紅風に舞う

作者:崎田航輝

 紅葉に染まる山。
 一歩踏み入れば紅色がどこまでも広がり、涼しい風に葉の雨が降る、そんな光景の中。
 長柄の武器を素振りしている、1人の男がいた。
 僧の格好をした、どこか無骨な容姿。それでいて筋肉に引き締まった体をした青年である。
 その武器は薙刀。使い古された見た目ながら、刃は未だに鈍く光る業物だった。
 青年は素振りを終えると、風に舞う紅葉を切り裂こうと薙刀を振るい始める。
 それなりの技量があるのか、宙に踊る葉は次々に寸断されていた。が、同時に狙った全てを斬ることが出来たわけでもなかった。
「……未だ鍛錬不足、か」
 青年はただ静かに零し、再び素振りを始める。
 と、その時だった。
「お前の最高の『武術』、見せてみな!」
 言葉とともに、紅葉を踏みしめて現れた者がいた。
 それはドリームイーター・幻武極。
 その瞬間に、青年の体は操られたように動き、勝手に幻武極に攻撃を打ち込んでいた。
 しばらくすると、幻武極は頷いた。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 そうして、言葉とともに、青年を鍵で貫いた。
 青年は地面に倒れ込む。するとその横に、1体のドリームイーターが生まれた。
 それは、より静かな佇まいと、気迫に溢れた容貌を持つ僧の姿。
 自在に薙刀を振るい、周囲の葉や木々、全てを両断していく薙刀使い。青年が目指す姿を具現化したような達人の風貌であった。
 幻武極はそれを確認すると、外の方向を指す。
「お前の力を見せ付けてきなよ」
 ドリームイーターは頷いて、森を歩いて出ていった。

「一つの武芸の高み、その理想の体現者か。如何なる強さか、見てみたい気持ちはあるな」
 吉柳・泰明(青嵐・e01433)の静かな言葉に、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は頷いていた。
「それなりの強敵ではあるでしょうから。気を引き締めていきたいですね」
 それから改めて皆に説明をする。
「今回は、吉柳・泰明さんの情報で判明した、ドリームイーターの事件について伝えさせていただきますね」
 最近現れた幻武極の仕業のようで、自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとして起こしているという事件だ。
 今回の武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに武術家ドリームイーターを生み出して暴れさせようとしているのだ。
 このドリームイーターが人里に降りてしまえば、相応の被害も出てしまうだろう。
「その前に、この武術家ドリームイーターの撃破をお願いします」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、ドリームイーターが1体。場所は山林です」
 紅葉の最盛を迎えた美しい山の中だ。
 一般人などの被害を心配する必要もないので、戦闘に集中できる環境でしょうと言った。
「皆さんはこの山中へ赴いて頂き、人里に降りようとしているドリームイーターを見つけ次第、戦闘に入って下さい」
 このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようだ。なので、戦闘を挑めばすぐに応じてくるだろう。
 撃破が出来れば、青年も目をさますので心配はない、と言った。
「得物は、薙刀か」
「ええ。リーチを活かしつつ、刀のようにも槍のようにも使える武器で、巧みに操ってくるようです」
 泰明の言葉にイマジネイターは応える。
 能力としては、刺突による近単パラライズ攻撃、薙ぎ払いによる近列足止め攻撃、乱れ打ちによる遠列催眠攻撃の3つだ。
 泰明は頷いて口を開く。
「如何なる武器、如何なる武術が相手でも。必要ならば、戦って、止めて見せよう」
「ええ。是非、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ダダル・ダル(ウェアライダーの店長・e00561)
吉柳・泰明(青嵐・e01433)
クローチェ・ドール(愛迷スコルピオーネ・e01590)
王生・雪(天花・e15842)
西院・織櫻(櫻鬼・e18663)
柚野・霞(瑠璃燕・e21406)
リエラ・ガラード(刻腕・e30925)
フェリル・アルヴァニスタ(ウェアライダーの自宅警備員・e41228)

■リプレイ

●対峙
 ケルベロス達は紅葉の山中へと入ってきていた。
「この辺りでっすな。早速、索敵するでっすよ!」
 そう言って見回しているのはダダル・ダル(ウェアライダーの店長・e00561)。
 山も中腹、既に敵出現予測地点でもあるということで、皆も頷く。それぞれに離れすぎないように、敵影を探し始めることにした。
 と、その途中、空で捜索していた王生・雪(天花・e15842)がふわりと降りてくる。
「皆様。北の方角で、動く影が有りました。おそらくは──」
「敵、ですか。早速、向かいましょう」
 フェリル・アルヴァニスタ(ウェアライダーの自宅警備員・e41228)は、それに応えて歩き出す。
 それに皆も続く。それからは、同じく飛行していた柚野・霞(瑠璃燕・e21406)が、空から皆を先導。
 ある程度進んだ所で、霞も下りて、合流したのだった。
「そろそろ、来ますよ」
 そして霞が言った、丁度その時。
 風に舞う紅葉の間から、人影が歩いてくる。薙刀を携えた僧の姿をした、ドリームイーターだった。
『こんな所に、人の集まりか』
 立ち止まったドリームイーターは、幸運に巡り合ったというように、こちらを見回してくる。
 そこに、吉柳・泰明(青嵐・e01433)が一歩、先頭を切るように前へ出ていた。
「武の真髄を、見せようというのであろう」
『……その通りだ。よく知っているな』
「ならば、力持たぬ人々より、同じ道を志す者が好都合だろう」
 泰明は、佩いている刀の鞘を握って見せ、言った。
「その道を貫きたくば、先ずは我らと力比べを。正々堂々、お相手仕ろう――そして阻んでみせよう」
「ええ、得物は違えど、これでも武の道を志す身――この刃に、持てる全てを賭してお相手致しましょう」
 雪もまた、真向から見据えるように、日本刀を構えていた。
『面白い。我が薙刀術で、全て打ち砕いてみせよう』
 ドリームイーターは好戦的に言って、薙刀を掲げる。そのまま、こちらへと走り込んできた。
 と、その眼前に、眩い光が閃く。
「なら、これを受け切れますかっ!」
 それは、激しい雷撃。
 リエラ・ガラード(刻腕・e30925)が詠唱具・黒雷石【リア・ファル・ライトニング】から発した、弾けるような雷光であった。
 小爆発の如き衝撃に、ドリームイーターは立ち止まる。
『これは、術士という奴か──』
「それだけじゃないさ。僕の場合は、小綺麗な戦い方でなくて済まないが」
 同時、言葉とともに頭上に影がかかった。
 それは地を蹴って肉迫していた、クローチェ・ドール(愛迷スコルピオーネ・e01590)。
 瞬間、ぶん回したような無造作な蹴りを顔面へ打つと、着地とともに『金剛石の処女』。ナイフでの強烈な斬撃を加えて、たたらを踏ませていた。
『ぬぅ……っ』
「まだ、終わらないわ」
 次いで、フェリルが楚々とした立ち居振る舞いから、鋭い飛び蹴りを打ち、後退させている。
 この間に、ダダルと泰明は前衛と後衛に霊力を施して、防備を固めていた。
 霞も同時、『六芒魔法陣』を行使している。
「『小さき鍵』の名の下に、増幅の円陣よ――開け!」
 瞬間、足元がきらめいたかと思うと、魔法円が展開。グラビティの力を増幅させる魔力で、霞自身を包み込んでいた。
 再び接近するドリームイーターへ、雪は踏み込んで、太刀に氷雪の霊力を帯びさせていた。
「凜冽の神気よ――」
 刹那、吹雪を伴う太刀風とともに、凍てつく剣閃、『凍花』を見舞う。
 苛烈な一撃に動きを鈍らせたドリームイーターは、それでも薙刀を突き出してこようとする。
 が、それを刃で受け、鍔迫り合う者がいた。西院・織櫻(櫻鬼・e18663)だ。
「まずはその力、どの程度のものか、見させてもらいましょう」
 織櫻は斬霊刀・櫻鬼で薙刀を少しずつ、押し返していく。気を抜けば逆に押し込まれる程の敵の膂力に、驚きつつも、表情はあくまで無表情に。
「あなたは、中々の好敵となりそうですね」
 そして淡々とした口調の中に、微かな期待感を滲ませて。織櫻は敵の刃を弾き、もう一刀の斬霊刀・瑠璃丸を振るって『雨音断ち』。
 文字通り雨すら断ち切る速度の斬撃で、ドリームイーターの腹部を横一閃に裂いた。

●剣戟
 ドリームイーターは一度間合いを取るように飛び退いていた。傷を押さえつつ、しかしその顔はどこか満足げでもある。
『かなりの実力だ。貴殿らなら、我が武術を披露するにふさわしい』
 言うと、再び薙刀を構えた。
『全霊で、この薙刀術の全て、披露しよう』
「全て、ですか。それならこちらも都合がいい」
 織櫻は声を返して、二刀を差し向けている。
 普段は感情の起伏に乏しい織櫻だが、戦いの中で敵を糧とし「刃を磨く」事には拘る部分がある。だからこそ、この戦いを絶好の機会と捉えてもいた。
「敵は強ければ強い程良い糧となる。それが武術を修めているなら尚の事。貴方が磨いたその武術、我が刃の糧とさせて頂きますよ」
『望むところ。真っ向からその刃、砕いてみせよう』
 ドリームイーターもまた、正面から対峙する。
 雪もまた、それを歓迎するように、再度刀を握った。事件の元凶こそ許しがたいが、目前の敵が、武に歩む青年の志の具現であるならば。
「──敬意を以て、相手をさせていただきましょう」
「ああ。武には武を以て、応える。雪、行こう」
 言葉とともに、泰明も敵へ向かっていた。
 呼応するように、雪もほぼ同時に疾駆している。
 元来、泰明と雪は互いの実力にも一目置く、同志。その戦法も性格も熟知する仲だ。
 だからこそ、言葉を交わすでもなく。泰明が前に出て雷光を伴う刺突を打つと、重ねて雪も前進し、弧を描く裂帛の斬撃を叩き込んでいた。
『いい太刀筋だ──!』
「そうか。それなら、こいつはどうだろう」
 揺らめくドリームイーターへ、声を返すのはクローチェだ。
 瞬間、薙刀の穂先を乱暴に踏みつけて、地に埋める。敵が惑った隙に距離を詰め、首元にグラビティを篭めたナイフを突き刺した。
「僕は確実に殺せる戦い方を好むのでね」
 がっ、と血と声を零すドリームイーター。しかしそれでは倒れず、歯噛みしつつも、突きをクローチェに繰り出した。
『構わぬさ。戦法は千差万別──我は我の真髄を見せるのみ!』
「人それぞれという部分は、同意しますね」
 ふと、霞はそれに冷静な声を返す。
 同時に、魔導書を開くと、膨大な魔力を発現。脳髄を賦活する魔術を行使することで、クローチェを回復した。
「特に、わたしは魔術師ですから。武術の心得がないわけではありませんが、どちらかと言えば文化系でもありますし……こうして後方支援に徹することを選ばせてもらいます」
「そうそう。それぞれの高みを目指すのは、武芸者も魔術師も変わらねーでっす」
 ダダルも声を継ぎながら、グラビティを集中していた。
 手に携えるのはTCGシャーマンズデッキ・「DEATHドラゴン・フォース」。それを掲げると、薄く光る霊力を発散させている。
「新たな魔術を得るために勉強したり、回避しながらでも詠唱できる様に身体能力の鍛錬したり──既存の魔術を洗練させたりとか!」
 言葉通り、その透き通った霊力は淀みなく、後衛を保護。膜で覆うように、耐性を高め、防護を万全としていた。
 敵へは、織櫻が貫くような刺突攻撃。一歩下がったドリームイーターへ、すかさずリエラも走り込んでいた。
「この距離なら、行けるっ! 合わせて、攻撃しましょうっ!」
「ええ、分かりました」
 それに応えてグラビティを手元に収束させているのは、フェリルだ。
 リエラが敵に接近する短い時間に、フェリルは掌を地面に当て、グラビティをそっと大地に溶け込ませる。
 するとその力は、一瞬でドリームイーターの足元へ伝搬。巨大な爆炎を上げてその体を襲った。
「今です」
「了解っ、このまま……叩き斬るっ!」
 そのタイミングで、リエラは敵の眼前へ。大剣【Salvator】に地獄を纏わせて、殴打するかのような熾烈な斬撃を加えた。
 熱波と風圧、そして横殴りの衝撃は強烈。ドリームイーターを煽るように吹っ飛ばし、木に激突させていた。

●武
 木の葉を払って、ドリームイーターは立ち上がる。
 痛みに顔をしかめながらも、そこには喜色も滲んでいた。
『天晴な実力だ。貴殿らを殺すことで、我が武術の強さも証明されるだろう』
 言って、地に刺していた薙刀を再度、構え直す。
 フェリルはそれを眺めながら、声を零した。
「“殺す”、ね……あなたの戦いは、やっぱり最後はそこに行き着いてしまうのね」
『相手を完全に倒すことこそ、勝利なのだからな』
「……その後は、無辜の人々を襲うのでしょう」
 静かに声を返すのは雪。ドリームイーターは勿論とばかりに頷いていた。
『可能な限り、武術の真髄を見せてゆくだけだ』
「そうですか。──青年の志は、敬うべきでしょう。しかし、それが人に害為す無道な力になるならば。この先に、その刃を通す訳には行きませぬ」
 雪は芯の強い、凛とした視線を向ける。
 ドリームイーターは、あくまで反抗するように駆けてくる。
『ならばその意志ごと、力でねじ伏せる』
「いいや。この力は人々を護る為にこそ磨いてきたもの。決して、譲れぬ」
 泰明はそこに、決意を乗せるように『奔狼』。黒狼の影を召喚すると、それを解き放ち、鋭い牙で襲撃させていた。
「どれ程の相手であろうとも──必ずや打ち勝つ」
『ぐぅ……っ』
 呻いて下がるドリームイーター。
 そこへ雪も、刀に光を纏わせ刺突。連続して、フェリルも氷の魔力を篭めた打撃を加え、体力を削り取っていた。
 ただ、ドリームイーターはそれでも踏みとどまり、前進する。
『武は戦うためのもの。死はつきものであろう──!』
「そうか。ならば、自分が死んでも文句は言えまいな」
 そう返して横合いから肉迫するのは、クローチェだ。ナイフを敵の肩に刺して動きを止めると、間を置かず、強烈な拳を顔面に打ち当てる。
「一つそれまでの短い時間を、楽しんでいってくれ給え」
『がっ……!』
 血を吐いて膝をつくドリームイーター。
 その顔には確かに苦悶があった。だが、それでも起き上がりざまに、前衛に乱れ打ちを放ってきた。
 しかしそこに、即座にオーロラの如き美しい光が生まれる。
「少々お待ちを、すぐに回復してみせます」
 それは、治癒の魔術をヴェールのように広げている、霞の力だ。
 虹色に広がるその煌めきは、前衛へ降り注がれると、催眠と傷を消し去っていく。
「これでかなり、持ち直せたはずです」
「では、絹も支援を──」
 次いで、雪の声に反応して、ウイングキャットの絹も、清浄な風で前衛を万全に整えていた。
 ドリームイーターはそれらを見て、今度は支援役に狙いをつける。
『支援に長けているなら、接近戦には弱い筈──』
「そうでもないでっすよ。格闘術を嗜む魔術師もそれなりにいるでっすから」
 と、反論するようにその懐へ迫るのは、ダダル。
「こうやって、ネズミ種の身軽さを使って──重力的な意味で重いパンチを叩き込む魔術師とかも、ね!」
 瞬間、力を込めた腕で、まっすぐの拳を打ち放つ。
 鈍い音を伴って、それは重いダメージ。胸を突かれたドリームイーターは、衝撃に再び吹っ飛んだ。
 追いすがるように、織櫻も螺旋を込めた掌底を叩き込み、敵を地に打ち倒す。
「この程度で終わりでは、無いでしょう」
 ドリームイーターは、当然とばかりに起き上がってくる。
 が、織櫻と入れ替わるようにリエラが飛び込み、大剣を掲げていた。
「潰れろっ!!」
 同時、剛烈なまでの威力を篭めた振り下ろし。
 周囲の地面が波打つほどの一撃に、ドリームイーターは血を散らしながら宙に浮き、再び倒れ込んでいた。

●決着
「皆さん、最後まで油断せずに、行きましょう」
 血だまりに倒れるドリームイーターを見下ろしながらも、フェリルは皆に言う。
 皆は頷き、引き続き戦闘態勢。言葉通り、ドリームイーターもすぐに起き上がってきたが、素早く対応して、泰明が脳天からの斬撃を与えていた。
「このまま最後まで、行かせてもらおう」
「ええ。──貴方の道は、此処で断たせて頂きます――御覚悟を」
 雪も、再び敵へ凍花。氷の花舞う剣撃で、体力を奪い取っていく。
「では、わたしも攻勢へ移らせて頂きますね」
 と、霞は空中で構えて魔力を濃縮。光の矢の様にそれを形成し、連続で撃ち込んでいった。
 ふらつくドリームイーターは、それでも薙刀を手に、遮二無二駆けてくる。
 しかしそこに、ダダルは『ブラックDEATH』を行使していた。
「600年物のヴィンテージ禁術、こいつはとってもブラックでっす!」
 それは、敵の中にある有害な「要素」を自己複製させていく、暗黒魔法。体の内外から蝕まれるような感覚に、ドリームイーターは 再び地に手をつく。
 織櫻はそれを狙い、両の刀から巨大な衝撃波を放っていた。全身を暴圧に包まれ、ドリームイーターから鮮血が散っていく。
「いい戦いでした。しかし、そろそろ終わりです」
「ああ。──Addio,なかなか楽しかったとも」
 クローチェも言葉を継ぎ、ナイフを縦横に踊らせて斬撃の嵐。ドリームイーターの肉、骨、腱を断ち切っていく。
『まだ、だ……』
 ドリームイーターは満身創痍ながら、薄い意識で立ち上がってきた。
 が、リエラは容赦なく、黒炎から生み出した刀を掲げていた。
「我が一刀は空を越え……天を絶つ……絶ち斬れ、無空・天絶ちっ!!」
 刹那、繰り出すのは縦一閃の斬撃、『無空・天絶ち』。
 胸を裂かれ、意識を失っていくドリームイーターに、フェリルも同時、魔力の溶岩流を噴出させている。
「これで、終わり」
 斬撃と熱の塊、その衝撃に飲まれるように、ドリームイーターは消滅していった。

 戦闘後。皆は青年の元を訪れ、介抱した。
 青年は無事に意識を取り戻しており、怪我も無かった。今回のことについては、自身の鍛錬不足を静かに嘆いてもいたが、それにはフェリルが声をかけた。
「確かに今回は災難だったけれど。でも、志を高く持つことは素敵だと思うの」
 だから前を向いて、というように。元気づけるフェリルの言葉に、青年はしっかりと頷きを返し、修行に邁進すると約束した。
 泰明はそれを見て、微かに表情を和らげる。
「一時の夢は消えても──彼自身が、何れ自ずと高みへ至る事だろう。我々も、精進あるのみだな」
「ええ、地道に励んで参りましょう」
 雪も応えて、頷きを返していた。
 その後、織櫻は青年に幻武極について聞いたが、得られる情報はなかった。
「また、事件は起こるかもしれませんね」
「その時は、その時でっすな。今日はとりあえず、ヒールして帰るでっすよ」
 ダダルは織櫻に言いつつ、周囲の修復。景観を取り戻して、帰路へと向かった。
 皆もそれぞれに頷き、山を降りる方向へ。ひとまずは得られた戦果を胸に、歩き去っていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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