「オンナはどこだァ!」
 低く醜いうなり声をあげ、豚顔のオークの集団が現れた。
 何が起こっているのか。突然の襲撃に女武者たちが状況を把握するわずかな間に、
「皆さん、ここは私たちに任せてお逃げください!」
 女武者に扮したキーラ・ヘザーリンク(幻想のオニキス・e00080)が素早く声を発し、
「あちらです!」
 オークの前に立ちながら、避難誘導をする仲間のケルベロスたちを指さした。
「邪魔なヨロイはコウシテヤル!」
 オークたちは彼女たちの肌を晒し、恥ずかしい姿にしようとスライムを投げつける。
「早く逃げるんだ。甲冑が溶かされたら嫌だろう」
 禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)は女武者たちに放たれたスライムを受け止め、
「は、はいっ。でも……」
 彼女たちは素直に従って避難を開始するものの、スライムが野鳩の全身を包み、
「あなたの鎧が……」
 鎧を溶かし、白い素肌を露出させると、彼女たちは悲鳴をあげる。
 このままでは鎧が全て溶け去ってしまう。
「隙だらけだゾ」
 さらにオークたちは触手で彼女を撫で回そうとする。
「ふっ」
 しかし、野鳩は余裕の表情で全身に力をこめ、戦闘用の武装に換装して火器を取り出し、
「私はこの通り大丈夫だ。早く避難するといい」
 その言葉とともに触手を殲滅すると、女武者たちは安心してその場を離れた。
「これは地獄がそう思わせているだけ」
 野鳩は鎧を溶かされ、触手に絡まれそうになった際に感じたオークに対する嫌悪感を、
「気にする問題ではない」
 自分にそう言い聞かせるようにして心を落ち着かせ、淡々と仕事をこなしていった。
「何も心配はいらない。我々ケルベロスが奴らを食い止める」
 大きな声を出して避難誘導する神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)は、
「落ち着いて避難するんだ」
 彼女たちを逃がすとオークたちが追いかけていかないように道を封鎖する。
 しかし、何体かのオークたちは皇士朗のいる場所を迂回して追いかけようとしていた。
「こっち……」
 そんなオークたちの真横に現れたのは、屋台で買ったりんご飴を舐めながら歩くラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)。
 その姿を見たオークたちは、狙う獲物を変えようと足を止め、彼女に視線を向ける。
「もう逃がさないわ!」
 その隙にガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)が回り込み、
「私が相手よ!」
 西洋甲冑を身に着けた女騎士のような姿で剣を構え、切先を突きつけた。
「このような競技さえ邪魔をするとは、無粋なオークめ!」
 そこへエメラルドが並び立ち、勇ましい声で威嚇する。
「あなたたちも、この甲冑には手を出せないでしょ?」
 ガートルードはそう言うと、西洋甲冑の胸当てをポンと叩き、胸を張った。

●オークが求めているもの
「ちょちょ、ちょっと!」
 だが、オークは普通にスライムを飛ばして来て、ガートルードは一転、狼狽える。
 オークたちには、鎧の造りなどは関係なく、興味があるのはその中身だけなのだ。
「だ、大丈夫? 大丈夫……よね?」
 本当に溶かされやしないだろうか。と不安に思うガートルード。
「スライムとやらで甲冑を汚すのが目的か?」
 一方、やはりスライムを浴びたエメラルドは、
「否定はせんが、妙な趣味だな」
 ケルベロスの防具を溶かすことはできないだろうと、冷静にスライムを受け止めた。
「き、効かないわよそんなもの……」
 防具に異常がないことを確認したガートルードは、顔を上げてほっとする。
「グフフッ」
 しかし、オークたちはスライムを囮に、2人の側面、鎧の隙間から触手を潜り込ませ、
「きゃあっ!」
「ひゃっ!? あ、どこから……っ、やめ……!」
 体中をねっとりと撫でていく。
「よ、横から覗いたりしたらダメですよ!」
 ガートルードは体を捻りながら触手を振り払い、盾で肌の見えそうなところを隠しながら2歩、3歩と後退し、
「ま、負けない……絶対に守り抜くんだからぁ……でも、恥ずかしぃ」
 使命と感情の狭間で心を揺らしながら、オークたちをにらみつけ、
「くっ、来るな……! その汚い触手を近付けるな!」
 エメラルドは触手を振りほどこうとするがうまくいかず、さらなる触手に体を触られそうになる。
「今助ける……! 神楽火流討邪の太刀、『雲耀』ッ!」
 だが、皇士朗の放つ居合いがエメラルドを弄ぶ触手を切り落とし、事なきを得た。
 一方、反対側ではオークたちが手あたり次第女性に襲い掛かろうと走り出す。
「露達がお相手しますわ!」
 そこへ立ちふさがるのは鎧姿のまま腕組みした皇・露(記憶喪失・e62807)。
「ここは行き止まりですよ?」
 そしてキーラもその隣に並び、女性客の前でオークたちをけん制した。
「クラエッ!」
 オークたちはぐふふと笑いながらスライムを投げつけ、2人の鎧を溶かそうとする。
「溶かすなんてまどろっこしいわね」
 露は溶けかけた鎧を自ら脱ぎ始め、その仕草に興奮するオークに向けて投げつける。
 そして、下に身に着けた装備の上にマントを羽織り、
「やっぱりこの姿の方が落ち着きますわね! 覚悟しなさい豚さん達!」
 投げられた鎧を取り合うオークたちに宣戦布告した。
「くっ……鎧が……!」
 一方、キーラは恥ずかしそうに腕で胸を覆いながら、インナーを晒していく。
「キーラさん、大丈夫ですかっ?!」
 そんな彼女を心配した赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)は、叫びながら駆け寄ってくる。
「お嬢様、お気をつけ……」
 キーラはそう言いかけた瞬間、
「きゃあっ!」
 いちごは地面に残っていたスライムに足を取られ、バランスを崩してキーラを押し倒す。
「お嬢様、大丈夫で……」
 起き上がりながら、キーラをいちごを心配するように見上げていると、
「きゃっ」
 突然胸を掴まれたような感覚に驚いて上ずった声をあげる。
「あわわ……」
 とっさに手で掴んだのがキーラの胸だったのに気付いたいちごは、
「すみませんっ!」
 慌てて手を離すと、恥ずかしそうに立ち上がり、
「それもこれも、みんなオークたちのせいです。絶対に許しません!」
 と、オークたちを指さして武器を構え、戦いが始まるのだった。

●歌に癒やしと勇気をこめて
「アリカさん。新曲、いきますよ」
 いちごはマイクを片手に、持ち歌である翼の旋律を歌い始める。
「私の歌声は光とともに。どうか貴方に届きますように」
 大切な人たちを護りたいという想いをこめ、彼女が作り上げた歌が、溶かされた鎧を直していく。
「ハダカ、ミセロ!」
 その様子に不満を持ったオークはいちごの喉を狙って触手を放つ。
「させませんよ」
 しかし、キーラは『世界』のタロットを指に挟んで念じ、
「Verbrand het allemaal……」
 キーラの周囲の空気に熱を持たせ、波動のように放つ。
 業火の波紋と呼ばれるその技は、オークの触手を焼き尽くし、いちごを守り抜いた。
「いちご殿の美声は素晴らしいな。私も負けないように歌うぞ」
 優しい歌に聞き惚れていたエメラルドは、彼女の歌の余韻が落ち着くのを待ってから、
「彼の者は来たれり! 見よ! 空を穿ち、大地を揺るがし、海を割りて、今ここに凱旋するべく奮い立つ! 我らが英雄の不敗たるを称えよ!」
 一転して勇壮な、戦う英雄を称える歌で仲間たちを勇気づけ、士気を高める。
 鎧に身を包んだ彼女の歌を止めようと、オークたちは恐れることなく襲い掛かる。
「そこまでだ。その悪趣味な遊びの続きは、地獄でするがいい」
 だが、その歌を途切れさせるものかと、皇士朗が彼女を守るように飛び出し、
「遠慮するな、全弾持っていけッ!」
 オークたちの足元にナパーム弾を一斉射。彼らの進軍を足止めし、膝下を炎に包んだ。
「いちごちゃん。ありがとう。さあ、逆襲開始よ!」
 鎧の隙間の破れたインナーが直ったガートルードは、いちごにお礼を言いながら、
「これ以上誰かが傷付く位なら……存分にみせてやる。この異形の姿を!」
 左手の指を巨大な爪状に変化させ、大きな動きで舞うようにオークを切り裂く。
「恐れ戦け! お前に……明日はない!」
 乱気流のように予測困難な連撃がオークの触手を、さらにはその全身を切り刻む。
「乙女の肌を覗こうとした報いです!」
 ワイルド・タービュランスと呼ばれる彼女の得意技が、彼女を触手で弄んだオークを二度と動かぬ姿へと変えるのだった。
 ラトゥーニはほとんど食べ終わったりんご飴の棒を名残惜しそうに咥えながら、
「ん……」
 うろうろと歩き回り、オークに無防備な様子を晒す。
 オークたちはそれを見て嬉々として襲い掛かるが、
「じゃ、おねがぃ」
 彼女の何も考えて無さそうで、計算され尽くしたようなその動きは、
「全速全力でお相手しよう。神楽火皇士朗、推して参る!!」
「迂闊だな。女と見たら誰でも襲い掛かる……単純すぎるぞ」
 皇士朗やエメラルドの目の前にオークを誘導させるための罠だった。
「聖剣の切れ味、その身に刻めッ!」
 皇士朗は全力でオークとの間合いを詰め、最速で集中砲火を叩き込むバルムンクマニューバーでオークを肉塊に変え、
「稲妻に灼かれるがいい。愚かな豚ども!」
 エメラルドはオークの背中に雷撃を放ち、感電させたところに槍を投げ、串刺しにする。
「ありがと」
 素早く2人を盾にしたラトゥーニは小さくお礼の言葉をつぶやき、再びうろうろと動き始めた。

●座布団になりたがったオーク
 ぱっと見可愛らしい女の子がぼーっとしているように見えるためか、オークたちはラトゥーニに次々襲い掛かる。
 スカートの中を覗き込もうしたり、服を破ろうとする攻撃に対して、彼女はあまり表情を変えずに淡々と対処しているように見えた。
 しかし、彼女自身は普通に結構恥ずかしく思っているようで、
「ん……っ」
 少し焦ったようにオークの触手から距離を取り始める。
「リリ……そぉぃ」
 いつの間にか仲間との距離が開き、目の前のオークに襲われそうになっていたラトゥーニは、ミミックのリリを投げつけて緊急回避し、
「おどろう……霧のなかで」
 相手を怠惰に誘う魔触の霧を生み出し、オークの動きを止めると、
「がんばれがんばれ」
 番犬と化したリリが懸命に頑張ってその喉笛を噛みちぎった。
「撹乱物質散布……支援します」
 さすがに狙われすぎていると判断した野鳩は、ラトゥーニを守るため、敵の認識能力を撹乱する粒子を射出する。
「???」
 オークたちは視覚を始めとしたあらゆる知覚が撹乱され、ラトゥーニを時折陽炎であるかのように認識して、彼女を追いかけるのをようやく止めるのだった。
「本当に分かり易いですわね」
 露出の高い服装につられて寄ってくるオークたちの表情を見ながら、露は呆れたようにつぶやくと、
「そんなに女性のお尻を追っかけたいならお尻で潰してあげますわ!」
 掌から発生させた高エネルギー体を尻に纏わせ、オークの頭上からのヒップアタックで叩き潰す。
「ぶぎゃっ」
 顔を尻で潰されたオークは地面に仰向けに倒れ、数回の追撃の末に露の座布団と化した。
「!!!」
 その様子を見ていたオークたちは、一斉に露の方を向き、じっと彼女の尻を見つめる。
 彼女にやられたオークが羨ましかったのだろうか。オークたちは目を輝かせて彼女に攻撃されようと集まりだした。
 そんな大きな隙を見逃すわけもなく、ケルベロスたちはオークたちに背後から忍び寄る。
「ほんと、最っ低。ですね」
 いちごは具現化した光の剣でその背中を真っ二つに切り捨て、
「お嬢様。こちらもおねがいします」
 そこへ、オークを無数の黒鎖で雁字搦めにしたキーラが淡々とした声でいちごを促した。
「そんなにお尻がいいのか。なら、こうしてやろう」
 エメラルドはオークの尻を超高速の突きで力強く突き、
「使い物にならなくしてあげるよ」
 ガートルードは背中に生える触手の根本を力任せに叩き潰す。
「ぎあっ」
「があっ」
「ぐぇっ」
 露の尻を目指したオークたちは悲鳴をあげ、志半ばに力尽きていく。
「敵に背中を向けるとは、愚かだな」
 野鳩は溶かされた鎧とセットで用意していた模造刀を手に取り、炎をまとわせると、
「成敗!」
 短い掛け声とともに間合いを詰め、脳天から叩き割るように刀を振り下ろす。
「……む、むねン」
 オークはそう言葉を言い残して、前のめりに倒れる。
「これでお終いですわね」
 その姿を確認しながら、尻に敷く座布団オークを3枚に増やしていた露は、とどめの破纏撃を彼らに喰らわせ、立ち上がった。

●お祭りを楽しみながら
「お疲れさまでした……大丈夫ですか?」
 いちごはキーラのことを気遣いながら、彼女の衣服をヒールして直していく。
「もったいないお言葉ありがとうこざいます。お嬢様」
 キーラそう言っていちごに微笑み、
「折角ですから、お祭りを楽しんでいきませんか?」
 と、いちごや、周囲でヒールの作業をしていた仲間たちに声を掛ける。
「ぉぃしぃ。食べる?」
 屋台で食べ物を買い求め、幸せそうな顔で口を動かすラトゥーニは、
「ありがとう。甘くて美味しいね」
「先程ラトゥーニさんが食べてらした、りんご飴というのをいただきますわ」
 ガートルードと露におすそ分けしながら、甲冑競馬を観戦するために高台に登る。
 高台で先に場所取りをしていた皇士朗は、女武者たちの動きを真剣な目で見つめて、
「馬術か……平衡感覚を鍛えるのに良さそうだな。……それに、馬上戦闘の心得が役立つことがあるかもしれん」
 と、色気の欠片もない感想を呟く。
「鎧を着ながら馬を操るのは難しいからな。興味深い」
 野鳩はそんな皇士朗の隣で、鎧を着こなす彼女たちの動きに注目するのだった。
「よろしく頼む」
 甲冑競馬に参加することにしたエメラルドは、武者鎧を身につけ、相棒の馬のたてがみを優しく撫で、スタートに備え、
「頑張れよー!」
 という歓声に手で答える。
「馬達も元気なようですわね! さあ張り切って参りましょう!」
 同じように飛び入り参加となったエニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)は、まさに戦場の牡丹! と言った感じで凛々しく馬上に座りスタートの時を待つ。
 ドォン! ドォン!
 そして、スターターを買って出たキャロン・ティービー(シャドウエルフのミュージックファイター・en0138)が鳴らす陣太鼓の音とともに、
「さあ、今年も女武者たちによる熱き戦いが始まりました!」
 女武者たちは愛馬を走らせ、実況とともに戦いの火蓋が切って落とされるのだった。

作者:きゅう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年8月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。