虹に色づく

作者:崎田航輝

 そこは、花々に彩られた街道だった。
 長く続く石畳に、時折見えるレンガ造りの建物たち。植生は自然のものも活かしており、季節によって様々な種類の開花を見ることのできる散歩道だった。
 この時期に広がるのは、虹色の花。
 和に「七変化」の名を持つ、ランタナの花だった。
 それは微妙な成長度合いによって、色が変化する花。淡い黄色から赤色へ、白いクリーム色から、桃色へ。絨毯のように植わる七色のランタナは、まるで虹の道だった。
「へー、凄いなぁ。何だか虹の上を歩いてるみたい」
 それを感心するように眺めるのは、1人の少年だ。
 普段は立ち寄らない道へ、興味を惹かれて入ってきたら、この風景を見つけたのだった。
「全部同じ花なのかな。もっと近くで見よっと……」
 少年はわくわくするように道端に近づく。
 と、そんな時だった。
「──そこまでだ」
 言葉とともに、そこに、1人の人影が現れた。
 羽のような植物を生やした人型攻性植物、鬼薊の華さまである。
「自然を破壊してきた欲深き人間どもよ。自らも自然の一部となりこれまでの行いを悔い改めるがいい」
 彼女はそう言うと、ランタナの一株へ、謎の花粉を振りかける。
 するとそれは巨大化して蠢きだし、攻性植物化。少年を捕らえ、体内に取り込んでしまった。
 鬼薊の華さまはそれを満足気に見ていた。
「そのまま人間を襲い、暴れてくるがいい」
 それだけ言うと、立ち去ってしまう。あとに残ったのは、巨大な花弁を七色に変える、異形のランタナだけだった。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、集まったケルベロスたちに説明を始めていた。
「本日は攻性植物の事件について伝えさせて頂きますね。人型攻性植物が、独自の人類絶滅計画のために動いているらしい事件の1つで……今回はそのうちの1体である、鬼薊の華さまが、起こしたものです」
 鬼薊の華さまは街道に咲いていた花を攻性植物化。その花が少年を取り込み、宿主としてしまった状態だという。
 放置しておけば、少年は助からないだろう。
 だけでなく、そのまま人々を襲ってしまう可能性もある。
「皆さんには、この攻性植物の撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、人間に寄生した攻性植物が1体。場所は街道です」
 自然の植生を活かした、花々の多い一帯である。
 もともと閑静な街道であり、少数いた人々も既に逃げてしまった後のため、現場に他の一般人はいない。
 戦闘中も人が介入してくる心配はないので、避難誘導などを行う必要はないだろうと言った。
「戦闘に集中できる環境と言えるでしょう。ただ、今回の敵は、一般人の少年と一体化している状態となります」
 普通に攻撃して倒すだけでは、攻性植物と一緒にその少年も死んでしまうという。
「しかし、作戦によっては、助け出すこともできるかもしれません」
 それがヒールを使った戦い方だ。
 相手を回復していくことで、少しずつ、深い傷だけを蓄積させていく。そうやってヒール不可能なダメージで倒すことによって、攻性植物だけを倒して少年を救える可能性があると言った。
「ただ、敵を回復しながら戦うのは、戦闘の難易度を上げることになるでしょう」
 試みるなら、しっかりと戦法を練って臨む必要はあるでしょう、と言った。
「では、攻性植物の能力の説明を。蔓を伸ばしてくる近単毒攻撃、虹色の光を放射する遠単炎攻撃、催眠効果のある花粉を撒く遠列催眠攻撃の3つを行使してきます」
 各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「撃破優先の作戦です。けれど、助けられる命ならば、助けてほしいと思います」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)
リリー・ヴェル(君追ミュゲット・e15729)
リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)
天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)
如月・環(プライドバウト・e29408)
ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)

■リプレイ

●接敵
 石畳と花の街道に、ケルベロス達は駆けつけてきていた。
「へえ、こりゃ見事な散歩道だな」
 疾駆しながらも、嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)は花々に視線を巡らせている。
「此処まで整えるまで相当の苦労をしただろうに。興味を惹かれるのも、分かるな」
「ああ、これが台無しにされては辛いだろうな。近隣住民達も──取り込まれたあの少年も」
 ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)は応えながら、前方へ視線をやる。
 そこに、巨大な花が見えてきていた。
 異形のランタナとなった、攻性植物。触手の如くうねる蔓の中に、少年の顔が覗いていた。
 朦朧としている少年と、そして異形となった花をも見つめながら、リリス・セイレーン(空に焦がれて・e16609)は声を零す。
「自然の破壊への報復──ずいぶんと、時代錯誤な考え方から生まれてしまったのね」
「ええ。自然をこわしてしまうこと、は。よくないことであると、思います。けれど──」
 リリー・ヴェル(君追ミュゲット・e15729)は乏しい表情変化ながら、声を継ぐ。
「だから、と言って。ヒトをこわしてよいことに、なるのでしょう、か。……花をキレイ、と。めでているかた。めでられるかた。そういうかたこそが、自然をまもるかたにもなれる。と、思うわ」
「彼の人型攻性植物がそれを聞き入れるかは、疑問かもな。今出来るのは、ヒトもこの花達も、救うことだ」
 ルチルが言えば、頷くのはフィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)だ。
「もちろんなの!」
 と、そのまま巨大な花へとまっすぐに対峙。拳をつきだしてみせた。
「人の盾としてのケルベロスなの! だから、何としても助けるの!」
「うん」
 天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)も応えて、一度仲間を見回す。
 同じ旅団の仲間の多さに、力強さを覚えるように。
 決意の頷きをすると、攻性植物に向き直った。
「最強の一席、その名に懸けて……必ず、救い出してみせよう!」

 攻性植物は、敵意を示すようにわななきを上げ、攻め込んできた。
 と、それに先んじて、爆破スイッチを掲げるものがいる。如月・環(プライドバウト・e29408)である。
「さて、これだけ味方も多いんだ。しっかり護ってくれよ、シハン!」
 ロシアンブルーのウイングキャット、シハンは、それに命令するなとでも言いたげな表情でもある。が、戦闘には真面目に望むように、声に応じて羽をぱたつかせていた。
「よし、さあ始めるぜ、ボンバーッ!」
 環は頷くと、グラビティを篭めてスイッチを起動。ど派手な爆破を起こし、七色の光で前衛の力を高めていた。
「では、初手は私が行きます……っ!」
 言って攻性植物に肉迫するのは、二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)だ。
 まっすぐに踏み込むと、身の丈に迫る長大な斧剣で、敵の触手を払う。そのままゼロ距離に入り込むと、勢いのままに拳で打撃を加えていた。
 そこに、リリーも透明色の光線を放ち追撃。息を合わせて、リリスも月に煌めく花の如き、流麗な曲線の斬撃を喰らわせていた。
 陽治は余裕のある内に、敵へ魔術切開。蔓を繋いでいき、浅い傷を治癒している。
 攻性植物は蔓をフィアールカへと飛ばしていた。が、その一撃はシハンが飛び込んで防御。
 直後には詩乃の霊力、そしてルチルの直剣・Daydreamによる守護星座の光で、防護とともに癒しを得ていた。
「反撃に出るの!」
 声とともに敵の面前へ飛び込むのは、フィアールカだ。
 踊るような足取りで距離を詰めると、拳に降魔の力を込め、陽炎を揺らめかせる。
「私の一番槍はこの拳! スームカも行くよっ!」
 すると声に呼応して、ミミックのスームカがエクトプラズムで攻撃。
 同時にフィアールカの放った拳も、強烈な威力で直撃。攻性植物を十数メートル吹っ飛ばし、体勢を崩させていた。

●意志
 攻性植物は一度横倒れの状態となっていた。
 だが傷の蓄積自体は未だ浅い。体を流動させて形態を変えると、花を広げて光を集め始めていた。
「この花も含めて、折角のランタナを台無しにすンのは植物側として如何なんだろうなぁ」
 陽治は、不気味に光る攻性植物を見て、その元凶に思考を向けるように言う。
 ルチルも微かにだけ、憤りを見せていた。
「そうだな──この花も本来、静かに己の生を全うする筈だったろう。デウスエクスが、その全てを捻じ曲げた」
「ええ、倒さなくてはならない……けど。この花は悪くないのね」
 リリスは目を伏せて、そして開ける。
 そしてせめてもの言葉を、巨花にかけた。
「ごめんね。それでも、私たちは取り込まれてしまった彼を助けたいの」
 ただ、攻性植物となったそれの答えは、殺戮行動のみ。這うように蠢き、花で狙いをつけてきた。
 だがそれより早く、ルチルがミサイルポッドを向けている。
「その光、曇らせるとしよう」
 瞬間、爆炎を上げてミサイルの雨を降らせ、煙に包んでいく。
 さらに、ルチルのミミックであるルービィも、蒼色の体を走らせて花弁に喰らいついていた。
 攻性植物が後退すると、フィアールカは流れるような動きの踏み込みを見せている。
「とっておきを喰らうといいの! これなるは女神の舞──!」
 動作を止めず、滑らかに蹴撃の連打に入るその技は、『Сарасвати санкци』。
 女神の名を冠したその連撃は、バレエの技術を活かした清らかな舞。鋭い衝撃をもって、多段のダメージを与えていった。
「そろそろ、敵もきつそうなの!」
 フィアールカが飛び退くと、攻性植物は苦しげに擦過音を上げている。
 即座に呼応するのは、葵だ。
「私が回復に移ります! 皆さんは少しだけ、待っていてください……!」
 敵の根元へ走った葵は、練り上げたエネルギーを乗せ、掌底を打ち込んでいた。
 その力は、『活殺把』。内部へ浸透したエネルギーは治癒力となり、攻性植物を危険域から脱させる。
「これである程度は、持ち直したはずです」
「折角だ、俺も出来るところまではやっておこうかねぇ」
 同時、陽治も手元に治癒のオーラを形成すると、素早く枝葉を撫でた。すると、植生が復活するように回復をもたらし、浅い傷をほぼ消し去っていた。
 少年の意識は未だ明滅していて、時折苦悶も浮かべている。陽治はそこに、言葉をかけていた。
「必ず助ける。もう少し辛抱してくれな!」
「そうだよ。だから、あきらめないで。私たちを信じて」
 詩乃も同じく、力強い言葉を届けていく。
 それに微かに少年の表情が動いたようでもあった。が、攻性植物は花弁でその姿を隠し、虹の光を放ってくる。
 それは熱を含んだ強烈な光線。だが、そこには葵が滑り込み、斧剣で防御していた。
「大丈夫ですか!」
「うん、ありがとう……!」
 応えた詩乃は、即座にエネルギーを収束。治癒性の力に変換して投擲し、葵のダメージを回復させていた。
「それじゃ、こいつで仕上げッス!」
 次いで、環もグラビティを霧状に広げて投射。その全てを葵に注ぎ、万全な状態へと持ち直させていた。
「引き続き、反撃はお願いするッス!」
「それじゃ、ジゼルカ、頑張ってね!」
 環に応えるように、ライドキャリバーのジゼルカを解き放ったのは詩乃。
 攻性植物は連撃を狙ってきていたが、ジゼルカは高速で駆動。ワインレッドのボディで虹の光をかいくぐり、ガトリングの偏差射撃を加えていた。
 敵がたたらを踏むと、そこへリリスも接近している。
「リリーちゃん、合わせて行きましょ」
「ええ、わたくしで、よければ。お手伝い、させていただきます、ね」
 静々と応えたリリーも、リリスに続いて疾駆していた。
 その硝子の様に澄んだ瞳で敵を見据えると、一瞬の隙を見て、跳躍。光の零れる軌跡を描きながら、大斧の斬撃を叩き込んだ。
「リリスさま──」
「ええ」
 攻性植物が前方へつんのめったところへ、リリスもほぼ同時に、低い軌道で跳ぶ。
 そのまま、グラビティの残滓を花弁のように棚引かせつつ、一撃。苛烈な蹴りを加えて、攻性植物を転倒させていた。

●連撃
 攻性植物は、花や枝葉の端々が切れ、傷の蓄積が目立って見えるようになっていた。
 だが未だ敵意は衰えず。根元を大地に融合させると、周囲に小花を咲かせて攻撃の準備を始めていた。
『う……ぅ……』
 少年は目を閉じたまま。だが、寄生が進んでいるのか、苦痛の声を零してもいる。
 葵は剣を握る手に微かに力を込めた。
「苦しそう、ですね──」
「ええ、できるだけ急ぎましょう」
 リリスは応え、少年を見上げた。そして呼びかけるように声を続ける。
「辛いかもしれないけれど。もうちょっとだけ、頑張ってね」
「──わたしたちは必ず救う。だから、心配するな」
 ルチルもそんな風に、少年へ言った。
 短くも、しっかりとした言葉。リリスの声とともに、少年には確かに届いたろうか。ほんの少しだけ、その表情が和らいだようでもあった。
 直後には、攻性植物が攻撃に移ってくる。
 だが葵は怯まず、退かず、疾走すると斧剣で花弁を裂く。そこに連続で拳を放つことで、少年を縛る枝葉の幾分かを払い落としていた。
 同時、リリスも『幻想の蔓薔薇』を舞っている。
「Bloom Shi rose. Espoir sentiments, a la hauteur de cette danse──」
 それは戯れるような、軽やかな動きで幻の蔓薔薇を現す力。咲き乱れる花は、敵の花をも魅了するように動きを抑制した。
 そこに、リリーは万華鏡のような光を内包した光線を発射。花弁を吹き飛ばしていく。
「また少し、タイリョクのほうが、へっている、かもしれません」
 と、リリーが攻性植物の状態を鑑みて、皆に知らせる。
 それにルチルが頷き、ドローンを飛ばして回復。さらに、陽治も治癒行動に赴き、敵の根元を縫合して体力を戻させていた。
「体力が減る間隔は短くなっていっているな。皆、一応注意していてくれ」
 陽治は念を押すように言う。
 ただそれは、形勢がこちらに傾きつつあるということでもある。
 攻性植物自身はその自覚があるのかどうか、より凶暴に、花粉を周囲にばら撒いてきた。
「中々、強力なようッス──けど!」
 と、嵐のように前衛に飛来するそれに、環はすかさず爆破を重ねていた。虹の光とともに広がった爆風は、催眠効果を消しながら、前衛の傷をも癒していく。
 同時、詩乃も舞うように回転し、花のオーラを顕現。前衛の浅い傷を完治させながら、意識を侵食する花粉の全てを吹き飛ばした。
「これで回復は、完全なはずだよ」
「ありがとうなの! あとは私が、攻撃するの!」
 詩乃に返すように、フィアールカは攻性植物に肉迫している。
 攻性植物も攻撃を狙って花弁を向けてきた。が、フィアールカは呼吸を深く整え、柔から剛の動きに移るように素早く背後を取る。
 そのまま体を回し、一撃。旋風のような蹴撃で、攻性植物を吹っ飛ばしていた。

●決着
 蠢いて起き上がる攻性植物。全身に広がった傷は深く、その動きも弱っていた。
 ただ、それでも退くという選択肢は存在しない。残る蔓を動かして、攻撃を狙っていた。
 が、そこにはリリーが先手を取って接近。縦一閃に強烈な剣撃を叩き込んでいる。
「あと少しだけ、コウゲキを加えられそう、です」
「では、これで削らせてもらおう」
 応えるように、ルチルもミサイルを発射して爆撃。体力をぎりぎりまで減らしていた。
 そこで、フィアールカが敵の回復に移る。くるりと踊ると、スミレの花を舞わせて美しい光景を作り、その作用で攻性植物の傷を消していた。
「もう1回だけ回復すれば、完璧そうなの」
「わかりました。私が、やりますっ!」
 それに葵が即座に反応し、掌底。エネルギーを体内に送り、攻性植物を限界まで癒した。
 深い傷の蓄積から、依然窮地のままの攻性植物。暴れるように蔓を飛ばすが、それをリリスのウイングキャットが受け止め、衝撃を抑えていた。
 直後には、リリーのウイングキャット、フェリーチェが清浄な風を生んで傷を回復。
 環も祝福の矢を飛ばして治癒を進めると、詩乃も霊力を施して、フェリーチェを含む前衛を最後まで万全に保った。
「あとは頼むッス!」
「うん、よろしくね!」
 環と詩乃が言うと、リリスは頷き、攻性植物の眼前へ。
「さぁ、そろそろ終わりにしましょう?」
 言葉とともに蹴りを打ち、蔓を千々に散らせる。
 攻性植物は、残る枝葉のみを飛ばし、最後まで抵抗してきていた。だが、陽治はそれを最低限の動作だけで避け、『万象破砕撃』。
「悪いが、こいつでおしまいだ」
 瞬間、指に集中したグラビティによる強烈な一撃。それが攻性植物を破砕すると、そこに少年の姿だけを残していた。

 ケルベロス達は、すぐに少年を介抱した。
「気がついた? 大丈夫?」
 リリスが声をかけると、目を開けていた少年は、ゆっくり頷く。
 始めはまだ意識も朦朧としているようだった。だがそれも、その内にはっきりとしてきていた。
「問題は無いようだな」
 抱き起こして診察していた陽治が、頷いて言う。
 少年はありがとうございました、と皆に丁寧に礼を言った。
 ただ、植物の残骸を見て複雑そうでもある。
「僕はあれに襲われていたんですね」
「怖い思いをしたかもしれないけれど、でも。お花は嫌わないであげてね」
 リリスが優しく言うと、葵も声を継ぐ。
「ええ、今回のことはデウスエクスの仕業で、お花は悪くないですから。その……花に対しての興味とか、好きとか。そういう気持ちは、大事にしてあげてほしいんです」
 少し口下手な葵の言葉。だが、その2人の言葉に少年は頷く。それから、お花をまた見に来ます、と答えていた。
 少年の無事が確認できると、皆は周囲のヒール。
 周りの美観は保たれた。ただ、攻性植物の残骸だけは元には戻らず、空気に溶けるように消えていく。
「せめて散る姿を、最後まで見届けよう」
 ルチルは言って、それが消滅するのを見ていた。
 フィアールカもそれを見て、拳をぎゅっと握っている。
「鬼薊の華、そのうちにロシアアザミのように蹴っころがしてやるの!」
「何か、手がかりでも。あれば、と思ったのですけれど──」
 と、リリーは言って歩いてくる。周辺を調査していたが、結果は芳しくなかったのだった。
 詩乃は見回して言う。
「でも、作戦は成功してよかった」
「そうッスね! だからまずは、凱旋ッス!」
 環も応えて、歩いて行く。それを機に皆は、帰還していった。
 陽治は帰りしな、ぶらっと散歩道を歩いた。
「確かに、虹を歩いているようだ。今度は二人で見に来たいもんだな」
 呟いて、懐の指輪を取り出して左薬指につける。それから陽治も道を進み、帰っていった。
 あとに残る虹の花々は、青空に映えるように、美しく風に揺れていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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