純白のヴェール

作者:崎田航輝

 1人の少年が、河原沿いを歩いていた。
 学校帰り、建物の密集した通学路から少し離れた、植生も豊かな一帯である。
 川がさらさらと流れる音をバックに、広がるのは豊かな緑。山にもほど近いそこは、人が少ない分、自然の賑やかさがあって、少年はこの場所を気に入っていた。
「あれ、何だろ。すごい綺麗な花がある」
 と、幾つもの植物が見える中、少年は山への斜面にある花に注目していた。
 小さく白い、美しい花弁。多くの株が枝垂れる様が、まるで純白のベールのようにも見える、ブライダルベールの花だった。
 近寄って一つ一つを見てみると、こぶりな花冠が一層、清廉で爽やかな印象を与えている。
 始めて見つけたその花に、少年は暫し見入っていた。
 と、そんなときだった。
「そんなに興味があるんなら、いっそ、ひとつになる?」
 突如、言葉とともに現れ、ブライダルベールへ謎の胞子を振りかける者がいた。
 それは、大きな葉を生やした少女。人型の攻性植物、鬼蓮の水ちゃんであった。
「君、誰……うわっ?」
 少年はびっくりして止まる。
 胞子のかかったブライダルベールが、蠢いて巨大化。攻性植物と化していたからだ。
 それは蔓をうねらせて少年を飲み込み、宿主としてしまう。
「随分、苦しそうだね? でも、お前達人間はもっと植物を苦しませてきた。だから、自業自得さ」
 鬼蓮の水ちゃんは棘のある声音で、笑ってみせた。そうして、すたすたと立ち去ってしまう。
 後に残ったのは、白い花を不気味に光らせる、攻性植物だけだった。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロスたちに説明を始めていた。
「本日は攻性植物の事件について伝えさせて頂きますね。人型攻性植物が、独自の人類絶滅計画のために動いているらしい事件の1つで……今回はそのうちの1体である、鬼蓮の水ちゃんが、起こしたものです」
 鬼蓮の水ちゃんは道に咲いていた花を攻性植物化。その花が少年を取り込み、宿主としてしまった状態だという。
 放置しておけば、少年は助かるまい。
 だけでなく、そのまま人々を襲ってしまう可能性もある。
「皆さんには、この攻性植物の撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、人間に寄生した攻性植物が1体。場所は、河原になります」
 山にほど近い場所で、自然の豊かな一帯だ。
 平素から人影の少ない場所であり、当日も他の一般人はいない。戦闘中も人が介入してくる心配はないので、避難誘導などを行う必要はないだろうと言った。
「ただ今回の敵は、一般人の少年と一体化している状態となりますので、注意が必要です」
 普通に倒すだけでは、その少年も死んでしまうことでしょう、と言った。
 これを避けるために、ヒールを併用した作戦が必要だという。
「相手にヒールをかけながら戦い、少しずつ、深い傷だけを蓄積させていくのです。粘り強くこの作戦を続けることができれば、攻性植物だけを倒して少年を救うことが出来るはずです」
 ただ、敵を回復しながら戦うのは、簡単ではない。
 救出するならば、しっかりと戦法を練って臨む必要はあるでしょう、といった。
「では、攻性植物の能力の説明を。蔓による近単捕縛攻撃、花から光を飛ばしてくる遠単炎攻撃、花粉をばらまく遠列催眠攻撃の3つを行使してきます」
 各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「撃破優先の作戦となります。けれど……救える命ならば救ってほしいと思います。そのあたりも考えてみてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)
カッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー死竜ー・e19121)
セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)
天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)

■リプレイ

●接敵
 河原へ辿り着いたケルベロス達は、現場へと疾駆していた。
 草木を縫い、山を近くに望めば、そこに異形の植物が見えてくる。白い花弁を巨大に変化させた、ブライダルベールの攻性植物だ。
「あれでございますね。少年を囚えた花は──」
 低空を飛行していたラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)は、速度を上げて、その敵との戦闘距離へ進入していく。
 近づく攻性植物は、根で地面を掘り進み、茎や葉を触手の様に蠢かしていた。そして、流動する体の中に、磔になった少年の顔が見えている。
「綺麗な花には棘がある。とはよく言うけれど……まさかこうなってしまうなんて、運が悪かったわね」
 ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)は、静かな瞳のままに、そっと呟く。
 天羽生・詩乃(夜明け色のリンクス・e26722)はその少年を見上げ、声をかけた。
「助けに来たよ。もう安心して」
 ただ、それに反応はない。少年の意識は薄く、時折苦しげに表情を歪めるばかりだ。
 その意識さえ、いつまで残っているかは、分からない。
「あの子は、きれいだと思った花を見ていただけなのに……」
 天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)はふと、声を零す。
「そりゃ人以外に無関心な人もいるけどさ。それで関係ない人を巻き込むんじゃ、ただの八つ当たりだよ」
「そうですね。自業自得、という考え方も──僕には随分勝手な言い分の様に思えます」
 ラグナシセロは穏やかに、しかし同時に力強い言葉を継ぐ。
 セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)も、頷いていた。
「あの人型攻性植物にとっての、自然の秩序というものが、あるとしても。今ここで、平穏を破壊し無辜の命を奪おうとしているのは事実です」
 そして、まっすぐにその攻性植物と対峙した。
「だから──必ず助け出しましょう!」
「ああ、勿論だぜ」
 笑顔で、機械の拳を打ち付けるのは、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)。
 そこに迷いはなく。守るべきものを守る、純粋な動機があった。
「攻性植物の目的なんざ知らねえが──その小さな個体は、返してもらうぜ」

 攻性植物は、ケルベロスの姿を認識すると、即座に攻撃に移ろうとしていた。
 が、その面前に、影がかかる。
 カッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー死竜ー・e19121)が飛び上がり、肉迫していたのだ。
「それじゃあ行こうか、黒猫、番犬」
 カッツェは二振りの大鎌に語りかけると、伸びていた敵の茎を絡め取り、宙返り。
 勢いでそれを裂いていくと、ゼロ距離になった所で、殴りつけるような尾撃を叩き込んだ。
 たたらを踏む攻性植物。その至近で、今度は電撃の光が閃く。
 ギルフォード・アドレウス(咎人・e21730)が『伏雷』によって創り出した電気の力だ。
「少し、頭が高いな。改めてもらおうか──『伏せろ』」
 瞬間、ギルフォードは右足で地を蹴る。
 すると激しい電気が地面を伝い、敵の体に奔って、小爆発。その動きを鈍らせた。
 それでも攻性植物は反撃を試みる。が、その背後に別の影が出現した。『陽炎に揺らぐ死神の舞踏会』を行使して転移してきたニーナだ。
「こっちよ。随分とのんびりしてるわね?」
 言葉に敵が反応する暇もなく。ニーナは死神の鎌で一閃。花弁の数枚を断ち切った。
 この間に、セデルはドローン、詩乃は紙兵を展開し、前衛を守護している。
 攻性植物も茎を飛ばしてきたが、それは防御態勢を取っていた蛍が受けきり、直後には自身でヒールドローンを撒いて回復していた。
 広喜は敵が窮地になる前に、先んじて『治シ詠』。回路状の光を広げてスキャン、解析、修復までを短時間で行い、敵の傷を回復していた。
「これで、しばらくは平気なはずだぜ」
「ええ、では、僕は攻撃をさせていただきますね」
 応えるラグナシセロは、空へ飛翔し、翼を輝かせている。
 同時、自身も光の粒へと変遷していきながら、滑空。星のように煌めく軌跡を描き、光の塊となって強烈な体当たりを加えていた。

●希望
 葉の欠片を散らしながら、攻性植物は後退する。
 だが深い傷は未だ少なく、そのまま光を集めるように花を広げる形態に変化していた。
 妖しく花弁が輝く様は、眩いと同時に、それが異形である証左でもある。
 セデルは見上げて、呟いた。
「純白……色は、素敵なのですが」
「まあ、こうなると綺麗とかって問題でもなくなるよね。どんな植物でも肉食にするのはいい加減やめて貰いたいよ」
 カッツェは、怯む様子もなく。肩をすくめるように言葉を継ぐ。
「そもそも植物って表情が分かり難くて面白くないんだよねぇ。どうせ異形になるなら顔作ってくれないかな?」
 そっちの方が苦しむ様がよく見える、とでも言うように。カッツェは微かに笑んで見せた。
 攻性植物は、それに敵意を返すように。根を動かして狙いをつけてきていた。
 が、そこに上方から、セデルが迫っている。
「やらせはしませんよ!」
 セデルはそのまま風を掃き、降下。虹の軌跡を創りながら、高速で蹴り落としを喰らわせた。
「続けて攻撃を!」
「ええ、分かりました」
 応えて空を翔けるのは、ラグナシセロ。宙に残る虹の残滓に、星屑を重ねるが如く、弧を描いて飛翔。そのまま旋回するように、攻性植物の後背に蹴撃を叩き込んだ。
 攻性植物の体力が減ってきたと見ると、ギルフォードは注意深く、オウガメタル「残火」から黒色の光を生み出していた。
「バッサリ斬るんじゃ駄目、その上加減も必要、か。難しいな」
 言いながらも、うまくコントロールして波動を発射。敵の機動力を奪いながらも、体力をぎりぎりまで削っていた。
「こんなものだろう」
「うん、一度回復に入るよ」
 と、そこで蛍がガトリングガンを構えていた。グラビティを収束した上で射撃をすると、砲口から白く輝く光が攻性植物へと着弾する。
「じわじわと回復してあげる」
 言葉通り、光が溶けると、着弾点から枝葉が復活していった。
 広喜も四肢の地獄を掌部パーツへと供給し、光へと広げて敵の修復を進める。これらの治癒効果は大きく、攻性植物、そして少年の命も繋がる形となった。
「すまねえな。ちょい我慢してくれ。すぐ出してやるからよ」
 広喜は、少年へと言う。
 それが届いているかはわからない。だが広喜は、確信を述べるように、言葉を伝えていた。
 攻性植物は、活発さを取り戻して光を放ってきていた。だが、標的となったセデルは、防御で衝撃を軽減している。
「……サイレントは攻撃を!」
 直後、セデルの声に呼応して、ビハインドのイヤーサイレントが敵を金縛りにした。
 その間に、詩乃は紫に光る淡いオーラを発現。セデルに投擲することで即座に傷を癒やしている。
「ジゼルカも、お願いね」
 次いで、詩乃に応えて疾走するのはライドキャリバーのジゼルカ。ワインレッドのボディで風を切るようにスピン攻撃し、敵の根元を裂いていく。
 カッツェは同時に、『死竜術―呪化粧―』。呪詛を纏わせた鱗で花弁を斬り、呪った傷口から全身を蝕んだ。
 わななく攻性植物に、カッツェは笑う。
「ふふっ。こうやって見ると、顔がなくても苦しんでるって分かって愉快。ねぇニーナ?」
「さあね」
 木々を蹴って跳び上がるニーナは、一瞥もせず、冷たく声を投げるだけ。
 その視線はただ、幼い命を囚えて離さぬ異形に向いている。
「そうやって命を弄び、死を愚弄するならば──花と言えど許さないわ」
 攻性植物は反抗するように茎を伸ばしてくる。だが、ニーナはそれを足で蹴るとさらに高く跳躍。そのまま、大槌から火を吹かせ、敵の天頂に砲弾を撃ち込んだ。
「命の重みを知りなさい」
 煙を上げて、砲弾は直撃。衝撃で攻性植物を転倒させていた。

●命
 いななきを上げながら、攻性植物は起き上がる。
 だけでなく、根を大地と融合させると、全身に無数の花を咲かせていた。
 それで一層寄生が進んだかのように、少年は苦悶の声を漏らしている。
「この少年には何の罪もないのに……これでは本当にただの侵略です」
 セデルは目を伏せて声を零す。
「自然を守るにしても、人へ報復するにしても。正しいのは、このような方法では決して無いと思います……!」
「そうだね。彼はただ、花の佇まいに純粋に惹かれただけ──理不尽にその命を、奪わせたりなんてしない」
 詩乃はぎゅっと自分の拳を握り、そして少年に言葉を届ける。
「待っていてね。必ず、救ってみせるから」
 その声に、少年は心なしか、ほんの少しだけ表情に力強さを宿したようでもあった。
 攻性植物は、その顔すら体内に取り込まんとする。だが、それを遮るように、閃光の如き光が植物を焼いていた。
 それは体を光の粒子へと変えていく、ラグナシセロだ。
「罪無き少年の命、必ず助け出します……! あくまでそれに反抗すると言うのならば。こちらは一切、容赦は致しませんよ──!」
 優しい顔に、意志の強さを宿らせて。ラグナシセロは星の光となって突撃し、攻性植物を後退させる。
 間断を作らず、ニーナは岩陰から背後を取り、鎌で縦横に斬撃を加えていた。
「余分な枝を、刈ってあげるわ。最期の為にね」
 傷を刻まれ、悲鳴のような擦過音を上げる攻性植物。
 そこへイヤーサイレントのポルターガイスト、そしてジゼルカのガトリング攻撃が加わると、再び敵の体力の底が見えてきた。
「段々、間隔も短くなってきたね。注意深くいこう」
 蛍は皆にも言いながら、再度ガトリングから癒しの力を発射。攻性植物の細い茎や葉を中心に復活させていく。
「もう少し回復できるかも。頼める?」
「ああ、任せてくれ」
 広喜がそれに声を返して、攻性植物を修復。根や小さな花弁を再構成していった。
「これで浅い傷は全快か。長期戦になりそうだが、とことん付き合ってやるぜ」
 広喜はにっと笑ってみせる。
 攻性植物も戦意は変わらず、前衛へと狙いをつけ、刃のような花弁の嵐を飛ばしてきた。
 それは催眠効果の花粉も伴う強力な攻撃、だが、その直前。ギルフォードがケルベロスチェインを操り魔法陣を描いていた。
「これがこうで……ん? こうだっけか。全く、慣れないものを担がせる……」
 ギルフォードは、あまり使わぬ鎖の感触に少々あたふたしつつも、程なく魔法陣を完成。前衛の防御力を底上げしていた。
 直後、飛び交う花弁を、カッツェが前面に出て受け止めている。二人分の衝撃に吹っ飛ばされながらも、何とかダメージを盾役だけに抑えていた。
「少しだけ辛抱してください!」
 と、そこへセデルが、言葉とともに『小型治療無人機』。ヒールドローンの操作幅を狭めた改良機で前衛を治癒する。
 詩乃も、カッツェをオーラで回復。前衛を万全に保っていた。
 立ち上がったカッツェは、反撃に再び、死竜術を行使。
「今度はそっちが苦しむ番だよ?」
 どこか嗜虐的な表情とともに。呪いの力を篭めた尾撃で、攻性植物を地に叩き付けていた。

●決着
 横倒れになっていた攻性植物は、それでも軟体のように体を動かし、起き上がる。
 体の端々は切り裂かれ、深い傷は蓄積していたが、戦意は失われていないようだった。
「まだ、体力も残っているようですから。引き続き攻撃を仕掛けましょう──!」
 セデルの言葉に皆は頷き、再び攻勢へ。
 敵へ接近したセデルは、そのまま自身の攻性植物で捕縛していた。
 そこに、ラグナシセロはライフルの銃口を向け、眩い光を閃かせて射撃。ダメージを抑えつつも、的確に体力を削り取っていく。
「あと一撃、攻撃を加えても問題はなさそうです」
「じゃ、私が行くね! 突撃っ!」
 声を上げて地を蹴るのは、蛍だ。速度を上げながら突っ込み、打撃と斬撃の乱打。根元や茎を散り散りに切り裂きながら、敵の体力を残りわずかに持っていく。
 暴れる攻性植物に、広喜は構わず近づき、治癒の光を広げていた。
「壊せるもんなら壊してみろ」
 攻性植物は、その言葉に、広喜へ茎を飛ばしダメージを与えてくる。だが、広喜は笑って攻性植物の体力を回復するだけだった。
「そんなんじゃ、倒れねえなあ。旧式の頑丈さなめんじゃねえぞ」
 まるで自分のことを鑑みず。限界まで敵を回復させ、後はただ攻撃すればいいという状況を作り上げていた。
 詩乃は広喜にオーラを施し、素早く回復している。
「一応、これで回復は大丈夫。敵の方は、頼むね!」
「ああ。最後まで注意深く、だな」
 言葉を返すギルフォードは、残火にグラビティを注ぎ、再度黒色の波動を発現。敵の花弁の全てを吹き飛ばした。
 波打つ枝葉だけとなった攻性植物は、それでも少年を離さず、寄生を進めようとする。
 だが、ニーナは再度『陽炎に揺らぐ死神の舞踏会』を行使し、頭上から斬撃の雨。
「せめて優しく刈り獲ってあげるわ。だから──その無様な魂を晒しなさい」
 その回避も叶わず、攻性植物は千々に裂かれていく。
 さらに欠片に至るまで、カッツェも二振りの大鎌で切り払っていった。
「これで、終わりだね」
 カッツェの言葉とともに、攻性植物は散っていく。そうしてそこに、元の姿に戻った少年が残っていた。

 攻性植物の残骸は、光の欠片のように消滅していっていた。
 ニーナはその中の、緑色の飴玉の様な煌めきを手に取り、口に入れる。
「……甘苦い。目を付けられなければ、もっと美味しくなったでしょうに。本当に、残念だわ」
 そうしてそれを噛み砕いて飲み込む。周りの欠片は風に流されるように消えていった。
 皆はすぐに、少年の介抱も行っている。
 少年は無事に目をさましていた。
「頑張ったなあ、お前すげえぞ」
 広喜は少年を笑顔で讃えている。少し朦朧としていた少年も、それに笑顔を返し、ありがとうございました、とケルベロス達に礼を言っていた。
 ラグナシセロは、周りを眺める少年に声をかける。
「ぜひ、自然を嫌いにならないで欲しいと思います」
「利用しようとした者が悪いだけだから。私も、花を嫌いにならないで欲しいな」
 蛍も言う。少年はその言葉にも頷きを返し、また花を見に来ます、と言った。
 それから、皆は場をヒール。残っていたブライダルベールの株の周辺を修復する。
 ラグナシセロは暫しそれを眺めた。
「ブライダルベールの花、とても綺麗で素敵ですね」
 ここだけでも、守れてよかったと思いながら。皆もそれぞれに頷いていた。
 その後、広喜は少年を家まで送っていくと言って同行した。
 それを機に皆も、帰路へ。
 ギルフォードは戦闘時の反省をするように、鎖の感触を反芻しながら歩いていっていた。
「少しずつ、使えるようにしよう──」
「あ、そうだ。いける人がいたら祝勝会でもしない?」
 蛍は楽しげに皆に言う。
 それに頷くものは頷きつつ、河原を去っていく。
 後には人の姿はなく、爽やかな風に、豊かな植物と白い花が揺れていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年11月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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