初雪の降る山奥。
木々も秋色から冬色へと季節を変遷させる、そんな風景の中。朗々とした旋律が響いていた。
それは1人の格闘家が、修行とともに口から紡ぐ歌である。
「天に昇る拳。空を翔く一打、川の流るる如く……我、その武を全うす──」
若い青年であるその格闘家は、木に拳を打ちながら、同時に旋律を歌い上げていた。
一見して奇怪な光景でもある、が、流れる旋律やリズムと、繰り出される打撃は不思議と噛み合い、独自の拳法といった風情を作り出していた。
「武を外れ、武の中道を貫く──麗しき旋律は──拳を剣とする……」
青年は、自分の信ずるところを歌い上げる。
瞑想や気功など、自らの気を高めて実力を発揮する方法があるのならば、自分にとってのそれは歌である、と。
演舞のような美しさと、鍛え上げた膂力。それが青年の修練する、独自の音楽拳法であった。
と、その時だった。
「中々面白そうじゃないか。お前のその最高の『武術』、僕にも見せてみな!」
言葉とともに、木々の間から現れた者がいた。
それはドリームイーター・幻武極。
その瞬間に、青年の体は操られたように動き、幻武極に技を打ち込んでいた。
しばらくすると、幻武極は頷いた。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
そうして、言葉とともに、青年を鍵で貫いた。
青年は地面に倒れ込む。するとその横に、1体のドリームイーターが生まれた。
それは、道着を来た格闘家の姿。美しい声で歌い、舞うように木々を打ち砕いていく、音楽拳法家。それこそまさに、青年が夢見る武術家の具現であった。
幻武極はそれを確認すると、外の方向を指す。
「お前の力を見せ付けてきなよ」
ドリームイーターは頷いて、森を歩いて出ていった。
「歌う武術家さん。どんな歌声なのかしら、かしら?」
フィロヴェール・クレーズ(飛び跳ねるうたうたい・e24363)の言葉に、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)も頷いていた。
「間近で聞いてみたかったですね。勿論、その前に皆さんに討伐してもらうことになりそうですけれど……」
それから改めて皆に説明をする。
「というわけで、今回は、フィロヴェール・クレーズさんの情報で判明した、ドリームイーターの事件について伝えさせていただきますね」
最近現れた幻武極の仕業のようで、自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとして起こしているという事件だ。
今回の武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに武術家ドリームイーターを生み出して暴れさせようとしているのだ。
このドリームイーターが人里に降りてしまえば、相応の被害も出てしまうだろう。
「その前に、この武術家ドリームイーターの撃破をお願いします」
それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、ドリームイーターが1体。場所は山林です」
初雪の降る美しい山の中だ。
一般人などの被害を心配する必要もないので、戦闘に集中できる環境でしょうと言った。
「皆さんはこの山中へ赴いて頂き、人里に降りようとしているドリームイーターを見つけ次第、戦闘に入って下さい」
このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようだ。なので、戦闘を挑めばすぐに応じてくるだろう。
撃破が出来れば、青年も目をさますので心配はない、と言った。
「歌いながら、戦ってくるのね?」
「ええ。それが青年の理想としていた武術のようです。旋律とともに気を高めて、格闘攻撃する、といった拳法みたいですね」
フィロヴェールの言葉にイマジネイターは応える。
能力としては、旋律に乗せた拳による近単パラライズ攻撃、高らかな歌声とともに蹴りを繰り出す遠単炎攻撃、演舞も織り交ぜた広範囲攻撃による遠列ジグザグ攻撃の3つだ。
フィロヴェールは頷いて口を開く。
「おうたも、戦いも、負けないのよ!」
「ええ。敵も、中々の使い手だと思いますが……是非、頑張ってきてくださいね」
イマジネイターはそう言葉を結んだ。
参加者 | |
---|---|
ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156) |
セツリュウ・エン(水風涼勇・e10750) |
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652) |
西院・織櫻(櫻鬼・e18663) |
フィロヴェール・クレーズ(飛び跳ねるうたうたい・e24363) |
ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924) |
一之瀬・白(八極龍拳・e31651) |
差深月・紫音(死闘歓迎・e36172) |
●作戦
初雪の山。ケルベロス達はその奥へとやってきていた。
「そろそろ戦地だな」
歩を緩めて緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)が言うと、皆も頷く。
ここは既に敵の出現予測地も近い。捜索すれば接敵できるであろう位置でもあった。
皆はそこで早速、作戦に移る。
木々の少ない位置に立つ班と、その周囲に潜む班の、二手に分かれるのだ。
「じゃ、オレ達はここの木陰に隠れておくぜ」
隠れる側に回るルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)は、言って仲間へ声をかける。
「しっかり挟撃するからな。囮の方は、頼む」
「うむ、しかと役目を全うするとしよう」
応えるのは、一之瀬・白(八極龍拳・e31651)。こちらは開けた位置に立ち止まった。
それは、敵を誘き出す布陣。地形を利用した、囮と奇襲による作戦だった。
囮役の1人、西院・織櫻(櫻鬼・e18663)は、ふと空を見上げていた。
「……これが情緒というものでしょうか」
深々と降る雪片。織櫻はそこに静謐の中の風情を感じている。
「雪景色には喧騒はいらぬ。静寂を、と思えます」
「俺は楽しい死闘が早くしたいところだな」
一方、隣に立つ差深月・紫音(死闘歓迎・e36172)は、目尻に戦化粧の紅を差しており、既に好戦的な色を浮かべていた。
「まぁ、敵を倒せば全部解決だ。さっさと始めようぜ」
「わかったのだわっ。それじゃあ、わたしからはじめていいかしら? かしら?」
爛漫な声を返すのは、同じく囮役のフィロヴェール・クレーズ(飛び跳ねるうたうたい・e24363)。
「うむ。余も支援するからの。頼むぞい」
恋人でもある白が返すと、フィロヴェールは頷き、歌い始めた。
それは森を歩くものを誘い込むような、不思議で可愛らしいメロディ。
静かな山に歌は高らかに響く。結果として、1体の影を誘き寄せることに成功した。
気づいた織櫻が視線で示す、その先。
がさりと木々を抜けて、道着姿の人影が姿を現していた。
『美しい歌が聞こえたが……お前達のものか』
それは興味を惹かれたように歩いてくる、拳法家のドリームイーターだ。
白は言葉を返す。
「その通りじゃ。旋律と共に戦うのが、貴様の専売特許だと思うなよ」
『……つまりは、お前達もまた戦士ということか』
ドリームイーターはこちらを見て、にわかに戦闘態勢を取る。
紫音は否定せず、笑顔で拳を掲げて見せた。
「ああ。どうだい、俺らと手合わせしてくれねぇか? きっと退屈しねぇぜ?」
『……面白い』
ドリームイーターは応じて、深く息を吸う。
そして、朗々と歌い始めると、そのまま、走り込んできた。
それはまさしく戦闘開始の合図、だが。
そこは既に、こちらの作戦域の中。瞬間、潜んでいた奇襲班の全員が跳び出し、ドリームイーターの背後を取っていた。
「戦士というならば、目に見える場所以外の警戒もしておくべきだったな」
そう言うのは、結衣だ。
魔剣レーヴァテイン・エクセリオに、天から雷鳴を落として光を宿らせる。瞬間、雷撃をそのまま正面へ流すように撃ち出し、敵の背を爆雷で襲った。
同時、ルトも飛翔。降下とともに踵落としを打ち、足止めさせる。
「正々堂々とは言えないけど、これも戦法の一つだからな。悪く思うなよ!」
『何……ッ』
予想外の奇襲に、振り返るドリームイーター。
そこへ間を置かず、セツリュウ・エン(水風涼勇・e10750)が接近していた。
「悪いがの。先手は、こちらに持たせて貰うぞ」
純白の髪を靡かせて、しなやかな踏み込みを見せるその様は、東方演武の如く。
薫風を漂わせる雅な立ち居から、セツリュウは直槍・六連星彩で刺突を加えていた。
「じゃ、こっちは仕込みをしとかねぇとな」
その間に、紫音は紙兵で後衛を防護。同時に、白も霊力で前衛を守護していた。
ドリームイーターは、織櫻の斬撃とフィロヴェールの飛び蹴りも喰らって、後退している状態だった。それでもようやく奇襲も終わりと見て、体勢を直す。
『中々やるようだ。だが、今は不意を突かれただけのこと──』
「御託は良いから戦いに集中して見せなさい」
と、その時だ。背後に、時間差を置いて影が現れた。
それは、呪術『陽炎に揺らぐ死神の舞踏会』の力で転移してきたニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)。
白雪に出現する黒衣は、文字通り死神のように。
くるりと体を返し、勢いのままに一撃、ドリームイーターを蹴り飛ばして地に転がせた。
「あら、思ったより軽いわね」
すたりと着地したニーナは、温度の窺わせぬ赤い瞳で、見下ろしていた。
●戦舞
ドリームイーターは呻きつつも、再度間合いを取っていた。
『不覚をとった……が、そんなものではまだまだ、やられぬ』
自身を滲ませるように、再び構えを取る。
『歌うほどに、気力は高まる。その脅威を知ることになるだろう』
「そういうことが得意なら、戦士でなく芸者とかに向いているんじゃない?」
ニーナはそれに声を返す。
戦い以外に意識を向けさせないためでもあり、言葉は挑発的だった。
「歌謡とか……違いはわからないけれど。何にしても、見世物が精々ね」
『……言ってくれる。これは、最強の武術なのだ』
ドリームイーターは反抗するように、拳を握る。
『お前達とて、強い戦法に興味はあるだろう。それを実践してやろうというのだ』
「無論、興味はあります。私も、至高の刃を望むもののひとりですから」
そう口を開くのは織櫻だ。
己の刃を磨くことは、織櫻自身、是としている。だがこの時は、降る雪を手のひらで受け止め、その情緒を感じていた。
「しかし、今はこの雪景色を静かに見たい。ですから──旋律も剣戟も、早く終わらせたいのです」
瞬間、織櫻は地を蹴って肉迫。日本刀・瑠璃丸を抜き放ち、弧状の斬撃を喰らわせた。
ニーナもそこに槍で横一閃。足払いで敵を宙に浮かせる。
結衣は跳躍してその高度に並ぶと、双刃剣オルタ・ナグルファルと魔剣の二振りに、燃え上がる地獄を纏わせていた。
「戦いを語るなら、それこそまずは力で示してみればいい。──このようにな」
繰り出すのは、裂煌<空閃爪牙>。地獄の炎と神速の剣舞は、紅蓮の嵐を生むように。斬撃と灼熱によってドリームイーターを吹き飛ばし、木に激突させた。
『……いいだろう、ならば見るが良い』
ドリームイーターは唸りつつも、立ち上がって歌を再開。音とともに、紫音に拳を放ってきた。
その威力は高く、紫音は木をへし折って十数メートル飛ばされる。
だが、直後にはルトが、癒しのオーラを手元に生んでいた。
「ちょっと待っててな。すぐに回復するから──よっ!」
そのまま、空色の光を投擲。紫音の体力を持ち直させる。
一方、起き上がる紫音自身も、怯むでもなく、狂的な笑みを浮かべていた。
「ははっ!! いいねぇ、いいねぇ! もっと楽しませてくれよ!」
赤い着物をたなびかせ、自ら死闘に踏み入るように。敵の懐へ飛び込んで、無銘の日本刀で傷を刻んでいった。
「歌と武の融和……確かに伊達ではなさそうだの。実に興味深い」
呟くセツリュウは、反して自身は攻めず、精神を統一して六連星彩を正眼に構えていた。
「某が学び鍛えたは屠る技だけに非ず。──偉大なる自然が友を癒してくれるさま、今、お目に掛けよう」
それは敵と自身を識ることで、技を見切る知覚を与える能力、『風煌雪華』。雪柳の流麗な幻とともに、フィロヴェールへと鋭敏な感覚を付与していた。
ほぼ同時、白は両翼に闘気を集中させ、光の翼を形成する。
「さて、旋律に合わせて戦う事に掛けては、余達も負けてはおらぬぞ? のう、フィロ!」
「ええ。声こそがわたしの命! 白くんもいるなら──わたしたちの方がすごいんだから!」
応えたフィロヴェールは、自身も旋律を紡いだ。
『ある世のある時ある国の隅の、人のない寂れた小劇場──』
それは外に憧れ悩む、少年人形の歌。楽しさと奇怪さ、同時に希望を滲ませるような優しい声音による一曲だった。
それに合わせ、白は我流・猛虎硬爬山【屠龍】。震脚で加速し、敵に迫る。
『むぅ……ッ!』
「どうじゃ。余達の拳舞なら……貴様にだって引けは取らぬさ!」
敵の拳を踊るように避けて、白はそのまま一撃。超重力の掌打を打ち、ドリームイーターを地に叩きつけていた。
●連撃
『馬鹿な……この武術で遅れをとるとは──』
膝をつくドリームイーターは、納得できぬというように、ケルベロス達を見上げていた。
結衣は静かに口を開く。
「空虚な歌声は誰の心にも届かず──信念の無い力は何も生み出さない。所詮は幻想の産物、それだけのことだ」
『……俺はここに存在している。歌も、強さを求める信念もだ』
「それでも幻はただ消えゆくのみ。その存在を誇示したいというなら、最後まで精々、抗ってみせろ」
武を求めるならば、結局武を実践する以外に方法はない。結衣の言葉に、ドリームイーターは拳を握り、メロディを紡ぎ始める。
『いいだろう。俺は只、戦うのみだ──』
そして攻め込んできた。が、ルトもそこへ接近している。
「よし、このまま連撃で叩くぞ!」
「よかろう。フィロも行くか」
応えて日本刀・慈龍を抜くのは白。その言葉にフィロヴェールも頷いていた。
「もちろんよっ!」
フィロヴェールは歌とともに高く飛翔。そのまま滑空して飛び蹴りを打ち当てると、そのタイミングで白は縦一閃の斬撃を喰らわせていた。同時、ルトが炎を纏った蹴りで畳み掛け、敵を吹っ飛ばした。
「ニーナ殿も──」
白がふと視線を向ける、と、ニーナは既に木々の影から敵の頭上へ跳んでいた。
「私は私のやり方でやるわ」
それはそっけない言葉でもある。だが、攻撃は苛烈に。闇色の稲妻とともに、光の弾ける斬撃を叩きこんでいた。
鮮血を零すドリームイーター、だが歌は止めず、前衛へ演舞交じりの連撃を加えてくる。
しかしその演舞に、舞を重ねる者がいた。
銀木犀の花弁と香を散らし、微風と共に廻る、セツリュウだ。凛とした様は雪のように、艶やかさは柳の如く。その振る舞いが前衛を癒していく。
「皆、某が最後まで支えるゆえ──存分に行ってくれ?」
「ああ、そうさせてもらおう」
応える結衣は、剣撃で敵の懐を開けると、自身の脚部に炎を閃かせる。
それは想いを留めたオーラ、“追憶の回廊”。失った存在を今も記憶に、そして炎に刻みつけ、結衣は苛烈な蹴撃を喰らわせた。
ふらつきつつも、ドリームイーターは反撃を試みる。
だが、拳の連打を、織櫻が瑠璃丸と斬霊刀・櫻鬼の二刀で捌き切っていた。逆に痛烈な斬撃を返しながらも、織櫻は敵の鋭敏な動きに、上機嫌を浮かべてもいた。
「やはり、弱くない相手と戦うのは、得るものもありますね」
「そうだな、こういう面白い手合いと戦えるのは嬉しいねぇ!」
声を継ぎ、紫音も殴り込んでいる。敵はたまらず間合いを取るが、紫音は『血煙舞踏・塵』で肉迫していた。
「ほら、もっと楽しもうぜ? こんな風にな!」
それは刀と、刃の鋭い縛霊手で滅多切りにする技。後退した敵へ、紫音はさらなる蹴りと斬撃を見舞い、地に転倒させていた。
●決着
血を吐きながらも、ドリームイーターは戦意を失わず起き上がってくる。
だが、セツリュウも油断なく、長杖の如き優美な槌から射撃を加えていた。
「さあ、攻撃を途切れさせず、最後まで舞おうぞ」
「ええ」
声を返す織櫻は、『螺旋鬼刃斬』。螺旋の力の渦巻く斬撃で、敵を宙へと煽る。
それを、紫音が跳躍して、降魔の拳で殴り落としていた。
「よっ、と。これで終わりか?」
『まだ、だ……この至高の武術を、多くの者へ見せねば……』
地に落ちたドリームイーターは、それでも立ち向かってくる。
が、そこへ白が拳の連打を打ち込んでいた。
「魅せて戦うその技は、確かに素晴らしいじゃろう。じゃが、人々に仇なすならば放ってはおけぬよ」
「ああ、死の重みを、その罪を。体で感じ取れ」
結衣は再び空閃爪牙で斬撃の嵐を生み、体を切り刻んでいく。
白は同時、ビハインドの一之瀬・百火にも指示を出していた。
「百火、サポートを!」
呼応して飛来した百火は、敵の背後から一撃を与え、その動きを止める。
生まれた隙に、ニーナは再び呪詛の力を行使。ドリームイーターの体内を砕いていた。
「そんなに不用心では、魂も潰してしまうわよ?」
『がっ……』
呻いて膝をつく敵を、フィロヴェールは一度見下ろした。
「ドリームイーターさん、あなたは倒さなくっちゃいけないけど。でもねでもね、あなたの武術、とっても素敵だった……!」
意志と敬意を篭めるように。歌い上げた『形なき透明な調べ』はその意識を奪っていった。
そこへ、ルトは空を旋回し、急速で下降する。
「それじゃ、こいつで終わりだ!」
豪風のように放たれた蹴りは、重い一撃。ドリームイーターを直撃し、打ち砕いた。
ドリームイーターは幻の様に立ち消えていく。
その中に煌めく光の一片を、ニーナは口に入れて噛み砕いていた。
「──ん、薄い癖に色々と混じっていて不味いわ。借り物の力なんて薄っぺらいわね」
そう零す頃には、敵は跡形もなく消滅していた。
その後、白はフィロヴェールへ駆け寄り、怪我がないか確認していた。
フィロヴェールは笑顔で頷く。
「ん、だいじょーぶ! 白くんのおかげ! ありがとうねっ、白くんかっこよかった!」
「……うむ。……絶対に守ると……誓ったからな」
白は少々照れつつも頷き、無事を喜んでいた。
それから、皆は場をヒールして、青年の元へ赴き、介抱する。
青年は無事に目覚めており、健常。ケルベロスに事情を聞いて礼を言っていた。
「“次”は無いと思いたいが。修行をするなら今度はドリームイーターにも不覚を取る事の無いようにな」
と、結衣はそんなふうに声をかける。
「尤も、自分のためだけに力を振るうなら、あれと同じ末路を辿る事になるだろうが──決して道を踏み外さないと誓えるのなら、いくらでも手を貸そう」
青年は、それに強く頷き、ぜひ修行を、と申し出た。
ルトは喜ばしげだ。
「本物の音楽拳法、見せてくれるのか? 降魔拳士の端くれとして、気になってたんだよな」
「一緒に修行か、悪くねぇなぁ」
紫音も言って、そこに加わる。そして青年は、未熟ながらも将来性の感じられる拳法を見せたのだった。
「その舞も、そしてお主の夢の存在も──良き武であった。お互い、これからも励もう」
セツリュウが言えば、青年は改めて深々と頭を下げ、一層の修練を約束した。
それを機に、皆は山を降りる方向へ。
「やはりこの静けさには、何か惹きつけるものがありますね」
織櫻は改めて雪と木々を眺めながら歩く。
平和の戻った雪景色は尚、美しく。皆はその光景を背に、帰還していった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年11月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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