春霧の白

作者:崎田航輝

 花園は白色に満ちていた。
 満開に咲くのは小さな花々。枝先に沢山の花をつけて、清廉な色を見せる霞草だ。
 触れれば落ちてしまいそうなほど繊細な花弁は、しかし連日の雨にも落ちること無く園を彩る。この日は久しく晴れた青空に一層、濁りのない色を映えさせていた。
 街道沿いのこの花園は、道の両端を霞草だけが囲う形となっている。柔らかな白色に挟まれたその空間は、初夏に春霧の中を歩んでいるような不思議な浮遊感。ベビーズブレスの呼び名にも相応しく、温かく優しい空気に触れた気にさせてくれる景色だった。
 だが、そんな道を人々が歩んでいたときに異変は起きる。
 空からふわりと、謎の胞子が舞い落ちてきていたのだ。
 それは霞草に取り付くと、瞬く間に同化。花々を蠢かせ始めていた。
 直後には、それらは攻性植物へ変化。巨大な5体の狂花と化している。
 花園から這い出たそれに、人々は悲鳴を上げて驚いた。逃げ惑うも虚しく、攻性植物は喰らいかかるように強襲。人々の命を刈り取っていった。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達を見回していた。
「本日は、攻性植物の事件について伝えさせていただきますね」
 先日より確認されている、大阪での攻性植物の動きの一件だという。
「爆殖核爆砕戦の結果として、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出している、その流れのひとつのようですね」
 攻性植物は大阪市内を重点的に襲おうとしているようだ。
 狙いは一般人を遠ざけることで、市内を中心に自身らの拠点を拡大させることだろう。
 今回の敵も市内の街道で暴れだそうとしている。放置すれば人々が危険なだけでなく、敵の情勢に有利な結果を生んでしまうだろう。
「この侵攻と人々への被害を防ぐために。攻性植物の撃破をお願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は攻性植物が5体。出現場所は街道です」
 明媚な風景を楽しめる道で、現場は霞草の咲く一角。
 警察、消防なども駆けつけやすい位置なので、人々の避難は任せてしまっても問題ない。
「皆さんは到着と同時に戦闘に集中していただければと思います」
 一般人を殺そうとする危険な存在だが、一度戦闘に入れば逃走などは行わないので、対処は難しくないだろう。
「とはいえ、敵は5体。数の多さは脅威になりそうです」
 別行動こそしないが、その分しっかりとした戦法を取ってくるらしい。同じ植物同士のためか連携もそれなりに高度のようだ。
「攻撃法は、花弁を飛ばしてくる近単捕縛攻撃、白色の光を纏う耐性付きの遠列ヒール、薄霧で視界を奪う遠列催眠攻撃の3つです」
 各能力に気をつけてください、と言った。
「人々も花園も守るために。ぜひ、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
八柳・蜂(械蜂・e00563)
ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(幻肢愛のオヒメサマ・e01185)
ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)
葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)
夜殻・睡(氷葬・e14891)
小鞠・景(冱てる霄・e15332)
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)
ウリル・ウルヴェーラ(ドラゴニアンのブラックウィザード・e61399)

■リプレイ

●接敵
 白い花々の咲く道へ、ケルベロス達はやってきていた。
 市民は既に、警察消防の誘導で避難を始めている。こちらが戦闘予定地に近づく頃には、人々は問題なく遠くへ退避していっていた。
「これが全部かすみ草なんだね」
 ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)は、逃げ遅れがいないことを確認しつつ周囲に視線を巡らせる。見えるのは春霧のような無限の白。
「花束でしか見たことなかったけど、こうやって植わっているものも結構綺麗なものだね」
「ええ。確かにこれは……霞のよう、ですね」
 八柳・蜂(械蜂・e00563)も明媚な風景を見て、静かに声を零していた。
 しかしすぐに前方に視線を留める。
「できるなら楽しみたいところ、ですが──先ずは起きてしまった子達を眠らせなきゃね」
 その目線の先。花園から這い出そうとしている5体の異形を見つけていた。
 巨花と化した、霞草の攻性植物。根を蠢かせ、花弁を揺らしながら獲物を探し求めている。
「これでは、せっかくの花が台無しだね」
 狂った怪物とも言える姿。ウリル・ウルヴェーラ(ドラゴニアンのブラックウィザード・e61399)はそれを見て思わず呟いていた。
「白く可憐な花の変わり果てた姿が、これか」
「霞草のような繊細な花々も、人を襲う化生に変えてしまう……本当に、おぞましいものですね」
 静かに声を次ぐのは、葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)。
 内奥にあるのは、雨後晴天の花盛りを狂花と変じさせられた霞草を、憐れに思う心。
 そして、儚げな白い花の見物すら脅かすおぞましい胞子への憤りだった。
 ならばこそ、退かずオルンは敵に対峙する。
「では、始めましょうか」
「了解ッス。まずは俺から──牽制代わりにやらせてもらいますね」
 そう声を返したのは上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)。手に握った武装“Abstracter”から大鎌を顕現させると、それを投擲。花園から出てきた敵の盾役に、深い裂傷を刻んだ。
 その1体が後退すると、攻性植物はこちらの存在の気づいて進軍してくる。
 藤はすかさず皆に声をかけた。
「とにかく、まずは集中攻撃を!」
「ああ、任せてくれ」
 と、頷いたのは夜殻・睡(氷葬・e14891)だった。斬霊刀“雨燕”をすらりと抜くと、そこの氷気を渦巻かせる螺旋を纏わせる。
 刹那、それを振り抜いて撃ち出し、同個体の根元を凍結させていった。
 その1体は花弁を流動させて反撃をしようとする。が、そこに高速で駆けこんだ影があった。
「思い通りにはさせないわよ──何せ、ここで殲滅することになるんだからなぁ!」
 声を上げて二門の砲口を向ける、ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(幻肢愛のオヒメサマ・e01185)だ。
 瞬間、繰り出すのは『暴食童姫・愛憎の絶剣』。復讐心、憎悪、愛憎までもを含んだ感情は地獄となって眩く撃ち出され、極光の剣となる。それによる斬撃は滾る熱波を伴い、強烈な威力でその1体を後退させていった。
 この間に、敵の前衛と中衛の個体が花弁を飛ばしてきた。
 が、その攻撃は睡が防御態勢を取って衝撃を軽減。直後にはオルンが魔術のメスで切開処置をすることで傷を癒やしていた。
「私も、補助をさせてもらいますね」
 と、声とともに宙に星々の光が煌めく。それは小鞠・景(冱てる霄・e15332)が構えた直剣から生まれる守護星座の輝きだった。
 仲間を覆ったそれは、守りの加護を与えて耐性を強めさせていく。同時に睡の体力も万全となっていた。
「回復は一先ず充分ですね。攻撃の継続をお願いできますか」
「判りました」
 応えた蜂は、ガトリングを構えて盾役の1体に弾丸の雨を浴びせていく。
 敵後衛はその1体に光を施して回復させる。が、まだまだこちらの猛攻は終わらない。
 ほとんど同時に、ヴィが二刀の鉄塊剣を振り上げて跳躍。頭上から重い斬撃を叩き込んで地獄の炎で蝕んでいた。
 わななく攻性植物は花弁を飛ばすが、ウリルもまたそこへ大槌を向けていく。
「やらせないさ」
 瞬間、煙を上げて砲撃。花弁を撃ち落としながら衝撃を与え、その1体を転倒させていた。

●交戦
 倒れた攻性植物はしばし苦しむように蠢いていた。
 が、未だ敵の数は5体。他の4体はむしろ敵意を強めたように活発ないななきを見せている。その姿はまさしく猛獣のようでもあった。
 藤は警戒しつつも、それを見て思わず声を零す。
「攻性植物、なんか最近、一層元気がいいよな。……夏が近いからか?」
「どうだろうね。でも……こうなってしまうと本当に、綺麗な花にはなんとやら、なんて言葉どころじゃないね」
 ヴィも、敵をまじまじと見つめつつ呟いていた。
 攻性植物自身は何を思っているのか、狩りをする獣のようにこちらの出方を窺っているばかりである。
 藤は息をついた。
「何かある度に植物がこうなるんじゃ、大阪市内の人たちは心が休まる暇なさそうだよな」
「……霞草には綺麗な花言葉が多いと記憶していますが。それとは、相反する状況ではあるかも知れませんね」
 ふと言った景は、未だ清廉な色を見せる周囲の花に目をやり、敵に向き直る。
「これ以上花園に悪い印象が残らないようにするためにも──速やかに終わらせましょうか」
「勿論!」
 それにうなずいたヴィは『虚空の睛』。手を伸ばして極小のブラックホールを生成し、攻性植物の体力を奪い取ってゆく。
 敵後衛の1体はすぐに前衛を回復する。だが時を同じく、睡も扇を揺らめかせ、仲間の足元を陣形の形に輝かせていた。
「守りを固めるなら──こっちもそれに対処するだけだ」
 煌めく光は、味方を纏うとともに破邪の力を与えてゆく。
 その輝きをたなびかせながら、藤は『岐の畏れ』を行使していた。
「これでまず1体だ」
 その力は、人の抱く氾濫と豪雨への畏怖に端を発するもの。原始的な信仰心を核にして現れるのは水神ヤマタノオロチの畏れ。瞬間、膨大な水の塊となって襲ったそれは、敵の盾役の1体を飲み込み、跡形もなく消しさった。
 残る前衛と中衛は、催眠性の薄霧を放ってくる。が、前面に立ったヴィがそれを防御。攻撃役に及ぶ衝撃までもを庇い受けていた。
「仲間は俺が、護りぬいてみせるよ」
「待っていて下さい。その傷は、必ず僕が癒やしてみせます」
 と、直後には、オルンが治癒の力を集中していた。己の誇りにかけて、仲間は倒れさせない。その思いが具現化するように、天に昇った光は治癒の雨となってヴィと前衛を癒やしていく。
 皆の意識が明瞭に戻ると、景は虹色の眩い光を発破することで体力も万全に保ち、戦闘力も増強させていた。
 それを確認すると、ウリルはオーブに魔力を込めて攻勢に入ろうとしている。
 攻撃に防御、治癒、警戒。目まぐるしく動く、攻性植物を相手にした多対多。経験が浅いと自覚するからこそその戦場は新鮮に映った。
(「気が抜けないし、手も抜けないな」)
 しかし、だからこそ戦い方の一つ一つが積み重なり自身の力になる。確信を得ながら、ウリルは水晶の炎を敵の後衛に撃ち込んだ。
「次、頼めるか」
「当然! ぶっつぶしてやるッ!」
 声を張ったジークリンデは、間を置かず疾駆して鉄塊剣“Love me do”を振り上げる。
 敵の盾役がそこに割り込んでこようとすれば、構わず剣に滾る炎をまとわせた。
「邪魔するなら吹き飛ばしてやるだけだ!」
 言葉通り、強烈ななぎ払いでその1体を後退させると、その隙に蜂が敵の後衛に狙いを定めていた。
 敵も避けようとしている、が、蜂はヒールの高い靴でひらりと跳躍し、その頭上に迫っていた。
「外しませんよ」
 刹那、放たれたグラビティの塊は、蜂が刺すが如き鋭利な一撃。針のように突き刺さるとウイルスとなって体を蝕み、その1体の生命力を深く削っていった。

●闘争
 攻性植物は葉の破片を零しながら、苦悶するように流動する。
 ただ、不調はもう1体の後衛の回復によってすぐに無くなった。傷ついた個体がいるとは言え、敵は未だ4体を数える形になっている。
「なかなか、しぶといな……それに、厄介だ」
 ウリルは思わず言葉を零す。防御や催眠など、敵が連携を発揮していることが見て取れていたからだ。
「だけど──俺達も負けてはいないか」
 と、ウリルはふと笑う。それは敵の脅威以上に頼もしい味方の存在を感じるからだった。
 事実、藤は早々に刃を投擲して後衛の1体の体力を確実に削っている。
「攻撃が届けば、やっぱり盾役よりはヤワですね」
「よし、このまま畳みかけよう」
 声を継いだヴィもまた、炎弾を豪速で放つことで同個体に行動を許さずダメージを重ねていた。
 この間、敵の中衛は花弁を飛ばそうと体を蠢かせている。
 が、そこへすかさず景が接近していた。
「暇は、与えませんよ」
 言うと同時、剣に纏わせたのは目も眩むほどの雷光だった。
 ばちりと弾けるそれを、刃を振り抜くと同時に直撃させることで小爆破を起こす。衝撃と雷光に蝕まれたその1体は、深い麻痺に陥って行動不能になった。
「こちらはひとまず、抑えられました。今のうちに後衛の方の処理を」
「わかった」
 短く応えて疾駆するのは、睡だ。敵に距離を詰めていきながら、下段に構えた刃に冷気を収束させていた。
 その攻性植物は、とっさに花弁を放って邪魔してこようとする。が、睡は飛来する花びらを、刃を縦横に奔らせて切り落とす。
 散っていく花の残滓の中を、一直線に駆け抜けると、そのままゼロ距離から一刀。螺旋を伴った斬撃を放つことで、その1体を凍結、四散させた。
 敵の盾役は、隙を見てこちらに攻め込み、至近から花弁を撃とうとしている。が、それもまたヴィが滑り込んで防御していた。
「悪いけど、ここから先は行かせないよ」
「傷は浅いようです。一瞬で、治るはずです」
 そう言ったのはオルン。手をのべて治癒の力を直接ヴィに投与する。それは体内を巡るように強く作用して、ダメージを根こそぎ回復しきっていた。
「この調子ならば、もう1体も早く倒せるはずです」
 蜂が言うと、皆もうなずいて敵の後衛に狙いを定める。
 その1体は下がって間合いを取ろうとしていた。が、ウリルが逃すはずもなく、既に砲口の狙いを定めていた。
「ここから、隙を作らずいこう」
 瞬間、爆炎を生み出すほどの砲撃を連射して、その1体の動きを足止め。
 言葉通り、蜂も間断を作らずにガトリングを駆動させて銃撃。避けることの叶わぬ弾幕を張って、花弁や葉を散り散りに吹き飛ばしていく。
 根だけになった攻性植物は、それでも自己治癒で回復を試みる。
 が、ジークリンデがその隙も与えなかった。
「今更回復なんてしても遅いんだよ──これで終わりだ!!」
 真正面から繰り出すのは再度の、愛憎の絶剣だ。
 天を衝くかのような炎の剣を掲げたジークリンデは、そのまま風をも裂きながら一閃。剛烈な衝撃と全てを焼き尽くす熱量で攻性植物を切り裂き、その1体を灰にした。

●決着
 敵の残りは2体。そのどちらも傷を負っていることも手伝って、戦いの形成は大きく傾きつつあった。
 それでも攻性植物は、殺意だけを露わに攻め込んでくる。
 が、藤は同時に巨大な水流を顕現させて盾役に直撃させていた。後退するその1体が蠢く素振りを見せるとすぐに呼びかけてもいる。
「攻撃、来るぞ!」
「俺が対処しよう」
 すると睡が素早く前に出てそれを受け止めて防御。同時に『氷襲凶祓』を行使していた。
「巣食いし厄を祓い清めよ──」
 それは白い冷気を含んだ風を生み出す能力。邪を凍らせて祓う力を持ったその風は、敵が放った霧を氷片にして散らし、仲間の傷を癒やしていた。
「……敵はあと少しで倒れそうだ。攻撃は任せた」
「よし、じゃあどんどん攻めるよ!」
 応えたヴィは再度虚空の睛を実行。強烈な重力で包み込むことで一気に敵を瀕死に追い込んでいく。
 攻性植物は体を苦しげに、激しくわななかせていた。元は可憐に零れ咲くばかりだったその花を、オルンは少しだけ虚しい気持ちで見つめる。
「──それでも、いえ、だからこそ」
 終わらせる、というように。オルンは『叫喚する黒』。子飼いの病魔に烏を象らせて飛ばし、その1体を切り刻んで四散させた。
 単騎となった攻性植物は構わず花弁を放とうとする。が、景がそこへ『水精の蛟』を行使していた。
「――Slan」
 瞬間、顕現された水精から瘴毒を生み出させ、その1体の全身を蝕んでいく。
 ウリルはそこへ踏みこむと、呪詛を含んだ力を発揮して重い斬撃を喰らわせた。
「このまま最後まで、止まらずやってくれ」
「言わずもがなだ。全霊で討ち取ってやるッ!」
 声を返したジークリンデは無数の斬撃で敵の花弁を裂いていく。
 攻性植物はそれでも最後まで攻撃の意志を見せ、霧を生み出そうとした。
 だが蜂はそこに炎弾を飛ばし、霧ごと燃やしていく。
「これ以上は、させません」
 蜂は、自分にとって可愛い妹のような存在の1人の顔を思い浮かべる。蜂にとって霞草はその人の髪に咲く、ほんの少し特別な花だ。
 だから人を殺めさせることを絶対にさせないし、させたくなかった。
「これで終わりです」
 続けて放たれた炎弾は、攻性植物に正面から命中する。燃え上がる炎は、その花弁も葉も全てを焼いて霧散させていった。

「終わりましたね」
 戦闘後、景の言葉に皆は頷いていた。
 ジークリンデは周囲を見回す。
「花は無傷みたいね。地面だけ、少し荒れたかしら」
「ええ。直せるところは直しましょうか」
 オルンが言うと皆も頷き場のヒールと修復を始める。地面を平坦に整えつつ、藤はふと呟いた。
「また似たような事件は起こるんだろうな。はやくゲートを壊して根本的な解決をしたいけど……今はこうするしかないのが歯がゆいな」
「……そうですね。ただ、目の前の敵は倒せましたから」
 オルンが言うと、藤も頷いて、まずは取り戻された平和を喜んだ。
 睡は視線を巡らせる。
「修復は、これで何とかなったかな」
「うん」
 頷くヴィは、明媚さの戻った道で、霞草の花園を見渡した。
 思い出すのは自身の大切な人のことだ。
「一面のかすみ草、一緒に見たかったかなー。今度、一緒に来られるといいな……」
「それにしても、いい景色です。折角なので撮っておきましょう」
 と、蜂はスマホのカメラに風景を数枚収めている。記憶だけでなく、形にも残せればいいと思ったのだ。
 ウリルもしばし花を眺め、散策した。
 歩きながら想うのは、家で帰りを待つ人のこと。霞草を綺麗だと思うたび、この景色をその人に見せたいと思った。
「……またこの場所に人々の笑顔が戻ってくるんだろう」
 それがずっと続けばいい。そう思いながらウリルは暫く、静かになった花園を見ていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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