ブッシュ・ローズの小路で

作者:崎田航輝

 その公園の一角には、沢山の花に囲まれた道があった。
 両脇が豊かな植生に挟まれている遊歩道で、漂う花の香りも相まってそこだけが別世界のようでもある。
 咲いているのは、ブッシュ・ローズ。長い期間で楽しめるのが薔薇の特徴だが、ここに植わっている品種は秋バラで、この季節に開花の最盛を迎え、美しい風景を彩っていた。
「わぁ、今日は一段と綺麗だなぁ」
 と、そこに、1人の少年が立ち入っていた。
 スケッチブックを手にした、あどけなさの残る少年だ。絵を書くのが好きで、最近見つけたこの風景は格好の題材なのだった。
 その内に少年は一角に座る。今日は遠景ではなく、ひときわ綺麗に咲き誇る一株に注目して、描くことにした。
 と、ちょうどその時だ。
 草木の間から何者かが現れたかと思うと、その薔薇に謎の胞子をふりかけた。
 それは、大きな羽のような葉を付けた少女。
 一見ただの子供のようでもあるそれは、人型攻性植物・鬼胡桃の姫ちゃんであった。
「さぁ、立派な攻性植物になりましょう♪ にへらー」
 彼女が脱力するような笑みを浮かべていると、胞子のかかった薔薇が、巨大化。不気味に蠢く攻性植物へと変化していた。
「わ……」
 瞬く間に、異形と化した薔薇は少年を取り込み一体化。そのまま宿主としてしまった。
「よくできました♪ それじゃ次の場所に行きましょう♪」
 鬼胡桃の姫ちゃんは、気の抜けるような声とともに、公園を去っていく。
 残された薔薇の攻性植物は、根を動かし、這うように移動し始めた。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、攻性植物の事件について伝えさせて頂きますね。最近起き始めた、人型の攻性植物によるものです」
 複数の人型の攻性植物が、『人は自然に還ろう計画』なる人類絶滅計画のもとに、植物を攻性植物へと作り変えている事件だ。
「今回はその1体・鬼胡桃の姫ちゃんが起こす事件です。公園にて、薔薇の攻性植物を発生させてしまったみたいです」
 攻性植物と化した薔薇は、少年を取り込み、宿主としてしまった状態だ。
 放置しておけば、少年は助かるまい。だけでなく、そのまま人々を襲ってしまう可能性もある。
「皆さんには、この攻性植物の撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、人間に寄生した攻性植物が1体。場所は公園です」
 広い公園の中の一角であり、事件時には他の一般人はいない。
 周りにいた少数の一般人も既に逃げ出してしまったということで、戦闘中も人が介入してくる心配はないと言った。
「戦闘に集中できる環境と言えるでしょう。反面、今回の敵は、一般人の少年と一体化している状態となります」
 普通に倒すだけでは、その少年も死んでしまうことでしょう、と言った。
 これを避けるために、ヒールを併用した作戦が必要だという。
「相手にヒールをかけながら戦い、少しずつ、深い傷だけを蓄積させていくのです。粘り強くこの作戦を続けることができれば、攻性植物だけを倒して少年を救うことが出来るはずです」
 もっとも、敵を回復しながら戦うのは、簡単ではない。しっかりと戦法を練って臨む必要はあるでしょう、といった。
「では、攻性植物の能力の説明を。棘を飛ばしてくる近単毒攻撃、花から光を放つ遠単炎攻撃、花びらの雨を降らしてくる遠列催眠攻撃の3つを行使してきます」
 各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「撃破を最優先にしつつ、少年の救出についても考えてくださると幸いです」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)
百鬼・澪(癒しの御手・e03871)
黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)
穂村・華乃子(お誕生日席の貴腐人・e20475)
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)
天泣・雨弓(女子力は物理攻撃技・e32503)
王・美子(首無し・e37906)

■リプレイ

●接敵
 花々の咲く遊歩道を、ケルベロス達は疾駆していた。
 視界の遠くには蠢く巨大な薔薇、攻性植物の姿が既に見えてきている。
「鬼胡桃の姫ちゃん、だったかしら。今までも似た事件は有ったみたいだけど、今回は明確な意図が有るのよね……」
 それを見て、穂村・華乃子(お誕生日席の貴腐人・e20475)の意識はふと、その異形を作り上げた元凶へ向く。
 だが、距離が近づけば、すぐに華乃子は首を振っていた。
「まあ、今はそれより、男の子の方が先ね」
「そうッスね。とにかく救出に専念しましょう」
 上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)も声を継ぎ、視線を上げる。
 近づいた攻性植物、その流動する蔓の中に、1人の影が見える。
 宿主として囚われた少年の姿だ。意識は不確かなようで、時折表情に苦痛を窺わせるばかりだ。
 黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)はダイナマイトモードの豪壮な姿に変身し、腕を掲げてポーズを取っていた。
「ヘイ少年! 助けに来ましたでよウラー!」
「……声が届いてるかも、分からねェな。あれじゃ」
 王・美子(首無し・e37906)は、反応を示さない少年を見て、肩をすくめる。
「道端でスケッチしてたくらいでなあ。災難だな」
 どこか乱雑な言葉、だが美子は同時に、リボルバーを手に取っていた。
「ま、それも少しの辛抱だ」
「ええ。必ず、助け出します」
 天泣・雨弓(女子力は物理攻撃技・e32503)は決意も強く。傍らのナノナノ、だいふくにも頷きかけた。
「頑張りましょうね、だいふく」
 それにだいふくが羽を動かし、元気に応じると、そこで攻性植物もこちらに気づいた。
 敵意のままに接近してくる異形の薔薇。緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)はそれを見据えて、二刀を抜いた。
「……救えないものがある戦いは好きではないんだがな」
 こちらが勝てば、攻性植物は命を散らすだろう。
 それに心を向けるように、結衣は一度目を伏せていた。
「それでも、今更逃れようとは思わないさ」
 目を開けると、刃を力強く、まっすぐに握った。
「助けられない命があるのなら、せめて助けられる命を、全力で助け出すまでだ」

 攻性植物は棘を鋭く光らせ、攻撃を狙ってきていた。
 と、その直前にロッドを掲げる者がいる。百鬼・澪(癒しの御手・e03871)だ。
「参りましょう。花嵐──お願いね」
 澪が言うと、飛び立つのはボクスドラゴンの花嵐。敵を取り巻くような軌道を取ると、ニーレンベルギアの花弁の舞うブレスを放ち、全身にダメージを刻んでいた。
 澪自身は杖先から、雷光を生み出している。
 それは大輪の華の如き美しき光。それをカーテンのように展開して壁として留め、仲間の防護態勢を整えた。
「ミューシエルさん、攻撃を」
「うん、ミューもいくよーっ! えいっ!」
 次いで翼を羽ばたかせるのは、ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)。
 飛翔しながら魔法の光を形成し、眩い光線として放つと、根元へ命中。その一部を硬化させていった。
 それでも前進してくる敵へ、結衣は二刀を振り抜く。
「まずは体力を、奪わせてもらう」
 魔剣レーヴァテイン・エクセリオ、そして大太刀“輪廻を拒む奈落”から放たれた斬撃は、空気を斬り裂くと同時、大気に巨大な亀裂を奔らせた。それがまるで空間ごと裂くように、敵の蔓を分断していく。
 と、物九郎はその間、何やらピーナッツのようなお菓子をボリボリ食べていた。
 それは種の形の攻性植物。その内に力を込めると、頭に小さな木を生やして、黄金の果実を成らせていた。
「ってゆーかコレって、実から出る光でヒールなんスよね。直接食べちゃダメなんでしょうかや」
 物九郎はふと興味を惹かれたように、果実をむしり取って食べてみる。
 味は……可もなく不可もなく。それから藤にも渡した。
「食べます?」
「えっ? 大丈夫なのか……というか種を食べてたのはいいのか?」
 微妙な顔の藤だったが、幸か不幸か口に入れる前に、攻性植物が襲ってきた。
 飛んできた棘は、しかし美子がしっかりと受けきっている。
「ったく。綺麗な薔薇にはトゲがあるってか」
「いやもう、それどこの話じゃありませんわなコレ!」
 物九郎は言いつつ、慌てて間合いを取っていた。
 藤はすぐにオウガ粒子を拡散し、中衛の知覚力を底上げ。美子は反撃に移り、グラビティで射撃。炸裂弾のような衝撃を敵に与えていた。
「華乃子さん。私達も」
「ええ、行くわよ!」
 同時に、雨弓と、応える華乃子も敵へ接近。
 雨弓が青と金の光の粒子に変遷し突撃すると、華乃子は踏み込んで『痛恨の一撃』。強烈な右ストレートを二撃喰らわせ、攻性植物を後退させていた。

●闘争
 攻性植物は擦過音のようなわななきを発していた。
 それは怒りの感情か否か。蠢く茎や蔓は、変わらず不気味な異形そのものだった。
「こんなヘンなことしなくたって、もともとにんげんも、しぜんのいちぶなのに」
 少年に寄生を進めていく異形を見上げ、ミューシエルは声を零す。
「よくわかんないけいかくで、何でもないひとがあぶない目にあうなんて、ゆるせないよ」
「ああ。尚更ここで確実に、倒さないと」
 藤はエクスカリバールを構え、グラビティを集中する。
 敵を前にして、今も緊張は完全に拭えない。だが、ケルベロスとして戦いを重ねるうちに、実力も精神も少しずつ、前に進みつつある自覚もあった。
 それを体現するように。藤は地を蹴って肉迫し、攻性植物の花弁を裂いていく。
 ミューシエルもナイフの斬撃を加えていくと、そこで澪が気づいたように目を向けた。
「あの様子は……」
「ああ。そろそろ、手を止めたほうが良さそうだ」
 結衣も気づいている。その視線の先、少年が一層の苦痛を現していた。
 体力がなくなる寸前なのだ。皆は頷き、攻勢を解く。
 その間に澪は、花嵐に美子を回復させつつ、自身は魔術切開によって、敵の蔓や花弁を修復。共鳴する治癒の力で、少年を死の境から脱させた。
 それでも体力が危険域に近いと見ると、結衣は赤く、温かい炎を生み出した。
「確実に、回復する。二度と失わず、終わらせないために――奇跡の炎よ、未来を照らせ」
 その力、渇望<生命の灯火>は、生死の縁に迷う命の標となるように、明るく光る。それが優しく包み込むように、少年と植物を大幅に癒していた。
「これで命は繋がったろう」
「ええ。あの少年には、もう少しだけ、戦いを我慢していただかなくてはなりませんけれど……」
 澪が静かに見上げる。少年は先程より苦痛はなくなったようだが、寄生は進み続け、微かに顔を青白くさせている。
 美子は再度攻撃準備に入りながら、声をかけた。
「其処で寝るなよ。必ず、ソイツから出してやるからな」
「お姉さん達に任せて、少しだけ、耐えていてね」
 華乃子も優しく呼びかける。
 一方の攻性植物は、復活した花に光を集め、光線として放ってきていた。
 しかし、それは華乃子が防御して威力を軽減。反撃の蹴りを喰らわせる。
 直後には、物九郎が治癒のオーラを生成していた。
「よっしゃ、回復は俺めに任せて下さいわ!」
 それを放つと、華乃子の全身を覆い、傷を消し去っていく。
 敵へは雨弓が上空から接近していた。攻性植物も上を向いてきたが、雨弓は翼を輝かせ、より加速する。
「思い通りには、させません」
 そのまま滑空するように飛び蹴りを加え、花を数片弾き飛ばした。
 さらにだいふくも、雨弓のアイコンタクトでハート光線を発射し、逆側の花弁を焼き払っていく。
 次いで、美子もそこへ走り込むと一撃。
「しゃらくせえからな。消えてろ」
 至近から銃床で殴りつける攻撃、『Dry fire』で振り抜き、光を生んでいた花を全て、刈り取った。

●命
 よろめきながらも、攻性植物は憤怒のいななきを発していた。
 そのまま、根を地に埋めると、まるで大地から養分を吸い上げるように、小さな花弁を無数に生んでいく。
 すると少年もまた、命を吸われたように、顔から温度を失わせていた。
 美子はそれを見て声を投げる。
「オイ、生きてるか」
『……う……』
 少年は間を置いてから呻く。だが反応はどこまでも薄い。
「今は、急ぐしかありませんね」
 澪が言うと、華乃子が頷く。それから気遣うように、そして力強く言葉をかけた。
「また、すぐに元の日々に戻れるから。安心していてね」
「うん、ぜんりょくで、たすけるよっ!」
 ミューシエルも言葉を継ぎ、空を翔ける。
 そのまま攻性植物の正面からそれると、魔力を集中して、光の塊を生み出した。それを高速で放ち、敵の足元から拡散。光で縫い止めるように敵の動きを静止させていく。
 華乃子はその隙に、攻性植物の懐へ。少年には当たらないように、しかし力を込めて、苛烈な殴打を与えた。
「あと少しで、回復が必要かしらね」
「ええ。もう一度だけ、手を加えさせて頂きますね」
 応える雨弓は、注意深く観察しながら接近。
 旋回しながら攻撃を当てる箇所を探ると、力を調節しながら、蔓を切り取っていった。
「おにーさん、おねーさんっ」
 そこでミューシエルが呼びかけると、結衣と澪もすぐに、敵へ駆け寄っている。
 澪はそのまま、攻性植物の根元を、オーラを纏った手で繋ぎ修復した。それから少年に語りかける。
「意識はなくとも。どうか、諦めずに──」
「……きっと、大丈夫だろう」
 応えるように、結衣は少年の顔を見ている。
 その表情はやはり薄い。だが、結衣の施した癒しの炎は、眩しいほどだった。
 その炎は、生きる意志のないものには燃え上がらない光。目もくらむほどの眩さが少年を癒やすなら、その分、未だ強い命が内在しているはずだった。
 攻性植物自身も活発さを取り戻し、花びらの雨で前衛を襲ってくる。
 が、そこには物九郎が再び黄金の果実を生成していた。
「大丈夫っスよ、傷はすぐに治しますでな!」
 頭上をぴかぴかと光らせつつ、自分でも時折果実を齧りつつ、とにかく前衛を回復していく。
「よし、もう少し回復してもらえると完璧っスかね!」
「待ってろ、私が手伝う」
 美子も、応えるように足を踏み鳴らし、花のオーラを生成。前衛の皆を万全状態にしていった。
 攻性植物は叫声のような流動音を発し、再び花びらを散らそうと体を動かす。
 だが、そこへは藤が肉迫し、武装・Abstracterを握っていた。
「何度も、やらせるかよ」
 視線は、囚われている少年へ向く。
「あともうひと踏ん張りだからな」
 小さく言うと、そのまま武器を高速で突き出した。
 その一撃が強烈な威力で突き刺さると、大きな花弁は断ち切られ、衝撃で小さな花弁までもが全て、振り落とされていた。

●決着
 花を失った攻性植物は、蔓の集合体となって蠢くばかりだった。その端々も切れ落ちて、弱っていることが見て取れる。
 華乃子はそれを観察しながら口を開いた。
「回復はもう要らなさそうかしら。一気に、仕掛けられそうね」
「ええ。最後まで油断のないように、行きましょう」
 雨弓は頷きながらも、光の翼から全身に光を広げ、突撃。巨大な槍のようになって体当たりし、攻性植物に確実にダメージを与えていった。
 華乃子も追随するように、跳躍して縦回転の蹴りを叩き込む。
 蔓が裁かれるように断ち切られていくと、ミューシエルも高空から飛来。
「よーし、どんどんこうげきしていくよ!」
 と、直滑降するように接近し、エクスカリバールでの打撃で根元を斬り裂いていった。
「ミオのおねーさんも!」
「ええ、分かりました」
 応じるように、澪はロッドを差し向ける。
 そこに咲くのは花冠のような雷光。それが拡散、収束するように雷撃となって茎を焼き切っていく。
 煙を上げながら、攻性植物も反撃を試みる。が、体を縛る重い麻痺がそれを許さなかった。
 この一瞬の間隙に、藤は踏み込む。
「物九郎、いくぞ」
「ウォー! 了解でさ!」
 物九郎も気合十分に疾駆。低い跳躍から連続で蹴りを打ち込んだ。
「──さあ、悪夢を終わらせるぜ」
 藤は言葉とともにバールを振り抜き、少年を縛る蔓を裂いていく。
 同時、美子も銃での打撃を幾重にも加え、枝葉をこそぎ落としていった。
「そろそろ本当に、終わりかね」
「ああ」
 結衣は、触手の欠片のようになっている攻性植物を見据える。
「命を奪う存在になっていなければ、とは思うが。でも、言い訳はしないさ」
 言葉と同時、結衣は植物の全てを斬り裂いていく。
「守るために、倒す。──これで最後だ」
 塵と化した攻性植物は、跡形もなく散っていく。そのまま空気に溶けるように消えていき、後には少年だけを残していた。

 戦闘後、皆は少年を介抱した。
「怪我は、ありませんね。……大丈夫ですか?」
 澪は抱き起こすように、うっすらと目を開けた少年に語りかける。
「ぼくは……大きなバラに襲われて……」
「もうへいきだよ! きけんなものは、たおしちゃったからね!」
 朦朧とする少年に、ミューシエルは安心させるように笑いかけた。
 すると少年はゆっくりと頷く。その内に意識もはっきりとしてきて、ケルベロス達に礼を言っていた。
 結衣はそれを確認してから、敵が散った跡を見下ろしている。
「折角綺麗に咲いただろうにな。新しい花を植えても、失われたものが戻るわけではないというのに」
 声には、また命がひとつ失われた悲しみ、そしてその黒幕へ物思うような色も滲んでいた。
「それでも、残ったものは直せそうです」
 澪はそう言って、周囲をヒール。攻性植物となったもの以外を直していく。
 結衣もそれを手伝い、場には元の美観が戻ってきた。
 少年はそれを見て嬉しそうに、スケッチブックを取っている。
「なあどんな絵描いてンだ、見せてみろよ」
 美子はそれを覗き込む。それは子供らしいと言おうか、素朴な模写だ。
 華乃子もそれを見て、自身が以前描いた絵を披露する。
「お姉さんも絵を描くのが好きなのよ」
「わあ、すごい綺麗!」
 感心する少年。華乃子は暫し少年に絵を教えつつ、一緒に描いていた。
 それも終わると、少年は改めて皆に礼を言って、自宅へと帰っていく。
 それから雨弓は華乃子に言った。
「お散歩でもどうですか?」
「良いわね」
 華乃子は応え、並んで歩いた。薔薇の中で華乃子は、ふと微笑む。
「薔薇は今秋二度目だわ。薔薇と美女はセットになりやすいのかしら?」
「まあ。でも、確かに華乃子さんはお綺麗です」
「ふふ、今日は雨弓ちゃんもいるから一層そう思ったのよ?」
 華乃子は雨弓に言って、また笑みを浮かべていた。
 澪も、遊歩道を花嵐とのんびり散歩している。
「綺麗な道に、平和が戻ってよかったですね」
 それに花嵐は、ちょっと澄ました上品な鳴き声を返していた。
 秋の風に揺れる薔薇の中、そうして皆は暫し、花の道で時間を過ごしていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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