菩薩累乗会~おっぱいさわっても……ええんやで

作者:きゅう

●人類におっぱい触る自由を!
「はぁ。なんであんなことをしたんだろ……」
 自宅で仕事の疲れを癒す会社員の男は、今朝の出来事を思い返して深くため息をつく。
 満員電車の中で、近くにいた女性の胸を触る行為。いわゆる痴漢を行ったことを深く後悔して。
 その行為は告発されることはなく、彼も誰かに捕まったわけではなかった。
 だが、相手の女性の嫌がるしぐさや息遣いを思い出しては、
「ダメな男だよ。俺は」
 本来生真面目な性格の男は、自責の念で自分自身を追い詰めていくのだった。
「ええんやで」
 不意に、彼の耳に優しくささやきかける声。
 男はその声に反応して顔を上げると、おっきなひよこのような鳥が、
「おっぱいさわっても……ええんやで」
 その行為はすべて許される。そう言いながら暖かな羽毛で彼の頭を包み込む。
「ああ……」
 男はその言葉の後ろにある、恵縁耶悌菩薩の許しが頭に入ってくるのを感じ、恍惚とした表情で、
「素晴らしい。なんてすばらしい教えなんだ! おっぱい! おっぱい!」
 罪の意識を頭の外に追いやり、男は晴れやかな笑顔でそう答えた。
「よろしい。あなたの罪は恵縁耶悌菩薩に許されました。ですが」
 その顔に満足したひよこは男を羽毛で撫でると、笑顔を崩さずに、
「おそらく、すぐに、ケルベロスが君の罪を断罪しに襲撃してくるでしょう。だから、君は戦わねばならない」
 これから迫りくる『敵』の存在を伝え、自分も共に戦うことを誓う。
「更に、自愛菩薩の力により新たに配下とした、この者も君を守るだろう」
 最後にそういうと一人の和服の女性……螺旋忍軍を呼び出す。
「おお!」
 ひよこの羽毛の力でビルシャナ化した男はそういうと、
「これは心強いおっぱい!」
 現れた女性の胸に向けてすかさず手を伸ばす。
 一瞬、平常心を保っていた顔をひきつらせた螺旋忍軍の女性は、冷静にその手から距離を取り、逃げ回るのだった。

●揉んだらあかん!
「そして、このビルシャナ化した男性は、気持ち良さだけを求め続け、恵縁耶悌菩薩の力の一部になり果ててしまうでしょう」
 中条・熊之助(ウェアライダーのヘリオライダー・en0080)が予知する未来はまだ現実のものとはなっていない。
 だが、このまま放っておけば確実にそうなるという未来であり、それこそが、ビルシャナたちの作戦なのだ。
「恵縁耶悌菩薩は『菩薩累乗会』の作戦によって出現した菩薩の1体で、配下のビルシャナである、デラックスひよこ明王達を送り込み、罪の意識に悩む人々の悩みを消し去ることと引き換えに、その存在を自らに取り込んでしまいます」
 このままでは、ビルシャナの菩薩たちに更なる力が渡り、更に多くの強力な菩薩たちが呼び出されてしまう。
「現時点で、この作戦の根本を叩く手段は見つかっていません。ですが、ここで食い止めないと取り返しの付かないことになってしまいますので、素早い対処をお願いします」
 敵は、ビルシャナ化した男とデラックスひよこ明王、それに螺旋忍軍の女性の合計3体だ。
「ビルシャナ化した男は、部屋の中で『羽毛のふわふわ』を堪能しており、それを邪魔することで襲い掛かってきます」
 ビルシャナ化した男とデラックスひよこ明王が攻撃、サポートを互いに行い、螺旋忍軍の女性が2人を守る形で一応チームワークっぽく戦うようだ。
「ビルシャナ化した男は、鐘の音で幻覚のようなものを見せたり、破壊光線のような技を使います」
 また、彼が攻撃する際、ついでに胸を触ろうとするらしい。
「ただ、その行為に攻撃力はないようですので、大きな意味はないと思います」
 デラックスひよこ明王は、ひよこの体で体当りしたり、くちばしでつついたり、もふもふで幻惑してきたりするようだ。
「螺旋忍軍は幻花衆という、自愛菩薩と協力関係となった一派の戦闘員ですが、下級戦闘員なのであまり戦闘力は高くありません」
 自己回復をメインに、こちらの攻撃を牽制するなど、ビルシャナ2体をサポートするようだ。
「デラックスひよこ明王が戦場にいる限り、恵縁耶悌菩薩の影響力が強いため、ビルシャナ化した男の説得は難しいです」
 その状況では、どんなに心のこもった言葉も、気持ちよさに流された男には通用しないだろう。
「もし、救出を目指すならば、まずデラックスひよこ明王を撃破するか撤退させる必要があるでしょう」
 なお、幻花衆の螺旋忍軍は、ビルシャナ2体が撃破された段階で撤退するようだ。
「罪の意識が深すぎるのも問題ですが、程々のところで折り合いをつけて前向きになれるように、言葉をかけてあげていただければと思います」


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
山田・太郎(が眠たそうにこちらをみている・e10100)
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)
除・神月(猛拳・e16846)
金水・狩舞(シャドウエルフの僧侶・e20010)
白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)
エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)
蛭犂・詠巳(微睡みの中の微笑み或いは柘榴・e43382)

■リプレイ

●触っていいのかダメなのか
「これはこれはケルベロスの皆さん」
 ビルシャナとなった男の部屋に殴り込んだケルベロスたちを待っていたのは、巨大なひよこだった。
「みなさんも、恵縁耶悌菩薩の教えに許されてみませんか?」
 ひよこ明王は癒やされるような笑顔で彼らに許しを説き、ええんやで。と心地よい言葉を紡ぐ。
 だが、山田・太郎(が眠たそうにこちらをみている・e10100)はその言葉が終わるやいなや、思い切り武器を振り下ろし、
「ZZz……」
 その後何もなかったかのように目を閉じ、ごろんと寝転がる。
「なっ……」
 そのあからさまな狸寝入りに、やさしさにあふれる顔をしたひよこ明王も顔をしかめ、太郎に怒りの矛先を向ける。
「邪な甘言を吐くな。面妖な鳥よ」
 エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)は日本刀をゆったりと構えて狙いを定め、
「邪魔はさせない」
 そんなエングを止めようと、螺旋忍軍、幻花衆の女が彼の動きに合わせて進路をふさごうとする。
「我が体躯は重鈍。されど刃は飛燕の如く!」
 だが、エングはその速度を急激に速め、幻花衆の女を弾き飛ばしてひよこに高速の突きを放つ。
 自身の重量を勢いに乗せた刀身による突き刺しは、突きを受けたひよこ、そして幻花衆の女の姿勢を崩した。
「これは素晴らしいおっぱい!」
 その間にフリーとなっていたビルシャナ化した男は、現れたおっぱいたちに喜びながら、手近な胸に手を伸ばす。
「無理矢理おっぱい触ったりしたらダメですっ」
 そんなビルシャナに待ったをかけるのは、赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)。
「おっぱいさわってもええんやで。なんて、女の子にとって絶対にありえません!」
 彼女はそう言いながら、本当の女の子へ魔の手が伸びないように、その矛先を自分に向けさせようと体当たりでぶつかっていく。
「許すも許さひんもありまへん」
 ひよこ明王の言葉に、京都弁っぽいイントネーションで蛭犂・詠巳(微睡みの中の微笑み或いは柘榴・e43382)は妖しく微笑みながら返し、
「ひよこちゃんには、おとなしくしはってもらいませんと」
 その周囲に氷を呼び寄せて足元を固めると、その氷の一部を纏わせたナイフで切りつけ、通常の刃ではつかないような形の傷を負わせる。
「――堕ちろ」
 そして、蠱惑的な微笑みを浮かべ、まるで相手を何かへいざなうかのように、激しい光を放って落とす。
「くっ……私は、首をもがれても、死にはしませんよ。暴れまわってやります」
 その神の一撃は、ひよこに屠殺場送りの幻覚を見せるほどの絶望感を与えていたが、なんとか堪えたようだ。
 ケルベロスたちがひよこ明王を攻撃する間、ビルシャナ化した男はいちごのガードにあいながら、胸を狙って攻撃を繰り返す。
「……まあ、そんなのじゃ女の子は満足できないでしょうねぇ」
 と、胸を掴まれたマイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)は、男のプライドを叩きのめすように無反応で見下ろしながら、
「動くわよ。そぉれ!」
 胸を揺らして触ろうとする手を慌てさせ、逆にビルシャナの胸に手を伸ばして触り、無意味におちょくる。
「ほらほら、ちゃんと謝れたら天国見せてやっても良いんだゼー?」
 マイアのペースに翻弄されるビルシャナの隙をつき、マイアを触る手とは反対の腕をつかんだ除・神月(猛拳・e16846)は、
「おっ、そうかそうか。ちゃんと後で謝るんだゾ?」
 胸をあえて触らせて、2人でビルシャナの行動を完全に封じ込めた。
「何という……こほん。ま、まあええんや……」
 この展開は予想していなかったのか、2人の美女に迫られて欲望を発散させるビルシャナに、それでもええんやでと言わなくてはならないひよこ明王は、
「ぐあっ」
 その言葉を終える前に強烈な電撃に妨げられる。
「ええわけねーだろアホかてめェ!」
 神月は降魔「天地殲滅龍」・天地壊滅の雷を放ちながら、激しく突っ込みを入れた。

●その快楽は本物か偽りか
 このまま突っ込み倒されるかと思われたひよこ明王だが、
「しっかりしてください」
 幻花衆の女が冷静にサポートし、ビルシャナを挟む2人を振りほどくように暴れまわり、ビルシャナを解放させる。
「おっぱいを触りたい、その欲求は分からないでもないが」
 もとは女性の胸にだけ興味があったようだが、ビルシャナ化して、どんなおっぱいでも良いという考えになったのだろうか。
 ビルシャナは太郎の胸を狙って攻撃を仕掛けてきた。
「男の胸まで触ってしまうのはヤバくないか?」
 その手を叩き落としながら、太郎は間合いを詰めて呆れたようにつぶやく。
 ビルシャナは次に白銀・夕璃(白銀山神社の討魔巫女・e21055)の胸を狙って手を伸ばすが、
「だめです!」
 いちごがそれを防ごうと掴みかかる。
「ひゃぅ!」
 次の瞬間、もにゅ。という手ごたえがいちごの手を包むとともに、夕璃の悲鳴が……。
「やぅ……女同士なのに……」
 何が起こったのかわからないいちごは、手の感触を確かめるようにもにゅもにゅと手を動かし、
「そんなに手、うごか、されたら……ふぁぁっ……!」
 そのたびに夕璃は戸惑いの声をあげ、されるがままに体をよじらせる。
「あっ……すみませんっ!」
 ようやく事態を飲み込んだいちごは慌てて手を放し、全力疾走した後のように顔を赤くした夕璃に平謝り。
「……だ、だいじょぶ……」
 夕璃はよくあることだからといちごに微笑み、
「こ、ここは歌うしか!」
 いちごは恥ずかしい気持ちを抑え、それを力にして歌声にのせる。
 彼女の持ち歌、「苺の守り人に捧げる、呪いを打ち破る力の唄」が響き渡り、その歌声にケルベロス達の気分は高揚していく。
「いくら傷つこうと、いくら惑わされようと、俺は決して倒れんぞ」
 いちごがばたばたと歌い始めた隙をついて、夕璃を狙うビルシャナの攻撃をエングがその体で受け止める。
「頼んだぞ」
 そして、エングはテレビウムの彼に、ケルベロスたちの活躍をまとめた応援動画を流させ、ビルシャナたちの妖しい光で惑わされた精神を整えさせた。
「人は罪を犯すものですが、それ故省みて成長できるもの」
 ビルシャナの前に立った金水・狩舞(シャドウエルフの僧侶・e20010)は、服装の通りの聖職者のように振る舞い、
「……それを阻む行為を救済と呼ぶなどなんとおこがましいことでしょう」
 それがただのコスプレであるとは感じさせない神々しさをしぐさの一つ一つにのせ、ひよこ明王を糾弾。
「私が、あの方に真の救済を与えましょう……貴方様は……邪魔ですわね」
 勇壮なクルセイダーの姿の氷の彫刻を呼び出し、ひよこ明王を串刺しにしようとする。
「……させない」
 だが、その攻撃は幻花衆の女が身を挺して庇い、ひよこの笑顔は歪まない。
 狩舞は落ち着いた表情で視線を夕璃の方へとむけて、頷く。
 彼女の派手な攻撃は、囮に過ぎなかったのだ。
「貴方の教えは、偽りの快楽ごと……断つ……ッ!」
 狩舞の口上の間に悪霊祓いの短刀『花筵藤四郎』に、花弁のような霊力を纏わせた夕璃は、
「刃に宿りし魂に願う、悪しき生命力を裂き、戒めて!」
 ひよこ明王の眉間めがけて投げつけ、刀から舞い散る花びらがひよこ明王の体を包み込み、その力を刀の中に封じ込める。
 夕璃の封霊閃によって、デラックスひよこ明王の力はこの場から失われるのだった。

●おっぱいの強さ
 デラックスひよこ明王が消滅し、幻花衆の注意が逸れた隙をついた神月は、ビルシャナの男に胸を見せつけながら近づく。
「無理矢理ってのも燃えるけどヨ、やっぱお互い同意の方がスゲー事出来るゼー?」
 ビルシャナは鐘の音で幻惑しながら神月の胸に手を伸ばす。
 神月はその手を拒まずに受け止めてから手首をゆっくりと掴み胸から外させ、
「痴漢は良くねーけド、あたしだったらこの後ちゃんと相手してやるんだけどナー♪」
 おいたのすぎる手にそう言い聞かせながら、胸元を視界の中央に見せ、耳元で囁きながら抱きつくようにして動きを束縛する。
 男は神月に夢中になり、きもちよさを求めて動こうとする。
「他者が無責任に与えた許しは本当の許しではありません」
 だが、その体が神月にもたれかかる前に、その背中を狩舞の柔らかい体が包み込む。
「あなたは良心の呵責、それはまさに、あなたが罪と向き合っている証」
 男はその感触に顔を緩ませながら狩舞の方へ体を向け、ぴっちりレオタードに浮き上がる大きな胸へと手を伸ばす。
「つっ、罪を省み、悔い改めて、その上で自分で自分を許してください」
 狩舞は胸を触られた瞬間ぴくっと反応して、言葉がつまりかけるが、それを我慢して平然を装い懺悔に誘う。
「あなたには、それができるはずです」
 胸を触っている間に届く言葉は男の心に響くようで、緩んだ顔の中にも少しずつ変化が見られる……ように、狩舞は感じた。
「このままでは……」
 彼女たちの説得に危機感を覚えた幻花衆の女は、ビルシャナを囲む女性たちを引き剥がそうとする。
「だ……だめっ」
「悪いなぁ、これは女の戦いどす。邪魔せんと……ま、ウチは男やけどなぁ」
 しかし、それに先んじて夕璃と詠巳がビルシャナの両脇に滑り込み、
「……っ」
 それでも諦めずに近付こうとするが、ビルシャナの手が伸びてくるのを反射的に避けてしまい、男を囲む輪の中に入りそびれてしまった。
 夕璃は恥ずかしいのこらえ、ビルシャナの手をとり自分の体に導き、
 涙目になりながら……ぎゅうっと、自分からくっつき……抱きしめて……、
「気持ち、いいのでしょうけど……」
 彼が痴漢してしまった女性を思い出させるように、嫌がるしぐさや声にならない悲鳴のような息遣いで、
「……だからこそ、一欠片でも良心が咎めるのであれば……ご自身を見つめ返して。……お願いします」
 サラシで抑えていてももっちりふにふにしている胸を触られながら、夕璃は必死に彼を呼び戻そうとした。
「夕璃さん、まで……」
 おっぱいを触られるなんて絶対に良くない。と思っていたいちごはちょっとしたカルチャーショックを受けながら、
「……あっ」
 一瞬目が合った幻花衆の女が諦めたように目線を逸らし、煙のように消え去るのを、あっけにとられながら見送るのだった。
「ええ女がおりはるんやったら粉かけとぉなるもんやさかいなぁ」
 詠巳は不思議な色香を漂わせつつ、ビルシャナのそばに寄り、
「せやけど胸を触る行為自体の何があかんの? ってゆわれたら、あんたはんはどないしはる?」
 耳元でそう囁く。
 そして、男に思考させるだけの間をおいてから、
「そ、何も悪い事やあらへんよって」
 詠巳はそう答える。
「悪い事なんはそれが法的にあかん事で合意が無かった事なんどす。
 つまり上記をクリアしとるんやったら、それは問題ないって事やえ」
 例えば、神月たちへやっていたような胸タッチは、触られることをわかっててあえてそれを許したので、問題ないと言える。
「やってもうた事はしゃあない、許されるように誠実に生きなはれ。
 ウチが女の子紹介してもええけどぉ。……それともウチの方がええのけ?」
 詠巳は肩をぽんと叩いて慰めるようにしながら、最後に妖艶な笑みを作ってくすくすとからう。
 ビルシャナは相変わらず女性には手を伸ばすが、詠巳へは手を伸ばさなくなった。

●おっぱい道
(「みんな、すごい……」)
 いちごはビルシャナを説得する仲間たちに気圧された気がしていた。
(「でも、私だって、負けてはいられないです」)
 1人の女の子として、いちごは思うまま、毅然とした態度で男に向かい、夕璃の腕を取って交代し、男を正面から見つめる。
「悪い事をしてしまったというのは自分でもわかっているのでしょう?」
 そしていちごは男が胸を触ろうとする手首をつかみ、触らせないようにしながら問い詰め、
「だけど、反省してもうしないって思っているのなら、それでいいんです」
 手を正して、もう胸を触らないようにと念を押す。
 一通りの欲求を吐き出したからか、男はいちごの胸を狙おうとはせず、その言葉を頭に刻み込む。
「さっきは自分からおっぱい触られに行ってたじゃない。触られたかったんじゃないの?」
 マイアの茶化すような言葉にいちごは顔を真っ赤にして、夕璃をかばったからだと強く否定した。
「……まあ、揉むなとは言わないわ。欲を抑えるなんて私から言わせれば愚かだとしか思えないし」
 マイアは男に言葉の矛先を向け、男が我慢しきれなくなるギリギリを見極めながら囁き、
「少なくとも貴方がビルシャナで無ければ、私は貴方を裁くつもりは無いわ」
 男が我慢しやすくなるように男の頭に残る、ひよこ明王に注がれた言葉を1つ1つ丁寧に否定して、
「欲望塗れの人間の方が私は好きだしね。まあ、貴方は……欲望に流される人間ではないみたいだけれども」
 無造作に近づいても胸を狙ってこない男の様子に半分満足そうに、半分不満げに距離を取り、
「もし揉みたくなったら、そういう店に行きなさい」
 胸を揺らしながら指先から電撃を放ち、ビルシャナを雷の檻に閉じ込め、そのまま押しつぶした。
「お前は憶えているだろう、手を出してしまった相手の嫌悪の仕草を。憶えているだろう、己の罪の意識を」
 無事に人の姿に戻った男に、エングはそう言葉をかけ、
「その後悔の想いこそが、先に進む為に必要なのだ」
 男が一連の事件でさらに自己嫌悪に陥らないよう、前を向くように諭していく。
「望まぬ相手に手を出してはいけない。人が嫌がることはしてはいけないということだ」
 幸い? にして、望まぬ女性ばかりでもないし、パートナーであればそういうことをするのも自然だろう。
 エングの言葉に男は少し落ち着きを取り戻し、
「そうだな。おっぱい好きなのは問題ないし、別に揉むこと自体を否定するわけではない。問題は、誰にそれをするかだ」
 太郎はまだ体力が戻り切っていない男の肩を支えながら、
「揉むのはパートナーやプロ相手にすべきで、無差別に揉むのはただの犯罪だぞ」
 欲求が溜まってしまったときの正しい発散方法へと導いていく。
「イエスおっぱい、ノー犯罪。節度を守ったおっぱい愛を貫いてもらいたい」
 同じくおっぱいを愛する男として、太郎は男におっぱい道を説き、
「そ、そうします……」
 生真面目な男はそんなことして大丈夫なのだろうかと思いつつも、彼の提案に頷くのだった。

作者:きゅう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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