歪む斜陽を撃て

作者:崎田航輝

 町から離れた、とある荒野。
 今では小さな集落がある程度の、寂れたその場所に、歪曲した空間はあった。
「へー、もしかしてこれがワイルドスペース?」
 それを見上げているのは、葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)。
 何となく気になって、調査に訪れた。ただそれだけのことだったが、予感は当たっていた。
「本当に、モザイクに囲まれてるんだね。これは、たしかに入らないとわからないね」
 唯奈は迷うでもなく、そこへ立ち入った。その性格ゆえもあるだろうか。すたすたと、奇怪な空間の中を進んでいく。
「話だと、敵も出るってことだったかな」
 軽く言いながらも、警戒は欠かさない。
 だからすぐに、その存在を見つけた。
「──この場所を発見するとはな。貴様はこの姿に因縁を持つものか」
 唯奈の目の前に、影がいた。
 それは、どこか恐ろしい姿をしている。複数の顔がついたような頭部、巨大な銃器と化した腕部、牙のように変質した下半身。
 何よりも唯奈が目を引かれたのはその中心。まるで磔になっているように、女性の姿が垣間見えていた。
「……噂に聞いたとおりだね。私の姿ってわけ?」
 唯奈自身、気づいている。これは自身が暴走した姿なのだ。
「秘密を漏らされてはかなわんのでな。貴様には、死んでもらおうか」
 その異形、ワイルドハントは、銃口を唯奈に向けていた。
 唯奈は目を細めると、乱暴な口調で返す。
「はっ、誰が。こっちだって、死ぬつもりで来てねーさ」
 それからかちゃり、と二丁拳銃を構える。それは紛れもない、唯奈の抵抗の意思だった。

「集まっていただいて、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、集まったケルベロス達を、見回していた。
 その言葉には少し急ぐ調子がある。
「本日は、ワイルドハントについての事件です。調査をしていた葛城・唯奈さんが、とある集落の付近で襲撃を受けたみたいなんです」
 ワイルドハントはその一帯をモザイクで覆って、内部で何かの作戦を行っていたようだ。
 そこへ踏み込んだ唯奈へ、攻撃を仕掛けたということらしい。
「こちらも、フォローの用意はしてあります。今からならば素早く救援に向かえるので、急ぎ現場へ向かい、唯奈さんに加勢して敵を撃破して下さい」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、ドリームイーター1体。現場は荒野の集落です」
 モザイクに覆われ、奇妙な空間となっている場所だが、戦闘に支障はないという。
 特に戦闘を邪魔してくるものもいないということで、急行して即、戦闘を行ってくださいと言った。
「唯奈さんは戦闘に入っています。こちらもすぐに到着できるはずですが、場合によっては敵に先手を取られている可能性もあります」
 短時間でも、一対一で敵と相対する時間は出来てしまうかもしれない。そういったことを考慮しつつ、加勢後の立ち回りを考えておくといいでしょう、と言った。
 それでは敵の能力を、とイマジネイターは続ける。
「唯奈さんが暴走をしたような姿をしているようですが、別人であり能力も異なるようです。この敵は、射撃攻撃を行使するようです」
 能力としては、早撃ちによる遠単武器封じ、制圧射撃による遠列足止め、両腕で一斉射撃を行う遠列炎攻撃の3つ。
 各能力に気をつけてください、と言った。
「ワイルドハントも、まだまだ謎の多い存在ですが……とにかく撃破が優先です。是非、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・e00300)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
クリュティア・ドロウエント(シュヴァルツヴァルト・e02036)
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)
ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)
シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)
鳳・小鳥(オラトリオの螺旋忍者・e35487)

■リプレイ

●突入
 ケルベロス達はモザイクの空間へと入り込んでいた。
「これがワイルドスペース、か……」
 高い位置にある建物の欠片、そこに直立して、鳳・小鳥(オラトリオの螺旋忍者・e35487)は周囲を見回していた。
 周りはあらゆる風景が混濁している。シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)もその中に仲間の影を探していた。
「中はこうなってたんデスね。外からじゃ撮ってもモザイクだけデスし、不思議デース」
「敵さんは、こんな場所で何を企んでるんだろね? 人の姿を写し取ってさ」
 シエラシセロ・リズ(勿忘草・e17414)も、宙に浮かんで視線を巡らしつつ、声を零す。
 うん、と頷くのは円谷・円(デッドリバイバル・e07301)だ。
「本当に、謎が多いよね。でもまずはとにかく、唯奈ちゃんを探さないと」
「そうだね。調査はあとあと!」
 それにシエラシセロも応え、捜索を続ける。
 と、そこでワルゼロム・ワルゼー(枢機卿・e00300)が遠くを見る。
「む、丁度向こうから、銃撃音が聞こえたようだぞ」
 その方向から、散発的に響く衝撃音。それに皆も、すぐ気づく。頷き合うと、早速移動を始めることにした。
「さあ、急いで駆けつけるぞ!」
「無論だ。可及的速やかに合流するとしよう」
 ワルゼロムに小鳥も応え、風を掃いて速度を上げていた。
「見えてきたでござるな」
 と、前方を先行していたクリュティア・ドロウエント(シュヴァルツヴァルト・e02036)が視線を向ける。
 その先で、2つ影が対峙しているのが、確認できていた。
「全く、ワイルドハントに一人で戦おうとは、無茶をするものだのぅ」
 ワルゼロムは一度呆れたように零しつつも、その足は全速力。
 ヒナタ・イクスェス(世界一シリアスが似合わない漢・e08816)もまた、赤いペンギンぐるみでぱたぱたと疾走し、その仲間の元へ向かった。
「くぁ、葛城さのピンチを救うべく! 漢、赤ペン只今現地に急行中! ──走れ、赤ペン! 弾よりも早く!!」

 葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)はワイルドハントと向き合っていた。
「にしても、自分と戦えるなんてこんなチャンス、二度とねぇよな!」
 眼前の、威圧感のある自身の暴走姿。それに怯むでもなく、唯奈は銃口を向けている。
「せっかくだ、とことん味わわせて貰うぜ」
「……下らぬな。貴様はその前に死ぬのだ」
 ワイルドハントは、静かに応えるだけ。そのうちに巨大な銃口を上げて、速射してきた。
 唯奈も無論、早撃ちで応戦。それらは互いに命中し、唯奈にも銃痕をもたらす。が、唯奈は裂帛の叫びで自己回復し、間合いを取っていた。
 唯奈自身、1人で相手を倒せるとは判断していない。的確に体力を保ち、その上で派手な戦闘音を上げることに注力しようと決心していた。
 助けに来る仲間がいると、信じて。
 しかしワイルドハントも連射。唯奈が回復する以上の傷を与えてくる。
「銃弾に朽ちるがいい」
 言葉とともに、そのまま更なる一撃を加えようとしてきた。
 と、その時だった。
「くぁ~救助対象者発見~! 赤ペンレスキュー隊直ちに現場に直行せよ~」
 間延びした声とともに、小型赤ペンギンの群れが現れる。
 それはヒナタの『赤ペン・カンパニー3rd』。集まったペンギン達の重火器が一斉に火を噴き、ワイルドハントを後退させていた。
「何──ッ」
 不意打ちに惑うワイルドハント。
 それでもすぐに唯奈に向き直ろうとする。が、そこへ、横から声がした。
「おっと、相手なら、キミの秘密を知ってるボクがするよ?」
 宙から接近する、シエラシセロだ。
 ワイルドハントは一度眉をひそめつつも、すぐに返す。
「ふん、ケルベロスの仲間か。挑発など、効かぬぞ」
「そう? なら攻撃するだけだけどねっ!」
 それで一瞬の間隙が生まれたのは事実。シエラシセロはそれを的確に突いて、飛び蹴りを喰らわせた。
 ふらついた敵へ、隠れて肉迫していたクリュティアが『苦無嵐』。大量のクナイを投擲し、その全てを突き刺した。
「唯奈殿、助太刀に参ったでござる」
 着地したクリュティアが振り向くと、唯奈は力強く頷いて応えた。
「あぁ──悪い、助かったぜ!」
「唯奈ちゃん大丈夫ー!?」
 と、円も駆けつけて、治癒のミストを浸透。唯奈の体力を大きく癒やす。
 ワルゼロムもやってきて、『白生姜治癒光線』。癒しのビームで、唯奈を万全な状態まで持ち直させていた。
「待たせたのぅ。これで、ひとまずは安心であろう」
「ありがとな。皆も、来てくれたんだな」
 唯奈は、集結した仲間を見回す。
 皆がそれに頷くと、ワルゼロムは敵に向き直った。
「さて──では本格的な反撃開始といこうか」
「ドーモ。初めまして。フェイク暴走唯奈=サン。クリュティア・ドロウエントでござる」
 クリュティアが挨拶とばかりに言うと、ワイルドハントは、憮然と返す。
「ここで死ぬなら、名乗る意味はなかろう」
 そして、発砲してこようとする。
 だがそこへ、小鳥が鎖を放っていた。
「いざ──」
 その鎖は巻きつくように、ワイルドハントを拘束。
 動きを止めたところに、シィカが駆け込んでいた。
「チャンスデス! このロックなキックを喰らえデース!」
 刹那、炎を宿した脚部で一撃。
 燃え上がる衝撃を与え、熱波とともに敵を数メートル吹っ飛ばした。

●銃戟
 ワイルドハントは牙のような脚部で地を噛み、体勢を直していた。
 小鳥は改めて、その姿を眺めている。
「あれがワイルドハント……奇妙なものだな」
「本当に唯奈ちゃんの姿なんだね」
 円も敵を仰ぎ、その中心にいる唯奈と似た女性の姿を見つめていた。
「でもどうして、あんな姿を……暴走した姿だって、どうやって──?」
「詮索は無駄なことだ」
 と、ワイルドハントはそう応え、近づいてくるだけだ。
 円は一度口をつぐんでから、再び戦闘の構えを取る。
「分かってるよ。分からない事は、たくさんあるけど。でも、今ここであなたが敵ってことだけは分かる! きなよ、化けの皮をはがしてあげるの!」
「いいだろう──!」
 ワイルドハントは両の銃口を向けてくる。
 が、先んじてシィカが、素早く肉迫していた。
「偽物とかノーロックデスから! 本当のロックなケルベロスを見せてやるデース!」
 同時、オウガメタルの鋭い拳で、強烈な殴打を加える。
 ワイルドハントはたたらを踏みつつも、踏ん張ってその場に留まった。
「偽物、とはな。ならば、その偽物に殺されるがいい」
「やれるものならやってみればいいでござる。フェイク如きの銃弾にやられる拙者では無いでござるよ!」
 クリュティアは声を返しながら、魔法の木の葉を纏い、能力を高めている。
「これぞニンポ・木葉隠れにござる!」
「ふん、その全てを撃ち抜いてやろう」
 ワイルドハントは両の銃から射撃。前衛を制圧せんと、広く弾丸をばら撒いてきた。
 だが、円がそこに『月輪』。月を召喚し、光を注いで即座に傷を癒やす。
 同時にワルゼロムもオウガ粒子を拡散。月光に銀の光を重ねるように、ダメージを限界まで治癒していた。
「タルタロン帝は攻撃を頼むぞい」
 ワルゼロムの声に呼応するように、シャーマンズゴーストのタルタロン帝は敵へ接近。爪撃を与えていく。
 次いで、小鳥も螺旋を篭めた手裏剣を放ち、敵の銃口をひしゃげさせていた。
 ワイルドハントはそちらに狙いをつける。が、その至近からヒナタも、早撃ちを喰らわせていた。
「くぁ~隙だらけのオチね~。近距離は弱いのかな? かな?」
「小賢しい──!」
 見下ろすワイルドハント。だが、今度はその頭上に影がかかる。高く飛翔していたシエラシセロが、風の如き速度で降下してきたのだ。
「唯奈さん、いくよっ!」
「ああ、わかったぜ」
 応える唯奈は、攻撃的な間合いへと移動して、銃を構えていた。
 瞬間、星が落ちるようにシエラシセロが踵落としを決めると、唯奈は跳弾射撃。周囲の建物に反射させ、八方から銃弾の雨を浴びせていった。

●偽物
 ワイルドハントは血を散らせて倒れ込む。
 ヒナタは煽るように、周りをくるくると踊っていた。
「くぁ~所詮はガワだけ似た夢喰いのオチ、ね。その強さに中身が無いのはイカン、ああイカンのオチね~」
「……安い侮辱をッ」
 言いながらも、顔を歪めるワイルドハント。起き上がり、銃口を構えて口を開く。
「強さは戦いの最後まで、分からない。それこそ、本物が死ねば尚更だろうな」
「本物が死ねば、か。自分にそっくりな人と会ったら死んじゃう、なんて迷信もあるけど──」
 シエラシセロは風を掃いて飛び上がる。
「──そんなことはさせない。ここで絶対に守りきってみせるよ!」
 同時、豪速で接近して、勢いのままに鉄槌・ミョルニルで苛烈な殴打を加える。
 連続してヒナタも、グラビティを篭めた拳で殴りつけ、深いダメージを与えていた。
「勝負が付く前から力の差も見えてきてるのオチ~」
「……まだまだ──!」
 ワイルドハントは反抗するように銃口に炎を溜める。
 が、そこへシィカが跳躍していた。
「本物を殺す、なんてとんでもないデース! こっちこそ、本物のケルベロスのロック魂を見せてあげるデース!」
 ふんすと鼻を鳴らしながら気合い満点。そのまま足を燃え上がらせ、回し蹴りを直撃させて敵の全身を炎上させた。
 呻きながらも、ワイルドハントは一斉射撃。前衛へ大きなダメージを与えてくる。
 が、それには円が素早く治癒の力を集中していた。
「回復はまかせて!」
 その力が再び月輪を顕現させ、光で前衛を治療していく。
 ワルゼロムも再びオウガメタルから眩い光を放ち、味方を万全な状態まで治癒していた。
「これで安心じゃ。行けい、タルタロン帝!」
 ワルゼロムの言葉に、タルタロン帝が炎でワイルドハントを包んでいく。
「蓬莱も、頑張ってね」
 さらに円が言えば、守るように前を飛ぶウイングキャットの蓬莱も、仕方なしとばかりにリングを飛ばして攻撃していた。
 敵も反撃を狙ってくる、が、クリュティアが銃口を蹴り上がり跳躍。右手の鎖を敵の首に巻きつけ、その遠心力で弧状の軌道を取り、背中へ肉迫した。
「これが拙者のラセン・ブローでござる!」
 瞬間、螺旋を篭めた強烈な掌底。敵を前方へふらつかせる。
 ワイルドハントも、鎖とクリュティアを振り払おうと無方向に銃を乱射する。が、唯奈は素早く地面を転がってそれらをやり過ごすと、早撃ち。敵の銃口をそらした。
「こいつを受けてみやがれ!」
 連続して唯奈が放つのは『魔法の弾丸』。軌道の変化するその弾を避ける事は叶わず、ワイルドハントは胸部から鮮血を噴き出した。
「おのれ……!」
 苦悶を浮かべつつも、ワイルドハントは接射をしようと接近してくる。
 だが、空を舞う小鳥が、素早く羽ばたいて右へ左へ翻弄。
 ワイルドハントは小鳥を撃とうと上方を向く。が、その頃には小鳥は高々と高度を上げ、そして降下してきていた。
「甘い。──空に生き、空で育ったわしにかなうはずもあるまい!」
 言葉と同時、虹の軌跡を煌めかせて、一撃。小鳥の蹴り落としが顔面に命中し、ワイルドハントは大音を上げて転倒した。

●決着
 血を零しながら、ワイルドハントはゆらりと起き上がる。その様相は、憎しみに歪んでいるようでもあった。
「人間に負けるなど……認めんぞ……!」
「こっちこそ、人の姿を奪うような、ロックじゃないものに負けたりはしないデース!」
 シィカはまっすぐに視線を返す。言葉こそ明るいノリを含んだもの、だが、その中には目の前の戦いに対する使命感、そしてケルベロスとしての誇りも滲んでいた。
「デスから、どかんとロックにぶっとばしてやるデース!」
 同時、シィカは踏み込んで拳を突き出し、強打を与える。
「下らん……皆殺しだ……!」
 後退したワイルドハントは、狂気を浮かべるように、弾丸を放つ。
 だが、シエラシセロは『風切羽』。ナイフへと変えた光鳥でそれを弾いていた。
「そっちが最後までそのつもりなら。ボクも出来ることを全力で、やるだけだよ!」
 そのまま、シエラシセロは肉迫。さらに召喚した光鳥の群れとともに、斬撃の嵐を喰らわせた。
 バランスを崩しつつも、再び射撃を狙うワイルドハント。そこへ、小鳥がすらりと手を伸ばしている。
「遅い。──オラトリオの秘術と螺旋の奥義の合わせ技を、喰らうが良い」
 繰り出すのは『鵲』。仮初の命を与えられた折り鶴は螺旋をくぐり抜けて突撃。敵の腹部を貫いていった。
 連続して、ヒナタも連続の剣撃を叩き込み、傷を抉りこんでいる。
「と言う事で、最後の締め。あ、行ってみよう~♪」
「うむ、自分の影の後始末、自分でつけるがよかろうて」
 ワルゼロムは、黒色の魔弾を放ちつつ、唯奈に向いていた。
 頷いて銃を握る唯奈。
 ワイルドハントも弾丸を乱射してくるが、クリュティアは苦無嵐でそれらを撃ち落としていく。
「させぬでござる! ──さあ唯奈殿、カイシャクしてやれでござる!」
「うん、唯奈ちゃん、今なら!」
 円も、引っ掻き攻撃をする蓬莱の後ろからウイルスを投射しつつ、声を上げる。
「ありがとうな。これで、最後だ!」
 応えた唯奈は、まっすぐに二丁拳銃を向け、引き金を引く。
 その弾丸は空を裂くように飛来し、ワイルドハントに命中。頭部と胸部を撃ち貫き、その体を四散させていった。

「ふむ、終わったか。皆の者、お疲れじゃ」
 戦闘後、ワルゼロムの言葉に皆は息をついていた。
 唯奈は皆を見回す。
「みんな、ありがとー! 助かったよ!」
「とにかく、無事でよかったデース」
 シィカも応え、皆もまた、頷きを返していた。
 クリュティアは、周りの様子を窺っている。
「少しでも、調査してみるでござるか」
「そうだねー。なんか手がかりでも見つかればいいけど」
 唯奈も応え、皆で辺りを調べることにした。
 唯奈はスマホで周囲を撮影していく。ただ、周りは混濁した景色というだけで、めぼしいものが映り込みはしなかった。
「誰かの足跡があればいいとも思ったけど。見つからないね」
 円も地面を観察するようにして言っている。
 その内に、辺りのモザイクが消失するようになくなっていく。代わりに、周囲は元の風景へと戻っていっていた。
「くぁ、消えてしまったのオチね~」
 ヒナタが見回すそこはもう、元の荒野だ。
 それ以上は何も見つからないだろうと、皆はひとまず帰還することになった。
 シエラシセロは一度、戦場跡に振り返る。
「ワイルドハント、かぁ。会ってみたいけど、会いたくない──不思議な気分」
 ただ、あの人には会ってみたい、と心で思いながら。
「空は良い……空は……」
 小鳥は飛び立って空を眺めている。そこにもモザイクの跡はなく、ただ平和な夕空が広がっていた。
 涼風の元、皆は歩きだす。敵を撃破できたという戦果を胸に、まずはそれぞれの帰る場所を目指し、去っていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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