猫の街、波間の戦い

作者:崎田航輝

 のどかな港町。人々とともに行き交うのは、たくさんの猫だった。
 都会から離れていたり、餌となるものに困らない環境では、野良の猫が急増することがある。この街もそんな場所だからか、視線を巡らせればそこかしこに猫が見えた。
 黒猫に白猫、虎柄に斑猫。シュッとした猫にふわもこの猫。
 見た目も様々な老若雌雄の猫が、港だけでなく、道や公園、人家の周辺にも散見された。
 昨今は猫を好む人も一層増えたからか、半ば観光地化もしている。休日ともなると、猫と戯れ、写真を撮りに来る人々が、かなりの数訪れるのだった。
 だが、この日。
 街に響くのは、人々と猫の楽しげな声ではなく、悲鳴だった。
「ははっ、逃げるなよ。どうせ、最後には死ぬんだぜ?」
 人々が混乱し、逃げ惑うのは、そこに身長3メートルの巨躯がいるからだ。
 巨剣を掲げたデウスエクス、エインヘリアル。獲物を見つけたとばかりの喜色を顔に浮かべ、人々を殺戮していっていた。
「悪いが俺は猫派じゃないんでな。弱肉強食、同情はなしだ!」
 猫を逃そうとしている人間へも、エインヘリアルは容赦なく剣を振り上げ、斬り殺していく。そうして、走り去っていく猫には目もくれず、人間だけを狩っていった。
 少しの後には、街から人の息吹が消え失せる。
 エインヘリアルはそれきり飽きたように、歩き去っていった。

「無辜の人々はもちろんですが……猫さんにまで迷惑をかけるなんて、ひどいですね」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は少し声に力を込めるように、ケルベロス達に語りかけていた。
 それから、気を取り直したように説明を再開する。
「ええと──本日皆さんに頼みたいのは、エインヘリアルが出現する事件になります」
 アスガルドで重罪を犯した犯罪者が、コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれ、地球に送り込まれている。以前から続くこの事件の新たな一件だとイマジネイターは語った。
 自由を得たエインヘリアルは、港町に現れて、虐殺を開始する。
 放置しておけば、かなりの死者が出てしまうことだろう。猫達に迷惑がかかることも想像に難くない。
「皆さんには、このエインヘリアルの撃破をお願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、エインヘリアル1体。出現場所は、港町です」
 猫が多く住んでいるという場所で、現場は市街中心。猫を見に来た観光客を含め、それなりの数の人々が行き交っている状態だという。
 万全を期すために、これらの人々を事前に避難させておくといいと言った。
「今回は、敵の出現まで時間的猶予がある状態です。焦らず避難活動をしていただければ、その場の人を逃がすことは出来るでしょう」
 避難が済んだら、後は敵を待って迎え撃ってくださいと言った。
「では敵の戦闘力について説明を」
 エインヘリアルは、剣を一振り、装備している。
「おおよそゾディアックソードに似た武器で、能力的にもそれに準じた技を使ってくると思っていいでしょう」
 各能力に気をつけてください、と言った。
「人々と、猫さんの日常を守るために。是非、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言ってぐっと拳を握った。


参加者
ゼロアリエ・ハート(紅蓮・e00186)
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)
市松・重臣(爺児・e03058)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
遠野森・空(虹描き・e44142)

■リプレイ

●猫の街
 波音と猫の声が響く街。
 その中心に降り立ったケルベロス達は、早速避難活動を始めていた。
「私たちはケルベロスですわ。此処にエインヘリアルがやってきますので、逃げて下さいませ」
 人波に呼びかけているのは、カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)。高らかな声音に、人々はすぐに移動を開始している。
 混乱する者がいれば、カトレアはそこにも丁寧に言葉をかけていた。
「敵がやってくるのには時間がありますから。落ち着いて、慌てず逃げて下さいましね」
「そうそう! 焦らず、でも出来る範囲で急いでココから逃げてね!」
 と、声を継ぐのはゼロアリエ・ハート(紅蓮・e00186)。人々を先導しつつ、視線を下ろして声を続ける。
「あと、猫も一緒にお願い!」
 というのも、人が逃げ始めるほどに、周りは一層猫密度が高い。人々も可能ならば連れて行くようにと、ゼロアリエは言い含めていた。
 それでも逃げきらないと見ると、市松・重臣(爺児・e03058)も猫の避難に助力。物陰の猫だまりに近づいて声をかけた。
「騒がせてすまぬな」
 そこにいるのは好奇心旺盛な子猫達だ。足元をカリカリ引っ掻いてくる数匹を抱き上げつつ、遠くへと放していく。
「後で詫びもふもふに伺うからの、ちと離れて良い子にしとってくれ!」
 そうして物陰から猫がいなくなると、オルトロスの八雲に狭いところも確認してもらっていた。
 細道で遊んでいたやんちゃな猫達には、フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)が声をかけている。
「ん、ここは危ないの。だから、あっちに逃げていてほしいの」
 動物の友の力も活用して、1匹1匹にできるだけ意思を伝えていく。猫達は顔を見合わせつつも、最後には遠くへ駆け出していった。
「後でいっぱい遊ぼうね!」
 言葉に鳴き声が返ってくるのを確認すると、フォンは振り返る。
「ん、こっちの方は大丈夫なの」
「ああ、ありがとう」
 と、応えるのはリューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)。すぐ横の広場に、のんびりと過ごす大人の猫達を見つけていた。
「ここにも被害が及びかねない。一時、離れていて欲しい」
 リューデはおやつも与えつつ、のそのそと歩む猫達を広場の外へと誘導していく。
 老猫や、人慣れしすぎて動かぬ猫がいれば、そっと抱っこした。
「決してどさくさに紛れて触れ合っているわけではないから──いや、とにかく、今はこちらに逃げていてほしい」
 抱えられても落ち着いている猫に語りかけると、リューデはそのまま広場の猫を逃していった。
 遠野森・空(虹描き・e44142)は、それをふと眺めている。
「動物の友、良いなぁ……」
「力がなくても、逃すことくらいはできそうだぞ」
 と、それに声を返すのは一条・雄太(一条ノックダウン・e02180)。キャットフードを皿に盛って、猫を誘い出していた。
 そして出てきた猫を、避難する人々に託していく。
「さて、猫もそうだが、人間も最後まで、きっちり逃さないとな」
「そうだなー。ま、出来る仕事をしようか」
 雄太に頷く空は、極彩色の翼を光らせて、上空へと飛び上がる。そこから逃げ遅れた人を見つけては、避難に参加させていった。
「お、そっちはどう?」
「委細問題ない。避難はそろそろ終わるだろう」
 空中で空に応えるのは、天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)。こちらも上空をめぐり、はぐれた人を見つけ、すぐに避難方向に誘導していた。
 さらに、戦場近くの建物の屋根で猫が寝ていれば、水凪はそれも抱えて連れて行く。
「危険は無いと思うが、一応な」
 にゃご、と起きて鳴く猫に応えつつ、水凪は猫の避難も完了させていった。
 一帯が無人となると、皆はひとところに集まった。そうして、待ち伏せの態勢を取る。
「良い街だ」
 リューデは敵影を探しつつも、波音を感じるように見回していた。
「お猫さ……、猫と人が平和に暮らすこの地。必ずや護り抜く」
「うん、全力で、守らないとね!」
 声を継ぐゼロアリエも、そう強く頷いていた。
 そして丁度その時。道の向こうから歩いてくる巨影が見えてきている。
「……来たか。またしても、と言わざるを得ないな──罪人のエインヘリアル」
 呟く水凪の声には怒りも滲む。エインヘリアルには変わらず、いい感情は浮かばなかった。
 だからこそ迷わずに、水凪はそちらへ飛ぶ。
「──変わらず罪人を放り込むのならこちらも変わらず止めるだけのこと。行くぞ」

●開戦
 ケルベロス達はそのまま、エインヘリアルに立ちふさがった。
 警戒を浮かべて見回してくる巨躯へ、雄太は目の前で言ってみせる。
「こんなところにまで出てきやがって、ずいぶんと暇そうだな。悪いが速攻で返ってもらうぜ!」
「……ケルベロスか、てめぇら」
 エインヘリアルは得心したように言うと、剣を手にとっていた。
「殺せる餌が全然いねえから、変だと思ったぜ。全部、てめえらのせいってわけだ」
「餌、ねえ」
 空はその言葉に呆れた声を零す。
「エインヘリアルってのは、ほんっともう……俺達が居なくなった途端にコレだもんなぁ」
「あん? ……てめぇは、ヴァルキュリアか。俺に勝てるとでも──」
 と、エインヘリアルが口の端を持ち上げた、その時。
 空は既に大絵筆を振るい、自らの脚に炎を描き出していた。
「今の俺はケルベロスだからねー、倒しちゃえるんだなぁコレが」
 瞬間、空は宙を滑空して、炎の蹴りを叩き込む。敵が後退すると、空は飛び退いて皆に向いた。
「さ、このまま悪者退治と行きましょーか!」
「ん、猫さん達を大事にしている人達を殺そうとするなんて許せないの。だから絶対に、倒してみせるの!」
 声を継いだフォンは、ガントレット“獣拳「カッツェファウスト」”を赤く輝かせる。
 それは、猫達の心の宿った拳。共に戦うという魂の意思とともに、フォンは強烈なパンチを加えていた。
 よろめく巨躯は、ちっと舌打ちしてみせる。
「なんか妙だと思ったら……てめぇら、猫派か」
「ああ、俺は猫派だ」
 正面から、大真面目に言ってみせるのはリューデ。魔弾を発射して巨躯の足元を凍らせると、宣言してみせた。
「だからこそ、お猫さ……猫を害することを、この地を荒らすことを、許さん」
「その通りじゃ! 人は無論、猫様まで脅かすとは不届千万!」
 次いで重臣も、高らかな言葉とともに八雲を疾駆させている。
「猫様在る所、我が心の自宅も同然 斯様な狼藉者は問答無用で成敗しようぞ、八雲!」
 八雲は応えるように鳴き声を上げ、エインヘリアルに斬撃を喰らわせていった。
 この間に重臣は光で陣形を描き、後衛の仲間に破邪の力を宿している。
「背猫の陣……もふもふの陣……いやにゃんでもにゃいぞ。とにかく、これで強化完了じゃ!」
「小癪な真似を……!」
 エインヘリアルは一度間合いを取り、氷波で反撃してきていた。
 だが氷の暴風の中で、水凪は川の流れるような、穏やかに光るエクトプラズムを現出させている。
「その程度では、倒れぬよ。すぐに癒してみせるとも」
 言葉通り、水流のように空中を伝ったそれは、氷を溶かし、皆の傷を癒していく。
 同時、ゼロアリエも縛霊手・紅天鬼から鬼火の如く揺らめく霊力を発現。周囲に漂わせることで、治癒とともに防護効果ももたらしていた。
「ライキャリさん、攻撃は頼むよっ!」
 ゼロアリエに呼応して疾走するのはライドキャリバーのライキャリさん。そのまま突撃して巨躯の躰を炎上させていた。
 エインヘリアルは呻きつつも剣を振り回す。そこへカトレアは怯まず、ふわりと跳んでいた。
「そのような攻撃で防ぐことは出来ませんわよ」
 振るうのは、“艶刀 紅薔薇”。文字通り、薔薇の舞うような流麗な剣閃で敵の刃を弾くと、返す刀で刀身に氷気を纏った。
「さあ、私のテクニックを、その身に受けてみると良いですわ」
 瞬間、カトレアは敵の全身へ連撃。氷の傷を刻みつけ一気に体力を奪っていく。
 エインヘリアルはカトレアを振り払おうとするが、そこへは雄太が疾駆していた。
「おっと、させるかよ!」
 繰り出すのはオープンフィンガーグローブ“ザ・テイカー”を握りしめた、裂帛の拳。
 飾り気のない一撃だからこそ、それは違わず直撃。エインヘリアルの腹を打ち、巨体を吹っ飛ばしていた。

●闘争
 エインヘリアルは呻きながら、起き上がる。
「ぐぅ……どいつもこいつも猫猫と。納得いかねぇぜ──」
「あら、猫は可愛いじゃありませんの。何が気に入らないんですの?」
 カトレアがふと口を開く。
 巨躯はふんと鼻を鳴らしていた。
「可愛いものなら、他にだってあるだろ? 幾らでも……」
「だからといって目の前の生き物を無下にしていいことにはならない」
 そう返すのはリューデ。敵へ鋭い視線を向けてみせる。
「──命を尊ばぬ者が、弱肉強食を口にするな」
「そうだよ! それにお前は最初から敵だけど……猫派じゃない時点で一切容赦はしないからね!!」
 ゼロアリエはいつもより3割増しの本気モードで、指を突きつける。
 強く頷いた重臣は、疾駆して巨躯の眼前へ。力を込めて拳を握りしめていた。
「そうじゃ。詰まりは、猫様の御前に三下は通さぬということ──。ほれ、頭が高いぞ下郎!」
 その一撃は、『無極』。でたらめな程の威力の拳に、エインヘリアルは宙へ煽られる。
 そこへ、カトレアは跳躍。靴装“薔薇と歩む軌跡”に炎を絡め、赤々と燃え上がらせていた。
「この炎の蹴りを受け、その身を炎に包まれてしまいなさい!」
 刹那、蹴り落としが巨体を地に叩きつける。
 エインヘリアルはそれでも起き上がり、暴れるように剣を振ってきていた。雄太は構わず殴りかかろうとするが、反撃の刃をもらいそうになる。
「ん、深追いは、危ないの」
 と、そこへ疾駆する影がある。ボクスドラゴンのクルルを飛び立たせているフォンだ。
「ん……クルル、いくよ」
 同時、フォンはクルルが吐いた蒼い炎を手に宿し輝かせていた。
 そのまま繰り出す一撃は、『狐竜の蒼炎蓮華』。蒼く輝く高速の拳で、エインヘリアルを大きく後退させていた。
 間合いができると、雄太は一度クールダウンしたように首を振る。
「すまねぇ。落ち着かないとな……」
「ん、大丈夫、なの」
 フォンが応えていると、敵も態勢を直して剣を振ってくる。
 だが今度は、防御態勢を取ったゼロアリエが受け止め、威力を軽減。直後にゼロアリエ自身、そしてリューデが治癒のオーラを生むことで、その傷を癒していた。
 連続して、水凪も淡い癒しの光を注ぐことで、ゼロアリエを万全に持ち直す。
「治療はこれでいいだろう」
「色々助かったぜ。いくぜ、改めてぶっとばしてやる!」
 すると、雄太も再び攻勢に移り、『地獄突き』。苛烈な貫手を放ち、エインヘリアルの胸部を貫いていた。
 血を吐くエインヘリアルは、それでもがむしゃらに攻めてくる。
「猫派なんて、皆殺しだ……ッ!」
「させねーよ。誰も、悲しい思いや辛い思いになんてな」
 だが、そこに声を返した空が、光の翼で空を翔けていた。
 みんな笑って暮らせればいい。そのために自分の絵が役に立てばいい。そんな思いを体現するように、空は絵筆から虹の奔流を生み出している。
「ハレルヤ! 楽しくいこうぜ!」
 はしゃぐように笑って行使するその力は、『虹翔』。
 翼の光で軌跡を描きつつ、筆で虹色の鮮やかな世界を作る。それはエインヘリアルの意識を引き付けるように、動きを止めていた。
 その隙に、水凪は『魔槍』。冥府の冷気から無数の槍を作り、巨体を串刺しにする。
「そろそろ、終りだ」
「ええ、これで決着ですわ!」
 次いで、カトレアは刃を縦横に走らせた。
 連続の剣閃は、薔薇香るように雅やかに。エインヘリアルを切り裂き、消滅させていった。

●猫とともに
 戦闘後、皆は一帯をヒールした。
 街の美観が修復されると、人々を呼び戻し、猫も街に帰らせる。少しの後には、猫と人が行き交う風景が戻ってきていた。
 カトレアはそんな光景を見回す。
「折角ですから、猫とじゃれ合いたいですわね」
「そうだね! 猫ちゃん達は皆無事だし、遊んで帰ってもいいよね……!」
 頷くゼロアリエは、猫じゃらしを手に早速空き地へ向かっていた。
 そこでするのは、鬼ごっこ。駆け回る子猫達と、追いかけたり、追いかけられたりを楽しんだ。
「こっちだよー!」
 と、遊んでいる内に猫にもみくちゃにされ、土管跡に寄りかかって休憩。ライキャリさんは猫に囲まれても男前に、クールな様相を保っていたという。
 一方、重臣は物陰に寝転ぶ猫を見つけていた。
「今こそ安心してにゃごやかな時を――ふるもっふを、ヘソ天を!」
 言うと、おもちゃの猫じゃらし・改で巧みに猫をごろごろさせていく。ついでに猫の恐怖を少しでも和らげようと、詫びもふをしつつ毛並みもなでていた。
 重臣は八雲とじゃれ合う猫をみて満足気に頷く。
「嗚呼、極楽じゃな! のびのび気侭に過ごす姿は至上の癒し! ──この地に幸が途絶えん事を!」
 そんな幸福そうな声が、波間に響いていた。
 雄太は港で、散歩中の猫を抱き上げている。
 犬派だが猫の可愛さも分かるつもり、だったが、そこで予想外に猫アレルギーが判明して、猫を降ろしていた。
「ウイングキャットは平気だったのにな……」
「それは、仕方のないことですわね。これほど、可愛らしいのですから残念ですわ」
 と、カトレアは虎猫を腕に抱いている。にゃご、と鳴いてくれば、微笑みを返していた。
 その近くの細道。とことこと歩く白猫に、空は声をかけている。
「おーいねこー、にゃんこー。ね、ちょっと触らせて? ダメ?」
 手を伸ばして言うと、猫は好きにしろとばかり、ゆるい鳴き声を返してきた。
 空がお言葉に甘えてなでていると、そこへ水凪も灰色の猫とともに歩いてくる。
「猫が多くいるというのは、いいものだな」
 そう言う水凪の表情は変わらず乏しい。だが、猫に触れ、じゃらしつつ、ともに歩む姿は、無類の猫好きのそれなのだった。
 そこへ、フォンが塀の上の猫とかけっこするように、ぱたぱたと走ってきている。
「ん、猫さんはみんな、速いの……!」
 猫と無邪気に駆け回るその姿は、年相応の少女でもある。それから2人と合流する形になると、一度休んで、一緒に猫と戯れていた。
 リューデは1人、散策しながら写真撮影をしていた。
 以前の作戦で学んだ技術を活かし、猫と上手く交流し、ポーズを引き出しつつ、様々なショットを収めていく。
 その内に、日なたで過ごす老猫達を見つけ、自身も側に腰掛けた。
「今日は、ありがとう」
 そう言うと、猫達は気にしないとばかりに泰然と、穏やかな表情を見せる。
 こんな猫達が長生き出来ればいいとリューデは思う。
(「そのために、これからもこの街を、星を、護らなくてはな」)
 その心は、強く。暫し猫とともに、温かな時間を過ごしていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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