青い夕日

作者:崎田航輝

 夕刻の教室は、誰もいない。
 こういう場所に1人で帰ってくると、変に侘びしくなることがある。特に自分のような地味な学園生活を送っているものはそうだろう、と、勉は呟いた。
「勉強して点を取る。放課後は生徒会の仕事。その繰り返し……やはり地味だな」
 髪は短く、洒落っ気がない。生徒会員だから当然だが、制服は崩さず着ている。
 根が真面目なタイプだからこうなったのも自然なことで、別に苦痛ではない。
 でも、高校生活というと、もっと別のものを思い浮かべていたのだ。
「……あいつは楽しそうだな」
 窓から外を見ると、サッカー部が試合をやって活発に動いていた。特に、その中心で活躍する男子生徒には、見ている女子から黄色い声が飛んでいる。
 それを羨ましげに眺めてしまう自分がいた。
 と、そんなときのこと。
「──悩んでいるみたいね?」
 不意に背後から、言葉とともに1人の女性が近づいてきていた。
 それはドリームイーター『フューチャー』。
「君は……?」
「理想と現実に苦しんでいるんでしょう? そのギャップに」
 一瞬警戒を浮かべた勉。だが、フューチャーの巧みな言葉に、思わず頷いてしまう。
 ひとしきり話を聞いたフューチャーは誘導するように聞いた。
「あなたは、身近な人でいうなら、どんな人になりたいの?」
「1人挙げるならやはり、和斗だろう」
 勉はサッカー部の方を見て、迷わずに言う。
「幼馴染なんだが、高校に入って差がついてしまった。元々ルックスも運動も一流だからか、今では学園のスターというところだろう。正直羨ましい」
「あら、そこまで分かっているなら簡単じゃない」
 素直に話す勉に、フューチャーは笑みを浮かべて見せた。
「理想の自分になりたいなら、全て奪って自分のものにすればいいのよ」
 それから、勉に鍵を刺して、ドリームイーターを生み出した。
 倒れ込んだ勉の代わりに生まれたそれは、勉自身に似ている。が、髪型などの雰囲気が、グラウンドで声援を浴びている男子生徒に似ていた。
 アンバランスな夢の姿。そのドリームイーターは、グラウンドに飛び降りると、サッカー部の方へと向かっていった。

「集まっていただいて、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ドリームイーターの事件について説明させていただきますね」
 どうやら、日本各地の高校にドリームイーターが出現し始めたらしい。ドリームイーター達は、高校生が持つ強い夢を奪って強力なドリームイーターを生み出そうとしているようだ。
 今回狙われたのは、都内の高校に通う勉という生徒。彼から生まれたドリームイーターが、その幼馴染である和斗という生徒を襲おうとしているらしい。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、ドリームイーター1体。出現場所は都内の高校です」
 放課後であり、夕刻で部活をする生徒などがいる。
 ドリームイーターは丁度グラウンドに出ようとしている所だ。こちらは避難を呼びかけつつ校庭で迎え撃てば、被害者を出さずに戦闘を行えるだろう。
「今回の敵ですが……夢の源泉である『理想の自分への夢』が弱まるような説得ができれば、弱体化させる事が可能となるようです」
 理想の姿に憧れても良い事は無いと伝えたり、今のままでも大丈夫なのだと上手く理解させられれば、戦闘を有利に進められるだろう。
「なお、説得が効果を現しすぎた場合、勉さん自身が持つ理想への気持ちを消滅させてしまう可能性もあります」
 それが彼にとっていいことかどうかは分からない。
「説得の有無は皆さんに一任したいと思います。適宜、作戦を考えて頂ければと思います」
 では敵の能力を、と続ける。
「ドリームイーターの攻撃法は、意識を朦朧とさせる遠単催眠攻撃、魔力を放つ遠列パラライズ攻撃、キュア効果の自己回復の3つです」
 各能力に気をつけてください、と言った。
「人の心を利用する敵を許すわけにはいきませんから。ぜひ、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言って頭を下げた。


参加者
鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)
八柳・蜂(械蜂・e00563)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)
ハンス・アルタワ(柩担ぎ・e44243)

■リプレイ

●接敵
 夕日の照らす高校へと、ケルベロス達は駆けつけてきていた。
 生徒や教師も含め、そこは一瞬の平和にある。ただ、校舎の窓からは既に、陽炎を漂わす夢の存在が垣間見えていた。
「あれが理想を求めるドリームイーター、ですか」
 八柳・蜂(械蜂・e00563)はそれを遠目にしつつ、口を開く。ドリームイーターは今しも、校舎から降りようとしていた。
 求めるのは、幼馴染の影。
 鉋原・ヒノト(駆炎陣・e00023)は微かに歯噛みした。
「幼馴染を手にかけるなんて……絶対に駄目だ。やらせない」
 拳には少し力を込める。そこには決意にも似た思いがあった。
「手遅れになる前に2人を助けないとな──いくぞ、アカ!」
 声に応じて、ファミリアであるネズミのアカが鳴き声を返す。アカはそのまま赤水晶を戴くロッドになり、ヒノトの手に携えられた。
 皆は校庭に入ると、避難役と敵の抑え役に分かれる。四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)はその場に留まり、周囲に呼びかけ始めていた。
「私達はケルベロス……敵が出現しているから、今すぐ避難を始めて……」
 凛とした風と隣人力を発揮することで、効果は覿面。皆はすぐに退避を始める。
 蜂とヒノトも、教師とともに避難誘導。それが済むと、ヒノトは戦場の周りに素早くキープアウトテープを巡らせた。
 教師達の退避も終えた千里と蜂も、合流。頷き合って戦場へと踏み込んでいく。

 校庭に降りたドリームイーターは、歪な勉の容姿のまま歩み出していた。
 目指すは、サッカー部の中の1人。
 だが、その歩みは突如の爆風に阻止される。
 それは闇纏いで背後に佇んだ、ハンス・アルタワ(柩担ぎ・e44243)の砲撃だった。後退するドリームイーターへ、ハンスは踏み寄る。
「彼のもとへは、行かせられませんよ」
『……俺の、邪魔をするのか』
 ドリームイーターは、包囲するケルベロス達に不満げな表情を作る。
『俺は理想の姿になるために……奪わなくちゃならないんだ』
「その理想について、聞きたい所でござるな」
 と、声を返したのはエドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)。
 軍人として身についた人心掌握術を駆使するように、視線、声音、全てで誘導するように声をかけていく。
「そもそも、勉氏の求めるところの理想とは?」
『和斗の姿だ。目立つ事をして、皆の人気者。正にスターだろう』
「成る程。して、和斗氏の真似をして巧くいくと思っているでござるか?」
 エドワードは頷きつつそう返す。
「真似をした所で、それは真似でしか無い。見えなかった齟齬と本人の資質で、いずれ理想は破綻するでござるよ」
『……』
 ドリームイーターは少し頭を押さえた。ばちりと陽炎が弾け、微かにその力が薄まる。
 それでも首を振っていた。
『そうかもしれない。だが、俺にはない資質を持っているからこそ憧れる。そんな理想を抱くのがいけないことか』
「もちろん、理想って大事だと思うんだよ」
 と、口を開いたのは朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)。頷きつつも、言葉を続ける。
「でも、あなたはあなたでその人はその人だよ。理想と入れ替わっても、あなたはあなた」
「ええ。羨みを超えて、妬みへと狂う、その気持ちは……わかるのだけれど、ね」
 シャーリィン・ウィスタリア(ライラ・e02576)も、声を継ぐ。夕陽にネイビーブルーの髪を煌めかせ、静々と見据えた。
「──奪っても、貴方は彼にはなれないのよ」
『……く』
 また、陽炎が弾ける。だが、ドリームイーターは抵抗するように波動を生み、こちらの意識を傷つけようとした。
 しかし、それを受けたシャーリィンは、剣から星の輝きを生んで自己と仲間を回復する。
 連続して、結も『紅蓮華翼』を行使し、燃ゆる翼で撫でて中衛を防護。エドワードは攻性植物“ごぼう”から光を放って後衛を保護し、仲間全体に守りを広げていた。
 敵は連撃を狙って魔力を集中している。
 が、そこに風が飛来した。
「悪いが、させはしない」
 それは翼で風を掃く、ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)。長剣“生命と輪廻の剣-Chrono Saver-”で鋭い刺突を打ち、敵の動きを阻害していた。
 ロウガがふわりと降り立つと、そのタイミングで避難役の皆も合流。ヒノトはロッドから雷壁を生み、皆の守りを一層強めていく。
「もう少し、牽制がいるか」
「ええ」
 ヒノトに応えた蜂は、敵を見据えてウイルス状のグラビティを発射。その命を蝕んでいった。
 ドリームイーターは呻きつつも反撃を試みる。が、その前に千里が疾駆していた。
「遅い……」
 千里は瞳を緋色に変貌させると、オウガメタル・胡蝶“黒鉄”を鉄扇へと流動。駆け抜けると同時に斬撃を放ち、敵に膝をつかせていた。

●心
『……確かに、和斗自身にはなれないだろう』
 と、ドリームイーターは呻きながらも立ち上がり、反論していた。
『だが、限りなく近づける。奪えば、すぐにでも』
「そうやって、仮に誰かに「なった」ところで。……あなたは本当に幸せになれますか? 満足できますか?」
 ハンスは一歩歩んで、言葉を返す。
 少し目を伏せているのは、人と言葉を交わすのが得意ではないからだ。それでも一度自分の手を握り、ドリームイーターを見つめる。
「きっと、それはどこか空虚で、楽しくない。他人のように、じゃなくて、自分のなりたいものをちゃんと見つめ直してほしいの」
「ええ。傍に在る光が眩しくて羨ましくなる気持ちは、わかるけど。目が眩んで自分が見えなくなったらもったいないと思うの」
 そう蜂も言ってみせると、結も頷いていた。
「だから、あなたはあなたのままであなたにしか出来ない事をしようよ! これからなのに、それをしないなんて勿体ないよ!」
『……』
 ドリームイーターは呻くように一歩下がる。それは何処か苦悶するようでもあった。
 だがそれでも首を振ると、魔力を放ってくる。
『俺自身じゃ、何をやっても和斗みたいな存在にはなれない。あんな人気者には……差が、大きすぎるんだ──!』
 それは命中とともに前衛に麻痺をもたらした。
 が、直後には結が花のオーラを舞わせ、ヒノトが治癒の雨を降らす。連続してエドワードのオウガ粒子とシャーリィンの守護星座の力も重なり、皆は万全となっていた。
 ハンスと千里が剣撃で敵を後退させると、ロウガはふと上方を仰ぐ。
「差、か。本当に、そうなのか?」
 その視線は校舎、勉がいる方へ向いていた。
「確かに和斗にはなれないかもしれない。だが逆に和斗がそなたのように生徒会を全うに務められると思うのか?」
『それは……』
「勉学で、和斗に勝ったことは?」
 うつむいて黙り込むドリームイーターに、ロウガは続けた。
「あるならば、何も劣等感を感じることなど無いのだぞ? 何一つ劣って居らぬのだから」
「ああ、そうだぜ。外見と運動神経が和斗の武器なら、お前の武器は真面目さだ」
 ヒノトも頷いて、声を伝える。
 込めた思いで、声音は強い熱意を含んでいた。
「お前は、羨ましいって思うぐらいあいつを認めてる。お前だって今までに認めてくれる人が全くいなかったわけじゃないだろ?」
『……』
「だったら自信を失うことはねえよ」
「ええ。あなたは、勉さんはそのままでも素敵だと思う。勉強ができて、生徒会委員なんて素敵だと思うし」
 と、蜂も続けると、ドリームイーターは困惑するように視線を落とす。
『ありがとう、素直に嬉しい。だが……今のまま何もしなくて、いいのか。それこそ、理想には程遠いのでは』
「今のあなたのまま、より楽しくなれる方法を知れば、いいのではないでしょうか」
 ハンスがそう言うと、エドワードもうむ、と頷いていた。
「生徒会員の立場から、和斗氏には出来ない事をすればいいでござるよ。例えば、生徒会員として企画をする等。斯様に、自らの持ち味を活かすでござるよ!」
『持ち味……』
「そう……無理に真似事をせず、自分なりの方法でスターにもなれるはず……」
 千里が告げると、ドリームイーターは首を傾げた。
『スター?』
「真面目さを活かしつつ目指せるスターと言えば……やはり生徒会長……」
 頷きつつ、千里は説明する。
「公明正大、清廉潔白、生徒の規範であり憧れ……生徒たちの悩みや学校の問題を次々解決していけば……その頼もしい姿に憧れの眼差しを送る女子もそこかしこに……なんてこともあるかもしれない……」
『そこまでうまくいくか……いや、でも生徒会長か。いいかも知れない』
 ドリームイーターは少し、憑き物の取れたような顔をしていた。
 ロウガはそこへ顔を向ける。
「鳥より高く飛べずとも、深海魚より深く潜れずとも──人は地を駆ける足を持ち、火を扱う叡智を持つ」
 それはロウガが心に重んじる、鳥と深海魚の摂理だ。
「──なれば、そなたも自身が羽ばたける場所を見つけることは出来よう」
「ええ。貴方らしさを……どうか失わぬよう」
 シャーリィンもそっと頷いていた。
「貴方の真摯な姿を認めている人が、きっと……いるのだわ。そしてそれを忘れなければ、これからも」
 その言葉に頭を垂れたドリームイーター。瞬間、陽炎を消失させて戦闘力を弱めていた。
 残る姿は、いわば夢の残滓か。勉の雰囲気を薄めたドリームイーターは、そのまま真っすぐに襲いかかってくる。
 蜂はそこへ『毒牙』。影の如き大蛇を顕現させ、牙で体を食い破らせていた。
「さあ、今のうちに」
「ああ」
 頷くロウガは、髪の薔薇から魔力が籠められた赤・青・紫・黒・白の五色の花弁を生み出していた。
「刃に舞うは末期の華、踊り狂うは刹那の剣風──」
 花弁を剣の周囲に舞わせながら、ロウガは敵を見据える。
「人心を弄び人を害すのは、決して許されざること、だ……! まずは倒すべき敵を、倒させてもらおう!」
 瞬間、放たれるその剣撃は輪舞【至封蓮華】。強烈な衝撃とともに、薔薇の芳香が敵の熱量を魅了し、剥離。ドリームイーターの表皮を凍結させていた。

●夕日
 苦しげに、地に手をつくドリームイーター。
 それでも構わず立ち上がり、攻撃に移ってきていた。が、ヒノトは隙を作らず、アカをネズミに戻して爪撃を叩き込ませていく。
「あとはどんどん攻撃していくだけか。皆も頼むぜ!」
「勿論……可能な限り叩きのめす……」
 応えた千里は、ぬいぐるみ型の大槌“ナノナニックハンマー”を振り上げていた。
 表情の乏しい千里に対して、そのナノナノのぬいぐるみは表情豊か。やる気に満ちた顔で敵の顔面に激突していく。
 敵がよろけると、蜂は短刀を手に跳躍。ひらりと身軽に翻ると無数に剣閃を奔らせ、上方から傷を刻み込んでいった。
「攻撃、来ますよ」
 蜂が防御態勢を取る頃には、敵が前衛に魔力を放ってきている。
 が、結はすぐに舞うようにステップ。花の幻で皆を癒やしている。
「誰も倒れさせないし、あなたの好き勝手にはさせないよ!」
「助力させてもらおう」
 次いで、ロウガも翼を広げ黄金の光を輝かせていた。
「我が御身に流し光を、時間を癒せ!!」
 瞬間、その光が一層煌めき、皆を覆って万全にしていく。
 敵へは、結のボクスドラゴンのハコが飛来。輝くブレスを浴びせて傷を深めさせていた。
 たたらを踏んだドリームイーターへ、エドワードは『Haunt and Stalk』。ワイヤーで自由を奪い、煙幕で視界も遮る。敵が藻掻けば、指向性の対人地雷を爆破させて宙へ煽っていた。
「これぞ嫌がらせの極地でござるな。次の攻撃を頼みますぞ!」
「はい、何とか、やってみます、ね」
 言ったハンスはそっと手を伸ばしていた。
 死に顔、とも呼べる青白い顔のままに行使するのは死霊魔術。瞬間、何か禍々しい気配がしたかと思うと、空に黒の大群が現れた。
 それは鳥の死骸。夕空を埋め尽くす群は、魔術に寄って一個の意志を持ったかのように流動し、蠢く。それは『ざあざあ』の名の如く黒い驟雨となって降り注ぎ、敵の体を蝕んでいった。
「これで、あと少しのはず、です」
「ならば、わたくしの謳を与えさせて頂きましょう」
 そう声を継いだのはシャーリィンだ。
 敵も、波動で攻撃してきている。だが、それを正面から受けながらシャーリィンは怯まなかった。痛覚や触覚も鈍っているためか、苦痛の色も無い。
 逆に自らの血が流れれば、その魔力を遺憾なく発揮できるというように。シャーリィンはボクスドラゴンのネフェライラにダメージだけ癒やさせると、自身は同時に『夜告げの謳』を行使していた。
「槍で穿ち、剣で屠れ……大いなる女王の名を以て、戦いの誓を示して。――さあ、夜をはじめましょう」
 それは降霊術によって、戦の女神たる「大いなる女王」の力を降ろす能力。瞬間、呪術的な効力が広がり、皆の戦闘力が増幅されていく。
 敵も連撃を狙っていたが、ロウガはそれに先んじて切り込んでいた。
「──壊しの剱、逃れ得ぬ過去を抉り裂く!!」
 刹那、横一閃に敵の同部を切り裂くと、ヒノトも踏み込んで『エテルナライズ』。閃光槍で刺突を打ち、ドリームイーターの胸部を貫いた。
 悲鳴を上げて倒れる敵へ、千里は妖刀”千鬼”を構える。
「奪うことで叶えたところで……かならず後悔する……人を惑わす幻影は弾け散るといい……」
 同時、放つのは『千鬼流 伍ノ型』。重力エネルギーを含んだ突き攻撃で、ドリームイーターを爆散。跡形もなく消滅させていった。

 戦闘後、皆は周囲をヒールし、学校側にも安全を伝えた。
 勉は無事に意識を取り戻している。ロウガは教室に上がってそれを確認した。
「無事のようだな」
「はい。ありがとうございました」
 事情を聞いた勉は、深く皆に礼を述べる。それから、自分は自分のやり方で、生徒会長を目指してみたいのだと語った。
 帰っていく勉を見て、ヒノトは息をつく。
「勉は平気そうだな」
「しかし、ああいった悩みはある意味で、若者の特権でござるかね──」
 エドワードは彼の悩みを思い返しつつ、自分も歳をとったな、と少し感じていた。
 結も思い返すように呟く。
「誰かと比べても、自分は自分でしかないのにね? 優劣なんて、人それぞれの価値観みたいなものだから、そこに正解なんてないのに……」
「学生生活は、少し羨ましい気がします」
 と、蜂は歩み出しつつも、校舎に振り返っていた。そういった経験の無い蜂には、その光景もまた少し珍しく映っていたようだった。
「とにかく作戦完了、だね! ハコ、お疲れ様! だよ! 帰ろっか!」
 そのうちに、結がハコと一緒に帰路につくと、皆も帰還を始める。
 ハンスは人心地ついたと言うように持参スイーツのひよこを取り出していた。
 スイーツと言いつつ焼き菓子ではない、かと言って生き物でもない、謎の食用のものを食べつつ、ハンスはそのうちに歩み始める。
 傾いた夕日が、最後の煌めきを見せている。それは先刻より幾ばくか、澄んだ光だった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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