差し込む淡い光に、透明な反射が煌めく空間があった。
山中にある洞窟である。その中でも鉱物の結晶が壁や地面から張り出している一帯で、薄暗いものの、入り口から入ってくる陽光が照らすことで、蒼く透き通った色合いの空間になっている場所だった。
その静謐の空間で、1人の青年が剣の修業をしていた。
「……はっ!」
長い静止状態から一気に動の所作に移るその剣術は、居合道。
一度抜刀すれば、二の太刀三の太刀と、素早い連撃が風を切る。
その太刀筋に淀みはなく。この場所で修練をしていると、微動だにしない結晶のように、澄み渡った心持ちになって刀を振るえるのだった。
「だが、まだまだ修行不足だな。動きに乱れがある……」
青年は反省を口にすると、再び納刀して、ひとり鍛錬を続けた。
と、そんな時だった。
「お前の最高の『武術』、見せてみな!」
言葉とともに、突如、洞窟に現れた者がいた。
それはドリームイーター・幻武極。その瞬間に、青年は操られたように動き、幻武極に刀を打ち込んでいた。
暫し剣撃を受けると、幻武極は頷いた。
「僕のモザイクこそ晴れなかったけど。その武術、それなりに素晴らしかったよ」
そうして、言葉とともに青年を鍵で貫いた。
青年は意識を失って倒れ込む。するとその横に、1体のドリームイーターが生まれた。
それは、道着と袴を身に着けた、1人の男の姿だ。佩いた刀で目にも留まらぬ斬撃を繰り出し、結晶を切り飛ばす。素早く無駄のない剣技を操る達人、それこそ、青年が理想とする姿であった。
幻武極はそれを確認すると、外の方向を指す。
「さあ、お前の力、存分に見せ付けてきなよ」
ドリームイーターはひとつ頷くと、歩いて出ていった。
「集まって頂いて、ありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ドリームイーターが出現したことを伝えさせていただきますね」
最近確認された、幻武極による事件だ。
幻武極は自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているのだという。今回の武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに武術家ドリームイーターを生み出して暴れさせようとしている、ということらしい。
このドリームイーターが人里に降りてしまえば、人々の命が危険にさらされるだろう。
「その前に、このドリームイーターの撃破をお願いします」
それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、ドリームイーターが1体。場所は洞窟です」
山道に入り口のある洞窟で、鉱物の結晶の多い一帯なのだという。
現場はさほど奥深くではないが、他の一般人などはいないので、戦闘に集中できる環境でしょうと言った。
「皆さんはこの洞窟へ赴いて頂き、人里へ出ようとしているドリームイーターを見つけ次第、戦闘に入って下さい」
このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようだ。なので、戦闘を挑めばすぐに応じてくるだろう。
撃破が出来れば、青年も目をさますので心配はない、と言った。
「戦闘能力ですが、被害にあった青年の方が理想としていた居合の使い手らしいです」
能力としては、素早い抜刀による近単足止め攻撃、踏み込んで連撃を繰り出す遠単パラライズ攻撃、呼吸を整える妨アップの自己回復の3つ。
各能力に気をつけておいてくださいね、と言った。
「危険が、人々に及ぶ前に……是非、撃破を成功させてきてくださいね」
イマジネイターはそう言葉を結んだ。
参加者 | |
---|---|
八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484) |
吉柳・泰明(青嵐・e01433) |
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725) |
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652) |
高辻・玲(狂咲・e13363) |
シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414) |
鴻野・紗更(よもすがら・e28270) |
篠村・鈴音(焔剣・e28705) |
●対峙
ケルベロス達は洞窟へと辿り着いてきていた。
「わぁ、何だかキラキラしてますね?」
ランプで照らしつつ、篠村・鈴音(焔剣・e28705)は眼鏡に手を添えて内部を覗き込む。
そこは光に結晶が煌めく空間だ。緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)も照明を準備して、踏み込んだ。
「ここからは、いつ出てきてもおかしくはない。警戒をもって進もう」
「ああ。一応人払いだけはしておこう」
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)は応えつつ、入口付近をキープアウトテープで封鎖。人が迷い込まぬように万全を期した。
そして皆は、灯りを持って洞窟内へと歩きはじめる。
「幻武極はまだまだ、被害を拡大させる気満々のようでございますね」
広い洞内を進みつつ、鴻野・紗更(よもすがら・e28270)はふと口を開く。
「あといくつ企みを破れば本体にたどり着くのか……」
「強くなりたいって頑張ってる人を襲うなんて、ボクはあまり理解できないなぁ」
と、首を傾げるのはシエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)だった。
「ボクもみんなを守れる強さが欲しいとは思うけど……それは自分で手に入れるものだと思うし。──幻武極はどんな強さが欲しいんだろね」
「そうですね……。目論見も含め、まだ全容の解明できない相手ではございますが──ひとつひとつ着実に解決していき、糸口をつかみたいところでございますね」
紗更はそんなふうに応える。
と、それに八蘇上・瀬理(家族の為に猛る虎・e00484)も頷いた。
「そうやね。その気持で一戦一戦乗り越えれば、きっと最後にはうまくいくと思うで」
それから瀬理は前を見据えた。
「やから、力を合わせてまずはこの戦いを頑張ろね」
その視線の先。結晶が一層輝く空間に、刀を持った人影がいた。
袴姿の居合の使い手、武術家のドリームイーターである。
「成る程」
と、呟くのは高辻・玲(狂咲・e13363)。
「武の志を利用する夢喰の暗躍、というのは度し難いけれど――これはまた、見事な相手を生んでくれたものだな」
敵に強敵の気配を感じた玲は、怯むでも恐怖するでもなく。涼しい顔の中に、何か滾るものを浮かべていた。
ドリームイーターはそんなこちらの気配に気づき、鞘に手を添えていた。
『……何奴だ』
「我らは番犬──」
そこに応えたのは、吉柳・泰明(青嵐・e01433)。盾になるようにと一歩前に出つつ、真正面から相対し、刀を抜いていた。
「僭越ながら、同じ武人の端くれとして――全霊を以てお相手しよう」
『ほう、戦いを望むか。素晴らしい』
言ったドリームイーターは、納刀状態のまま、腰を落とす。
『ならば話は早い。我が武を、披露してやろう』
「ああ、必ずやその武を、破ってみせよう」
泰明は言うと同時、紙兵を宙に舞わせて、守護の霊力を前衛に広げていた。
同時、瀬理は月のオーラを生み出し、玲の力を増幅させている。
「ほい、存分に暴れてきぃ」
「有難う。では」
と、声を返しながら、玲は地を蹴って接近。雷撃の如き刺突を打ち込んでいた。
たたらを踏みつつも、ドリームイーターも初撃を狙ってくる。が、結衣はそれに先んじて敵の動きをいなしてみせた。
同時、赤い瞳に鋭い戦意を滲ませて。結衣は精神を研ぎ澄ませ、破邪の炎で体を覆っている。
「……今までに消してきたドリームイーターはつまらない存在ばかりだった。武術を追い求めているならせめて戦い位は楽しませてくれよ──虚ろな幻を斬っても退屈なだけだからな」
『言われずともそのつもり……!』
ドリームイーターは自身も呼吸を整え、能力を向上させる。
だが、その間にシエラシセロが頭上に飛翔。大槌・ミョルニルから強烈な衝撃弾を撃って足元を穿っていた。
同時、紗更は英霊のオーラ“グロリアスファントム”を脚部へ集中させ、鋭い回し蹴り。
よろけた敵へ、カイトが氷で固めた拳で一打することで、再び呼吸を乱させていた。
「よーし、このままもう一発撃ち込んでやれ」
「了解ですっ、はぁっ!」
応えて、鈴音が踏み込んで一閃。霊剣・緋焔に冷気を纏わせて、敵の腹部に裂傷を刻んでいった。
●剣戟
ドリームイーターは、一度飛びすさっていた。
血を零しつつも、体勢を直しながら見せるのは興味深げな頷きだ。
『成る程な。壮語するだけ、ただ者ではないということか』
そして再び刀に触れ、姿勢を低く取った。
『ならば俺も明鏡止水の極致、見せてやる』
「明鏡止水かー、何故だろう。師匠役が必要な気がするし、黄金色に輝いた方が良いかもしれなくなってくる。何故だ……」
カイトがふと呟いていると、ドリームイーターは眉をひそめる。
『何をわけの分からぬことを……お前は剣を取らぬのか』
「え? いや、勿論、戦う意志はあるぜ。──まあ、剣じゃないけどな」
カイトは応えると、上げていたバイザーを下ろす。その体に纏うのは鋭い氷のオーラだった。
ドリームイーターは好戦的に笑んだ。
『良い気迫を持っている』
「そちらも、ね」
と、玲も、敵の隙の少ない立ち居を見て、微かに喜色をにじませる。
「敵とは言えど、やはり剣士の夢より生まれ出でた存在というところか──ならばこちらも、誠意と死力を尽くして打ち破ろう。真髄を、是非とも突き詰め合おうじゃないか」
『面白い』
ドリームイーターは応ずるように、高速の踏み込みを見せる。
だがその速度に、高機動でついていくものがいた。風を掃き飛翔するシエラシセロだ。
「速さ勝負って感じかな? それなら、受けて立たないとね!」
明朗な声音に、勇ましさも同居させながら。疾風のように肉迫すると、縛霊手・茨姫に雷光を宿し一撃。紅爪で突きを繰り出し、守りを砕いていく。
体勢の崩れた敵へ、カイトはオプションパーツ『凍護幻踏』から氷塊を蹴り出し追撃。
そこへ玲も、空間を翔ける太刀風を放っていた。それは全力の剣閃から放たれる、『明鏡止水』。まるで涼風のように、しかし鋭くドリームイーターへ飛来する。
「さあ、泰明君──」
「ああ。──奔れ」
ほぼ同時、泰明は息を合わせたように、黒狼の影を喚び出していた。
それは雷宿す牙を剥く、『奔狼』。玲の太刀風が敵へ命中すると同時、その黒狼も嵐のごとく駆け抜け、敵へ食らいついて深い傷を与えていた。
よろめくドリームイーターは、反撃に高速の抜刀術を見せる。が、その一撃は泰明自らが、刀を垂直に立て、衝撃を軽減させていた。
余波で傷は受けるものの、そこへは素早く瀬理が、治癒のオーラを生成。眩い光にして注ぐことで回復していた。
「怪我は気にせんでええよ。いくらでも治したるわ。やから皆も、どんどん攻めてね」
「ああ、そうさせてもらおう」
応えた結衣は、灼熱の魔剣“レーヴァテイン・エクセリオ”から炎を噴き出させている。
燃ゆる地獄は、結衣の静けさに反してどこまでも熱く、高密度の炎塊を作る。直後、結衣はそれを敵の面前で両断し圧縮された炎を炸裂。まるで局地的な爆破を起こすように、ドリームイーターを炎風で吹っ飛ばした。
煙を上げて宙を舞うドリームイーターに、鈴音も跳んで蹴撃。体を下方へ蹴り落とす。
『ぬぅ──』
「おっと、まだまだですよっ!」
体を返しなんとか着地するドリームイーター。だが、鈴音も油断はなく。落下すると同時に縦回転を伴って、間を置かずに二撃目の踵落としを叩き込んだ。
「さぁ、連撃をっ!」
「ええ、ではわたくしも参りましょう」
声を継いだ紗更は、淀みなく、無駄のない動きで接近。敵が意識する前に眼前に迫ると、そのままオーラを纏わせた如意棒・柳煤竹で一突き。
「少し、痛いかもしれませんね」
どこまでも慇懃な言葉のその直後。直接グラビティを流し込むことで、内部から空圧による爆破を引き起こす。それは轟きと共に凄まじい衝撃となり、ドリームイーターに膝をつかせていた。
●力
ドリームイーターは、ゆっくりと立ち上がる。血を拭いながら、それでも楽しげでもあった。
『これぞ、強者だな。これでこそ、理想を体現した剣技を披露する甲斐があるというもの』
「理想、かぁ。仮に、どんなに理想的な強さを持っていても、ボク達は負けないよ」
と、シエラシセロはそれに声を返している。
「だって、キミは本物じゃないから。それは、人から奪った力だから」
「虚影であるだけ尚、力は求められる。だが、彼女の言うとおり──それすらも、今の太刀筋では足りないようだな」
結衣が言葉を継ぐと、ドリームイーターは俄に、怒りを滲ませた。
『この力はここにある。偽物などではない!』
そのまま、地を蹴って接近してくる。
だが、シエラシセロはミョルニルを大振りに回し、衝撃波で足止め。
そこにカイトも肉迫し、周囲の空気を凍らせるほどの冷気を携えて連続の拳を打ち込んだ。
「これが──君の言う気迫の力だ。そちらこそ、これで終わるまいな」
カイトの言葉に、ドリームイーターは当然とばかり抜刀を狙う。
が、そこへは鈴音が体当り。先んじて距離を詰めることで攻撃を許さない。
「遅いですよ! 相手を倒すなら、このくらいはしないとですっ!」
言葉と同時、鈴音は剣撃で敵の鞘を弾き、勢いのまま横回転。風を巻き込むように回し蹴りを繰り出し、ドリームイーターの腹部に痛烈な打撃を加えた。
たたらを踏んだ敵へ、紗更も打突を数発撃ち込んでいる。
激しい攻撃ながら、その顔はどこまでも冷静に。敵の動きをつぶさに観察し、気迫が高まったと見ればすぐに飛び退いた。
「注意を。おそらく仕掛けてくるでしょう」
「俺が受け持とう」
その言葉に素早く反応するはカイト。敵の連続剣撃を的確に防御し、ダメージを抑えていく。
そして、すぐさま瀬理は治癒の光を形成し、カイトを回復していた。
瀬理はその中でふと、ドリームイーターの剣閃に首を傾げるように呟く。
「技は綺麗やねんけど……なーんか、冷たい感じするんよなぁ」
一見して無駄な動作を含むように見えるが、反してその所作は美しい──瀬理は居合に不思議な魅力を感じてもいる。だがこの敵の技には、人の心の通わぬ違和感がどうしても感じられた。
「それが、幻だという証拠なのかもな」
結衣は大太刀“輪廻を拒む奈落”を抜き放ち、そこから闇の如き混沌を漂わせる。
「力も、存在も虚ろというわけだ。だが、死は実在する。命を奪おうとするならば、その重みが、その罪が、自身を死に招くと知れ」
放つのは命穿<怨恨の輪廻>。傷を混沌で蝕むその一刀は、闇とともに結衣から零れる感情のように、深く鋭く。表皮を抉り、鮮血を散らせた。
ドリームイーターは呻きを漏らしつつも、再度の抜刀を繰り出そうとする。
だが、初撃、二の太刀、三の太刀と、全てを玲は刀で払ってみせていた。
同時に、剣戟こそ生き甲斐に感じる、その心を表に出すように、敵へ言ってみせる。
「幻と言われて、それで終わるかい」
『──誰が!』
ドリームイーターは裂帛の斬撃を放つ、が、玲は一歩下がってすんでで回避。刀に光を纏わせる。
「この一刀、いや、二刀を叩き込んであげようか」
「ああ、同じ呼吸でいくぞ」
応えるのは泰明だ。同じく水平に引いた刃を、眩い気で覆って輝かせている。
瞬間、玲が刺突を喰らわせると、泰明は微かに動線をずらして刃で突きを繰り出していた。
玲と泰明は、毛色違えども互いに一目置く親友。的確な連携を生んだ2人の剣は、一瞬の時間差で命中。ドリームイーターの腹部を貫き、地に伏させていた。
●決着
ドリームイーターは、血溜まりを作りつつもすぐに起き上がる。劣勢を悟りつつも攻める以外に方法は無いと、走り込んできた。
だがそこへシエラシセロは滑空している。
「とびきりのでいくよ!」
そのまま繰り出すのは『隼破羽』。光鳥の羽を靴に纏い、滑空して光の蹴撃を打っていた。
動きを緩める敵へ、カイトは『氷獄棺:貪狼』を行使。敵を凍気で囚えている。
「さあ、たいやきも攻撃を」
さらに、カイトに応えてボクスドラゴンのたいやきも飛来。小型鯛焼きをばらまいて傷を刻んでいた。
敵はそれでも止まらず剣を振るう。が、その一刀を泰明が正面から盾となり受けていた。
「やはり、太刀筋はかなりのものだな」
泰明は、傷つきつつも、泰然と。退かず倒れず、耐えきって敵を見据えていた。
その間に瀬理は『虎撃:偶像称鼓』。力強い声を紡いで、鼓舞するように泰然を癒していく。
「……やっぱあの子みたくは歌えんかー」
瀬理はふと苦笑いし声を零す。とは言え、それで態勢の整った皆は再び攻勢へ。
鈴音は踏み込んで、『風斬』を放っていた。
「行きますよ! 熱風の刃……疾れッ!」
それは、練り上げた霊力により剣身を瞬時に高熱化させて繰り出す、神速の一撃。
剣風と高熱で裂かれた気流はうねりを生じ、刃の如き熱風となってドリームイーターの全身を切り裂いていく。
『まだだ……ッ』
「いいや、歪んだ夢はそろそろ終わる時間だ」
唸る敵へ、結衣は大太刀と魔剣の二刀を縦横に振るい、剣閃の鎌鼬で体力を刈り取っていった。
玲も頷き、納刀状態で構える。
「ああ。本来の剣士が、自身の手でその道を極められるよう──君の舞台はこの場限りで終わりにしよう」
瞬間、居合を返して敵の腕を裂く。
泰明の喚ぶ黒狼の影がそこへ追撃し、瀕死にさせると、紗更は『雨久花』。グラビティ・チェインを魔術に変換し、ほの光る青い雨粒として身に纏っている。
「どうぞ、おやすみなさいませ」
刹那、放つのは妖精弓・黒蛇敵での狙い澄ました一撃。それがドリームイーターを貫き、千々に四散させていった。
「大丈夫か?」
戦闘後。皆は青年を見つけ介抱していた。
結衣が声をかけつつヒールすると、青年はすぐに意識をはっきりさせる。面目ないと反省を述べつつも、その体に怪我はないようだった。
「とにかく、無事でよかったよ」
シエラシセロは安堵しつつ、青年の健常な様子を見て言った。
「よければ、居合道の技、見せてもらえないかな」
一度、青年自身の力を見たかったというように。
青年は応じて、静寂の中で剣の一閃を光らせた。
カイトはそれを見て、頷く。
「普通の人にも達人級の腕前がいるってのは、俺らも学ぶべきことがあるかもなー」
「叶うならいつか、お手合わせ願いたいものだな」
玲が言うと、うん、とシエラシセロも頷く。理想の姿を目指す青年のその姿が、なにより眩しいというように。
「これからも目標目指して頑張って」
青年ははい、とまっすぐに頷きを返していた。
それから皆は帰路につきはじめる。
「落ち着いてみると、本当に良い場所だね」
玲は、静謐の中に輝く結晶を眺めて声を零す。美しさとともに、確かにここならば研ぎ澄まされるものもあるだろう、と思いながら。
皆はそのうちに洞窟を出て外へ。平和となった山を降り、帰還していった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2017年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|