朝霧の霊剣

作者:崎田航輝

 明け方の岬。
 朝霧が東雲の色に染まる中で、独り修行に打ち込む若者の姿があった。
「はっ──! ふっ!」
 それは刀を携えた青年だった。風をきるように刃を振るい、まるで霞を裂こうとばかりに、鋭い剣舞を見せている。
 風切り音が激しいのは、膂力ばかりではなく、それが刃の長い刀でもあったからだ。
 刀身が有に五尺はあろうかというそれは、大太刀。振り回すのも楽ではないそれを、青年は体格を生かして自在に振るっていた。
「刃が大きく長ければ強い……やはり、単純だがそれが真実に思える。これを自在に操ってこそ、本物の剣術家なのだろうな──」
 青年は確信を得るように呟く。そうして、霞の中に剣の道を探すように、ひたすらに修行に邁進していた。
 だが、そんな時だった。
「──お前の最高の『武術』、僕にも見せてみな!」
 薄霧の中、言葉とともに岬に現れた者がいた。
 それはドリームイーター・幻武極だ。
 その瞬間に、青年は操られたように動き、幻武極に剣撃を打ち込んでいた。
 ひとしきりそれを受けてみせると、幻武極はなるほどね、と頷いた。
「僕のモザイクこそ晴れなかったけど。その武術、それなりに素晴らしかったよ」
 そうして、言葉とともに青年を鍵で貫いた。
 青年は意識を失って倒れ込む。するとその横に、1体のドリームイーターが生まれた。
 それは、道着姿の、1人の男だ。
 その手に携えるのは、身の丈を超えるほどの大太刀。力試しのようにそれを振るうと、強烈な風圧で朝霧が一瞬だけ晴れて、東雲の空が望めるほどであった。
 まるで手足のように、軽々と刃を使いこなす。それこそ、青年が理想とする剣士の姿であった。
 幻武極はそれを確認すると、街の方向を指す。
「さあ、お前の力、存分に見せ付けてきなよ」
 ドリームイーターはひとつ頷くと、歩いて去っていった。

「集まって頂いて、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ドリームイーターが出現したことを伝えさせていただきますね」
 最近確認された、幻武極による事件だ。
 幻武極は自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているのだという。今回の武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに武術家ドリームイーターを生み出して暴れさせようとしている、ということらしい。
 このドリームイーターが街に出てしまえば、人々の命が危険にさらされるだろう。
「その前に、このドリームイーターの撃破をお願いします」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、ドリームイーターが1体。場所は岬です」
 明け方で、朝霧の立っている一帯だ。
 多少視界は悪いが、戦闘に影響のあるほどではない。平素から人影もなく、当日も他の一般人などはいないので、戦闘に集中できる環境でしょうと言った。
「皆さんはこの岬へ赴いて頂き、街へ出ようとしているドリームイーターを見つけ次第、戦闘に入って下さい」
 このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようだ。なので、戦闘を挑めばすぐに応じてくるだろう。
 撃破が出来れば、青年も目をさますので心配はない、と言った。
「戦闘能力ですが、被害にあった青年の方が理想としていた大太刀の使い手らしいです」
 能力としては、重い斬撃による近単捕縛攻撃、薙ぎ払いによる遠列パラライズ攻撃、剣圧を飛ばす遠単足止め攻撃の3つ。
 各能力に気をつけておいてくださいね、と言った。
「危険が、人々に及ぶ前に……是非、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)
弘前・仁王(魂のざわめき・e02120)
高辻・玲(狂咲・e13363)
夜殻・睡(氷葬・e14891)
ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)
鴻野・紗更(よもすがら・e28270)
皇・晴(猩々緋の華・e36083)

■リプレイ

●対敵
 朝霧の岬へ、ケルベロス達はやってきていた。
「ここまでくれば、いつ遭遇してもおかしくありませんね」
 皇・晴(猩々緋の華・e36083)は照明で周囲を照らしつつ、言っている。
 水平線の望めるこの場所は、既に敵の出現予測地点にほど近い。だから警戒を浮かべつつ、注意を払っていた。
 皆もそれに頷きつつ、敵影の捜索に入っている。
「しかし、此度の敵は大太刀使い、でござったか」
 周囲に視線を走らせつつ、天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)はふと口を開いていた。
「かのドリームイーターが起こす事件には幾度か関わってきたでござるが、人が目指す理想の武というものは、まこと様々なものがあるでござるな……」
「大太刀……そういや使ったことないかも」
 夜殻・睡(氷葬・e14891)は、自身の武器である太刀・雨燕を手に、呟く。
 それは、睡の身長相応に長い柄と刀身を持つ刀。だが大太刀の範疇にはなく、むしろ見た目以上に軽く、取り回しやすい一刀だった。
「……これに比べれば、重そうだからなぁ」
「その分、使いこなせばなかなかに厄介──青年が理想としていたのもそれ故だったのでございましょうね」
 鴻野・紗更(よもすがら・e28270)は柔和な声で応えている。
 その表情も、平素と変わらぬ穏やかなもの。ただ、視線は霧の中に見つけた1人の人影へと注がれていた。
「それでも、ドリームイーターとなったのならば撃破以外に道はありませんね。──きっちり倒し、青年を起こしに行くとしましょう」
「うむ、征くぞ!」
 応えるレッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)も、その方向へ疾駆している。
 接近したその人影は、大太刀を構えた1人の男の姿。人里へと向かおうとしている、武道家のドリームイーターであった。
 ドリームイーターは、立ちはだかったケルベロス達に、目を向ける。
『……何者だ』
「番犬、と言っておこうか」
 楚々と応えながらも、声音に好戦的なものを滲ませるのは、高辻・玲(狂咲・e13363)。
 すらりと日本刀を抜き、ドリームイーターに対峙していた。
「力試しをお望みなら、僕達がお相手しよう」
『……ほう、我と戦うと? この剣の技を、味わうことになるぞ』
 ドリームイーターもまた、微かに高揚したように、太刀を構える。
 玲は涼やかに頷いた。
「望むところだよ――是非とも其の真髄を、突き詰め合おうじゃないか」
『面白い!』
 ドリームイーターは応ずるように、太刀を振り上げて接近してきた。
 だが、その眼前へ、紗更が肉迫。流れるような動作で回し蹴りを打っている。連続して、睡も抜刀。冷気を巻き込んだ刺突でドリームイーターを後退させていた。
 この間に、弘前・仁王(魂のざわめき・e02120)は高密度のグラビティを集中している。
 それをオーラ状にし、周囲に漂うグラビティを掛け合わせることで、大きなオーラを生み出していた。
「まずは、態勢を整えさせていただきましょう」
 その力は『相乗鼓舞』。盾としてオーラを纏わせることで、前衛の防御力を向上させていた。
 さらに、日仙丸も守護星座の力を降ろして、防護を一層固める。同時に晴も流体・緋緋色金から煌めきを拡散することで、仲間の狙いを高めさせていた。
「では俺も、補助を」
 と、同時、氣を集中しているのは、ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)。陽炎を纏うように氣力を高めていくと、『当足一閃』を行使していた。
 それは、気を解放し、仲間の意志の力を増幅する能力。
 意志が高まると、それは集中力に作用するように、一層知覚力を増大。感覚を鋭く研ぎ澄まさせていた。
「さあ、あとは攻撃を頼むぞ」
「ありがとう。この力、活かさせてもらおう」
 玲は応え、二刀を振るって剣圧を飛ばし、ドリームイーターにダメージを刻む。
 連続して、レッドレークが手を突き出し、炎弾を生成していた。
「次はこれを、喰らってみるがいい!」
 瞬間、豪炎をたなびかせてそれを射出すると、ドリームイーターの体を炎上させ、数メートル吹っ飛ばしていた。

●相剋
 岩場に膝をついたドリームイーターは、すぐに立ち上がっている。
『なるほど、強い。……相手にとって不足なしということか』
 そう言う顔は好戦的。同時に嬉しげでもあるかのように、太刀を構え直していた。
『ならば、こちらも本気。この大太刀のすべてを見せてやろう』
「大太刀のすべて、か。面白そうではないか!」
 と、レッドレークは、それに怯むでもなく声を返している。それは、巨大な刀身をもつ敵の武器に、純粋に興味を抱いているからでもあった。
「夢喰い。貴様を野放しにする訳にはいかないが、俺様がしっかりと学んで見届けてやる。だから、此処で存分に力を奮って行くが良いぞ!」
『──言われずともだ!』
 ドリームイーターは応えるように、駆け込んで刀を振るってくる。
 それに対し、レッドレークは無骨な赤熊手で受け止め、鍔迫り合い。敵の剣さばきを間近で見つめながらも、数間打ち合った後、隙を見て炎を靡かせた殴打で後退させていた。
『く……』
「おっと、させないでござるよ」
 反撃を試みるドリームイーター、しかしその頭上から、日仙丸が跳躍してきていた。
 霧を裂くような速度で降下すると同時、放つのは鋭い蹴り。それを脳天から直撃させてドリームイーターの体勢を崩している。
「今でござる」
「ええ、お任せを。確実に打ち込んでみせましょう」
 間を置かずに応えたのは、紗更。洗練された所作で、ウォーハンマー・花浅葱を大振りに振るって一打。痛烈な打撃で敵の足を払っていた。
 再び膝をつくドリームイーター。だがそれでも倒れず、立ち上がりざまに風を巻き込んだ斬撃を飛ばしてきた。
 しかしその一撃を、滑り込んだヒエルが防御。体を襲う強い剣圧を、練り上げた氣で弾き飛ばすように散らしてダメージを軽減していた。
「確かに強力。だが、その程度で俺の守りを崩せると思うなよ」
 同時、ヒエルは仁王立ちの姿勢のままに、一層氣を高める。
 それを青々と輝くほどのオーラに昇華すると、自己を含む前衛の精神力を高めるように、治癒の作用を齎していた。
「では、僕も支援を。少々お待ちください」
 と、晴は天之麻迦古弓を携えて、治癒の力を集中していた。そこに淡く光る矢を生み出すと、ヒエルの体を射抜くようにして光を施し、浅い傷を完治させている。
「これで、回復は大丈夫でしょう」
「ありがとう。魂現拳、反撃は任せるぞ」
 そのヒエルの言葉に、ライドキャリバーの魂現拳は駆動音を上げ、突撃。敵に正面からダメージを加えていた。
「こちらも反撃に移るとしましょうか」
 言葉とともに、敵へ疾駆するのは仁王だ。
 ドリームイーターは太刀で切り下ろそうとしてくるが、仁王はそのまま素早く距離を詰めると、蹴撃。牽制の一撃で太刀を払い、そのまま懐へ入って連続の前蹴りを叩き込んでいた。
 唸るドリームイーターは、それでも踏みとどまって、全力で刃を振り下ろしてくる。
 岩をも砕くような一撃を、しかし睡は体をずらすようにして、紙一重で避けていた。剣風で微かに前髪が揺れると、少しだけ感心するかのように瞳を動かす。
「おぉ、豪快」
「事実、力は相当なもののようだからね。そういう意味では本当に、随分なお相手を生み出してくれたものだよ」
 玲も、余波を肌に感じて応えている。だが、その声音は、敵が強いことに対する喜びが内在しているかのようでもある。
「なればこそ、此方も全霊でお相手をせねばね」
 瞬間、斜め上方から、流麗な剣閃を描く一刀を喰らわせる。
 その一撃が鮮血を噴かせると、ドリームイーターは呻きを零しながらも、玲に刀を向けようとする。が、その刀身を押さえつけるように、踏み込んだ睡が雨燕を振り下ろしていた。
「……こっちとも、手合わせ願おうかな」
 ドリームイーターはいいだろうとばかり、間合いを取ってから刀を振り上げる。が、その一瞬に睡は低い姿勢からゼロ距離へ。切り上げるような弧を描く斬撃で、ドリームイーターを転倒させていた。

●剣
『……馬鹿な。この最強の刀で苦戦するとは』
 ドリームイーターはよろめきながら起き上がる。苦悶の滲むその顔は、不可思議そうに歪んでもいた。
『この膂力と技量で、大太刀の扱いづらさすら、克服した。欠点のない剣術の筈なのだ……』
「確かに、大太刀を自在に扱えるならば強いだろう。だが──」
 と、ヒエルは冷静に言葉を返していた。
「弱点を克服出来るのであれば強いというのは、どの武術でも言える事だと思わないか?」
『……。だとしても、負けるわけには行かぬ。この剣は理想を体現した戦法なのだから』
 答えに窮したドリームイーターは、苦し紛れながら言葉を絞り出す。
 仁王はそれに緩く首を振ってみせた。
「青年の理想というのは、ただ自在に剣を振るえるというだけではなかったはずです」
『何が言いたい……』
「それが殺戮に向かうならば、ゆがんだ理想にすぎないということです。ならばその姿を、打ち砕いて見せるまで」
 毅然と言った仁王は、掌からオーラを撃って重いダメージを与えていた。
 呻く敵へ、ヒエルも接近。氣を纏った拳で、熾烈な殴打を叩き込んでいる。
「このまま、連撃を」
「うむ、俺様が行くぞ!」
 ヒエルへ応え疾駆するのは、レッドレークだ。
 レッドレークは最近、他者の戦い方や心構えに触れ、自己の戦いを省みるようになっていた。
 それは敵だけでなく、友人であるヒエルも含まれる。だからこそ、そのストイックな戦いに負けぬように、レッドレークは全力で敵と打ち合った。
 そして力押しに終始せず、間合いを取って『YIELD-FIELD:G』。攻性植物による神経毒を見舞うと、生まれた間隙に熊手での殴打を喰らわせた。
 ドリームイーターは苦痛を露わにしながらも、前衛を広く薙ぎ払ってくる。が、刻まれたダメージには、晴が素早く治癒の光を照らしていた。
「心配しないで。必ず、癒やしきってみせますから」
 穏やかな声音で言うと、広げた翼から美しい輝きを強めて、傷とともに麻痺毒をも消し去っていく。
「さあ、彼岸もお願いね」
 さらに、晴の声に呼応してシャーマンズゴーストの彼岸も祈りを捧げ、玲を万全な状態に持ち直させていた。
 ドリームイーターは構わず切り込んでくるが、睡は自身の剣速を活かすように振り抜いて、相手の刃を弾き上げる。
「隙あり、だ」
 敵が惑う一瞬の間を突くように、そのまま刺突。腹部を貫いて血を散らせる。
『く、まだまだ……!』
「いいえ、させはしませんよ」
 ドリームイーターはよろめきながらも刀を振り下ろす。が、紗更は無駄のない動きで薙ぐような蹴りを放ち、攻撃をいなしていた。
「少し、痛いかもしれませんね」
 そして、そのまま一回転し一撃。横っ腹を蹴り払う形でふらつかせる。
 体勢を直そうとするドリームイーターだが、そこへは、日仙丸が走り込んでいた。
「最後まで、好きにはさせぬでござるよ」
 刹那、地を蹴ると同時に脚部に炎を滾らせ、一撃。燃えるような熱気をはらんだ蹴撃で、ドリームイーターの顔面を強烈に打った。
 衝撃で一度転げたドリームイーターは、それでも無理矢理に立ち上がってくると、勢いのままに刀を振り回す。その一撃一撃を、玲は刃で受け、弾き、逸らしていた。
「力があっても、剣筋が荒れれば元も子もない──尤も、激しい剣戟は嫌いではないけれどね」
 玲は瞳に微かな輝きを滲ませ、『明鏡止水』。研ぎ澄まされた斬撃から太刀風を放ち、敵の胸部を切り裂きながら後退させていった。

●決着
 血溜まりに佇むドリームイーターは、息も絶え絶えだった。だが、そこに退く意志はなく、太刀を手にひたすらに攻めてきた。
『死ぬものか……我が力を示すまで!』
「いいじゃないか。ならば、全てを賭して戦おう」
 玲も、応ずるように刀を振るい、敵の剣閃をずらす。そのまま刀身に雷光を宿すと、速度を落とさぬまま刺突を撃ち、体を穿った。
 ドリームイーターも、それでは倒れず入魂の斬撃。正面から受け止めたレッドレークは、ダメージを抑えつつも声を零した。
「熊手と違いただ一点を切り裂く、何とも難しくも美しい技だな。……だが、こちらも負けるわけにはいかんのでな!」
 そしてそのまま、炎を纏った熊手で斬打を放ち、体力を削り取る。
「回復は、私が」
 と、レッドレークの傷には、仁王が素早くオーラを投射。同時に、相棒であるボクスドラゴンにも属性の力を注がせて、ダメージの回復を進めていた。
 晴も弓から眩い矢を放って、生命を癒やす力を投与。レッドレークの傷を消し去っている。
「治療はこれで平気でしょう。後は、頼みます」
「ああ、全力で畳み掛けよう」
 応えたヒエルは、魂現拳とともに突撃。速度のままに蹴りを放ち、敵をよろめかせる。
 そこへ間合いを詰めた睡は、『八岐大蛇』を繰り出していた。
「……喰い千切れ、八つ頭の蛇」
 それは冷気を纏った刀で1秒間に8回の刺突を放つ技。八つ頭の大蛇の如き軌道を描いた冷気は、多段のダメージを刻み、ドリームイーターを地に転がせる。
 そこに、紗更は『雨久花』。ほの光る青い雨粒とした魔力を纏い、痛烈な斬撃を見舞っていた。
「──どうぞ、おやすみなさいませ」
「うむ、これで、終りでござる!」
 同時、日仙丸は『螺旋瞬身連壊掌』。多重の螺旋でドリームイーターを内部から破壊し、千々に散らせていた。
「霞に逝くがよい。……送料は、無料にしておくでござるよ」

 戦闘後。皆は青年の元へ行き、介抱した。
「大丈夫ですか?」
 晴が言葉とともに優しく助け起こすと、青年はすぐに意識を取り戻していた。傷はなく、健常。皆から事情を聞いて、丁寧に礼を言っていた。
 日仙丸は無事を確認して、頷きを返す。
「助かって、よかったでござる」
 それにも青年は、本当にありがとございます、と頭を下げていた。ただ、今回のことに自身の実力不足を痛感しているようでもあった。
「道はこれで終わったわけではないさ」
 と、ヒエルは青年に言葉をかける。
「これからも他の武術の良さを知り、その上で大太刀の神髄を見出し──そして極めて欲しい。大太刀の強さを理解し、それを信じて鍛錬を積めるお前なら出来るはずだ」
「……」
「そう、僕らもまだ道半ば。霞すら切り開き、望む所へと至れるよう――互いに励んで行くとしよう」
 玲も声を継いで、そう言った。
「……、はい……!」
 青年はそれに、力を込めたように応える。
 玲は海の方を向いた。
「願わくはその道行が、険しくともこの朝焼けの様に明るいものであるように──」
 そこには、薄くなった霞の向こうに、陽の光があった。
 未来を表すような光に、青年は精進に励みますと誓い、皆の元を辞していく。
 平和となった岬をあとにして、皆も帰還。美しい空のもと、それぞれの帰る場所へと歩いていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年12月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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