サルビアの青い風

作者:崎田航輝

 秋は涼しくて、少しだけ寂しい。
 夏みたいな弾む元気はないけれど、しかし景色の綺麗さがゆっくり眺められて、少年はこの季節が楽しみだった。
「今日は一段と綺麗な気がするなぁ。ここ」
 秋の散歩道。まだ幼さの残る少年が、立ち止まって眺めているのは、花畑だ。
 ここから歩いていけば住宅地がある。けれどこのあたりだけは自然の風景が広がっていて、学校帰りには欠かさず通るようにしていた。
 咲いているのは、一面のブルーサルビア。楚々と咲く小ぶりで美しい花々は、幻想的な青の絨毯のようだ。
 そよ風に揺られる様はまるで青い風が吹いているようで、少年は暫し見入っていた。
 と、そんなときだった。
「さあ、動き出すんだよ」
 言葉とともに現れ、ブルーサルビアの一株に、謎の胞子を振りかける者がいた。
 それは、大きな羽を生やした少女のような容姿。
 一見人間にも見える、人型の攻性植物、鬼蓮の水ちゃんであった。
「誰……うわっ!」
 少年は驚く。胞子のかかったブルーサルビアが突如蠢きだし、攻性植物と変化したからだ。
 異形と化したブルーサルビアは、そのまま少年を飲み込み、宿主としてしまう。
「どう、苦しい? でも、お前達人間はこれ以上の苦しみを植物に与えてきたんだよ。だから、自業自得さ」
 鬼蓮の水ちゃんはそれを眺め、嗜虐的な笑みを浮かべる。そうして、それらを放置して立ち去ってしまった。
 後には、不気味に這い出す、ブルーサルビアだけが残った。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、集まったケルベロスたちに説明を始めていた。
「本日は攻性植物の事件について伝えさせて頂きますね。人型攻性植物が、独自の人類絶滅計画のために動いているらしい事件の1つで……今回はそのうちの1体である、鬼蓮の水ちゃんが、起こしたものです」
 鬼蓮の水ちゃんは道に咲いていた花を攻性植物化。その花が少年を取り込み、宿主としてしまった状態だという。
 放置しておけば、少年は助かるまい。
 だけでなく、そのまま人々を襲ってしまう可能性もある。
「皆さんには、この攻性植物の撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、人間に寄生した攻性植物が1体。場所は、町中の道になります」
 土手沿いにある自然の多い一角で、平素から人影の少ない場所だという。
 当日も他の一般人はおらず、戦闘中も人が介入してくる心配はないので、避難誘導などを行う必要はないでしょうと言った。
「ただ今回の敵は、一般人の少年と一体化している状態となりますので、注意が必要です」
 普通に倒すだけでは、その少年も死んでしまうことでしょう、と言った。
 これを避けるために、ヒールを併用した作戦が必要だという。
「相手にヒールをかけながら戦い、少しずつ、深い傷だけを蓄積させていくのです。粘り強くこの作戦を続けることができれば、攻性植物だけを倒して少年を救うことが出来るはずです」
 もっとも、敵を回復しながら戦うのは、簡単ではない。
 少年を救うならば、しっかりと戦法を練って臨む必要はあるでしょう、と言った。
「では、攻性植物の能力の説明を。蔓を伸ばしてくる近単捕縛攻撃、花を炎弾のように飛ばしてくる遠単炎攻撃、地面に侵食して攻撃する遠列催眠攻撃の3つを行使してきます」
 各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「敵の目論見も気になりますが、まずは撃破を。そして少年の救出も、考えて貰えればと思います」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)
八千沢・こはる(ローリングわんこ・e01105)
松葉瀬・丈志(紅塵の疾風・e01374)
吉柳・泰明(青嵐・e01433)
ズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)
王・美子(首無し・e37906)

■リプレイ

●接敵
 秋の道を、ケルベロス達は駆けていた。
 住宅地を抜け、土手沿いの自然豊かな風景に出れば、すぐにそれは見えてくる。巨大化した青い花、ブルーサルビアの攻性植物だ。
 八千沢・こはる(ローリングわんこ・e01105)は疾駆しながらも、呆れ半分に視線をやっていた。
「しかし、まーた寄生型の攻性植物ですか。なんなんでしょうかね!」
「それだけ、あの人型攻性植物たちの動きが活発化しているということなのでしょうね」
 応えるように言うのはズミネ・ヴィヴィ(ケルベロスブレイド・e02294)。
 吉柳・泰明(青嵐・e01433)は少し物思うように、声を零す。
「去年の寄生型に続き、同時期に侵攻を始めたことになるか」
「“苦しみを植物に与えてきた”、だっけ──」
 フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)は、この事件を起こしたその存在のことを思い、ふと声を零す。
「……ボク自身は、一生懸命世話していたつもりだったけれど、そう思われていたなら遣る瀬無いね」
「遣る瀬無いどころか、理不尽だ」
 言って、近づいたその異形を見上げるのは松葉瀬・丈志(紅塵の疾風・e01374)。
「見る分にはいい色合いだが。やってる事は到底、見過ごせないな」
 視線の先。多重に重なる花弁の中に、囚われている少年の姿が見えていた。
 戦闘の間合いに入ると、こはるは居合刀・日車の鞘に手をかける。
「あの子を助けるためにも、きっちり除草しなくちゃですね!」
「うん。……そうだね」
 源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)は一度目を伏せて頷く。
「自然の恵みである花を愛する人ならば、僕には等しく護る対象だから──」
 綺麗な花が咲くのを楽しみにして、深く花を愛する。少年の姿に、瑠璃は自分と重なるものを覚えていた。
 森の守護者を自覚するならば、攻性植物と化してしまった花にも、思うところはあった。
「それでもまずは、目の前の命を助けよう」
 そして瑠璃は目を開き、敵と向かい合う。

 ケルベロス達に気づいた攻性植物は、すぐに攻撃行動に入ってきた。
 だが、それに先んじて走り込む影がある。
 ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)。ゴーグルを直しながらロッドを構えると、その先から弾けるような雷光を発生させていた。
「先手はもらうよ! ビリリッとね!」
 瞬間、白色の閃光を撃ち出し、花弁を数枚焼き切って落とした。
「リューズはみんなの補助を頼むよ……ってあれ? もうやってる?」
 ゼロアリエが振り向くと、ウイングキャットのリューズは、主のことは無視してさっさと味方に耐性を与えているのだった。
 攻性植物へは、間を置かずフリードリッヒが踏み込んでいる。
「その動き、止めさせてもらうよ」
 そのまま、稲妻を宿らせた槍で根元へ刺突。
 痺れたところに、こはるも抜刀して連撃を喰らわせていた。だが、攻性植物も未だ健常とばかり、蔓を瑠璃へ伸ばす。
 が、そこに滑り込んで、衝撃を庇い受ける者がいた。
「此の程度の痛み、幾らでも注ぐが良い」
 言葉とともに立ちはだかる、泰明だ。まっすぐに敵を見据えながらも、霊力を集中している。
「まずは、戦うための力を──」
 その霊力を放つと、前衛の体に作用させて耐性を増幅させていた。
 さらに、丈志は守護星座の光を煌めかせ、瑠璃も魔法陣を描き出す。それらが前衛の防護を万全としていた。
 そこでふと、攻性植物を見上げるのは王・美子(首無し・e37906)だ。表情は退屈そうながら、傷の具合をつぶさに観察していた。
「体力的には、まだ平気そうかね」
「ええ。でも、処置しておくに越したことはないわね」
 言って、敵へ向かうのはズミネだ。
 傷ついた箇所に視線を走らせると、手元に治癒のオーラを纏わせて施術。蔓を繋いで、まずは浅い傷を回復させていた。
「さて、これで安心かね」
 息をつくように、美子は改めて銃を構える。
 攻性植物は、活発に進行して美子を襲ってこようとした。だが美子は、伸びてくる蔓に、グラビティを込めた弾丸を連射。一箇所にそれを埋没させると、続く弾丸を起爆剤にするように、爆裂。
 敵の内部から拡散する衝撃を与え、蔓を吹っ飛ばした。

●花
 攻性植物はよろめきながら後退する。怒りを現すように花を揺らすと、形態を変え、その花に熱を蓄え始めていた。
 青い花は、異形と化しても、美しく色づいているようでもある。
 ゼロアリエは、改めてその花を少し、見上げていた。
「ブルーサルビアってキレイだよね、俺スキだわ。これで攻性植物になって無ければ、だけど」
「ま、人喰いになっちまったら綺麗も何もねーな」
 美子も応えるように視線をやる。
 そこで、花に縛られている少年が、微かに呻いているのが見えていた。
 少年の意識は希薄だ。だが同時に、傷を受ける度に、苦痛に顔を歪めてもいた。
「絶対に、助けないとね」
 そう呟くのは瑠璃だ。
 少年に自身の姿が重なるのは、かつての自分を思い出すからだ。瑠璃自身も、森で育って沢山の綺麗な花に囲まれて育った。自然を駆け回って過ごし、自然の恵みに格別な思い入れがある。だからこそ、同じ思いを抱く少年に、もう一度自然を愛でてほしいのだ。
 泰明も静かに頷く。そして少年へと声を届けた。
「もう暫し、共に抗い耐えてくれ。帰路を、活路を、必ず開こう」
 思うのは嘗て遭遇した事件。
 今度は救うと、強い決意を胸に、泰明は地を蹴って接近。獣化した拳で、少年を縛る花を数片、粉々に砕いた。
 ゼロアリエは大槌を砲撃形態にし、正面から向ける。
「よーし、派手に一発いくよ!」
 同時、大音を上げて火を噴き射撃。豪速で飛ばした砲弾で、攻性植物の根の一部を吹き飛ばしていく。
「もう少し、行けそうかな?」
「私が適当に刈っとくよ」
 ゼロアリエが敵を観察して言うと、美子も『Dry fire』の一撃。銃床による打撃で、花をさらに四散させていく。
 そこで、攻性植物が苦しげに蠢き始めていた。
 同時に、少年も苦悶を浮かべる、が、そこへズミネが駆け寄り、無から敵の体の部分を生成していた。
「安心して。秋の風情や花の美しさがわかるあなたは素敵な人。きっとそういう人は不幸になってはいけないのよ」
 だから確実に救う、というように。
 ズミネは『ウィッチオペレーションⅡ』で治癒の力を共鳴させ、大幅に体力を戻させた。
 攻性植物はそれで意気を取り戻したように、ゼロアリエへ燃える花を飛ばす、が、そこには素早くこはるが走り込んでいた。
「お守りいたします!」
 飛来してくる炎弾の雨を、こはるは刀と蹴りで撃ち落とす。そのままダメージを最小限に抑えると、返す刀で刺突撃“江雷“。
「痺れろっ!」
 雷光輝く神速の刺突を真っ直ぐに打ち出すと、感電させるが如く敵の動きを止める。
 その間に、丈志がグラビティを集中。治癒の力を薄い膜のように形成していた。
「浅い傷でも、放置しておくと厄介な事になりそうだしな。早めにいくぜ」
 それをこはるに処置すると、淡い光の膜が傷を縫合するように働き、こはるの傷を癒やしていった。
「これで万全だろう」
「僕も補助させてもらうよ」
 と、瑠璃は『太古の月・煌』。太古の月の光の祝福を皆に分け与えることで、前衛の知覚力を増幅させている。
「では、攻撃はボクがやっておこう」
 次いで、敵へ疾駆するのはフリードリッヒだ。
 攻性植物も、そちらへ体を向けてくるが、数瞬遅い。フリードリッヒがそのうちに距離を詰め、手元へ螺旋の力を収束させていた。
「吹っ飛べ」
 刹那、掌底とともに撃ち込まれた螺旋が、攻性植物の体内から爆裂。
 小爆破のような衝撃を与え、巨大なその体を宙へと煽っていた。

●命
 攻性植物は、地面に墜落すると、暫し苦しむように蠢いていた。
 だが、まだ体力は底をつかず、地面に侵食。大地に融合する形態を取り始めていた。
 根に縛られた少年も、一層血の気が引いたように、生気を失っていく。
 泰明はその光景に目を細めていた。目の前の敵、そしてその元凶までもを見通すように。
「──自然を尊ぶ少年を苦しめる等、筋違いも良い所だな」
「ああ、本当にな」
 応える丈志も、クールな面持ちに微かな憤りを滲ませていた。
「目の前で植物を荒らしてたってんならともかく。十把ひとからげに全ての人間を攻撃対象とするのは、どうなんだよ」
「うん、だから早く助けてあげないとね。このまま少年が花キライになったらイヤだし!」
 ゼロアリエは言うが早いか、敵へと駆けている。
 攻性植物も地面に広く小さな花を咲かせ、侵食を進めていた。だがゼロアリエはそれを縫って本体を狙い、至近から雷を撃ち込んだ。
 花や茎が爆散していくと、周囲には泰明が『奔狼』を行使している。
「奔れ」
 その声に応えて顕れるのは、荒々しい黒狼の影だ。嵐の如く駆け抜けたそれは、鋭い牙で一閃、侵食する花々を斬り裂いていく。
「あっ、みなさま、もうそろそろ苦しそうですよ!」
 と、そこでこはるが声を張る。先程よりも早く、攻性植物が限界に近くなっていた。
「すぐに、癒そう」
 瑠璃は応えて駆け寄り、魔術切開を施して、茎や葉を縫合していく。
 それで攻性植物はかなりの回復を見せ、動きを強める。それでも、瑠璃は少年の顔を見て、危機は脱していないと悟っている。
「もう少し、回復を頼めるかな」
「勿論よ」
 言ったズミネは、既に治癒のオーラを生成。手元に纏わせて、撫でるように植物を再生させていた。その間も少年へ声をかけながら。
「私は夢――地球の死者たちが遠い昔に見た夢。妖精8種族が1つ、シャドウエルフの名に懸けて、きっとあなたを救いましょう」
 暖かい光に包まれた少年は、それで微かにだけ、表情を和らげていた。
 攻性植物は一層力強く、地面から前衛へ花粉をばら撒いてくる。
 が、その衝撃と催眠効果は、丈志の掲げた剣から生まれた星々の光が消し去っていた。
 同時、フリードリッヒは侵食する花を見回している。
「子供を犠牲に随分育った物だけれど。そろそろ剪定の時間だよ」
 瞬間、フリードリッヒは自身の体を煙に変えて接近。攻撃とともに実体化するその技、『嗤う悪霊』の一閃で、一度にそれらの花を散り散りに斬り裂いていった。
「さて、これ以上面倒な攻撃されちゃ、たまンねェからな」
 言葉とともに、美子が銃口を向けるのは、敵が地面と融合している接触部。
 そこにオーラの塊を発射すると、続く弾丸を撃ち当てて破砕。根元と大地を切り離すように爆散させた。
 攻性植物は羽音のように葉と花弁を揺らし、唸りを上げる。そのまま流動するように、次手の攻撃を狙ってこようとしていた。
 が、こはるがその足元へと跳躍している。
「やらせませんよ。この一刀を、受けてみてください!」
 着地とともに、一度納刀状態にした刀で、豪速の一閃。逆袈裟に切り上げるような剣撃を放ち、正面から深いダメージを与え、攻性植物を転倒させていた。

●決着
 ふらつきながら、攻性植物は起き上がってくる。だが、体を構成する植生も減り、傷は確実に蓄積しているようでもあった。
 こはるはそれを観察して口を開く。
「かなり弱っているようですね。回復をしてもらえると良いかもしれません」
「ええ」
 応えて、ズミネは再び敵の体の一部を無から生成して移植し、回復させてゆく。それでも治癒しきらないのを見て、皆に言った。
「出来るところまではやったわ。後は、ひたすら攻撃を」
「了解! リューズ、行くよ」
 ゼロアリエは呼応するように、ハンマーから砲弾を放って、攻性植物の足元を穿っていく。同時、リューズも言われずともというように、素早く引っ掻き攻撃を仕掛けていた。
 攻性植物の体力が限界に近づけば、少年もまた、命の灯火を揺らめかせるように、意識を薄めていく。
 美子は欠かさず、そこへ声をかけていた。
「良いか、そのまま寝るなよ。もう少しで出してやるからな」
「ああ、必ず、助けてやる」
 丈志も声を継ぐように、少年へと言葉を投げかける。それに少年が少しだけ、眉を動かすように反応すると、丈志は攻撃に移った。
 攻性植物もまた花を飛ばしてこようとするが、丈志の霊力を込めた拳の速度が勝った。
「動くなよ、これ以上」
「よし、一気に畳み掛けていこう」
 静止した敵へ、瑠璃はすらりと手を伸ばし、御業を放つ。それは攻性植物を取り巻くように飛来し、縄のように縛り上げて、動きを拘束していく。
 同時、フリードリッヒは雷撃を伴う刺突。放射状に弾ける衝撃を与え、少年を捕らえる枝葉を吹き飛ばしていった。
「おっと、これでもまだ動くみたいだ。気をつけてよ」
 フリードリッヒの言葉通り、動きを鈍らせながらも、攻性植物は前進してきていた。
 が、こはるは素早くその動線から外れると、跳躍して背中を取る。そのまま素早く江雷の一撃を叩き込み、花弁の全てを焼き切った。
「もう少しです!」
「ああ」
 泰明は静かに声を返す。しかしその拳は力強く、残る蔓と枝葉を砕いていく。
「──罪無き命を奪う前に、眠れ」
「じゃ、こいつで、終いだ」
 美子も同時に、銃での打撃。それが、蝕む植物の全てを叩き落とし、後に少年だけを残した。

 戦闘後。皆は少年の元へ駆け寄り、すぐに保護した。
「大丈夫だったかい?」
 丈志は少年を起こし、ヒールをしてあげる。しばらくぼうっとしていた少年ではあったが、すぐに意識をきちんと取り戻していた。
「よく頑張ってくれたな」
 泰明が優しく声をかけると、少年は頷く。それから思い出すように、攻性植物の残骸に目をやっていた。
「突然、あれに、襲われて……」
「びっくりしただろう。でも、もう大丈夫だからね」
 瑠璃が気遣うように言うと、美子も頷く。
「まあ災難だったが、そう毎日起こる事じゃないサ。助けを求めりゃヒーローはやって来る。そうだろ?」
 実際に自分を助けたケルベロスの言葉に、少年はうん、と素直に頷いていた。
「とにかく、無事でよかったよ! キミも、みんなもね!」
 ゼロアリエが言えば、皆もまた同意する。
 その後で、フリードリッヒは周囲をヒールした。ただ、周りは修復されていくものの、攻性植物の残骸だけは、蘇らない。
「折角綺麗に咲いていただろうにね」
「そうですね。でも、散歩道の他の場所はみんな、元通りです」
 こはるはヒールしながら、綺麗になる風景を、喜ばしげに眺めていた。
「じゃあ、帰りましょうか」
 ズミネが言うと、皆は頷き、帰還していく。
 泰明も歩き出しながら、決意を心に、呟いた。
「花の命を歪めた禍根も、必ず断とう」
 その思いは強く。言葉はブルーサルビアの美しい畑を、風とともに揺らしていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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