そこは、古い公園だった。
今では訪れる人も少なく、平素から賑わいの見られない場所。そんなところに、モザイクに覆われた空間はあった。
「ワイルドスペース……こんなところにもあったのだ」
それを見据えているのは、月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)。ふとした予感にかられ、訪れた。それが図らずも、当たってしまったことになる。
「……まあ、いいだろう」
見つけた以上は放置してはおけない。灯音は一度目を伏せてから、その奇怪な空間へと足を踏み入れた。
中は、あらゆる風景が切り貼りされ、混濁した眺めとなっている。
噂に違わぬ奇妙さ。だが灯音はそれよりも、何かが現れる気配を感じて、見回した。
そしてその直後。その人影は目の前に、現れた。
「──この場所を発見するとはな。貴様はこの姿に因縁を持つものか」
それは女性の姿をした影だった。
白いフードをかぶっている。そして赤い髪と、誰よりも知っている顔。
「私の姿、か」
灯音は思わず零す。鮮血のような鎌を携えたその存在は、確かに灯音そのものだった。
灯音は既に気づいている。これは自身の暴走した姿。そしてそれがワイルドハントだということも。
「──秘密を漏らされるわけにはいかない。お前には、死んでもらおうか」
ワイルドハントは、鎌を掲げ、敵意を見せる。
こうなるだろうとは、どこかで予想していた。だからこそ灯音に、退く気はなかった。
「こんなところで死ぬわけにはいかないのだ」
灯音は戦闘態勢を取る。この生命は、簡単に投げ出せるものではないのだ。
「集まっていただいて、ありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ワイルドハントについての事件です。調査をしていた月篠・灯音さんが、とある公園で襲撃を受けたみたいなんです」
ワイルドハントはその一帯をモザイクで覆って、内部で何かの作戦を行っていたようだ。
そこへ踏み込んだ灯音へ、攻撃を仕掛けたということらしい。
「こちらも、フォローの用意はしてあります。今からならば素早く救援に向かえるので、急ぎ現場へ向かい、灯音さんに加勢して敵を撃破して下さい」
作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、ドリームイーター1体。現場は公園です」
モザイクに覆われ、奇妙な空間となっている場所だが、戦闘に支障はないという。
特に戦闘を邪魔してくるものもいないということで、急行して即、戦闘を行ってくださいと言った。
「灯音さんは戦闘に入っています。こちらもすぐに到着できるはずですが、場合によっては敵に先手を取られている可能性もあります」
合流まで多少のタイムラグは出来てしまうかもしれない。そういったことを考慮しつつ、加勢後の立ち回りを考えておくといいでしょう、と言った。
それでは敵の能力を、とイマジネイターは続ける。
「灯音さんが暴走をしたような姿をしているようですが、別人であり能力も異なるようです。この敵は、攻撃だけでなく回復も活かした戦術を取ってきます」
能力としては、鎌を放つ遠単パラライズ攻撃、ウイルスによる遠列アンチヒール攻撃、妨アップの自己回復の3つ。
各能力に気をつけてください、と言った。
「ワイルドハントについては未だ謎も残りますが……とにかく撃破が優先です。是非、頑張ってきてくださいね」
イマジネイターはそう言葉を結んだ。
参加者 | |
---|---|
二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282) |
露切・沙羅(赤錆の従者・e00921) |
叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722) |
シオン・プリム(蕾・e02964) |
四辻・樒(黒の背反・e03880) |
月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557) |
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443) |
櫻田・悠雅(報復するは我にあり・e36625) |
●対峙
ワイルドスペースへ入ったケルベロス達は、仲間の影を探し求めていた。
「向こうから聞こえる衝撃音……あれ、戦いの音じゃないかな」
モザイクの空間の中、気づいて遠方を見やるのは叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722)だ。
「間違いない。向こうにいる」
櫻田・悠雅(報復するは我にあり・e36625)は空から、遠目に2つの人影があることを確認し、皆に位置を伝える。
その上で、自身は周囲の探索のために皆と一時分かれることにした。
露切・沙羅(赤錆の従者・e00921)はウォンテッドでメンバーの仲間の絵を用意。合流に役立つようにと、悠雅に渡した。
「気をつけてね」
「ありがとう。何かしらの手がかりを入手できれば、と思う」
応えて、悠雅はそこから飛び立っていった。
沙羅はすぐに、剣戟音の方へと走り始める。
「さぁ行こう。絶対助けないとだね!」
「ええ、勿論。ツキちゃんの保護が第一だもの。急ぎましょう」
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)も頷いて、疾駆。2つの人影が戦っているその場所へと、接近していく。
その内に、それが瓜二つの女性の姿であることも見えてきた。
四辻・樒(黒の背反・e03880)は、妻であり相棒であるその姿を、見紛うはずもなく。
「灯──」
静かにその名を口にすると、疾走。一直線に、救うべきものを救うために、向かっていく。
月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)は、自らの似姿と向き合っていた。
「赤い鬼……たしかに私の姿だ。こうしてみると、なるほど気分はよくないものだな」
その敵、ワイルドハントを前に、灯音は怯むでもない。
ただ銀槍を構え、戦闘態勢を取った。
「だれが何の目的で動いているのか、縁があると引き寄せられるのか──分からないが、この場所ごと、叩き潰してくれるのだ」
「……大言壮語を。思い通りに行くかな」
そう応えるワイルドハントは、余裕を含みながら力を集中。自身の魔力を高めていた。
灯音はその隙に、刺突で体力を削る。
が、ワイルドハントの傷は未だ浅く。再度自己錬成を重ね、強力な魔力を得ると、鎌で足元を裂き、灯音の動きを封殺した。
「どうだ、力の差は明らかだろう」
「く……」
灯音は膝をつきつつも、自己回復をする。だがその後は麻痺が蝕んで、体が動かなかった。
ワイルドハントは、そこへ鎌を振り上げた。
「終わりだ。お前は死ぬ」
「……残念だが。殺されてやる気はないのだ」
窮地にあって、しかし、灯音はふと笑みを浮かべていた。
それは、愛する伴侶であり相棒である、その存在の気配を感じ取ったからだ。
敵が怪訝な顔をしつつも、鎌を振り下ろそうとした、その瞬間。足元に高速のナイフが突き刺さり、ワイルドハントはバランスを崩した。
跳躍した樒が、投擲してきていたのだ。
一瞬遅れて、鎌も衝撃に弾かれる。駆けつけたシオン・プリム(蕾・e02964)が肉迫し、槍を突き出していたのだ。
シオンは続けて、音速の拳で一撃。ワイルドハントの魔力を砕いていった。
「悪いが、勝手に終わりにされては困る。大事な、親友なのでな」
「灯、大丈夫か」
敵が下がると、着地した樒はすぐさま灯音に駆け寄っていた。
灯音は、予感はあっても、その姿に嬉しくなって顔をほころばせた。
「樒っ! シオンっ!」
「──おふたりだけじゃ、ないですよっ!」
次いで、その横を駆け抜ける風があった。
長大な斧剣を携え疾駆する、二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)だ。
ワイルドハントは、再び鎌を投擲してきていた、が、葵はそれを正面から弾き飛ばし、一閃。懐まで踏み込んで、斧剣の重さのままに、剛烈な剣撃を叩き込んだ。
ワイルドハントは軽く吹っ飛ばされる。そこへ宗嗣も追いすがり、宵星・黒瘴を振り上げる。
「悪いね、俺の友人の夢は奪わせないよ」
瞬間、魔力を断ち切る斬撃。パトリシアも爆破攻撃で追撃すると、沙羅はその間に、灯音に幻影を纏わせて治癒していた。
灯音は驚いている。
「沙羅ちゃん、葵さん、宗さん、パトさんまできてくれたのだ!?」
「後で櫻田さんも合流する予定だよ」
沙羅が言うと、灯音は一層、心強い表情となる。
樒は剣から守護星座の力を降ろし、仲間を守護。態勢を整えると、敵とまっすぐに対峙していた。
「さて、ワイルドハント──」
滲ませるのは、底冷えするような殺気。
的確に、確実に、相手を追い込み討伐する。決定した未来を思うように、感情も抑えられず、樒は口元に笑みを浮かべた。
「お前の行為は、高くつくぞ」
●反撃
「右も左も変わらない。同じ風景があるだけ、か」
悠雅は飛行しながら、モザイクの空間を捜索している。
風景がばらばらにされた世界。そこをくまなく行き来するが、めぼしい物は未だ見つからなかった。
敵も余分な証拠を残すほど愚かではないということか。
「……分からないが。もう少し、見てみるしかない」
悠雅は美しい赤の翼をはためかせて、さらに手がかりを求めていく。
ワイルドハントは、樒の言葉に笑みを作っていた。
「……愚かな。頭数が増えた所で、ものの問題ではない」
それから、自分を包囲するケルベロス達を見回してみせる。
「何があろうと、秘密は漏らさない、お前達は一人残らずここで死ぬのだ」
「秘密、か。無論、それを探りに来たのは事実だが」
と、樒は言葉を返して、目を細めた。
「一番許容できないのは、お前が灯の姿を盗み取った事だ。更に灯を傷つけようなど、許しがたい──だから、お前を全力で消す」
「そうね。わたしの可愛い妹分に手を出したのだから。あなたこそ、ただで帰られると思わないことね」
パトリシアも、鋭い視線を向ける。灯音はその言葉には少し恥ずかしげだった。
「何だか照れるのだ……」
「……ふん、仲間のため、とはな。騎士道精神のつもりか?」
ワイルドハントが嘲笑うように言うと、シオンは首を振った。
「少し違うな。大切な親友が苦難に陥っている。助けが必要ならば、私は必ず親友の力になる──単純な動機だよ」
言葉と視線は、真っ直ぐに敵を射抜く。
「騎士としてではない……灯音の信頼に応えるためのな」
「……綺麗事を」
ワイルドハントは嫌悪するように、鎌を握り直してくる。
だが先んじて、樒が剣を掲げていた。
「一気に勝負にもっていきたい所だが、確実にだ。灯、いくぞ」
「わかったのだ。……遮れっ!」
瞬間、樒が眩い星光で仲間を包むと、灯音も銀槍を地に突き立て、雷壁を生成。これまでの防御効果に、さらに光を重ねて、仲間全体に防備が及ぶ態勢を作っていた。
シオンはそのまま疾走し、雷撃を伴う刺突。
後退した敵へ、パトリシアもリボルバーを向けていた。
「わたしたちも攻撃といきましょ」
「勿論」
それに応えて地を蹴っているのは宗嗣。距離を詰めると同時、漆黒の刀身に逆巻く炎を収束させていた。
「これを、受けきれるかな。魂の一片だけでも、削らせてもらうとするよ」
刹那、繰り出すのは、『煉剣技・死喰鳥』。
たなびく炎を燃え盛らせると、一気にゼロ距離へ。研ぎすませた剣閃で、ワイルドハントの腹部を深く穿った。
同時、 パトリシアは『紅蓮地獄』。炎の魔力を篭めた弾丸を撃ち当てることで、ワイルドハントの全身に炎を広げていく。
呻きを零しながらも、ワイルドハントは霧状のウイルスを生成。中衛の体を蝕んで来ようとした。
だが、それはシオン、そして葵が敵の前面に素早く出て、盾となって庇い受けていた。
生命力を侵されながらも、葵は振り向く。
「大丈夫ですか!」
「うん、ありがとうなのだ」
灯音が頷きを返す。と、直後には沙羅が、陣形からグラビティを発現して、回復力を生み出していた。
「すぐに回復するから待ってて!」
それは巨大な円陣の形に展開され、葵とシオンを含む前衛に作用。体力を癒やし、ウイルスを消滅させていた。
「攻撃はお願いね!」
「お任せください! 回復して頂いたお礼に、確実に打ち込んでみせますっ!」
葵は沙羅に声を返し、高く跳んで敵へ肉迫する。
回避しようと間合いを取るワイルドハントだが、葵は着地と同時に、斧剣を地に突き刺す。そのまま勢いを殺さず体をスイングさせ、旋風のような回し蹴り。
痛烈な衝撃力を腹に叩きこみ、ワイルドハントを吹っ飛ばしていた。
●集結
倒れ込んでいたワイルドハントは、揺らめきながらも立ち上がる。顔には微かな苦渋を浮かべつつも、鎌を携え、再び攻勢へと入ろうとした。
だが、その頭上にふと、影がかかった。
「狙い澄ます──」
それは、風を掃いて飛翔してきた、悠雅。左手に螺旋の力を固めて放ち、周囲のモザイクを巻き込みながらワイルドハントに打ち当てていた。
再び敵が体勢を崩した所に、悠雅はふわりと着地した。
「櫻田さん! 大丈夫だった?」
沙羅が駆け寄ると、悠雅はうむと頷く。
「……ただ、情報になりそうな物はない」
巡ってみても、やはりモザイクの風景が広がるだけだったと、悠雅は見たものを口にした。
ワイルドハントは膝をついて、起き上がる。
「……秘密は、漏らさぬと言ったろう。全ては、徒労に終わるのだ。お前達の戦いもな」
「それは、違うよ。無駄なんかじゃない」
沙羅はワイルドハントへ視線を向ける。
「櫻田さんが見てきたものも、一つの成果だよ。それに僕達が勝てば、敵をひとり倒せる。公園だった場所は、平和になる。それって、無駄じゃないよね」
「そうなのだ」
灯音は頷いて、声を継ぐ。
「それだけじゃなく、私の姿の対価、仲間に手を出した対価もその身で払ってもらうのだ!」
「……死ねばそれも叶わないさ」
ワイルドハントは反抗するように鎌を掲げる。
が、低い軌道で疾駆した樒が、ナイフ・夜風を拾いざま、ワイルドハントの腹部に突き刺した。
「遅いな」
「がっ……!」
「合わせるよ」
呻きを上げる敵へ、宗嗣も間を置かず、刀に雷を纏わせて刺突。傷を重ねて腹部を貫いた。
パトリシアも香水壜型爆破スイッチ“凛と馨しく”を起動。緋色の衝撃波を煌めかせて後退させる。
「攻撃、来るわ!」
それでも構えるワイルドハントを見て、パトリシアは声を投げた。呼応するように、標的となった葵は既に防御態勢を取っていた。
「やらせませんっ!」
そのまま、放たれた鎌を斧剣の側面で弾く。
衝撃の余波でダメージはあったものの、そこには沙羅が幻影を纏わせて治癒。さらに、灯音も『白癒』を降ろし、治癒の霧で前衛を回復防護していた。
葵は返す刀で一刀、敵の頭上から苛烈な斬り下ろしを加えている。
「これでどうですかっ! そろそろ苦しいはずですよっ!」
「……こんなもので、倒れないさ」
ワイルドハントは血を零しつつも声を返す。
そして浮かべたのは酷薄な笑み。
「お前達の苦しむ顔を、見るまではな。よほどこの姿が愛しいらしいが、ならばその姿にいたぶられ、殺されろ」
「……話し合いを、とも思ったが。それが叶う相手ではなかったようだな」
シオンが、微かに低い声を発していた。
それは地獄とともに揺らめかせる、静かな怒りだ。感情を顕す炎はずっと抑えていた。だが他者の、大事な親友の、尊厳を蔑ろにする相手ならば、話は別だ。
「悪いが一切の手加減は出来ない。喰らわせる前に、それだけ言っておこう」
瞬間、シオンは光の剣を具現化。紫に輝く一刀で、ワイルドハントの胸部を深々と切り裂き、その体を地に叩き付けた。
●決着
ふらつきながら、ワイルドハントは体勢を直している。
樒は油断せず、ナイフを構えながら、皆に声をかけていた。
「このまま一気に押し込むぞ。灯の姿のまま、目の前に立たれるのは不愉快だ」
「そうねえ。ま、形がどうあれ、敵は敵だから。思い切り殴らせてもらうけれどね」
応えるように言うのはパトリシア。手を伸ばすと、それに呼応するように、傍らからライドキャリバーが疾走。速度のままに強烈な体当たりを加えていた。
たたらを踏むワイルドハントへ、悠雅は『深緑の縛鎖』。地獄の鎖で敵を締め上げる。
「煉獄の鎖、かの者を切り刻め」
瞬間、その鎖を引き抜き、全身の傷を抉っていた。
「今だ、攻撃を」
「ああ、畳み掛ける……!」
連続して、シオンもグレイブで突き攻撃を打ち込み、動きを鈍らせていく。
ワイルドハントはしかし、それでも倒れず、鎌を振るって宗嗣を攻撃した。
「……っ」
胸部を裂かれながら、宗嗣はしかし踏みとどまる。ペインキラーで痛みもないからか、声もあげなかった。
何も感じないからこそ、体だけでなく、心も傷つかないと言い聞かせていられる。
本当の所はどうなのか、多くの感情を失った宗嗣には分からない。だが飛び散る血潮の中で、痛みを欺瞞できていることだけは事実だった。
宗嗣は反撃の煉剣技でワイルドハントを後退させる。
同時に灯音は雷壁を生成して、最後まで前衛の状態を保っていた。
「後の攻撃は任せるのだ」
「了解だよ。これでも、喰らっちゃえ!」
声を返す沙羅は『幸福空間』による爆撃。それでも敵が連撃を狙ってくると、葵の剣撃がそれを防ぎ、鎌を弾き飛ばしていた。
「もうそろそろ、終わりですっ!」
言葉とともに回し蹴りを放つと、樒もワイルドハントへ肉迫する。
そして、その胸部へ、『斬』。夜風の一刀で心臓を斬り裂いた。
「灯の顔に傷をつけるのは、気がひけるからな」
「これで最後よ。地獄の焔に灼かれなさい」
同時、パトリシアもリボルバーから焔の弾丸を撃ち、貫く。斬撃と紅蓮に襲われ、ワイルドハントは塵と散っていった。
「終わりましたね、皆さんお疲れ様でしたっ!」
戦闘後、葵の言葉に皆は頷く。
パトリシアは灯音へと向いていた。
「ツキちゃん、大丈夫?」
「大丈夫なのだ! 皆のおかげで、助かったのだ」
灯音が皆に礼を言う。樒も、皆を見回して改めて礼を述べた。
「皆、灯のためにありがとう」
それから、灯音に向き直る。
「灯、心配したぞ」
「……ごめん、心配かけた。帰ろう」
灯音がぎゅっと抱きつくと、樒はそれを受け止め、ようやく安心したように、キスを返しているのだった。
シオンもそこで、少しだけ表情を和らげている。
「帰ったらいつものインスタントコーヒーを、また一緒に飲もうな」
うん、と、灯音がそれに応える。
沙羅は周囲を眺めていた。
「手がかりはもう、無いかな」
「これ以上はおそらく無駄かと。こちらも消耗しているし、先ずは帰還を急ぐ方がいい」
悠雅が促すように言うと、それには皆も頷いた。
「じゃ、善は急げ、ね。帰りましょうか」
パトリシアも言うと、それを機に皆は歩きだす。
外が近づくと、宗嗣は見上げた。
「モザイクが、晴れていくね」
周囲を覆っていた奇怪な風景は消え、元の公園に戻りつつある。そのうちにモザイクは全て消滅した。
皆はそのまま帰路へ。ひとまずは得られた戦果を胸に、現場を去っていった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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